堕落論 (角川文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (327ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041100202

感想・レビュー・書評

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  • 最後の章がキチガイなテンションで始まったときはどうしようかと思ったが、ちゃんと収まっていたので良かった。「学問は限度の発見だ。私は、そのために戦う。」という締めのセリフはカッコいい。
    坂口安吾は合理主義者だと感じた。日本人の慎みの美徳を完全否定して、徹底的に利便性を求めていたところが面白かった。彼はきっと冷やし中華にマヨネーズをかけるタイプの人間だ。
    しかし恋愛に対しては合理主義を貫けていなかった気がした。でもそこが人間らしくて良いと思う。
    堕落論よりは続堕落論のが面白かった。
    坂口安吾の小説を読んでみたい。
    「学問は限度の発見だ。私は、そのために戦う。」

  • 絶望・勇気・気力・憂鬱すべてをくれる珍しい本。
    いろいろ人生幻滅するだろうけど、なんとかなれそうな気がある。

    気になる台詞
    ・人間の歴史は闇屋となるところから始まるのではないか。
    要するに、生きることが全部だと言うより外に仕方がない。
    生きることだけが、大事である。

    ・是が非でも生きる時間を生き抜くよ。そして、戦うよ。
    決して負けぬ。負けぬは戦う、ということです。それ以外に、
    勝負など、ありやせぬ。戦っていれば、負けないのです。
    決して勝てないのです。人間は決して勝ちません。
    ただ負けないのだ。

  • 「古いもの、退屈なものは、亡びるか、生まれ変わるのが当然だ。」

    13のエッセイから成り立っている。基本的に誰かを批判しており、称賛していることはない。”じゃぁ、著者はどうなのか”と思ってしまうこともしばしば。

    日本文化私観では、欧米に憧れる日本人と過去の伝統ばかりに重きを置く人々に対する痛烈な批判が面白い。これが発表されたのが1942年だと考えると、よく書けたものだと感じる。

    デカダン文学論では、あらゆるモノに対して、誠実さを求める考えは、処女幻想だと評した。何かが進化していくためには、それが破壊されなければならないと説く。これは、日本文化私観の発展かもしれない。

    悪妻論では、精神的なつながりだけの恋愛が神聖だと考えられている現状を嘆き、肉欲こそが、人間の本質的なもので、他人を魅力するものだと捉えた。肉欲を肯定しているにも関わらず、著者は、意中の人物と口づけをしただけで絶交していることから、肉欲に生きる人物は著者の目指す姿なのかもしれない。

    エゴイズム論では、対価を求める親切を斬る。親切は、無償の愛であり、それが裏切られたからと言って、相手を恨んではいけないし、その行為をやめてはいけない。これはキリストの教えに通じるところがある。

    著者は太宰治と仲が良かったらしい。その太宰の新しい面を発見できたのはとても興味深かった。

  • すごいなぁ。有名無名構わず真正面からバッサリぶった斬り。無茶苦茶言ってるんだけど、真理をついてる気もするんだから。なんだか落語家みたいな人だな。

  • 超・有名な坂口安吾のエッセイ集。
    特製カバーは空色? っぽいブルー。
    語りかけるような文体で太宰治について語った『不良少年とキリスト』が面白かった。

  • 坂口安吾の小説を読まずにエッセイを読む。というのもどうなのか。エッセイでも、書評でもあり、ただの悪口の羅列だったり。

    「この時代」と十把一絡げにしてしまうのは乱暴だが、頭でっかちで自意識過剰な男が多いなという雑感。

    「僕が想像し、僕がつくればそれでいい。」これを言ってしまうには危なさが漂うが、ちょっとかっこいい文章だった。

  • ※角川文庫祭2012限定カバー

  • 「堕落論」坂口安吾
    随想録。灰色。

    坂口安吾は初読です。
    人間性のいろいろについて。あてなく書き連ねられているふうが正直読みづらかったですが、ひとつの骨子(例えば「欲望は秩序のために犠牲にせざるを得ないものではあるけれども、欲望を欲することは悪徳ではなく、我々の秩序が欲望の満足に近づくことは決して堕落ではない。」p214.)に対して、よくまあ逐一ねちっこくズルズルと書き起こせるなと感じること延々。
    普段から深い考察と穿った視点がないと無理。見習いたいです。
    収録作品の初出が昭和17〜23年の戦中戦後であることを考えると、このキナ臭くなさというか、埃っぽい四畳半を感じさせる読みごこちが意外でした。
    中学生くらいで読んでいたかった。(3)

    以下メモ
    -----

    p116.日本は負け、そして武士道は亡びたが、堕落という真実の母胎によって始めて人間が誕生したのだ。

    堕落論と安楽死
    、苦しみから逃れるエゴこそが二重の拘束から人間を救う、のではないかしらん。
    またしかし、「堕ちぬくことはできないだろう」(p118.)から、法によって義を偽することで安堵する

    日本人が連綿と続いてきたのは、統治者が何より日本人を知り抜いていたから?
    ←p124

    p222.我々の周囲には思想のない読物が多すぎる。読物は文学ではない。

  • 昔の人だと思っていたけど、読んでみると意外と面白い考え方をする人だと思った。
    まぁ、途中言ってることがわからなかったり、何度か寝落ちしたけど……。

  • 芸術に興味がある人は是非

  • 本文より"美しいものを美しいままで終らせたいという小さな希いを消し去るわけにも行かぬ。未完の美は美ではない。その当然堕ちるべき地獄での遍歴に淪落自体が美でありうる時に始めて美とよびうるのかも知れない"
    人間の堕落について戦争や日本古来の思想から分析し淡々と事実として述べており面白い

