革命テーラー (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 12
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041096789

作品紹介・あらすじ

町おこしのキーアイテムは「コルセット」!? 不憫すぎる少年と偏屈な老テーラー、スチームパンク少女が凝り固まった田舎町に革命を起こす! 疲れたあなたに元気を注入する、 とっておきエナジー小説。

感想・レビュー・書評

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  • 川瀬七緒の初読み。
    川瀬七緒には、ちょびっとした思い出が。


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    震災後ちょびっとした頃、実家の母から電話が。
    『お前、小説読むのが好きだったよな?川瀬七緒って作家、知ってっか?』

    「いや?知らないけど?それがどした?」

    『いやな、この前知り合った人の娘さんが小説家で、ちょっと前にナントカ賞っていうすごい賞をもらったそうなんdqだ。その人からサイン入りの本をもらって読んでるんだけど、けっこう面白くてね。お前も読んでみたら?』

    ・・・と、そんな感じで。
    一応ググったら江戸川乱歩賞か。
    「よろずのことに気をつけよ」
    あらすじ読んだら、つまらなくはなさそうだけどまあ特に興味を引くほどではなかった。「古本屋の100円コーナーで見かけたら買ってもいいけど、定価で買うほどではないか。」という程度。

    母には適当な返事をし、結局、読むことは無かった。

    とは言っても、故郷出身の作家とあって、名前だけは記憶に留めていたし、時おり書店でも、気が向いたら著者名を探してみたりもした。(ほとんどの場合、見つけられなかったけど)

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    そんなこんなで7~8年が過ぎた先日、書店に平積みされてたのが『革命テーラー』だった。

    表紙裏面のあらすじを読んだら、舞台が福島だとのこと。
    あらすじの内容自体は別に興味もそそられなかったけれど、

    福島が舞台の小説、読んでみっかな?

    程度の意識で購入。すると・・・

    主人公の母親がエロ漫画家?
    コルセット?コール・バレネ?…なんたらかんたら、見慣れない単語が飛び交うわ飛び交うわで、いきなり挫けそうになった(笑)。

    が、しかし!
    50ページほど読み進めると、物語の不思議な魅力に少しずつ引き込まれ始めた。

    服飾関係の蘊蓄には辟易しつつも、スチームパンク少女の登場辺りから、俄然物語が動き始めた。

    スチームパンク??
    いまいちよく分からん世界観ではあるものの、まあ、昔読んだ桂正和の漫画の世界観みたいなもんかな?(たしか「DNA2」とかいうやつ)

    また、具体的な地名こそ出されてないが、
    城下町
    小綺麗に整備されてしまった城跡
    潰れた映画館
    川沿いの道
    阿武隈川の小石
    ・・・などのキーワード、そして筆者の出身地(母がその母親と知り合った病院)から考えると、小説の舞台の町は、どう考えても我が故郷の隣市・・・3年間通った高校がある市だとしか思えない!!!

    また、自分の母校は(今は共学になったけど)男子校だけれど、近くにあった女子校が共学化を機に改名した校名が、まさしく主人公達の通う高校名を連想させる語感を持っている・・・・

    って部分に思い至ったら、さらに物語に引き込まれた!
    じいちゃん、ばあちゃん達が立ちあがり仲間になっていく様。
    日に日に生き生きとしてくるばあちゃん達。
    「変な子」だった明日香の真っ直ぐ過ぎるくらいに真っ直ぐだからこその魅力に気づく主人公にニンマリし…。

    そして、クライマックスに向けての盛り上がり部分では、もはや目が離せなくなった。

    結末にも、十分納得。

    とても愉快な読書時間をくれた川瀬七緒さんに、感謝。
    とっても面白かった。

    川瀬さんの、他の作品もぜひとも読みたくなった(^-^)v。

    ★4つ、9ポイント半。
    2021.02.06.新。

    ※「ごせやける」って言葉、久しぶりに目にして懐かしかった。(祖母がよく使ってたな)

    ※名前すら出されなかったけれど・・窮地に立たされた主人公に「救い」をもたらした、担任の先生が格好良かった♪

    ※卑劣な手段で主人公母子を貶めようとした真鍋女史には、痛快なくらいにギャフンと言わせる顛末が見たかった、という点だけは若干心残りかな。

    ※作中で何度も描写された「エヴェレット・ジャポニズム」の世界観、写真かイラストでもいいから、ビジュアル的にも見てみたかった。

    ※寂れた地方都市の商店街を活性化…、今も我が母校が残る街に、この小説に出てくるような面々が立ちあがり、何かを始めたら面白いな…とか、妄想が膨らんだ(苦笑)。

  •  クセ強キャラの博覧会(^ ^;

     出てくる奴全員、ものすごくキャラが濃い(^ ^; 常識的な人間はほんの少し、しかも「融通の利かない役所の堅物」みたいな「敵キャラ」としてしか出てこない(^ ^; 最初の内は、正直濃ゆいキャラの連続にお腹いっぱい感があるが、徐々に「常識に縛られず」行動する主人公たちに引き込まれ、自分たちの「常識」「日常」に疑問を持つように(^ ^;

     常識なんてのは、「なるべく多くの人間が、ぶつかり合わずに楽に生きるために生まれた「尺度」でしかない。端から「大多数」に入っていない人間には縁が無いし、そういう連中は「ぶつかり合いながら」自分の道を切り開いて行くしかない(^ ^; そしてそんな「常識の埒外にいるクセ強連中」も、自分たちなりに苦悩し、工夫し、苦労しながら生きていることに気づくと、たまらなく愛おしく見えてくる(^ ^

