ラヴレター (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 2011
感想 : 249
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043441013

作品紹介・あらすじ

雪山で死んだフィアンセ、藤井樹の三回忌に、渡辺博子は想い出に封印するかのように、樹が中学時代に住んでいた小樽に手紙を出す。ところが、今は国道になっているはずの住所から返事がくる。天国の彼からの手紙?博子は再び返事を書き、奇妙な文通が始まる。もうひとりの藤井樹は何者なのか?二度と戻れないその場所から、大切な何かがよみがえってくるのだった。

感想・レビュー・書評

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  • 博子はこの世にはもういない恋人、藤井樹に宛て手紙を書きます。それは決して彼に届くことのない手紙。

    お元気ですか?私は元気です。

    ところが、来るはずのない彼からの返信が博子の元に届きます。
    樹が亡くなってから年月が経ち、彼を思い出の中の存在として心の中にちゃんと納まっているものと博子自身そう思ってたんじゃないかなぁ。というか、どこかでもう吹っ切って思い出にしなきゃいけないと思い込もうとしてたのかもしれないなとも思うのです。
    そこへ届いた樹からの手紙に博子の心は揺れ動きます。
    樹とは二度と会えない。
    そう分かっているのに、やっぱり樹に対する想いは溢れでてくるのですよね。そうなってしまうとその想いをどこへ納めていいのか、今までどうやって納めていたのか分からなくなるのではないでしょうか。

    そんな博子は彼が自分に一目惚れしたのはなぜなのか、自分の出した答えに動揺し自分を押さえきれなくなってしまいます。
    私は、彼の初恋も、博子への一目惚れの意味がもしそうだったとしても、それは彼の一部分でしかないんだよ。あなたのことを愛してたことを思い出して。博子の目の前にいた樹を信じてあげてと切実に思いました。
    そんな博子も中学生時代の樹と同級生だった同姓同名の女性との文通を通じて、その頃の樹を知るうちに、いつしか波が引くように彼への想いも鎮まっていくようでした。
    と同時に、博子との文通を通じて樹の心には亡くなった樹の姿が現れてきます。
    中学生時代の彼とのやり取りは、樹にとっては恋じゃなかったようだけど、彼にとっては大切な瞬間だったんだろうなと思うと、初恋って実らないよなぁ……切なさでいっぱいになります。
    樹とともにその愛しい時間も手の届かないところにいっちゃいました。
    ラヴレター。愛を告白する手紙のことならば、樹の元に中学生の頃の樹から届いたあのカード。あれはラヴレターだろうな。

    博子は彼が遭難して亡くなった山に向かって叫びます。
    「お・げ・ん・き・ですかァ!あ・た・し・は元気でーす!」
    何度も何度も叫んでは泣きじゃくります。
    手紙にしたためた言葉。叫んだ言葉。同じ言葉でも、博子にとっての意味は全然違ってるのだろうなと思いました。
    私はそんな博子の背にそっと語りかけたくなりました。
    博子さん、亡くなった恋人のこと無理に忘れることなんてないよ……

    これからも博子は「お元気ですか?私は元気です」と樹に語りかけるときがあるんじゃないかなぁ。
    それでいいと思う私がいます。

    ……博子を愛する秋葉さんには悪いけどね。
    秋葉さん、博子のことが大好きなのは分かるけど、ちょっと強引すぎるので私は苦手なんだよなぁ(だからって意地悪で言ってるんじゃないですよ)

  • 先週読んだ岩井俊二さんの「ラストレター」がとても面白かったので、これまでの代表作である「ラブレター」を読みました。
    こちらも人間心理の切なさが描かれていました。
    映画化もされているそうなので、探して観てみたいと思います。
    静かな大人の作品でした。

  • 物語を紡ぎ出す力というものをまざまざと感じた。
    登場人物の機微というか、人生の偶然による接点、交差する瞬間、縁のようなものを、この人はなんて上手く物語るのだろう、と。

  • 映画を観る前に。
    二人の藤井樹、二人の中山美穂。
    ラストレターよりも良い小説でした。

  • 映画も本もダイスキ
    とてもキレイで透明なお話・ 
    何回も読み返しています 映画も何回もみてる
    この時の中山美穂ちゃんが かわいくてダイスキ♡
    『手紙』を書くのは すごく時間が かかるけど
    大切な人に ゆっくり心をこめて お気に入りの万年筆で書く時間 私自身 大切にしている◎

