- Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
- / ISBN・EAN: 9784043882014
作品紹介・あらすじ
国は壊れる時、どんな音がするのだろうか?人はどのような姿をさらけだすのだろうか?1991年12月26日、ソ連崩壊。不動だったはずの超大国は呆気なく自壊した。有能な官僚たちも、巨大な軍隊も、秘密警察もイデオロギー教育も、崩壊を防ぐことはできなかった。弱くなった日本はソ連の道を辿ることはないのか?外交官として渦中におり、「国家は悪ではあるが必要だ」と確信した佐藤優に宮崎学が斬り込む。
感想・レビュー・書評
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ソ連の結末は日本の結末か-。ソ連崩壊を内側から見たラスプーチン・佐藤優に、突破者・宮崎学が聞く、という全8回の講義録を一冊にまとめたものです。圧倒的な情報量と文句なしの面白さが凝縮されています。
『突破者』でおなじみの宮崎学さんが主催する研究会が『外務省のラスプーチン』こと佐藤優さんをゲストに呼んで8回にわたって語った内容を書籍化したものです。出版された時期が小泉純一郎が政権を握っていたことで、日本に関することはここに書かれているよりは若干、変わっていますけれど、主題である『ソ連崩壊に見る国家の崩壊』というのは実際にその舞台の中にいた人間の生々しい話がてんこ盛りで、これは正直、面白いことは面白いけれど、万人受けはしないなという考えにたどり着きました。
旧ソ連が崩壊したのが、もはや古い歴史となり始めている中で、あれほどの超大国でもあっけなく崩壊するのだという現実が、私たちにいったい何を教えてくれるのか?というテーマに関して、格好のテキストであると思います。さらに、この本が優れているところは周辺の多民族国家や少数民族の細かい心情や内在論理についても鋭い考察が展開されていて、
特に僕が驚いたのはチェチェン人の男には『血の報復』という掟があって、彼らは物心がついたころには七代前までの先祖の名前を覚えさせられ、そのうち誰かがもし、殺される形で生涯を終えていたとするならば、自分が七代前までさかのぼって復讐する権利が与えられている。というものや、あまりここではかけませんけれど、佐藤優がロシアのモスクワ大学で教鞭をとっていたときの教え子で、アフガンの元兵士が語った凄惨な現実もものすごくショックだったことを覚えています。
この本を読んでいると、近くて大きな存在であるロシアがどのような歴史をたどって現在に至るかということが駆け足でありながら理解できる反面、自分のあまりの無知さに打ちのめされるものでありました。ひとつの国家が崩壊するということはいったいどういうことなのか?この本が、そして旧ソ連が僕たちに今教えてくれることは、決して軽んじるべきではないと僕は考えます。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ソ連とロシアの違いもあまりわからなかったので、とても勉強になった本。
多種多様な人の心をどう捉えて、どう政治に活かしていくか、会社での身の振り方にとても参考になった。
何でもかんでも言語化して明確化できるで訳でもないし、曖昧にしておいた方がいいこともあることを知った。
自分の癖として、全て言語化したがってしまうが、空気を読みながら曖昧にしておける力も身につけていきたい。 -
ソ連末期、それはまさに世紀末の様相を呈していた。この様子を詳しく知るのは佐藤優さんである。全く彼くらい「悲劇」を詳らかに語れる人はいないのではないだろうか。なにせ、幕間から覗くのみならず、舞台の端にも登場するし、舞台裏にも通じているのだから。
本書は、ソ連末期~エリツィン政権までの政治・社会情勢が主な話題である。現地でしか分からない経験から、市井の人びとの様子が見えてくる。そして、外交官だから知りうる裏側を明晰な観察力で濾過することで、通説とは異なる現実を明らかにしている。
民族・宗教問題も絡み、さらにはマフィアも出てくる(聞き手の宮崎学さんはその道の「知識人」だそうだ)。現代ロシアを知りたい人には言わずもがな、国際政治全般に関心がある人にとっても興味深い内容であるはずだ。 -
大変革者だと思っていたゴルバチョフは実は相当な愚物、が当書の基調。
見方を変えればそうなるだろうし、後から振り返った当書を読むと確かにそう思わざるを得ない。
あとがきで、ゴルバチョフと小泉元首相との類似点を指摘しているが、「ペレストロイカ」「聖域なき構造改革」とスローガンは繰り返すものの、なんのためのペレストロイカか、なんのための構造改革か、を国民にきちんと説明しようとしない点も似ている、との記述にはうなずかざるを得ない。
さらに言えば、エリツィンはロジア社会の底にあるものがわかっていて、同じようにわかっているプーチンに権力を委譲した、というところは、当書を読んだ2022年、非常に説得力があった。 -
素晴らしい、面白い、ロシアが好きになる笑
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もう20年以上昔のことになるのだな。随分と当時報道された印象と違うなということと、やっぱりロシアのことを全然知らなかったという読後感。ソ連って壮大な社会実験だったんだな。
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ペレストロイカはリストラのことだった。
ソ連にも黒人差別がある。
モスクワ大学だとユダヤ人枠は5%くらいで、ユダヤ人には絶対に解けないような問題を出す手入学させない。その代り質の高いユダヤ人が入学してくる。そして大学教授のユダヤ人比率が高くなり、姑息なことをやらなくなった。 -
二十世紀と言えば良きにつけ悪しきにつけ社会主義という壮大な実験が繰り広げられた時代。当時、ドイツに居た私は本社から送られれてくる新聞や雑誌を舐めるように貪り読んだ。但、悲しいかな木を見て森を見ず。個々の事象は知り得ても凡人にはソ連崩壊へ至る全体像は把握し得なかった。二十余年が過ぎあれが何であったかを振り返るには良い頃合だと思い本書を手に取る。ゴルバチョフとエリツィンのイメージが鮮やかに反転する。やや不謹慎だがイデオロギーとは別次元の連邦内幕話が興味深い。ところで佐藤優と落合博満が似ていると思うのは私だけ?
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強大で冷徹なイメージのソ連、それがなんともあっさりと崩壊して消えてしまった、自分にとっては???だらけの現象を少しでも理解したいと思って本書も読んでみた。
政治的チェルノブイリによってソ連中央における炉心融解が起こり、一気に崩壊へ・・・、現象の説明としては分かりやすく、ふむふむとは思って読んでもその内実をしっかりと理解するのは自分には今回も難しかった。
多民族国家におけるそれぞれの民族にとっての論理、結局それらを超越して連邦を形成、維持するということに無理があったのか・・・。
ゴルバチョフの評価がケチョンケチョンなのにはちょっと驚いた。