新版 歌集 てのひらを燃やす (塔21世紀叢書 第 330篇)

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 12
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  • Amazon.co.jp ・本 (168ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784048841832

作品紹介・あらすじ

今最も注目の歌人、大森静佳の第1歌集『てのひらを燃やす』(2013年)が、ソフトカバーになって生まれ変わる。現代歌人協会新人賞、歌人クラブ新人賞、現代歌人集会賞、受賞歌集。

感想・レビュー・書評

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  • 第58回現代歌人協会賞
    第20回日本歌人クラブ新人賞
    第39回現代歌人集会賞 受賞。

    大森静佳さんが、大学生として京都で過ごした四年間の歌を収めた第一歌集。

    この歌集はとても美しい言葉で紡がれていると思うのですが、何を詠んでいるのかが、今一つわからず2年近く買ったまま積んでいました。
    よく読んでみると「これはわかる」と思う歌が結構あることに気づきました。

    歌集の一番最後の
    ○言葉にわたしが追いつくまでを沈黙の白い月に手かざして待てり

    今の私の心境に近いです。


    意味がわかったと思う歌を以下に載せます。
    もっとわかったと思えるまで繰り返し読んでみたい歌集です。
    つい最近塚本邦雄賞を受賞された『ヘクタール』も読んでみたいです。


    ○外国の硬貨のレリーフのような横顔ばかりのあなたと思う

    ○背景にやがてなりたしこの街をあなたと長く長く歩いて

    ○途切れない小雨のような喫茶店会おうとしなければ会えないのだと

    ○約束はことごとく雨降りできみに母なきことを思えり

    ○晩年のあなたの冬に巻くようにあなたの首にマフラーを巻く

    ○われの生まれる前のひかりが雪に差す七つの冬が君にはありき

    ○雨脚が細くなりゆくつたなさにふたりはひとりよりもしずかだ

    ○これでいい 港に白い舟くずれ誰かがわたしになる秋の朝

    ○雲のことあなたのことも空のこと 振り切ることのいつでも寒い

    ○奪うには近くて 耳に細い雨 奪われるには遠すぎたこと

    ○もっともっともっと 空間をくすぐりながらはなびら落ちる

    ○後ずさりできぬ鳥たち 二人称をずたずたにする夕焼けだった

    • まことさん
      しずくさん♪

      ありがとうございます。
      地方新聞はとっていませんが、読売新聞の地方版にも短歌欄あります。
      でも、オンライン投稿できないので、...
      しずくさん♪

      ありがとうございます。
      地方新聞はとっていませんが、読売新聞の地方版にも短歌欄あります。
      でも、オンライン投稿できないので、面倒だなと思っています。
      しずくさんも、投稿されていたのですね。
      地方版も、載っている歌を見ると、全国版と、レベルは変わらない気がしますが。
      お知らせありがとうございます。
      2023/08/21
    • アールグレイさん
      まことさん☆しずくさん
      こんにちは(#^.^#)

      そうですね!地方版は確率がいいと思いますよ!
      私は結婚前に文章の投稿にはまっていた時期が...
      まことさん☆しずくさん
      こんにちは(#^.^#)

      そうですね!地方版は確率がいいと思いますよ!
      私は結婚前に文章の投稿にはまっていた時期がありました。東京新聞でした。ことわざ、というお題で結婚前の不安な気持ち等をことわざを三つ交えた文章でした。ラジオ番組に投稿し、それがラジオから流れてきた時は震えが止まりませんでした。ご褒美にFAXを頂きました。懐かしい思い出です。
      自慢話になってしまいごめんなさい。
      まことさん☆フレーフレー!、しずくさんもまた始めてみては如何でしょう?
      2023/08/21
    • まことさん
      アールグレイさん♪
      しずくさん♪

      しずくさんに続き、アールグレイさんも、掲載経験があるのですね!ラジオから自分の文章が流れてきたら、びっく...
      アールグレイさん♪
      しずくさん♪

      しずくさんに続き、アールグレイさんも、掲載経験があるのですね!ラジオから自分の文章が流れてきたら、びっくりするでしょうね!賞品までもらったのですか?
      読売歌壇は図書カードがもらえますが、他の雑誌などは、短歌は何ももらえないのがほとんどだと思います。何々賞というようなのだと、賞金がでますが、それは、ほとんどプロとして認められるような方のみです。
      短歌は間口は広いかもしれませんが、だから何?という感じで、自分で歌集を出さないといけないみたいです。
      私は、あくまで趣味として楽しみたいと思っています。
      2023/08/21
  • 著者が京都で過ごした
    大学四年間。

    その間に詠んだ作品が
    収められてます。

    私は『カミーユ』より
    こちらの方が好みです。


    『浴槽を磨いて今日がおとといやきのうのなかへ沈みゆくころ』

    『あとがきのように寂しいひつじ雲見上げてきみのそばにいる夏』

    『立ち尽くす一生の他はなき樹々よその一本に似ているきみは』

    • workmaさん
      コルベットさん

      短歌に詳しくないので、読んだことあるのは俵万智さんと穂村弘さんくらい。初めて知った歌人の大森静佳さん…いい短歌だなぁと...
      コルベットさん

      短歌に詳しくないので、読んだことあるのは俵万智さんと穂村弘さんくらい。初めて知った歌人の大森静佳さん…いい短歌だなぁとおもいました。
      表紙の装丁が いいですね!ジャケ買いしたくなります。
      2023/02/09
    • コルベットさん
      workmaさん、こんばんは。私も興味をもったのはつい最近で、まったく詳しくなくて。好みの歌を見つけると嬉しくなります。そして、ジャケ買いし...
      workmaさん、こんばんは。私も興味をもったのはつい最近で、まったく詳しくなくて。好みの歌を見つけると嬉しくなります。そして、ジャケ買いしたくなるお気持ち、すごくわかります!
      2023/02/09
  • イベントで大森さんがいらしてたので、ちゃっかりサインを頂きました!
    NHK短歌での解説がとてもチャーミングなのですが、実際にお会いすると小柄で物腰柔らかで、ますますファンになりました。

