将棋名人血風録 奇人・変人・超人 (oneテーマ21)

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  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
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  • Amazon.co.jp ・本 (196ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041102411

感想・レビュー・書評

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  • 将棋会随一の変人として有名な加藤一二三氏の著。

    加藤氏は名人も経験された大変な名棋士だが、その行動や表情、棋風からもとにかく独自色が強い。
    そんな加藤氏、勝ち数が史上二位(三位かな?)、負け数は一位、とこれまた凄いし、通算対局数一位と、要はむかーしから将棋を指している。
    御年74歳、14歳でプロ入り(最年少記録として破られていない)しているから60年以上も現役。
    だから、上は木村義雄名人から、下は渡辺明永世竜王までとにかく沢山、それも多くの世代に渡って名棋士と対戦している。
    そんな名棋士たちの横顔が、加藤氏の軽妙で独特なユーモアある語り口で著されているので一気に読んでしまった。

    大山康晴、中原誠、米長邦雄氏らの重鎮たちと現役で張り合ったことから、私の世代にとっては一世代前の人達の表情がわかるのは面白かった。

    ただ、後半になるにつれて、やはり羽生さんの記載が増える。どこから見ても凄い棋士ということだろうし、何せ加藤氏は「無人島に連れて行きたいのは?」という質問に「羽生」と答えているくらい。愛情たっぷりなのだ。

    そんな加藤さんはクリスチャン。名対局の陰では教会での祈りが勝利につながったことも多いらしい。ただし、勝利を願っているわけではないという。そんな即物的なことを直接神頼みするわけはないのだ。
    私はクリスチャンではないが、加藤氏があの丸い身体で一心不乱に祈りを捧げている姿を思い浮かべると、微笑ましく思えてならない。

    楽しく読める本。

    加藤氏に興味があるなら数々の伝説を確かめるべし。
    http://2chart.fc2web.com/123.html

  • 最近バラエティ番組でもおなじみのひふみんこと加藤一二三九段が、歴代の名人を分析した一冊。

    木村14世から羽生・森内・佐藤まで対戦したことのある棋士は彼しかいないということもあり、その分析は正鵠を射てるように感じた。

  • 将棋したいよー

  • 将棋やりたくなるけどやってみたら自分は彼らのような天才では無いのだと痛感させられた一冊

  • さすがに現在73歳の老棋士の著作だけあって話が古い・・・^^;

    でも物言いがはっきりとしているし、将棋を愛する気持ちがひしひしと伝わって来て読んでいて心地良い。
    度々自画自賛をする描写があるのは誰よりも長く深く将棋の道を追求して来た自負があるからだろう。
    その求道心において、自分に勝るとも劣らない歴々の棋士(升田、大山、中原、谷川、羽生、渡辺ら・・・)に対する敬意も感じられて益々心地良さを感じた。

  • 将棋界を描いた本は、どれも面白く読める。
    登場人物も、書いている人も、それぞれ「普通」の人達ではないからだと思う。
    中でも加藤一二三さんは相当有名な「変わった人」で、実際テレビで拝見するのが物凄く楽しみなのだが、意外と言っては失礼だが、本は「普通」だった。
    しかし、実力制名人の全てと指したことがあるって言うのは、やっぱりそれだけで凄いよ。

  • 軽く読み流してしまった。棋譜が載っていないので、局面の緊迫感もイマイチ。

  • 久々に月下の棋士読みたくなった。面白いけど少し物足りないかも

  • 勝負師は何事においても勝負の場で譲ってはならない。そして、自分の実力以上の力は信仰によって得る。自らが同じ形の将棋を指し続けるのは芸術作品を作るため、だが、多くの棋士は色々な形でドラマを作ってきた。それを「対戦相手」として分析している。ひふみんが「自分語り」を極力抑えて、かつ、たくさんの棋士仲間・先輩・後輩への敬意を表現した至高の一冊。3時間あれば読み切れます。
    とりあえず、「あと何分?」

  •  今年は、江戸時代に将棋の名人という制度が施行されてからちょうど四百年という節目の年に当たります。そして2012年5月12日現在、森内俊之名人と羽生善治二冠という二人の永世名人資格保持者が第70期名人戦を戦っています。
     そういうタイミングで、世襲制から実力名人制(タイトル戦)に移行後の歴代名人と将棋界について語られているのが本書です。

     が、注目すべきは著者・加藤一二三九段でしょう。
     (念のために申し上げておくと、著者のお名前は「かとう・ひふみ九段」です。「かとう・はじめ二百三十九段」でも「かとう千二百三十九段」でもありませんのでご注意下さい)

