素敵な圧迫

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 481
感想 : 50
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  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041138601

感想・レビュー・書評

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  • 理解することが難しい。

  • 素敵な圧迫、がよかった
    こういう、人がヤバい話が好み

  • 呉さんは長編しか読んだ事がなくて、短編はどんな感じかな、と手に取る。
    短編ならではというか、長編ほどの深刻さがなく、でもどこか普通と一線ずれているゾワゾワ感じは残り、底の方にうすーいユーモアと現代を上手く切り取っているシュールさがある。

    タイトルが秀逸。
    『素敵な圧迫』。
    絶妙。
    上記したような、この小説たちの雰囲気に合っている。

    最初の「素敵な圧迫」で朝井リョウさんの『正欲』にもつながる嗜好の奥深さを感じる。
    この短編に、のっけからやられたというか
    ゾワゾワと怖くて掴まれた。
    比べてしまえば、正欲ではやり切れない胸を突かれる切実さがあったが、
    こちらはどこかドラマ的というか主人公が自覚的であり、
    呉さんも人の抱える深淵に対して、どこかうっすらユーモアを感じる描き方をされてるので、ちゃんと怖がれる。
    『爆弾』などにも感じたけれど、サイコパスという一言で割り切れない人の抱える深淵?ある意味、可能性?を描く方だと思う。

    「ミリオンダラーレイン」
    3億円事件をモチーフに。そういう小説、漫画、割と触れているけれど、なるほど、そういう使い方。
    当時の空気感とか、若者、持たざる者の鬱屈が伝わる。そういうオチとは思わなかった。

    「論リー・チャップリン」
    悲哀がユーモアに繋がる短編。
    論破、がテーマ。
    キャパ狭くなってきて、身勝手が許せなくなってきてイラッともしたけど、全体的には好き。
    コロナを扱っていたり、現代的。

    「パノラマ・マシン」
    笑うせうるすまん的な…。暴力描写があまり好きじゃなかった。

    「ダニエル〜」
    なんの話かな?と思いつつ読み進めると、おっ、というオチ。

    「Vに捧げる行進」
    コロナ禍のシャッター商店街における狂騒。

    どれも読み味がそれぞれだけど、鬱屈してる人たちが出てくる事が多いなぁという印象。
    真剣さがうむおかしみや悲哀も感じた。
    スカッとしたりしなかったり、オチも色々だけど、この社会を描くようで少しだけ客観的なので
    苦しくならずに読めた。
    表題作の「素敵な圧迫」が、決して楽しい話じゃないけどインパクトがあって残った。

  • いくつか話があるが、論リー・チャップリンが好き

  • 短編集。
    まぁまぁ面白いけど、呉勝弘の作品もと考えたらもう少し面白みがあってもいいし、物足りなかった。
    表題の素敵な圧迫が面白かったかな

  • この作者さんの話は短編よりも長編の方が好きかもしれない。三億円事件の、自分たちじゃなかった、が特に印象的だった。

  • 最近出会った中では、自分的注目度が頭一つ抜けている作家。その手になる短編集に初トライ。自分の趣味の問題もあるけど、やっぱり長編が好き。たまたまだけど、同時に最新長編を読んでいた影響もあるかも。それにしても、同長編然り、本書における数作品然り、コロナ禍に対する異議申し立てが積み上がっているんだろうな、と思わされる描写が散見される。個人的にはボクシングの掌編が一番好きだったけど、その中にでコロナは登場したしね。

  • 2023年11月25日読了

  • 「素敵な圧迫」「論リー・チャップリン」「ダニエル・《ハングマン》・ジャビーズの処刑について」はおもしろかった。

    全体的に、私はもう少し刺激的な話のほうが好みかも。


    以下、短編のあらすじと感想。

    【素敵な圧迫】
    子どもの頃に押し入れに入り、圧迫されることに魅了された主人公の広美。大人になって一人暮らしをするようになると、わざわざ購入した小さな冷蔵庫に入り、ほどよい圧迫感を楽しんでいた。
    そんな中、会社に訪れる営業マンである風間遼に惹かれ、大人の関係に。遼に抱かれることは、想像以上によかった。毎晩抱きしめられたいと願う広美だったが、遼には20歳のフィアンセがいた。お金持ちのお嬢様らしい。
    それでも関係を続け、1年が経った頃、彼のフィアンセである花岡紗彩が広美を呼び出し、脅しをかける。そのことがきっかけで遼から別れを切り出されるが、広美は許さない。
    遼が部屋に来ることになった日、広美は遼に睡眠薬を飲まされ、車のトランクの中に入れられる。どうやら自殺に見せかけ殺すつもりらしい。
    遼に殺されそうになる直前、「冷蔵庫の中に貼ってあった花岡さんの写真は処分したの?」と聞き、驚く遼。どうやら広美は、花岡から脅しをかけられたときの圧迫感に身の毛がよだつ快感を覚えたらしい。精神的な圧迫も素晴らしいと気づいた広美は、遼と花岡の結婚式へ向かうシーンで終わり。この後修羅場かな?

    →遼から広美へ心変わりしていたのは予想出来ず、おもしろかった。てっきり、愛する人に殺されそうになって幸せ!というオチかと思った。

    【ミリオンダラー・レイン】
    主人公の芳雄が友達の藤本と現金強奪の計画を練る。次の銀行の給料支給日に実行するはずだったが、別の誰かが銀行のボーナス日に全く同じ事件を起こしたとラジオのニュースで聞く。芳雄たちはボーナスがなにか分からなかったため、2週間遅れをとり、計画は実行されなかった。

    →犯罪に手を染めなくてよかったね!人生を楽しもうと思えば、楽しめる。。はず。。。芳雄は彼女もいるんだしさ!