    てのひら、いつも毎日見ていて使っているはずのに気に留めていなかった自分に気づかされる
    ふとした日常に沸き起こる感情の変化だったりドキッとさせられるような男女の機微を題材にしていて、こんな風に歌に詠めたらいいなあと付箋はりはり

    厳選した好きな5首
    自転車のかごに駐輪場の券いつまでも放っておく日々なのに
    忘れずにいることだけを過去と呼ぶコットンに瓶の口を押しあて
    手花火を終えてバケツの重さかなもうこんなにも時間が重い
    いつもわたしがわたしの外にいてさびしい豆腐のみずも細く逃がして
    生きている間しか逢えないなどと傘でもひらくように言わないでほしい

    • ☆ベルガモット☆さん
      まことさん、
      新年あけましておめでとうございます!
      こちらの歌集お持ちなんですね♬
      第2歌集の『カミーユ』と迷いました。
      短歌の読め...
      まことさん、
      新年あけましておめでとうございます!
      こちらの歌集お持ちなんですね♬
      第2歌集の『カミーユ』と迷いました。
      短歌の読めば読むほど味わい深い世界の沼にはまっております。
      こちらこそ、まことさんの魅力的な本棚を参考にしております☆
      これからもよろしくお願いいたします。
      2022/01/01
    • まことさん
      ベルガモットさん、こんにちは♪

      この歌集、やっと読めました。
      私には手の届かないような魅力的な言葉を紡がれる方だと思いました。
      『...
      ベルガモットさん、こんにちは♪

      この歌集、やっと読めました。
      私には手の届かないような魅力的な言葉を紡がれる方だと思いました。
      『ヘクタール』も塚本邦雄賞受賞されましたね。どういう賞かも実はよくわからないのですが読んでみたいです。『カミーユ』も読みたいです。
      今、短歌界の最前線で活躍される歌人の方かと思いました。
      2023/08/19
    • ☆ベルガモット☆さん
      まことさん、おはようございます♪

      読了なさったんですね!レビューもいいねしてきました(*´▽`*)
      取り上げていた歌、再読するとやっ...
      まことさん、おはようございます♪

      読了なさったんですね!レビューもいいねしてきました(*´▽`*)
      取り上げていた歌、再読するとやっぱり良いですね♪
      ちょっと緊張感の漂う、切なさを詠った歌や難解な歌もありますよね。『ヘクタール』は、少し成長した女性特有の苦悩が痛々しくなりそうだけど、透明感を持って昇華されたような歌になって詠われていて、おすすめの歌集です。『カミーユ』は読みたい歌集リストに入れておかなきゃ。
      まことさんのご指摘の通り、「今、短歌界の最前線で活躍される歌人の方」だと私も思います。
      2023/08/20
  • 一年とおもう日の暮れ樹の匂う名前の駅で待ち合わせれば (硝子の駒)

    塗り絵のように暮れてゆく冬 君でないひとの喉仏がうつくしい (遠近)

    あとがきのように寂しいひつじ雲見上げて君のそばにいる夏 (晩夏抄)


    時間の経過の見せ方とか、比喩のやさしくて切ない感じというか、物悲しさがステキだと思いました。


  • Twitterで川上未映子さんが、大森静佳さんの新刊歌集を絶賛されているのをみかけて。
    こちらはデビュー作。ひとつひとつの言葉の選び方が鋭くて、一瞬の永遠が鮮やかに切り取られていて好き、と思った。

    **
    途切れない小雨のような喫茶店
    会おうとしなければ会えないのだと

    とどまっていたかっただけ風の日の
    君の視界に身じろぎもせず

    夕空が鳥をしずかに吸うように
    君の言葉をいま聞いている

    この夏は針となり降る蝉の声
    忘れたくないことを忘れずにいる

    あとがきのように寂しいひつじ雲
    見上げてきみのそばにいる夏

    手花火を終えてバケツの重さかな
    もうこんなにも時間が重い

  • かなり難しい歌集なので好みが分かれそうです。

  • つばさ、と言って仰ぐたび空は傾いて
    あなたもいつか意味へと還る

  • 自分とは合いませんでした

  • 角川短歌賞を受賞した俊英の第一歌集。一冊まるごと相聞歌という若い女性ならではの内容だが、歌はどれも静かで深い。そして言葉の使い方が自由だ。「冬の駅ひとりになれば耳の奥に硝子の駒を置く場所がある」「カーテンに遮光の重さ くちづけを終えてくずれた雲を見ている」「てのひらの重ねるための平たさの夜は兵士のように立つ樹々」「レシートに冬の日付は記されて左から陽の射していた道」「外国の硬貨のレリーフのような横顔ばかりのあなたと思う」「これは君を帰すための灯 靴紐をかがんで結ぶ背中を照らす」「みずうみの絵葉書を出す片隅にえんぴつで水鳥を浮かべて」「平泳ぎするとき胸にひらく火の、それはあなたに届かせぬ火の」

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著者プロフィール

一九八九年岡山県生まれ。第五十六回角川短歌賞を受賞。歌集に『てのひらを燃やす』(角川書店)、『カミーユ』(書肆侃侃房)、『ヘクタール』(文藝春秋)。「京大短歌」を経て現在は「塔」所属。京都市在住。

「2023年 『現代短歌パスポート2 恐竜の不在号』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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