     将棋界随一の奇人・変人とも言われる著者に、「奇人・変人・超人」というサブタイトルを冠した本で、歴代実力名人の奇人・変人・超人ぶりを語らせる辺りに、何となく版元のテヘペロな態度を感じるのですが…それはともかく、著者が掛け値のない変わり者であることは確かだと思います。それを物語る「加藤一二三伝説」はググれば山ほど出てきますが、とりあえずこちらを紹介しておきます。
     http://ashey.blog.fc2.com/blog-entry-46.html

     しかし、著者自身は自分が変わり者と言われることを遺憾に思っていらっしゃるようです。

    《どうやら世間から私は「変わり者」だと思われているらしい。いまは某新聞社の会長になっている人が、部長時代に記者として私にインタビューをしたことがあったのだが、その人が事前にいろんな棋士に周辺取材をしてみると、みんなが口を揃えて「加藤先生は非常に変わり者です」と答えたらしい。
     しかし、インタビューが終わったあとで、その人は私にこういった。
     「加藤先生ほど常識的な人はいません」
     ということは、私が「変わり者」であるとするならば、ここに登場する名人たちは、もっと「変わり者」ということになるわけだが、はたして読者の皆さんはどのように判断されるだろうか――。》(8頁)

     この著者の気持ちは、本書を読み進めればよくわかります。
     著者の一見奇矯にも思える行動は、全て著者のロジックによって裏打ちされています。だから、著者としては行動について「変わってる」と言われても「?」となるのではないかと思うのです。
     確かに、著者の理屈は説明を聞けばそれなりに(と言ったら失礼ですが)筋は通っており、納得できます。ただ、著者の理屈を支える土台の部分が変わっているのも確かです。
     例えば、カトリックの真摯な信仰をお持ちで、祈りにより実力以上の力を発揮する、という気持ちは理解できます。そして、勝負のためには全力を尽くすべきであり、反則や露骨な迷惑にさえならなければ何をやってもいい、という勝負哲学もわかります。だけど、その二つが合わさって、対局の休憩中に廊下で賛美歌を歌う、となると…やっぱり変わってると思います(笑)。

     角川Oneテーマ21のシリーズでは、他に谷川浩司九段の『集中力』『構想力』や羽生善治二冠の『決断力』『大局観』などが将棋棋士の本としてあります。これらは著者にインタビューしたものをライターがまとめるという形をとっているようです(かつて『集中力』と『決断力』を同じライターさんが担当したときに内容に重複が見られたという指摘がありました)。
     おそらく本書も同じ方式を取ったんじゃないかな、と思います。読んでいると、何となく著者のインタビューをまとめて語尾を常体に直したような印象を受けるのです。登場する棋士全員を「さん」付けで呼ぶところはいかにも著者らしく(野球解説で選手全員を「君」付けする掛布さんの印象がダブって見えます)、何かというとすぐ自分の話になっちゃうところなど、著者がノリノリで話をしているところをご存じの方ならおわかり頂けるのではないかと思います。
     大急ぎで付け足しておきますと、僕は口述まとめ形式の本がダメだというつもりは全くありません。ただ、著者の口調をご存じの方でしたら、文体を敬体にし、甲高い早口のノッキング・トークで話す著者独特の口調に変換した方が楽しめると思います。
     http://www.nicovideo.jp/watch/sm4274866
     http://www.nicovideo.jp/watch/1325497130
     著者はとにかく話したいこと・伝えたいことが多すぎて、それが溢れてきて話すスピードが追いつかず、結果的に話がとっちらかったような印象を受けます。が、そのパッションあふれる話し方や、将棋に対するひたむきな情熱、そして齢七十を超えてもなお少年のように将棋を愛し、楽しむ姿は最高に魅力的です。

     何だか著者の人柄に感化されちゃったのか、いつの間にか本の紹介から「ひふみん愛」の吐露みたいになっちゃいましたが(笑)、著者のファンも、将棋ファンも、そして将棋を余りご存じない方にもオススメの一冊です。

    《追記》
     羽生さんとよくお話しされるようで、羽生さんの言があちこちに出てきます。何だかそこに羽生さんの「ひふみん愛」も感じられて嬉しくなりました。

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著者プロフィール

1940年1月1日生まれ、福岡県出身。14歳で当時史上最年少の中学生プロ棋士となり「神武以来の天才」と評された。史上最速でプロ棋士最高峰のA級八段に昇段して以来、最年長勝利記録・史上最多対局数を記録。名人、十段、王位、棋王、王将のタイトルを獲得。2017年に現役引退後、バラエティ番組等にも多数出演し、「ひふみん」の愛称でも親しまれる。仙台白百合女子大学客員教授。

「2020年 『だから私は、神を信じる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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