八月の博物館 (角川文庫 せ 4-5)

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 62
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  • Amazon.co.jp ・本 (589ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043405060

感想・レビュー・書評

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  •  私としては「パラサイト・イブ」「ブレイン・ヴァレー」に続く3作目。

     予備知識ゼロで読み始めたが、とてもおもしろい。オカルト色がなく、ファンタジー色が強い本作は、主人公とは別にそれを描く作家と作者本人が入れ子になり、さらに合間合間に自らの主張やエッセイらしきものが入りとてもユニーク。

     ディック(最新映画や名作や書籍)+13F+ネバーエンディングストーリーってな筋で、きっと賛否両論あるだろうけれど、捨てずに自宅の書棚を飾る名作だと思う。
    (作中にあの古本屋が出てくるから瀬名氏も好きな映画なんだろう)

     瀬名氏の作品はいずれも完璧なCGで作られた映画のようだった。論理性に妥協がないハードな作品。でも、そこが完璧すぎるから、小説として必須である仮説がオカルトっぽく見えたり飛躍しすぎてその落差について行けなくなる。これはたぶん私自身が理科系だからだと思う。


     対して本作はきれいな宮崎アニメのような感じ。だから蘇りとかタイムパラドクスとかヴァーチャル・リアリティだとか言った大きなしかも一歩間違うとまったく興ざめな仮説(背景)もすんなり受け入れられる。

     そもそも瀬名氏と私は好みが似ている。だからこそ、前2作で感じた落差を自身も感じていたに違いない。本作でそれが克服されたとは決して思わないが、ここを突き抜ければ間違いなく傑作が生まれる気がする。

     作中にもあるが、自然界をシュレディンガーの波動方程式で表すことを知ったとき、私は「さすがに複雑なものだから複雑な式なんだ」と感動した。しかし、アインシュタインを学んだときの感動とは比較にならない。

    「イー・イコール・エムシー・ジジョー」

     これだけですべてを表すことに猛烈な感動を覚えた。アインシュタインは統一場理論を完成できなかったが、その魂は脈々とわれわれの中に息づいていると思う。

     語り尽くせないが、こういった美しさや感動は眼で感じるものではない。自然界の風景で感動するのとは別の感動だ。瀬名氏はその感動を共有したかったのだと思う。がんばってほしい。もっと感動を共有したいから。

    追伸)
     瀬名氏のblogを見つけた。同じSeesaaだった。時間を見つけて読んでみよう。

  • エジプトの雰囲気はどこかト書き。少年少女たちの会話の作られた感は昔の児童書を思わせる。
    もう少し物語を書くのがうまい人が書いたら、面白かったんだろうな。

  • 時空を超える旅は博物館にはふさわしい。

    古今東西の歴史が一堂に会し

    僕ら自身の来歴が意識される場だからだ。

    夏真っ盛りに開く、開かずの扉。

    ふとしたところに、扉はある。

  • 文章が説明的で、クドくて、最初は読むのが辛かったけど
    途中からグイグイひきこまれていった。

    最後の、作家の章はだらだらした感じで好みではなかったけど。

    物語のみせかたとか云々はこの話の中でやんなくても
    良かったんじゃないかと思う。

    博物館とエジプトの場面が面白かっただけに、
    作家の場面でしらけた。

    美術品やエジプトに関する記述が「資料調べて丸写し」という
    印象を持たせた。実際にそうだったというわけではないと思うが。

    作者は違うが、「永遠のゼロ」のレビューで見かけた
    「調べた資料をまとめた感」という感想に近いものを感じた。

  • 「進路について考え始める最後の夏休み」っての、手垢がついちゃって読んでても雑味が出ちゃうんだよなあ、でも、いまどきその切なさだけでストレートに勝負するわけにもいかんし。
    という問題について異色の解決策を提示した作品。
    すなわち、「時期を小学6年生にしたらいいじゃん。」という解決法。
    ここまで前倒ししちゃえば、このテーマもちゃんとお話になるねっていう。
    その部分は面白かった。
    鷲巣も魅力的だったし。
    (6年生なのでHな方面の描写は皆無で、大きなお友達には申し訳ないがw)
    また、終盤の入れ子構造もちょっと面白かった。
    ここに注目して終盤を揺さぶると、もっと面白かったかも。
    素敵なアイディアを生かし切れていないと感じた。
    もったいない。
    しかし、これ以外の要素がイマイチ。
    遺跡の発掘も小説家の苦悩も、ページの無駄。
    メインディッシュとなるべき(?)謎の美少女との冒険活劇は退屈で、何度居眠りしたことやら。
    最後のアクションシーンも不必要に饒舌。
    半分でよい。
    瀬名秀明。
    平易で読みやすい文体と、小学6年生のほろ苦い恋愛と友情に免じて成績は『保留』とする。
    が、「デカルトの密室」で好成績を残せなければ2軍落ち。

