オー・ヘンリー傑作集1 賢者の贈り物 (角川文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041092392

作品紹介・あらすじ

1ドル87セント。クリスマスを翌日に控え、若妻デラが夫へのプレゼントに費やせるのは、たったそれだけだった。しかし、愛する夫にどうしても世界一の贈り物をしたい。デラは唯一の自慢である髪を売る決心をするが……(「賢者の贈り物」より)。
世界中でもっとも愛読されているこの一編をはじめ、「警官と讃美歌」「金のかかる恋人」「春の献立表」など、短編の名手オー・ヘンリーが、1900年代初頭のニューヨークに暮らす庶民の姿を独特のユーモアとペーソスを交えて描きだした短編16話を収録。

感想・レビュー・書評

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  • ままならない人生のワンシーンを、間違いなく皮肉な視点が根底にあるにも関わらず、不思議とユーモアと慈しみを併せて感じさせる巧みな構成と味わい深い文体によって描いた、16話の短編を収録。
    様々な人生の機微がとらえられていて、読後のじんわりと胸に沁みる余韻が心地いい。

    特に印象的だったのは、「桃源郷のはかなき客」。
    長い人生において、日常を離れて非日常における夢に浸る時間を持つって、とても大切。でもそれは、日常における地味な努力の積み重ねがあるからこそできるものであって…という「庶民の現実」をズバリ突きつけてくる作品。
    努力をした主人公女子には、本当に共感しかない。だって、私も少なからずそうだから。
    ラストは、夢の終わりが間近に迫っていることを痛感させるものではあるけど、優しさと救いがあって、ホッとします。

    逆に、「あーあ…」とため息をつきながらも、皮肉と滑稽の絶妙なバランスが取れた結末になんだか笑ってしまったのは、「洒落男の失敗」と「自動車を待たせて」の二話。
    どちらも、見栄のせいでせっかくの人生の転機を逃した人の姿を描いています。
    自分をよく見せようとする見栄やハッタリって、時と場合によっては有効な手段となるのだけど…。うん!残念!

    どの作品も、20世紀初頭の大都市ニューヨークの片隅で生きた人々のさまざまな悲哀を噛み締める秀作揃いです。

    越前敏弥さんの、訳者あとがきにおける、16話それぞれへの寸評もまた素敵。たった3〜4行で、それぞれの物語の骨組みや本質を実に巧みに書き起こしており、感激しました。

    これは、来年刊行される第二弾を是非購入しなければと思った、文字どおりの傑作集でした。

    【収録作】
    警官と讃美歌
    賢者の贈り物
    忙しい株式仲買人のロマンス
    洒落男の失敗
    御者台から
    第九十九分署の外交方針
    金のかかる恋人
    桃源郷のはかなき客
    ハーグレイヴズのふたつの顔
    アイキー・シェーンスタインの惚れ薬
    富の神とキューピッド
    緑のドア
    マックの救出代
    自動車を待たせて
    春の献立表

  • 16話の短編集。

    ほっこりするものから残酷なものまで
    人間味あふれる作品。

    他の方の感想にもありますが大人の童話感覚で読めます。

  • オー・ヘンリーの作品の特徴は、ユーモアと皮肉が入り交じり、最後にどんでん返しかある作品が多いかな。
    結果「心あたたまる」作品だけでなく、残酷といったことばで評したほうがよい結末のものが多いことになるが、どれも人間観察の鋭さと深さゆえに、豊かな人間味を味わえる。

