伝説の「どりこの」 一本の飲み物が日本人を熱狂させた

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  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
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  • Amazon.co.jp ・本 (271ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041100417

作品紹介・あらすじ

「どりこの」-かつて、この国を席捲した飲み物。旧陸海軍でも用いられた滋養飲料を大々的に売り出したのは…なんと講談社だった。「聖水」と呼ばれるほどの人気を博したが、太平洋戦争の激化にともない製造中止に。戦後、一時は復刻されるも、開発者の死と共に消えていった…。誰がどうつくったのか?なぜ昭和を代表する飲み物になったのか?どうして現代では製造できないのか?「どりこの」ミステリーから、昭和の新たな姿が見える。

感想・レビュー・書評

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  • 昭和初期、太平洋戦争開戦前に発売され、日本中で大ブームとなった飲み物「どりこの」。
    現代ではレシピは現存せず、復刻することが不可能となってしまったどりこのの姿について、様々なルポルタージュから解き明かす一冊。
    私がどりこのを知ったのは、西島製菓より販売しているきなこ棒の箱に“どりこ飴本舗”と書かれていることがきっかけで、どりこのという飲み物については、つい最近までその存在すら知りませんでした。
    どりこのは私の祖父母であっても世代ではないほどの頃に販売されていた飲み物で、もはや当時、実際飲んだ人も数少なくなり、製法不明のため二度と飲むことはできない、歴史に埋もれゆくどりこのの姿を如実に描き出した、貴重な一冊といえます。

    どりこのの広告、現存する変色したどりこのを実際に著者が飲んだ感想から、講談社から販売された経緯、ブームとなった仕掛け、どりこのを作った博士の話など、とにかくどりこのについて網羅した一冊になっていて、大変満足でした。
    私がどりこのを知ったきっかけとなった西島製菓についても少し触れていて、その他、あんみつ姫の倉金良行が描いていたどりこのの宣伝漫画や、現在も存在するどりこの焼き、どりこの坂やどりこの饅頭についても触れており、本書を読めば、どりこのについて一通り知ることができる内容となっています。
    悲しきは、どりこのは失われた技術で作られたオーパーツであることで、決して口にすることはできないのが悔しい限りです。

    ただ、基本的にはどりこのについて書かれた本なのですが、当時どりこのを販売した講談社の内部情勢であったり、創業者の野間清治について書かれた割合が多いのが少し残念でした。
    個人的には全国に点在する食べ物“どりこの焼き”や、“どりこ飴”という謎のお菓子など、どりこの自体に関連するものについて詳細に読みたかった気がします。
    どりこのは瓶の意匠も素敵で、コレクターも多いと聞きますが、作中、瓶についてはノータッチです。
    とはいえ、どりこのについてここまで詳細に調べて書き起こした本は珍しく、大変参考になりました。
    良書です。

  • 著者が取材先の田園調布の街角で出会った「どりこの坂」の標識。
    そのネーミングから興味を持って取材を始めたのが昭和初期に大々的に売り出され、現在80代の人ならば必ず知っているであろうという滋養飲料「どりこの」
    この「どりこの」とは何かを巡って販売元の大日本雄弁会講談社と野間清治社長、そして開発者の高橋孝太郎博士と取材をしたルポルタージュ。

    「どりこの」の周辺を探りながら草創期の講談社と戦前という時代を見ることが出来る。

    それにしても講談社の仕掛けた宣伝攻勢はすごい。
    博士の手によって「どりこの」関連の資料は全て処分され、今「どりこの」を飲む事は叶わないのひたすら残念。

  • 戦前から戦中にかけて
    大いに喧伝され
    そして
    当時の大衆に
    飲まれた「どりこの」

    その 存在を追いかけていく
    取材過程そのものが
    一つの昭和史になっている
    こういう
    昭和史の「切り口」は
    実に
    興味深い

    その当時の
    出版社の一つであった
    「講談社」の初代社長野間清治さんの
    話がたっぷり盛り込まれているのも
    また 楽しい

  • エナジードリンクの先駆けのような存在だったのかな。
    名前の珍奇さといい、興味深い飲み物であるどりこのに迫った読みやすい本。

  • 昭和初期、講談社から発売された「どりこの」。ブドウ糖3割、果糖3割。(ショ糖を分解させた。)復刻版が昭和29年から46年まで製造された。昭和54年から4年間、三越の依頼でつくった。

  • 肩のこらない興味深い読み物。戦前、労働生理学の先駆けでもあった潔癖症で風変わりな博士が開発した糖水を、なんと講談社が大々的に売っていた。この事実だけでも十分面白いが、筆者の軽妙な文体とたくさんの写真資料がいっそう楽しく読ませる。

    時代背景や周辺のエピソードがまた実に興味深い。野間清治による講談社少年部は、社会のセーフティネット機能を果たし、全人的にひとを育てる、という、企業のあり方のひとつの理想だったのではないか。

  • 昭和のはじめ、「どりこの」という飲み物が日本人を熱狂させた。それは発売1年で生産本数は220万本に達するほど。カルピスの原液のように薄めて飲む「どりこの」。定価は1円20銭で、現在だと3500円くらい、けっして安いものはない。高級な清涼飲料がなぜここまで売れたのか。「どりこの」の魅力とその販売戦略に迫る。

  • どりこのもさることながら、講談社にも魅力を感じた。

  • 戦前に大流行したという不思議な飲み物の話。はずかしながら、この本を読んで初めてその存在を知りました。飲み物の話というより、どりこのという飲み物を通して見た出版社の歴史、の方がしっくり来る。講談社創業者である野間清治氏の人柄や、かつて講談社に在った少年部の記述がとても興味深かった。
    ・・・という本が角川から出版されたのも、ある意味興味深い。

  • 私が生まれてから絶対に一度もすれ違ったことがない言葉「どりこの」。それは、昭和初期に、最大年間200万本を超えるヒットを飛ばした、「高級滋養飲料」(簡単に言うと養命酒みたいなもの?いや、タフマンとかか?いや甘いらしいから・・・)だそうです。そして、新聞一面広告を出しまくっていた商品なのに、今や製法を知るものも無く幻になってしまったもの。
    なぜか人の記憶から消えてしまっているこの謎の飲み物について、発明した博士の物語、そして講談社がそれを売る話などを著者が調べて回った経緯も含めて書いている。
    ついに著者が本物に巡り合ったところなどは、興奮して読めた。本当に名著だが、本当に本当に「どりこの」が飲んでみたくなった。いろんな人の記憶でなんとかならないものか・・・。

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