     人は、他人と関わらずに生きていくことはできない。だとしたら、無理繰り「常識」に合わせて縮こまって生きるより、ぶつかり合いを恐れずに関係性を築いていった方が良い。そんな風に思わせてくれる一冊(^ ^

    Ah 私たちはきっと名前もない原石で
    ぶつかり合って初めて磨かれるの

    ...と、リトグリも歌っていたし(^ ^

     花火とアドバルーンにこだわる伊三郎が良い(^ ^ 母が帰ってきたときに「カレーの気分」と伝えるアクアも良い(^ ^ 明日香と共に時計のネジを巻くシーンが、また良い(^ ^

    惜しむらくは、最後の最後で、紙数が足りなくなったか、やや「焦った」印象を受けたが... 全体として、とても楽しく読め、勇気づけられる一冊(^ ^ 若い人、読め!!(^o^

  • 文芸カドカワ2016年12月号〜2017年3月号掲載のものに加筆修正し、2017年12月KADOKAWAからテーラー伊三郎として刊行。2020年10月改題して、角川文庫化。コルセットを世に出すために奮闘する老人と高校生男女二人が起こす奇蹟のようなストーリー。川瀬さんの話には、ヲタクというか、その道まっしぐらというようなユニークな人達が登場して活躍することが多いですが、今回もその路線で、とても楽しめました。服飾ものというのも興味深く、楽しかったです。お話の中のデザイン、コーデを見てみたいです。

  • 2020/12/23
    文庫になったので再読。
    タイトル変わったのはどうかな。
    テーラー伊三郎の方が語呂はいいし得体のしれない感が好きだけど、得体のしれないのは諸刃の剣だもんね。
    門戸を開く意味では革命テーラーかな。
    二回目でもめちゃめちゃ面白くて大満足。
    そして初回と同じかそれ以上に映像化を望むのです。
    だって!見たいやん!
    素敵なコール・バレネとそのコーディネイト。
    アクアが作ったお店。
    スチームパンクな時計台。
    心がざわざわするんですよ。
    私もなんかせねばと。
    そういうの大事なんですよ。

  • 一番はじめに読んだ川瀬作品がこれだった。

  • やっぱすごい好き。やばいじーちゃんばーちゃんが特にいい。アクマリーちゃんの危機に手を貸すひとたちが集うところではもーにやにやしっぱなしです。おすすめです。

  • 伊三郎がとてもカッコいい!
    爺ちゃん婆ちゃんがパワフルでよい。

  • 楽しい!

  • 改題したのね…
    再読だけど楽しめた。

  • 川瀬さんの本が好きでわりといろいろ読んでいる。その中でこの本はわりと若い人に読んで欲しいなーというエンタメ小説だと思う、思うんだけど、大人にも刺さるんだよなーというかんじ。

    高校生も、80歳を超えたお年寄りも、登場人物の熱量の高さに目頭が熱くなってしまう。特にお年寄りたちはみな、腕は一流の職人さんだったりその道を極めた人ばかりで、だけど寂れゆくステレオタイプな商店街のようすに何かを諦めてしまった人たちばかり。そんな人たちが1人の紳士服テーラーが作った一流のコルセットをきっかけにまた情熱を燃やしていく、瞳を輝かせながら自分の技量を遺憾なく発揮して。そんなの読んでて気持ちよくないわけないじゃん!

    誰しも大人になる過程で色々諦めてきたことがあると思うけど、一度「これまでの人生」で諦めた経験のあるお年寄りが奮起する様は本当に痛快!そしてそれと対照的に、「これからの人生」を悲観していた高校生の主人公が未来に希望を見出していくのもとてもよい!

    悪役として登場する頭の固い人たちも、それはそれで言っていることは分かるんだよな、と思えるところもよかった。色々な意味で元気になれるし、人生に希望を持てるお話。

    ごちゃごちゃ言ってみたけど、この物語を読んでいる時に何度も自分の中にも、こう、胸が熱くなって湧き上がるものがあって。自分もこんなふうに何かに興奮して、感動して、一生懸命になりたいってそわそわした!!登場人物の興奮が伝わってきて、ワクワクした!!それが一番大切な部分かな!

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著者プロフィール

1970年、福島県生まれ。文化服装学院服装科・デザイン専攻科卒。服飾デザイン会社に就職し、子供服のデザイナーに。デザインのかたわら2007年から小説の創作活動に入り、’11年、『よろずのことに気をつけよ』で第57回江戸川乱歩賞を受賞して作家デビュー。’21年に『ヴィンテージガール 仕立屋探偵 桐ヶ谷京介』(本書)で第4回細谷正充賞を受賞し、’22年に同作が第75回日本推理作家協会賞長編および連作短編集部門の候補となった。また’23年に同シリーズの『クローゼットファイル』所収の「美しさの定義」が第76回日本推理作家協会賞短編部門の候補に。ロングセラーで大人気の「法医昆虫学捜査官」シリーズには、『147ヘルツの警鐘』(文庫化にあたり『法医昆虫学捜査官』に改題)から最新の『スワロウテイルの消失点』までの7作がある。ほかに『女學生奇譚』『賞金稼ぎスリーサム! 二重拘束のアリア』『うらんぼんの夜』『四日間家族』など。

「2023年 『ヴィンテージガール 仕立屋探偵 桐ヶ谷京介』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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