白夜 (角川文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (128ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784042087021

作品紹介・あらすじ

ペテルブルグに住む貧しいインテリ青年の孤独と空想の生活に、白夜の神秘に包まれた一人の少女が姿を現し、夢のような淡い恋心が芽生え始める頃、この幻はもろくもくずれ去ってしまう……。

感想・レビュー・書評

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  • 『夢想家の妄想が生み出した純愛失恋物語』

    孤独な夢想家の青年。祖母の束縛から逃れられない娘。偶然の出会いから純愛へと発展し、白夜の下で交わされる二人の会話。どこまでが妄想で、どこまでが現実なのか?甘く切ない恋物語かと思いきや…!?

  • 村上春樹の「かえるくん、東京を救う」で、かえるくんが「アンナ・カレーニナ」と「白夜」に言及していた(しかもちゃんと結末まで読んでいたようだ)。人間として内容を知らないのも残念な気がしたので読んでみた。

    空想癖のある、年齢=彼女いない歴の26歳男が、街で偶然出会った17歳の美少女に「いい人」ポジションで近づいたら、美少女と前彼の復縁を手伝うことになり、結局「いい人」で終わる、という何ともな話だった。

    村上春樹、本のチョイス間違えてないか?

  • 心やさしき孤独な夢想家青年の、恋と失恋の短編。名もなき主人公は惨めに描かれてはいるが、長い人生誰しもこのような時期はある。つらい苦しい結末にも良心を失わない主人公にほのかな安堵感を覚える愛すべき小品。

  • 白夜の闇は深い。

    出会いは、
    濃霧に抱かれたような夜。
    彼女とある約束を。

    饒舌な会話劇が白夜の幕開けか。

    日本の近代文学の奔流を想起する
    硬質な文体と憫然な恋慕。

    そう云えば、
    彼は友人も身寄りもない独り身だったな。

    彼の闇も深い。

  • 僕が大学を卒業する直前、いろいろ訳があって松葉杖をついていた。そんな僕が神戸三ノ宮の東門街で泥酔して転んだとき、松葉杖のすぐそばにポケットから飛び出した角川文庫クラシックの『白夜』を見つけて僕の友人は闇の深さを感じたらしい。

    とんでもない。『罪と罰』や『カラマーゾフの兄弟』に比べればライトノベルズの類と呼んでもいいくらい軽くてナイーブで青臭い小説だ。

    今夜は都内に泊まらないといけないので読みかけの分量がちょうどよいこの本を持ってきて、高野馬場あたりで読み終えた。

    ヒロインのナースチェンカは正直言ってメンヘラビッチである。主人公が鬱々とした暮らしの中でナースチェンカと邂逅し、惚れてしまったのは仕方ないにしても、それにしても無様な男女模様なのである。はっきり言って交通事故だ。オラこんなの嫌だ。

    「いい人防衛ライン」を突破して攻めに転じた主人公の青年を僕は応援したい、が、ダメでもともとの試合に出る潔さが足りなかった。

    もっと軽く!もっと軽薄に!!

    『どうかあたしをお責めにならないでください、だってあたしはあなたを裏切るような真似はなにひとつしなかったのですもの。あたしはあなたを愛しつづけると申しました。いまでもあなたを愛しております、いえ、愛しているなどというなまやさしいものではありません。ああ!あなたがたお二人を同時に愛することができたならば!ああ、もしあなたがあの人だったならば!』

    これがラスト付近でナースチェンカが主人公に出した「詫びの手紙」です。いやぁ、クソ女ですね。このあと、舌の根も乾かないうちに青年のことを「親友」とか「兄」だとか呼んで愛の換骨奪胎を始める始末。
    そら青年も「侮辱」という表現を使うよな。

    青年は完全にナースチェンカの後出しジャンケンに翻弄された。しかも二回。彼女は青年が自分に気があることを十分に理解して、自分は如何に賭け金を少なくしながら相手がどっぷり勝負にのめり込むかを見極め狡猾なゲームを展開した。

    そしてその二股はナースチェンカに奏功した。
    酷い話です。

    だから僕は青年に言いたい。
    「もっと軽く!もっと軽薄に!!」

    ただ、『白夜』のストーリーの優れているで点は青年は自分の試合をして、そして負けたこと。僕が軽蔑するのは「脱オタク」をサクセスストーリーとして成就させる『電車男』のような商品だ。エルメスを仕留めたお前、そもそもコンセプトがオタクじゃなくなってるやんけ。
    映画『ダメージ』や『ゴーストワールド』のように一本筋を通し切ったあとの虚無感こそ美しい。

    そして『ナポレオン・ダイナマイト』がいかにぶっ飛んだヒーローなのか、ドストエフスキーを読んで今更ながらに実感するのである。

  • 妄想過多なひきこもりっぽい男性の恋愛における一人相撲。ちょっと寅さんぽくもあるが、寅さんほど純情じゃなくてニヒルか?ドストエフスキーさんは意地悪い人なのかなぁ~とか思った。

  • 初恋の時の苦しくも熱い気持ちが甦ってきました。

    初恋というのは、成就しないからこそいつまでも胸の中で美しい思い出になるのでしょう。
    主人公の若者に、共感。
    オイラも女性を知るまで空想癖がありましたよ。
    あ、いや今もか!

    好きな女の子との逢瀬の度に一喜一憂していた若かりしあの頃。
    あんな風にもう一度女性に恋することなんてあるのだろうか??

    前回、大作カラマーゾフを読んだ時のような、辛さは皆無。
    非常に読みやすい中編。
    ドストエフスキー作品群の中でも埋もれているであろう爽やかでほろ苦い一編。

    入門編としてもよいのでは?

  • ドストエフスキーが大好きになった。やはり文豪というのはユーモアのセンスも抜群ですね!始まりから第二夜までがとても好きです。小説でゲラゲラ笑うなんて、未だかつてあっただろうか?ストーリーというよりも、ディテールが素晴らしい。

  • ロシアらしい寒さが。

  • 人間は子供の頃に持っていたものを取り戻すために生きているのではなかろうか。

    自分を三人称化する

    今の愛vs過去の愛

    ドストエフスキーは愛と恋をどう分けているのだろうか。
    愛は存在を対象とし、恋は性質を対象とする、という考えではなく、愛は恋の上位互換のような扱いだろうか?

    「われわれは自分が不幸のときには、他人の不幸をより強く感じるものなのだ。」

    「でもやっぱりあたしはなんだかあまりにもあの人を尊敬しすぎてるみたいで、これじゃまるで二人が対等な人間じゃないようね?」

    「いったいどうしてあたしたちはみんなお互いに、兄弟同士みたいにしていられないんでしょう?どんなにいい人でも、いつもなんだか隠しご とでもあるみたいに、決してそれを口にださないのはどういうわけなんでしょう。 相手に向っ てちゃんと喋っているんだと知っていたら、なぜすぐに、ざっくばらんに言ってしまわないのでしょうね?」

    「空想の女神」

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著者プロフィール

(Fyodor Mikhaylovich Dostoevskiy)1821年モスクワ生まれ。19世紀ロシアを代表する作家。主な長篇に『カラマーゾフの兄弟』『罪と罰』『悪霊』『未成年』があり、『白痴』とともに5大小説とされる。ほかに『地下室の手記』『死の家の記録』など。

「2010年 『白痴 3』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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