  • 読んだきっかけ:100円で買った。

    かかった時間:2/18-3/10(22日くらい)

    あらすじ:「人間は堕落する。義士も聖女も堕落する。それを防ぐことはできないし、防ぐことによって人を救うことはできない。」第二次世界大戦直後の混迷した社会に、戦前戦中の倫理観を明確に否定して新しい指標を示した「堕落論」は、当時の若者たちの絶大な支持を集めた。堕ちる事により救われるという安吾の考え方は、何時の時代でも受け入れられるに違いない(裏表紙より)

    感想: 読みづらかった。短編集だが、簡単なのと難しいのの差が激しい。青春論、堕落論はしんどかったです。内容は、なるほどこれが無頼派か!というもの。この時代、あるいは前時代の文学者に喧嘩売りまくり、みたいな。なるほど、と思わせるものもたくさんありました。

  • ぶっとんでた。なんにも古くない。すごく勇気出るし、色々愛しくなる。日本人なら読んだほうがいい。正しく堕ちて、生き抜くこと。

    堕落論のテンポと痛快な批判で爆笑。続堕落論も含めハイライトかな、デカダン文学論のさいご、『私は風景の中で安息したいとは思わない。〜』で泣く。

    風景が美しい?否、人間が一番に決まっているって言い切れるのすごい。まぁ、そうなんですけどね…。

  • 青空文庫にて表題作のみ。
    どだい無茶な不幸や苦痛や硬派を貫く事が美徳というような世の中だが結局人は忘れ適応してゆく生き物だからそうやって堕落して生きてゆくしか仕方がない。
    苦痛だけで生きられたらいいのだけど、やはり無理だよなあ。

  • 日本人の揺らぎ、迎合する感じがリアルで凄く共感。

  • 先日、『人間の建設』を読んだ後での『堕落論』。

    この間初詣に行った時に、不思議な空気に包まれた伏見稲荷を「醜悪」と言い切る。
    確かに慾の権現とも言えるなぁ、と笑ってしまった。

    人がひとつの人生を目一杯生きること、そこに何か分かりやすい教訓や物差しは要らない。

    人が人らしく在ること、そこに忠実に真面目で在ること。それが人本来の愛らしさ、だということだろうか。

    『人間の建設』では小我に拘らず、他者を認識し、そこから自分を顧みることを説く。
    『堕落論』ではその小我に純粋に情熱を注ぐことを説く。

    遺す為の生き方ではなく、燃え尽きる為の生き方。

    言い方はパシパシ斬り込んでいくのに、そこから自身の生きることへの元気を貰える。
    読んでいて、進むしかないのだと背中を押される一冊。

  • 坂口安吾の『堕落論』もまともに読んだことがない。文庫が凸版印刷でなく、オフセット印刷になっていて老眼に易しいので入手した。

  • 笑った。表現の仕方もさることながら、書いてる内容も面白い。いい意味で時代を感じさせない近さの文章。気軽で好き。

  •  坂口安吾の随筆集。冒頭の「日本文化私観」を国語の教科書で読んだことがあったので、興味が湧いて読んでみました。

     文体がやや古いので現代人としては読みにくさがありますが、それに勝るほどに文章が気持ちいい。間違っていると思うものには間違っていると真っ向から勝負をかける姿には、降って湧いたような反逆精神がありません。もちろん彼の思想はあくまでも彼の思想であるし、時代背景が違えば同じ文章でも価値が変わるのは当たり前で、賛成も反対も言いたくなるのだけど、それでもなぜか続きを読みたくなるのは筋の通った思想を提示してくれるからなのかな、と感じました。反抗の中に客観的な内実が伴っていて、誰かの言葉を傘にすることもなく、何の論拠もナシに作文することもなく、ひたすらに自ら考えていることが言葉の向こうに見えてきます。

     正直な話、坂口安吾の作品は読んだことがない(そもそも純文学は進歩が感じられないので興味が無かった)のですが、少し手を付けてみようかなと思わされる一冊でした。まあ、芥川も太宰も漱石も鴎外も川端も三島も知らなくたって、今まで文章を読んできたのだから、それが自分の文学私観でいいのだろうけど。

  • 美しさのための美しさは素直でないというが、余計な美しさも人には必要でしょう。坂口さん自身、まじめな文章よりも人を笑わせる余計な文章が好きと言っていますし。

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著者プロフィール

(さかぐち・あんご)1906~1955
新潟県生まれ。東洋大学印度倫理学科卒。1931年、同人誌「言葉」に発表した「風博士」が牧野信一に絶賛され注目を集める。太平洋戦争中は執筆量が減るが、1946年に戦後の世相をシニカルに分析した評論「堕落論」と創作「白痴」を発表、“無頼派作家”として一躍時代の寵児となる。純文学だけでなく『不連続殺人事件』や『明治開化安吾捕物帖』などのミステリーも執筆。信長を近代合理主義者とする嚆矢となった『信長』、伝奇小説としても秀逸な「桜の森の満開の下」、「夜長姫と耳男」など時代・歴史小説の名作も少なくない。

「2022年 『小説集 徳川家康』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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