    【論リー・チャップリン】
    主人公の与太郎が一人息子の勝(13)に「10万円をよこせ、よこさなかったら強盗する、そしたらお前の人生も終わりだ 」と恐喝される。
    同僚、部下、シンガポールにいる別れた妻、勝の担任、人気YouTuber。。色々な人に相談する。
    終盤、キッチンカーを営んでいたメキシコ人と話したことがきっかけで勝の真の目的に気付く。結局、10万円は渡さなかったが、勝に夏休みはシンガポールに行くことを伝える。勝は、外国にいる母親に会いたくて与太郎を恐喝したのだった。

    →ほっこり!与太郎の思考も他の人たちとの会話もおもしろかった!

    【パノラマ・ボックス】
    主人公のFは、真っ黒な穴のような箱を拾う。箱には突起があり、押すと紐状のものが飛び出る。紐の先端には小石のような塊がついている。耳の中に入れてみようかと考えている最中、同僚のDに声をかけられる。
    Dもその箱を気に入り、ふたりの共有財産にする。この箱は、パノラマ・マシンと名付けられる。
    パノラマ・マシンの紐の先端部を耳の中に入れると、双子世界へ渡れるらしい。双子世界とは、現実の世界と瓜二つなもので、現実と同じ感覚。紐の先端部を外せば、現実世界に帰ってこられる。渡るたびに双子世界は修復されるため、やりたい放題できる。
    最後は、双子世界の行為では満足できなくなったFがDを殺して終わり。Fは双子世界でDを殺す予行練習を何百回も繰り返していたという。

    →人生は1度きりでやり直しがきかないから何事にも真剣に取り組めて楽しめるのかなって思った。でも、パノラマ・マシン欲しい!

    【ダニエル・《ハングマン》・ジャービスの処刑について】
    ボクシングでチャンピオンになったダニーは、弟のレニーこそボクシングの実力があると信じ、献身的にサポートした。
    しかし、コロナで試合ができなくなり、レニーは酒に酔って一般人の男女を殴ってしまう。殴った女の親族はマフィアの幹部で、レニーに、次の試合で3Rまでいっさい攻撃を出すなと八百長試合をさせる。その八百長試合で、相手は金的を打つローブローでレニーを前のめりにさせ、加撃することによって反則負けとなる。レニーは勝利したが、脳の機能不全により寝たきりに。殴られた女が、対戦相手にレニーを殺すよう依頼したらしい。
    その後、ダニーは、断るだろうと思われていた試合を受ける。条件は、レニーの最後の試合を再現すること。同じ会場、同じく日時、同じリング、同じスタッフ。ダニーは、ラウンド終了後のゴングが鳴っても相手にパンチを繰り出し続ける。レフェリーが止めに入ったところで、ダニーはレフェリーにショートアッパーを繰り出し、レフェリーは首を吊られたように崩れ落ちた。(ダニーはデビュー戦からハングマンと異名を持つ)
    ダニーは、八百長試合をさせたマフィアの幹部も、弟を殺した女と対戦相手でさえも許していた。しかし、レフェリーだけは許せなかった。ボクサー以外に唯一聖域に立つことを許された神の代理人であるレフェリーがローブローを見逃すという不正行為だけは許せなかったのだ。
    最後に明かされるが、語り手はレニーと同じく寝たきりになったレフェリーだった。

    →おもしろかった!!!ボクシングは詳しくないので、読むのが辛かったけど、ラストで納得!最後まで読んでよかった!レフェリーは公平な審査しないとね!!!

    【Vに捧げる行進】
    新型コロナウイルスが猛威をふるう中、警察官であるモルオは、商店街のシャッターに「V」の落書きをされたと通報を受ける。
    パン屋→美容室→リサイクルショップと落書きの被害に遭う。モルオは、落書き犯の共犯者と遭遇するが、まんまと出し抜かれてしまう。
    そのうち、商店街の人々は「V」の落書きに自らペンキで手を加え始める。マスクもせずに密になって。
    犯人は引きこもりの子ども。ただ1人養ってくれていた祖母が死んだため、絶望的していた。しかし、コロナ禍で街に人がいないことを知り、外に出ると初めて生きていると実感したのだと言う。
    最後は犯人が時計台に「V」と描くシーンで終わり。

    →おもしろく感じなかった。特に大きな事件が起こるわけでもないし。私がコロナ禍で外出できなくても全然苦じゃなかったからかな。誰にも共感できなかった。

  • 表題の素敵な圧迫と論リ―チャップリンが
    面白かったです。
    論リ―チャップリンの父と息子の
    絶妙なやり取りに思わず吹き出して笑ってしまいました。。

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著者プロフィール

1981年青森県生まれ。大阪芸術大学映像学科卒業。現在、大阪府大阪市在住。2015年、『道徳の時間』で、第61回江戸川乱歩賞を受賞し、デビュー。18年『白い衝動』で第20回大藪春彦賞受賞、同年『ライオン・ブルー』で第31回山本周五郎賞候補、19年『雛口依子の最低な落下とやけくそキャノンボール』で第72回日本推理作家協会賞(長編および連作短編集部門)候補、20年『スワン』で第41回吉川英治文学新人賞受賞、同作は第73回日本推理作家協会賞(長編および連作短編集部門)も受賞し、第162回直木賞候補ともなった。21年『おれたちの歌をうたえ』で第165回直木賞候補。他に『ロスト』『蜃気楼の犬』『マトリョーシカ・ブラッド』などがある。

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