  • これはだいぶ前に読んだ小説で、本棚の中で主張してたように見えたから(笑)再読。
    映画もとても好きな作品。

    ふたりの藤井樹、樹(男)を愛する博子、そして博子を愛する秋葉、の物語。
    博子が勘違いから送った手紙がきっかけで、過去と現在を行き来しながら物語は進んでいく。

    残酷な面もあるかもしれない、と思った。
    自分の恋人が自分を選んでくれた理由が、もし「初恋の人に自分が似ているから」だったとしたら?
    そしてそれを、その人を失ってしまったあとに知ったとしたら。
    もう訊けないことだから許せるのか、それとも答えを知れないから引きずるのか。ということを、自分に置き換えて少し考えた。

    岩井俊二監督映画の独特な透明感が好きなのだけど、文章からもその要素は溢れてた。
    思春期をノスタルジックに描くのが本当に上手な人だと思う。

    ラヴレターって、自分の想いを相手に押し付けるものではなくて、相手を敬うものなのかもしれない。
    例えば「元気でいてくれたら嬉しいです」これだって立派なラヴレターだ。
    相手に直接届くことだけが、全てじゃなくて。

  • この作品を知ったきっかけは、大学のとある講義で、小樽はこの作品の効果で海外からの観光客が増えた~的なことを聞いたからだったと思います。
    というわけで、気になってたので読んでみました♪

    なるほど。
    確かにこれは、遅れて届いたラヴレターのお話なんだと思います。
    私がそれだと感じたのは、もちろん渡辺博子と藤井樹とのやりとり…の方でなく、中学時代の藤井樹が図書カードに残したモノの方でした。

    巻末収録の北川悦吏子さんによる解説は非常に興味深いですが、私はそれとはまた違った見解です。
    あの頃の藤井樹は、やっぱり彼の気持ちなんか全然知らなくって、「同姓同名のこんな奴がいて、こんなことがあって…」って思い出すことは出来るんだけど、きっと気になる存在とかではなかったんじゃないかなーと思います。
    彼女にとっては、もう戻らない青春の日々の中にいた思い出の人、という感じがするのです。
    一方で博子にとっては、彼のことはまだまだ思い出には出来ないですもんね。
    なんだか博子の肩を持つような考えになってしまうのは、私も過去にやきもちをやいてしまうタイプ、ということなんだろうかなぁ。笑

    読む前の先入観が、とにかく切ないとか悲しい恋の物語とかそんなイメージで、読了後はいい意味でそれが裏切られたなと思います。
    けっして底抜けに明るい話ではないんだけど、どこか爽やかさを残すような、照れるような、くすぐったいような…なんかそんな後味の物語でした。

    文章で読むのと映像で観るのとでは、また違った感想を抱くのかもしれないので、ぜひ映画も観てみようと思います☆

  • 中学生の樹と亡くなる前の樹。
    樹とひろこの手紙のやり取り。
    現代とは違う手紙というツールが懐かしく温かいです。

  • この映画、好きだったなぁ。
    久しぶりにBSでちょっとだけ見たら、ものすごくストーリーを読みたくなって、図書館で借りてみた。
    小説でもおもしろかった。
    小説しか読んでない人には映画も見て欲しいな。


    雪山で死んだフィアンセ、藤井樹の三回忌に、渡辺博子は想い出に封印するかのように、樹が中学時代に住んでいた小樽に手紙を出す。ところが、今は国道になっているはずの住所から返事がくる。天国の彼からの手紙?博子は再び返事を書き、奇妙な文通が始まる。もうひとりの藤井樹は何者なのか?二度と戻れないその場所から、大切な何かがよみがえってくるのだった。

  • 全てにおいて切ない。これは、ハッピーエンドなのだろうか。
    ただただ、樹の性格が好きだった。
    秋葉もいい味出していた。
    いつのまにか博子と樹のどちらにも気持ちを
    寄せられてた。不思議。映画もぜひ見たい。

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著者プロフィール

映像作家。1963年1月24日仙台市生まれ。横浜国立大学卒業。主な作品に映画『Love Letter』『スワロウテイル』『四月物語』『リリイ・シュシュのすべて』『花とアリス』『ヴァンパイア』『花とアリス殺人事件』『リップヴァンウィンクルの花嫁』など。ドキュメンタリーに『市川崑物語』『少年たちは花火を横から見たかった』など。「花は咲く」の作詞も手がける。

「2017年 『少年たちは花火を横から見たかった 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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