山亭ミアキス (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
3.08
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本棚登録 : 401
感想 : 14
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041135594

作品紹介・あらすじ

日常から逃げ出したいあなたへ――心に悩みを抱える人が迷い込む、森の中の不思議な宿「山亭ミアキス」。超絶美形のオーナーに不思議な従業員、ロビーでは暖炉が赤々と燃え、食事は絶品のアイルランド料理。しかし、泊まると間違いなく酷い目に遭わされる。ブラック部活に疲弊する少年、マタハラに悩む女性など、今日も救いを求める者がたどり着く。人をたぶらかす、謎めいた彼らの正体と目的とは――? 「マカン・マラン」シリーズの著者が描く、愛と涙の物語。

感想・レビュー・書評

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  • 始まりから少し怖さ?のようなものを感じたけど、読み進めて最後まで読むと、繋がっていて、連ドラを見ている感じだった。それぞれの悩みがそれぞれで解決していくのは面白い。中で出てくるお料理が美味しそう。

  • 森の中にあるミステリアスな山亭。暖炉の薪は林檎の木。ごはんもデザートもとてもおいしく、ベッドは天蓋つき。美貌のオーナー、白髪でオッドアイの青年シェフ、小太りのフロントスタッフ。これだけ聞いたら間違いなく宿泊したくなる。私は「序」で語られる小さな女の子のことを終始考えながら読み進めた。

    目の前の道が突然、悪天候で通れなくなったりして、山亭に導かれる人たち。今、皆が見て見ぬふりをしていることに、関わっている人たちがたどり着く場所。芸能界の闇、無責任な人、女性の生き方、部活動の闇、マタニティハラスメント。それぞれ皆がわかっていることなのに、流されてしまっていることを山亭での出来事が向き合わせてくれる。いい思いをしたら、見返りを求められることが正しいことなのかを考えさせられた。我慢をして通りすぎるのを待つだけでは、何も変わらないことにも。猫は、何気ないふりをして人のことを一番よく見ているのかもしれない、と思ったりもした。

    そのなかで、山亭のロビーのからくり時計のモチーフの話は、とても興味深かった。長靴をはいた猫、金華猫、ケット・シーなど、猫好きとしては、とても楽しく読めた場面もあった。

    山亭のミステリアスな従業員たちが、何者なのか、どうして修行という行動をとっているのか。それがわかったとき、その思いは大切にしたいと思った。

    「すべての苦しみと哀しみから解き放たれて、もう一度新しく生まれ変わる」ことなく、小さな子どもたちが大切に育てられますように。読後、特に思ったことだった。

  • 古内さんの作品はマカンマランシリーズが好きで、今回もそんな感じなのかなと思いながら、読み始めましたが、全然違いました。
    ちょっとホラーっぽい怖さもあって、あまり好みの作品ではありませんでした。

  • ☆3.5

  • 色んな理由で現実から逃げ出したり目を背ける人が迷い込む「山亭」
    各々ちょっと怖い思いをし、なんとか現実と向き合えるようになります。
    優しいんだか怖いんだかわかりませんが、ちょっとスッキリするお話です。

  • 一言でいうと、「異世界でデトックスする」話。
    背筋が怖くなる話だ。

    霧の向こうに現れる山亭ミアキスという場で起こる出来事を通して登場してくる人々は変わっていく。

    まるで宮沢賢治の「注文の多い料理店」のような入口仕様なんだけど、そこへいざなわれた人は皆、今自分が置かれている状態(膠着しているとか、絶望しているとか、マイナス要素満載の状態)から動けない。自分では動かないと思っているフシもある。そして、ここで、彼・彼女にとって心が(荒)療治されていく。

    「猫魔ケ岳」という場の力、そして「猫」の「魔力」が怖い。ヒトが現実にすることはもっと怖い。

  • 【選書No】161

  • 古内さんの作品は「マカン・マラン」シリーズを読んで良かったので、この作品を手に取りました。

    心に悩みを抱えた人が迷い込んだ先には、森の中にある不思議な宿「山亭ミアキス」。
    宿の中では不思議な従業員、絶品の食事はアイルランド料理。
    この宿で不思議な体験をした人だけが次の人生への一歩へと導くという物語。

    「山亭ミアキス」に到着し、怪しく不思議な雰囲気は
    宮沢賢治の「注文の多い料理店」を彷彿されるような緊張とワクワク感がありましたが、「マカン・マラン」の時のような突拍子もないような衝撃度はやや少なかったと思います。

    けれどどの主人公の心の悩みも現代を象徴しているような
    内容だったので、この5人の中に心を動かされる人が
    少なからず存在すると思いながら読んでいました。

    帯には「日常を忘れて、おくつろぎください。」
    と書かれているので、ゆったりと心を落ち着かせながら
    読めるものだと思いましたが、日常は忘れますが、
    違った意味で非日常が味わえるかと思いました。

    やっぱり猫は一枚も二枚も上手で怖いなと思ってしまいましたが、悩みが少しでも消えるのならばこんな方法でも良いかなとも思えました。

    猫の視線で人間観察をして人間に助言をしているという点も斬新だと思い、猫だからこそ厳しい指摘も許せるものだなと思いました。

    猫の生態や古くからの物語などのエピソードも
    織り交ぜてあったのでそれも興味深く面白かったです。

    「助けたいものはお前ではない。声なき小さな者だ。」
    という言葉が、古内さんが読者に伝えたかった事だと思うので、
    今後はあらゆるものに対して声なき小さな者に
    対して耳を傾ける心掛けをしていきたいと思いました。

  • 面白かったー。お店がベースの連作短編はあまり読んでなかったのだけれど、このお話好き。今いる場所からどん!て突き出される。それをきっかけに、次の一歩や方向を、自分の足で踏み出していく。シビアで冷たくてでも、決して無慈悲ではない猫たちの姿に魅入られる。
    なんかいいな。
    あたたかさややさしさはあれど、それは決して無償のものではなく、相手によるというか。ある意味とても公平というか。とても好きだな、てなった。

  • 悩み苦しむ者、現実逃避したい者が、たどり着く場所。
    個性豊かなホテルの従業員、オーナー。

    猫の物語を語るオーナー、その話の中でそれぞれ、自分の悩みに正面から向き合う。

    猫の修行の目的が、良かった。
    (人間に惹かれる理由も。)

    『助けたいのはお前ではない、声なき小さな者だ。』

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著者プロフィール

1966年、東京都生まれ。映画会社勤務を経て、中国語翻訳者に。『銀色のマーメイド』で第5回ポプラ社小説大賞特別賞を受賞し、2011年にデビュー。17年、『フラダン』が第63回青少年読書感想文全国コンクールの課題図書に選出、第6回JBBY賞(文学作品部門)受賞。他の著書に「マカン・マラン」シリーズ、「キネマトグラフィカ」シリーズ、『風の向こうへ駆け抜けろ』『蒼のファンファーレ』『鐘を鳴らす子供たち』『お誕生会クロニクル』『最高のアフタヌーンティーの作り方』『星影さやかに』などがある。

「2021年 『山亭ミアキス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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