セント・ニコラスの、ダイヤモンドの靴 (角川文庫 し 9-9)

著者 :
  • KADOKAWA
3.44
  • (14)
  • (54)
  • (99)
  • (3)
  • (2)
本棚登録 : 497
感想 : 41
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (270ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041682098

作品紹介・あらすじ

「占星術殺人事件」の直後、御手洗と石岡のもとを高沢秀子という老婦人が訪れる。最初はひやかしの客かと思われたが、秀子の知人・折野郁恵の話を聞いた御手洗は「これは大事件ですよ」と断言する。教会への礼拝中、雨が降り出すや郁恵は顔面蒼白となり、その場に倒れ伏したというのだ。その奇妙な行動の意味とは?ロマノフ王朝から明治政府に贈られた"ダイヤモンドの靴"を巡り起きた事件を御手洗の推理が解き明かす。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 御手洗シリーズの、短編小説のような意匠を凝らしたエピソードや、最近の科学技術の話など、そういった肉付けが一切無い、事件のみを語った生粋の本格推理小説だ。

    セント・ニコラスのダイヤモンドの靴を巡って『占星術殺人事件』の竹越刑事と事件をもたらした高沢秀子を交え、右往左往する物語で、中身は簡単なのに、なかなか目的のダイヤモンドの靴までに行き着かない。まるで乱歩の通俗小説を読んでいるかのようだった。

    今回は誘拐事件の新しい書き方とでも云おうか。事件を第三者の目から当事者の行動を、理解し難い奇行の数々として描くという技法を凝らしており、思わずポンと膝を叩いてしまった。
    そして逆に島田氏の本格推理物の作り方というのが解ってしまった。

    それは、ある行動について、無知の人の目を通して情報の少ない形で語るというスタイル。これが後の説得力ある御手洗の解明に一役買っているのだ。
    だから読者は作者(ほとんどの場合、それはある登場人物の台詞によって語られる)が語る事象を鵜呑みにせず、その行動そのものを実際に試してみるとよいだろう。特に今回のダウジングなんかはその典型だ。

    しかし、街の花壇のボックス化とそのローテーションには参ったなぁ。明らかに大嘘だと解ったよ。
    しかし、こういう嘘があることが初期の御手洗が帰ってきたと思ったのだから、不思議なものだ。

    御手洗物入門書として、長さといい、ストーリーといい、最適の1冊かな。

  • 序盤は個人的にかなり好きな御手洗モノ短編、「Ige」のような感じだった。

    衆人環視の中で穴を掘り始める夫婦、雨が降ったことで意識を失った老婆、雨で消される十字架、手におかしな物を持って夜毎歩き回る怪人...

    これらの謎が綺麗につながっていくさまは圧巻。

    そして身代金の回収方法、折野の対母親対策にも驚いた。

    御手洗の優しい一面がのぞける作品の一つであり、御手洗潔ファンとしては嬉しい限りだが、やはり占星術や斜め屋敷のようは奇想天外なトリックも恋しくなる。

  • クリスマス前のこの時期にぴったりの話。

    ダイヤモンドの靴の背景は壮大だけど事件自体はあまり複雑ってわけでもないので気軽に読める。
    殺伐とした中にも少女と御手洗のやりとりなど心が暖まるものがある事件でした。

  • 御手洗さんいったいどこで何やってんだ(笑)。
    ってところから始まる。
    ちょっと歴史のお勉強にもなって良かった。
    ロシア史を探ってみようかなぁ??

  • 再読。
    御手洗から女の子へのプレゼントであり、作者から読者へのプレゼントでもある。
    殺しもなく、極悪人も出ず、とても可愛らしい佳作。
    島田荘司は、強面のわりには乙女チック・漫画チックな話が上手。
    また御手洗の発話のセンスが絶妙。

  • 御手洗潔シリーズ。

    中編程度の長さで読みやすく、エグい描写もない、優しいお話。老婦人の奇妙な話から、大事件の影を見出す御手洗の慧眼ぶりにはやはり驚かされる。一方、意外と子供の相手がお上手な御手洗も見られて楽しい。他の長編と比べると内容の薄さ感は否めないが、御手洗らしい御手洗が見られるし、石岡くんとのコンビも顕在で、これはこれで良し。

  • 御手洗シリーズ。文庫版で再読。
    レビュー書くの遅れたけど、丁度クリスマスの時期に合わせて読みました。
    心配するなよ、威張る相手にだけさ!って言ってたこのころの御手洗が好きです。美紀ちゃんももう40くらい?になってるだろうけど、いつまでも御手洗と石岡君と過ごしたクリスマスのことを覚えていたらいいなと思う。

  • 【本の内容】
    「占星術殺人事件」の直後、御手洗と石岡のもとを高沢秀子という老婦人が訪れる。

    最初はひやかしの客かと思われたが、秀子の知人・折野郁恵の話を聞いた御手洗は「これは大事件ですよ」と断言する。

    教会への礼拝中、雨が降り出すや郁恵は顔面蒼白となり、その場に倒れ伏したというのだ。

    その奇妙な行動の意味とは?

