不自由な心 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 122
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  • Amazon.co.jp ・本 (429ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043720026

感想・レビュー・書評

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  • とても読みやすかったですが不倫の話が中心で、少し男性の身勝手な感じがうーんとなった。

  • すこぶる胸糞悪い小説だった。次から次にろくでもない男ばかりでてくる。ちなみにすべて不倫。
    身勝手で独善的で、ばっかじゃないの?と思わず吐き捨てたくなるような愚かさのオンパレード。
    でも、それを知っていてもなお、そんなろくでもない生物をどこか愛おしく思えてしまうのは何故だろう。
    既婚男性と尻軽独身女性の組み合わせばかりだからありきたりでチープに感じてしまうけれど、男も女も似たようなものかもしれない。
    誰だって自由に生きたい。誰がどう思おうが誰がどうなろうがどうでもいい。愛する人と一緒にいたい。でも愛する人はころころ変わる。
    そんなもんでしょ。所詮みんなゲスなんですよ。
    と私はこの本を読んで思いましたね。

    極め付けは表題作の「不自由な心」。
    作家自身が、この話に入り込みやすくするために前の四編を書いたっていうぐらいの渾身作。
    不倫で盲目になって相手と一緒になろうとしてそれに発狂した妻が自殺未遂をして、それで頭が冷えて家庭に戻ったものの、ほとぼりが冷めればまた別の人と不倫にはしる江川。
    妹の旦那がかつての自分と同じように不倫の果てに離婚しようとするのを引き留めるが、なんの説得力もナシ。妹の旦那に説教した内容ぜんぶ江川本人が自分に言い聞かせてきただけの薄っぺらいものだ。
    半身不随になってしまった妻を石塊呼ばわりまでして、あのとき死んでしまったら良かったのにだなんて、クズすぎて言葉がでてこない。
    こういうタイプの人間は本当の意味で誰かを愛することなんてできやしないんだ。結局自分のことしか愛せない。
    社会的に理性的に生きていかんとするならば、不自由な心をどうにかなだめすかして飼いならして、押し込めて、なんなら首を捻り上げて、そうやってやっていかなきゃならないんだ。

  • この話を読み終わってからあとがきの「小説の役割」を読むと、
    なるほど自分が小説に求めていたものがずばり書いてあって納得。

    肝心の小説の内容については、
    「まぁ男の人ってこんな人も多いよね。共存してる女も女だけど。」
    と言ったところかな。
    何だかんだで、みんなしたたかに生きてるんですよね、実は。

  • 短編のすべてに「不倫」という題材が組み込まれているが、嫌悪よりも人間らしい愛情が描かれていることを感じ、深く響いた。
    例えばもう二度と繋がることの出来ない相手でも(今現在傍らにいる人であれば尚いいが)、心の中に優しい傷となって生き続ける。
    自分の中で記憶が形を変えながら死を迎えるその日まで共に歩み続ける。そんな愛情の素晴らしさに触れた作品だった。
    この作品を読んでいると己にあった既存の常識が少し砕け破壊されたように思う。
    個体で生まれて個体で死んでいくのには変わりがないが、胸の中を覗けば無数の物語があり、それらに時に苦しめられ時に励まされている。
    そんなふうにして今日もやっと呼吸して、酸素を二酸化炭素に変えて、食料を血と肉に変えて自分は生きているんだと思った。
    抗えない運命に絶望するなんて最終手段で、どんなふうにでも自分も変われるんだと思いたくなった。
    時が経てば平凡な愛情と日常は刺激のないつまらないものに思えてしまうが、そうじゃなくて自分の捉え方感じ方一つで
    同じ相手と無数に枝分かれが出来る。
    白石さんが書いたこの小説は苦しいほど哀しいが私はそう信じたい。

  • すごい自己中で身勝手なおっさんたちの話ばかりで、世の中こんな奴ばかりなの?こんな奴らが社会を回してるの?なんて考えながら読んだ。不倫相手の女も、わりとあっさりしてて、こんなもんなのか〜とか思ったり。
    自分のせいで自殺未遂した女に対して、自分を縛り付ける卑劣な奴と思うなんて、なんなの?とか思ったり。

    でも、作者のあとがきを読んでスッキリした。自分の肯定と生への模索の材料、どうすれば真剣に生きられるかの模索、その手段方法としての小説があると言われると、確かに登場人物の考え方も参考になるなと思った。彼らも彼らなりに自己肯定や生の模索をしていたんだなと。彼らのように自分の人生を解釈したりできるだろうか?死について考えられるだろうか?などと、読後に振り返ってみた。

  • 短編集です。通奏低音で流れるテーマは
    運命の人と一緒になれればほんとうに幸せになれたのかも…
    なんだろうかと感じます。
    それが出来なかったり、それを選択しなかった人生の様々な結末を描きつつ、幸せな人生とは…を問うたような作品です。

    運命の人…だと思える人と出逢う。
    いつ出会えるかは全くわからないんですよ。結婚する前ならいいですよ。そのまま流れに身を任せておけばいいんだしね。後ろめたさも、後ろ指さされる心配もありませんもんね。
    でも結婚した後だったり、子供を持った後だったりする場合もあるんですよ。その場合…どれほど苦しまなきゃならなくなるか…

    自由な心で思うままに生きられれば…誰しもそう願うでしょう。
    でもそれが本当に幸せなのかどうかは、簡単に答えられません。

    不自由な人生だとしても全てが否定されるばかりではないし、
    自由な選択、自由な人生であったとしても幸せとは限らないのではないでしょうか?

    自分の人生を生きる…難しい命題です。

    本作は白石さんのデビュー二作目何ですね。以後の作品をいろいろ読ませてもらってますが、デビュー当初から男女関係や人生のあり方に疑問を投げかけるような作風なんですね。

    今年は彼の作品を全て読破するつもりです。次はデビュー作をチョイスするつもりです。楽しみです。

  • 色んな意味で考えさせられました。

    共通したテーマの如く「不倫」が出てきますが、、、さほど嫌な感じは受けず、さらっと納得、不思議な程に最後は収まるところに収まって安定感がありました。

  • 直木賞親子受賞の白石一文、その15年以上前の短編集。僕らがちょうど社会人になった頃の作品だから、オフィスの風景が懐かしさを覚える。それにしても全編の主人公のなんと勝手で甘ったれたことか。でも、響く部分がないわけでもなく、困ってしまう。それはとりもなおさず、自分も同じで、他から見ればそう見えるということなのだ。情けない。
    あ、あとね、僕ヒコーキのなかで読んだのですが、別の意味でオススメしません。地に足着けて読みましょう…。

  • 不倫の短編集。
    男の人目線の。

  • 20130323読了

    表題作がいまいち

著者プロフィール

1958年、福岡県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。文藝春秋に勤務していた2000年、『一瞬の光』を刊行。各紙誌で絶賛され、鮮烈なデビューを飾る。09年『この胸に深々と突き刺さる矢を抜け』で山本周五郎賞を、翌10年には『ほかならぬ人へ』で直木賞を受賞。巧みなストーリーテリングと生きる意味を真摯に問いかける思索的な作風で、現代日本文学シーンにおいて唯一無二の存在感を放っている。『不自由な心』『すぐそばの彼方』『私という運命について』など著作多数。

「2023年 『松雪先生は空を飛んだ 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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