    ・警官と賛美歌 貧しさ故、寝るところも食べるものもないため、犯罪をして留置所に入りたいといろいろ手をつくすが…
    ・賢者の贈り物 代表作と言われるだけあって、印象深く読めた。貧しい夫婦のお互いを思いやる愛を描くが、甘い雰囲気はなく、少し突き放したところがあり、どことなく照れたような作者の視線が感じられる作品だ。
    ・忙しい株式仲買人のロマンス 忙しさで昨日結婚したことも忘れて、またプロポーズする、シュールな笑いを誘う
    ・洒落男の失敗 見栄を張って金持ちの振りをして、女性を口説こうとするが…描かれるのは虚飾の愚かさか
    ・御者台から 馬車の御者が乗せた無銭の客は、こともあろうに…驚きの結末
    ・第九十九分署の外交方針 日露戦争の話題が出てきて、否が応でも興味をひく
    ・金のかかる恋人 金持ちがデパートガールを口説く。世界的に有名な場所を挙げるが、姫路市の太陽公園みたいな場所だと勘違いされるという落ち
    ・桃源郷のはかなき客 これも普通の人が、目一杯背伸びをする話
    ・ハーグレイヴズのふたつの顔 これもどんでん返し。演技で気付かれないようにお礼をする
    ・アイキー・シェーンスタインの惚れ薬 惚れ薬を処方して恋敵を陥れようとするが…
    ・富の神とキューピッド  大金をかけて息子の恋を叶える
    ・緑のドア 不思議な恋の運命を物語る
    ・マックの救出代 年がいもなく恋に狂った(と勘違いした)友人のマックを救おうと大金を使うが…
    ・振り子 空気のようになった突然妻がいなくなると、夫は狼狽してしまうものだが、再び現れると…
    ・自動車を待たせて 金持ちの振りをする女性に声をかけてくれた男性。しかし彼のつまらない職業を聞くと態度を変えるが、実はその男性は大金持ちと言う落ち
    ・春の献 珍しいハッピーエンド

  • 「賢者の贈り物」
    再読であるが、最後のシーンに思わず感嘆の息が漏れた。
    若くて愚かであまりに美しい二人。

  •  伝えたいメッセージを話に乗せるというよりは、思いついた面白い話を一つ一つ形にしている感じの作風だったな。見栄を張った主人公が複数の話で登場していたけど、結末に一貫性はなくて、ある時はハッピーエンドだけど、ある時は失敗する話だったし。

    比喩やイメージの結び付け方が独特。説明に使われる表現が結構飛んでるから、数秒してからああそういうことかってなる部分が結構あった。あんなのよく思いつくなぁ。世界観が面白い。

     短い中にストーリーが凝縮されているから飽きずに読めるし、緩急がしっかりあるから読んでいて心地よかった。言い回しも結末も皮肉調なこともあるけど、結構ロマンチックなことも多い。ただの悲劇っていうのはなくて、絶対オチがあってテンポが良いから読んでて楽しい。どの話も、尺がちょうど良くて、満足感がすごいある。皮肉な結末とかどんでん返しがあるタイプの作品は、アガサクリスティーっぽさがあるなぁと思った。

     たとえ結末が予測できても、短いから時間の浪費感もないし、やっぱりね!ってスッキリした気持ちで読み終えれる。短編の良さに気づかせてくれた本だった。

     言語と文化の違いで、言葉遊びとかジョークとかがピンとこないところは多々あって、翻訳の限界があるのは否めない。

  • 大切な人の為に、自分の大切な髪の毛や腕時計を売り払う
    お互い幸せだろう

  • 『賢者の贈り物』のストーリーは知っていましたが、改めて読んで、ほっこりしました。
    こういう心のこもった贈り物を贈りたいなぁと思わせられる話でした。

  • 皮肉に満ちたどんでん返しが魅力のオー・ヘンリー傑作集。

    貧しい若者同士の、互いを思う気持ちを描いた切ないストーリーの「賢者の贈り物(The Gift of the Magi)」と、かつて大きな野望を抱くも落ちぶれてしまった青年が、改心して前向きに生きていこうとするも意外な結末が待ち受けている「警官と讃美歌(The Cop and the Anthem)」が印象に残った。

  • 大人も楽しめる童話

  • 爽やかで誰も傷つけない優しい裏切り方。

    何話か読む内に作者のパターンが読めてくるかと思いきや、結局裏をかかれる。

    表題の「賢者の贈り物」始め、
    「桃源郷のはかなき客」
    「緑のドア」
    「春の献立表」が特に好き。

    一編が短く、さくさく読める割に19世紀後半のアメリカ都市の空気感を味わえ、それぞれ見事なオチまで用意されている。

    読後の清涼感、優しい気持ちは一読に値する。

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著者プロフィール

オー・ヘンリー/1862年、アメリカ・ノースカロライナ州出身。銀行勤務時代に横領罪で有罪判決を受け、服役中から短編小説を書きはじめる。ショートストーリーの名手と呼ばれ、庶民の哀歓を描く作品は時代や国境を越え多くの人々に愛され続けていて、生涯272編の短編作品を残し、これまで映画化された作品も多い。

「2023年 『人生は回転木馬』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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