    ロマノフ王朝から明治政府に贈られた“ダイヤモンドの靴”を巡り起きた事件を御手洗の推理が解き明かす。

    [ 目次 ]


    [ POP ]
    本書の名探偵・御手洗潔が聖夜に起こす奇蹟は、不可解な謎を鮮やかに解く痛快さと、心を温かくするさりげない優しさに満ちています。

    ロマノフ王朝から明治政府に贈られた「ダイヤの靴」を巡る謎、さらに一人の少女に迫る危機を明晰な推理がたちどころに解決する面白さは、まさに現代日本ミステリがもたらした“奇蹟”。

    大切なひとに美しい奇蹟を目撃させたいと願うすべてのひとに、ぜひ本書をオススメします。

    [ おすすめ度 ]

    ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
    ☆☆☆☆☆☆☆ 文章
    ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  •  長篇というよりは中篇くらいの薄さ。シャーロック・ホームズの一篇を読んでいるような気になる。島田荘司というと長篇構想物というイメージがあるので、まあ小手調べ手なぐさみ程度のものかも。犯人探しも謎解きも底が浅いし。
     全体で一篇だとばかり思ってたら、よく見たら導入部のダイヤモンドの靴の由来の紹介部分が「シアルヴィ館のクリスマス」という別の小篇になっていて、本篇の表題作がその続編という形なのだった。島田はよくこういう導入部を書くから全体で一つながりでも問題ないのに、なんで分けたのだろう。しかも表題に読点がはいっているのが違和感あってまた謎なんだけど。
     それはともかく美紀ちゃんかわいいね。その孫をなんとか幸せにしてやりたいという郁恵おばあさんの気持ちが痛いほどよくわかる。女性嫌い?の御手洗が思わず一肌脱ぐことになったのもむべなるかな。美紀ちゃんにとってダイヤモンドの靴よりも、遊園地で遊んでもらったことの方が大切な思い出になっているのでは。まあストーリー的には星3つでもいいんだけど、ぼくはこういういたいけな女の子に弱いのでオマケ。なんか全然感想文になってないし(笑)。

  • 御手洗シリーズの長編。あらすじを読む限りでは、前作のロシア幽霊軍艦事件のような歴史ミステリーに感じたが、これは正統派のミステリー。殺人事件を扱った話ではない。
    時たま見せる御手洗さんの優しさが光る長編。御手洗シリーズでは珍しい、300ページ弱の長さで読みやすい。

  • 島田荘司(というか御手洗)らしい良い話だったです。ダイナミックなトリックも相変わらず。最後の展開はある意味容易に想像ついたけど、やっぱり御大の文章で読むと無条件に感動できる。まぁあんな靴を託された池田先生の心中いかに、はちょっと思ったけど。

  • 御手洗はホントに焦らすなぁって、再度思い知らされたナリ。

  •  御手洗潔という、ある意味エキセントリックな名探偵が、なぜ魅力的なのかを物語るような物語。いい話だね。わかりやすいしきれい。手品のあり方として、「後か前か」しかないわけだから、基本に忠実で、きれいに飾り付けがしてあって、飾りをとるとしっかりしたそこ味が見えてくる、まさにデコレーションケーキのような作品。おいしかった。

    2007/11/11

  • 世間話の中から事件を拾い上げる御手洗。説明を聞けば納得もしますが、どうしてそういう風に思考が働くのか、相変わらず謎です。
    事件そのものよりも、事件に対する御手洗の姿勢、というか、接し方というか。ほんとに趣味でやってるんだなあと。
    だからといって、靴の行方を闇に葬っていいものではないと思うんですが、結果的に心憎い演出になりました。石岡の説得を受け入れるあたり、やっぱり親友なんだなあと思いました。いや、もちろん自分自身で納得した上でのことですけど。

  • 大好き、島田さんっ♡♡
    この方は日本の推理小説界で、本当に大きな存在だと思ぅ☆★
    (ちなみに、私がミステリーにはまるきっかけになった 
    綾辻行人さんを世に送り出して下さった方です♡)

    御手洗潔(みたらい・きよし)君の変人っぷりから(笑)、
    名探偵としての腕前・そして彼独自の世界観、優しさ。
    久し振りの御手洗シリーズにめろめろです♡
    島田さんの本は、本格ミステリとしても面白い本ばかりだし、
    シリーズ物としてもほんとに好き♡♡

    でもほんと、どうして御手洗さんはこんなに変人なんだ。。笑
    ……そんなところも好きだけど♡(*≧m≦*)

