二重生活 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 792
感想 : 76
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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041036204

感想・レビュー・書評

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  •  短編でも長編でも、小池氏の物語の主人公は比較的中年層の人物が多いのだが、本作品の主人公は25歳の現役大学院生である「珠」。その点でも新鮮味があって楽しめたし、珠の当て所なく街を歩く描写やカロリーオーバーになってることに気付きながらも食事を進める姿には、当時大学生だった自分自身と重なるところがあり、個人的には親近感を覚えた。
     物語は安定の小池節が炸裂し、日常風景に潜む心理サスペンスに見事に惹きつけられた。
     中盤の展開は、ページをめくる手を止められないほど夢中で読み進められたが、その分期待が大きくなり過ぎてしまったのか、ラストはやや消化不良に感じた。
     馴染みある鉄道会社の名前が出てきた為、本当にすぐそこで起こっているかのようなリアリティさがあり楽しめたし、フランス文学にも興味が湧いた。

  • 「文学的・哲学的尾行」の物語。
    この話を読んで、実際に全く知らない人を、
    ただただ尾行する楽しさは確かにありそうだなと感じた。
    人の生活の一部を安全な場所で覗き見ることは
    好奇心をそそられ、若干の優越感を得られると思う。

    「結局のところ、人は秘密が好きなのだ。
    彼が失いたくないのは、特定の誰か、ではなく、秘密そのものなのではないだろうか。」

    このフレーズは、秘密を抱えた人間は誰しも少しは考えることではないかと思った。

    秘密を抱えている人間は相手に対して猜疑心を持ちやすくなったり、
    尾行相手と自分の取り巻く環境の共通点を見出すと、自分は同じルートを辿っているのではないかと不安にかられるという点は、納得できるものがありました。

    結末がどうなるかハラハラして最後まで一気に読めました。
    人間の知りたいという好奇心をついた興味深い作品でした。

  • 他人の生活を尾行によって覗き込むような感覚がいつの間にか、そこに心を置いてしまって自分と重なる部分に注目置いてしまう

    この本の中で卓也だけ秘密を持たないように書かれているけど、
    誰しもが秘密を抱えて過ごす中で卓也も同様ではないかと思った
    卓也の言葉に安堵する珠も表面だけ見えてる

    私自身疑い深いからか、珠を自分に置き換えて考えても尾行の終始、自分から相手が見えて観察している限り相手から自分も筒抜けだと思う、から上手く誤魔化せたと表現してる珠は間抜けに思えたし思慮浅いと思った

    でも、人を疑い深いのは普段から私が周りに対して何かしら秘密を抱えて過ごしているからで
    相手にも自分自身同様に見えていない部分があるのでは?と考えるからだと思う


    珠の行動は奇妙だと思ったし、もし私の生活に詮索入れる人が居れば、石坂同様に気味が悪い人物だと考えるけど
    一目入った他人の生活を詮索してしまうことが私にもあるし、SNSで流れてきた他人の私情を知ることもあるから
    結局は私も一緒かなと思った、

    考え浅い私にとって考え込んでは、難しい、、


  • 「文学的・哲学的尾行」の話。
    いつも冷静で、取り乱さずありたいと願いそれを実践する珠だけど、本当は人並みに?それ以上に?いつも不安で、秘密の裏にある真実が気になって。
    ありもしない妄想をもくもくと膨らませてしまうの、めちゃ気持ちわかる

    210206

  • 全作品読んでいる小池真理子さんの長編小説です。

    大学院生・白石珠が講義の中でジャン・ボードリヤールの書籍のある一文に魅了される。
    それをきっかけに「文学的・哲学的尾行」が始まりそのターゲットとして近所に住む50代男性石坂、その不倫相手が選ばれる。

    かつて読んだ事がない斬新な内容で、派手な盛り上がりはないけれど登場人物の描写が丁寧で最後まで興味深く読み進める事が出来ました。

    今までの小池さんの作品とは毛色が違い面白く読み応えがありました。

  • さすがの小池真理子。独特の温度感があった。女心の描写も鋭い。

  • ミステリーって書いてたのに日記で拍子抜けした。

  • 大学院生の珠は「理由なき尾行」を実行するが、その過程で対象者の秘密を知ってしまう。
    映画を見てから原作を読んだ。
    映画よりずっと面白い!
    確かにこの小説には極悪人は出てこない(不倫の是非は置いといて)ので、いまいちパンチがないと思うかもしれないが、尾行が下手くそな珠が尾行するというだけでドキドキ面白い。
    人の秘密を知ってしまったり、恋人に対して疑心暗鬼になったり、ともすれば暗く落ち込みそうなネタなのに、読んだ後にちょっとホッとする、読後感が良い小説。

  • あっと言う間に読んでしまった。
    尾行する行為から自分の生活とリンクして今まで疑いもしなかった浮気を、信じられなくなった彼。
    どんどん深みにはまる前に尾行がバレてしまいそこで終了となる。

    珠の心理的な描写に引きずりこまれる感じ。

  • 小説としても面白いし、東京の知っている場所が舞台なのでより臨場感を持って読めた。
    ともすれば特殊な感情と受け止められがちなストーカー行為について、人間の本質的な欲求という側面からの研究として紐解くような感覚が導入となるが、徐々に研究だけにとどまらない感情が芽生えていってしまう話。

    自分がコントロールできなくなっていく描写がリアル。

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著者プロフィール

作家

「2023年 『ベスト・エッセイ2023』 で使われていた紹介文から引用しています。」

小池真理子の作品

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