大杉栄伝 永遠のアナキズム (角川ソフィア文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784044003357

作品紹介・あらすじ

第5回「いける本」大賞受賞、紀伊國屋じんぶん大 賞2015第6位の新評伝!

労働者、消費者、学生、夫、妻といった社会的アイデンティティを被らされ、「社会」の役に立つように動員されていく現代社会。
その「役に立つ」も、エッセンシャル・ワーカーを除いてはブルシット・ジョブ(デヴィッド・グレーバー)ばかりで、「やってる感」の演出のために長時間労働を強いられるばかり。
かつ、真に必要な仕事は低賃金を強いられ、新自由主義の歪みは極大化している。
“自由で民主主義的な社会”であるはずなのに、なぜ私たちはまったく自由を感じられないのか?
これは、「生の負債化」である。
この「生の負債化」に対し、「生の無償性」が大杉栄のアナキズムの肝なのではないかという視点から、気鋭のアナキズム研究者が生の拡充、相互扶助の大杉思想を現代的に読み解いていく。
アナキズムとは、「支配されない状態」を目指すことだ。
「生の負債化」に抵抗し続け、無支配の世界を構想した男・大杉栄。甘粕事件で国家に虐殺された、傑出した社会思想家にして運動家を新たな文体で描いた、傑作評伝!


※本書は二〇一三年に夜光社から刊行されたものを文庫化したものです。

【目次】
 はじめに

第一章 蜂起の思想
第二章 アナキズム小児病
第三章 ストライキの哲学
第四章 絶対遊戯の心
第五章 気分の労働運動
第六章 アナキストの本気

 おわりに
 文庫版あとがき
 脚注
 参考文献
 解説
 人物解説・索引

感想・レビュー・書評

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  •  アナキスト大杉栄、関東大震災のドサクサに伊藤野枝とともに虐殺された大杉。
     これまで大杉に関して書かれた本や、『自叙伝』、『日本脱出記』なども読んだが、今一つ、その凄さ、面白さが分からなかった。

     本書は、大阪での米騒動で、米を売ろうとしない米屋に押し掛ける民衆の自発的な動きに興奮した大杉の姿から幕を開ける。 
     共産党的な上からの指示に従わせる硬い組織に反発する大杉、度々の発禁処分にもメゲずに頑張る大杉、はたからはだらしないと見える女性関係などについて、著者ならではの饒舌な語り口、織り交ぜられる突っ込みが、実に魅力的な大杉像を描き出している。


     大杉の自由を求める姿には心打たれるものがあるが、数の力を求め、大きな運動体を作ろうとする人々からは理解されなかっただろうことも、ある意味良く分かる。


     大杉亡き後、打倒権力を目指して戦い、志半ばに倒れた仲間たちのことについては知らないことが多かったが、それぞれの生き方を顕彰する、良きレクイエムになっていると思う。



      

  • 東2法経図・6F開架:289.1A/O79k//K

  • 栗原康はアジる
    大杉栄の言葉で、その生き様で、周囲の人々の生き様で
    それら全てを鮮やかに軽やかに語る栗原の筆致は、読んでいてひたすらに気持ちよく、自分の中にあったなにかモヤモヤするものをひたすらに打ちこわしてくれる。

    やりたいことを、やりたいように、自分で決めてやる

    それだけのこと、その行為の意味を蘇らせる
    僕もこうやって鮮やかに生きたい。それだけだ。

  • 2021年10月読了。

  • 出版の時系列では逆だが以前読んだ「村に火をつけ、白痴になれ 伊藤野枝伝」が面白かったので、文庫が出たタイミングで購入。
    大正時代のアナキスト、大杉栄の評伝。疾走感のある文体は読みやすいが、ちょっと80年代的軽薄さも感じさせる。スタイルとしては後にでただけあって「伊藤野枝伝」の方が完成されてるように思えた。
    大杉栄自身が無茶苦茶な人物なので、その評伝がつまらない訳がないが、毀誉褒貶の多い大杉を基本的に全面肯定なので、そこんとこをどう評価するかだろうか?

  • 1918年の米騒動の話から始まっている。なんと1000万人の人が米騒動に関わったと。当時の人口が6000万人だったので6人に1人が関わったという算段だ。日本史上最大の暴動。それに大杉栄が大阪で一役買っていた逸話が記されている。米騒動をネットで検索すると襲撃したのは70万人と書かれている。著者は「米騒動の研究一〜五 渡部徹 (著), 井上清 (著)」を参照したと書いているので、数字を盛っているのではないと思うのだが。どっちが正しいのか。

  • 著者の文体が好き。
    大杉栄は高校日本史で甘粕大尉に惨殺された社会主義者ぐらいの印象しかなかったが、こんなにぶっ飛んだ人物だとは知らなかった。
    しかし、大杉がかなり「ぶっ飛んで」見えるような社会に生きているということがクリティカルなところで、僕たちはもっと暴れたって良いはずだ。これって新左翼じゃね?

  • 大杉栄の評伝。大杉栄の思想に大きく影響した米騒動から始まり、その後生い立ちがつづられていく。
    あらゆる権力、支配をなくしたおアナキズム。そのため共産主義であれ、テーラーのような管理法の資本主義であれ支配が発生し、生きづらい社会になるのであれば否定する。自分の好きなことを、自分のやりたいことを、自分の自由を、つかみとる。そんな自由な生き方を試みた人がいた。

  • 米騒動に、大杉の理想、大杉の思想の結実、大杉のやりたかったことを見いだす導入部から、幼年期、青年期、アナキストとしての活躍、その死までを描きあげる。随所随所に、なにやってんですかとか著者の愛有るツッコミが入るのもまたリズミカルで。資本家を撃て、奴隷根性を叩き壊せ、人間本来の生き生きとした力を取り戻せ、生の拡充、自由は困難、けど得られればこれにまさるよろこびはなく、と。読んでてあおられる、力を吹き込まれるような一冊。/人間はまわりに承認されたり、報酬をもらったり、なにかを所有したりするために生きているのではない。人間はただ自分の力を高めるために生きている。(p.116)/自我の力はたえず拡張している。だが、その力は障害にぶつかり、疲弊してしまうことがある。そんなときは爆発をまきおこし、多方面にむかって力を跳躍させればいい。そして、粉々になった力を束にして、ひとつの傾向を生みだしていく。それが創造的進化であった。(p.120)

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著者プロフィール

1979年埼玉県生まれ。東北芸術工科大学非常勤講師。専門はアナキズム研究。著書に『大杉栄伝 ―― 永遠のアナキズム』(夜光社)、『はたらかないで、たらふく食べたい ――「生の負債」からの解放宣言』(タバブックス)、『村に火をつけ、白痴になれ ―― 伊藤野枝伝』(岩波書店)、『現代暴力論 ――「あばれる力」を取り戻す』(角川新書)、『死してなお踊れ ――一遍上人伝』(河出書房新社)、『菊とギロチン ―― やるならいましかねえ、いつだっていましかねえ』(タバブックス)、『何ものにも縛られないための政治学 ―― 権力の脱構成』(KADOKAWA)など。

「2018年 『狂い咲け、フリ-ダム』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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