    (2007.05メモ→2010.04ブクログ)

  • 内容は、石岡さんと出逢ったその後くらいなので、話としては古い話です。
    だからまだ御手洗さんを良く知らない頃の石岡さんが面白いです。
    人間って慣れが必要ですね。

    ページ数としては短いので2,3時間ぐらいで読めるお話です。
    偶然が重なって事件になったもので、最後は御手洗さんらしいというか。
    純粋な人間に対しては優しいですよね。

    彼だから出来る事、彼だから出来た事。
    クリスマスに読んだら、ちょうど良かった話かもしれないです。
    たまには殺人のない話もいいかも。

  • 御手洗シリーズ。
    女性に厳しい御手洗さんだけど、無垢な少女にはやさしい。
    せっかくなのでクリスマスに読んで、あたたかい気持になってほしい。
    『数字錠』に通じるニュアンスの、純真なものに対するやさしさは、御手洗さんの犬好きと関連してるのかしら。

  • 「好き」という意味では氏の作品でコレが一番かな。
    コレを読んだ直後にエルミタージュ展に行った所為もあるかも・・・。

  • 07.2.24
    ミステリーというよりは読み物として読んだ。

  • 新規購入ではなく、積読状態だったもの。
    2011/1/1~1/3

     「占星術殺人事件」の直後に起こった事件をウプサラにいる御手洗が回想する形でストーリーが展開される。ロマノフ王朝から明治政府に送られたセント・ニコラスのダイヤモンドの靴を巡る事件。相変わらずの御手洗潔の御手洗っぷりが満開である。「鹿男」につづいて、今年の読書は良い感じでスタートできた。

  • 読了後、なんとなく切なくなった。

  • 御手洗潔もの。薄
    御手洗潔の底意地の悪さと優しさは面白かったし素敵だった。

  • 老婦人の話す事は寄り道ばかりで、業を煮やし始めていた御手洗探偵と石岡君。話を聞くにつれて、「これは大事件だ」?!ロマノフ王朝、エカテリーナのダイヤモンドの長靴は本当にあったの?
    あったのならどこへ行ったの?
    ウプサラ大の教授たちの集まるカフェでのクリスマス談義とクリスマスの夜にミタライキヨシが
    話す心優しい奇跡?

  • 御手洗潔シリーズ。季刊・島田荘司Vol.03に入っていたもの。珍しく女性(少女も含め)に優しい御手洗さん(笑) 『数字錠』『最後の一球』に通じる、悲しさもあるけれど御手洗さんの優しさに心温まるミステリ。

  • なんか、きゅん・・・しゅん・・・という感じ。

  • やっぱり日本の話が好きだなーとしみじみ思った作品。

  • 2014/06/23

  • 薄幸の少女に御手洗流のクリスマスプレゼントを。サンタクロース(=セント・ニコラス)はともかく、ロマノフ王朝の秘宝(ダイヤモンドの靴)でなくても良いんじゃない。

  • 冒頭でサンタクロースへの夢が木端微塵に粉砕される話。
    そこのインパクトが子供の私にはでかすぎた。

  • 御手洗潔シリーズ

    世間話をしにやってきた高沢秀子の話から誘拐事件の可能性を鍵とった御手洗。協会のバザーにやってきた友人折野郁恵の息子夫婦の怪しい行動教会の前の道にある花壇を掘り出した夫婦。折野夫婦の娘・美紀の誘拐事件。しかし家にいた美紀。誘拐事件を否定する折野夫婦。花壇に埋められたセントニコラスのダイヤモンドの靴で揺さぶりをかける御手洗。御手洗の先を越そうとし事故を起こした折野夫婦。折野の義弟・関野の犯行。消えたセントニコラスのダイヤモンドの靴。

全41件中 1 - 30件を表示

著者プロフィール

1948年広島県福山市生まれ。武蔵野美術大学卒。1981年『占星術殺人事件』で衝撃のデビューを果たして以来、『斜め屋敷の犯罪』『異邦の騎士』など50作以上に登場する探偵・御手洗潔シリーズや、『奇想、天を動かす』などの刑事・吉敷竹史シリーズで圧倒的な人気を博す。2008年、日本ミステリー文学大賞を受賞。また「島田荘司選 ばらのまち福山ミステリー文学新人賞」や「本格ミステリー『ベテラン新人』発掘プロジェクト」、台湾にて中国語による「金車・島田荘司推理小説賞」の選考委員を務めるなど、国境を越えた新しい才能の発掘と育成に尽力。日本の本格ミステリーの海外への翻訳や紹介にも積極的に取り組んでいる。

「2023年 『ローズマリーのあまき香り』 で使われていた紹介文から引用しています。」

島田荘司の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
宮部みゆき
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×