  • 苦手な文体で書き込みが多く読むのに苦労しました。内容もメタなのに現実感がなく(小学生っぽくない。女の子がアニメっぽいなど)あまり楽しめませんでした。雰囲気やエジプトの設定は好きです。

  • 読書歴の浅い私にはちょっと長編すぎました・・・。
    最初は面白かったんですが、中ほどから話を上手く追いかけられなくなりました。アピスが出てくるあたりから話が散らかっていると言うか・・・時間軸が行ったり来たりするのと場面が大きく変わることで全体のまとまりを掴むのがちょっと難しかったです。あと、アピスが出てきた意味も良く分かりませんでした・・・。
    好きな人はすごく好きだけど、難しい人には難しい、というちょっと読む人を選ぶ本かもしれません。私は後者でした・・・きっと理解力のなさが敗因かと。
    情景描写がすごく上手だけど、長すぎるのでくどいくらいに感じられたのが残念でした。

  • エジプトと日本を舞台に繰り広げられるタイムマシン物? 作家の苦悩がわかるような、でも重い。読んでてつらい。もう少しスリムにライトに仕立ててくれたなら・・・ と思いつつ我慢して読み続けたら、読後感は悪くない不思議な小説。発想も面白い。基本的には好きな作家です。この作品が彼の分岐点? 女性の登場人物はみな魅力的。それに引き換え主人公が・・・ 作家自身なんだろうけど。男ってこんなもんだとわかっているがゆえにイライラしてくる。作家の今後の活躍を祈ります。

  • (2010.2)

  • 2007.3.19

  • 場面変換がいっぱいあって読むのが大変だったなー。
    内容と一緒で疲れた。

  • ホラーなのかどうかよくわからない…

  • これ映画化できたら本当に楽しいだろうなぁ…。

  • 表紙と題名を見て、コレ買わなくっちゃ!と、即買いした本。
    内容も引き込まれました。
    作者自身が小説全体ににじみ出てる感じがした。
    なんだか怨念にも近いなにかがある(と、勝手に思ってる)。

  • 小学校の終業式の帰り道、小さな冒険の末、足を踏み入れた洋館。

    少女・美宇と黒猫と出会ったその場所は「ミュージアムのミュージアム」という不思議な空間だった。

    少女に導かれるまま、少年・享(とおる)は「物語」の謎をひもとく壮大な冒険へと走り出した。


    小説の意味を問い続ける作家・小学校最後の夏休みを駆け抜ける少年・エジプトに魅せられた19世紀の考古学者。

    三つの物語が出口を求め、読者を巻き込んだスペクタクルを放ちだす。



    「誰も観た事のの無い「物語」の世界、堪能してください。」


    今回の紹介はこの一言に尽きます。

    余分な言葉は必要ありません。

    全ては「物語」の中にあります。


    あ、もう一言だけ( ̄∀ ̄*) 

    「パラサイト・イブなんかよりよっぽどこっちの映画が観たいですw」

  • 主人公の少年が夏休みの始めに踏み入れたミュージアムを舞台に、ドラえもんの大長編を思わせる、ちょっと不思議な冒険物語です。(F氏に捧げる物語ですので)
    (ご本人の意思に関わらず)理系作家と銘打たれた作家さんなので敬遠してしまいそうですが、膨大な情報量にも関わらず楽しく読めて、読後も爽やかな印象です。
    これに限らず、夏を舞台にした作品はどうしてこんなに魅力的なんだろうなあ。

  • 「小説」

  • この本を初めて読んだのは高校生の頃。
    高校の図書館で見かけて、表紙、名前を見ただけで読みたくなってかりました。
    文系で、しかも歴史が好きな自分にとってはかなり好きな本です。
    「博物館の博物館」を巡る物語がメインです。
    こんな博物館あったら行ってみたい。
    小学生に戻りたいと常に思っている自分にとって、とてもわくわくしながら読める本です。
    「夕焼けだった。夏休みが始まった頃は夕焼けなんてなかったような気がする。空は青から群青色に変わって、そのまま夜に移っていったような気がする。それなのに空はいま、うっすらと日に焼けている。もう秋の空が近づいてきていた。」という文章が強く心に残り、毎年この時期思い出します。
    歴史が好きだったり、子供に戻りたいと思ってる人には、とても楽しめる本だと思います。

  • フーコーの振り子。

  • 歴史に詳しくなれそう。

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著者プロフィール

1968年、静岡県生まれ。東北大学大学院薬学研究科(博士課程)在学中の95年『パラサイト・イヴ』で日本ホラー小説大賞を受賞し、作家デビュー。
小説の著作に、第19回日本SF大賞受賞作『BRAIN VALLEY』、『八月の博物館』『デカルトの密室』などがある。
他の著書に『大空の夢と大地の旅』、『パンデミックとたたかう』(押谷仁との共著)、『インフルエンザ21世紀』(鈴木康夫監修)など多数ある。

「2010年 『未来への周遊券』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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