養生訓 (講談社学術文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (441ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061585775

作品紹介・あらすじ

養生の術は、先わが身をそこなふ物を去べし。身をそこなふ物は、内慾と外邪となり。内慾とは飲食の慾、好色の慾、唾の慾、言語をほしいまゝにするの慾と喜怒憂思悲恐驚の七情の慾を云。外邪とは天の四気なり。風寒暑湿を云(いう)。内慾をこらゑてすくなくし、外邪をおそれてふせぐ、是を以(もって)元気をそこなはず、病なくして天年を永くたもつべし。(『養生訓』巻第1・総論上「内なる慾望と外なる邪気」より)

感想・レビュー・書評

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  • 貝原益軒(1630~1714年)が『養生訓』を著したのは、80歳を過ぎてからと言われている。
    当時としては、長寿だったはず。

    今読んでいる、五木寛之さんの『好運の条件』(新潮新書)の130~135頁に、貝原益軒のことが書かれているので、ちょっと調べてみました。


    貝原益軒を、ウィキペディアより引用すると、

    ---引用開始---

    1699年、70歳で役を退き著述業に専念。著書は生涯に60部270余巻に及ぶ。 退役後も藩内をくまなくフィールドワークし『筑前国続風土記』の編纂を継続、1703年(元禄16年)に藩主に献上している。

    1714年(正徳4年)に没するに臨み、辞世の漢詩2首と倭歌「越し方は一夜(ひとよ)ばかりの心地して 八十(やそじ)あまりの夢をみしかな」を残している。

    ---引用終了---


    すごい方です。

  • 貝原益軒 83歳のときの著作。
    「人生を楽しむ」という大目的のために、長生き(長寿)する。そのための「養生」という流れ。医者ではなく儒学者の益軒が、古くから伝わる養生の術を「道」にまで高め、次の世代やさらなる子孫へ伝えようと、並々ならぬ意欲で書いたもの。
    ---
    ともかく人生は、楽しむべきである。短命では全世界の富を得たところで仕方のないことだ。(略)それゆえに、道にしたがって身体をたもって、長生きするほど大いなる幸せはないであろう。(P30)
    ---

    儒者らしく、論語からの引用も多数ある。また、「孝」の意識もつよくあり、こんな記述が総論上にある。
    ---
     ひとの身体は父母を本(もと)とし、天地を初めとしてなったものであって、天地・父母の恵みを受けて生まれ育った身体であるから、それは私自身のもののようであるが、しかし私のみによって存在するものではない。つまり、天地の賜物であり、父母の残して下さった身体であるから、慎んで大切にして天寿をたもつようにこころがけなければならない。
     これが天地・父母に仕える孝の本である。(P29)
    ---

    なお、実践的な養生の術については以下のような記述も気になった。

    ◎内なる欲望と外なる邪気
     養生法の第一は、自分の身体をそこなう物を除去することである。身体をそこなう物とは内から生ずる欲望と外からやってくる邪気とである。
     前者は、飲食の欲、好色の欲、眠りの欲、言語をほしいままにする欲や、喜・怒・憂・思・悲・恐・驚の七情の欲をいう。後者は、風・寒・暑・湿の天の四気をいうのである。

    ◎心を平静にして徳を養う
     心を平静にし、気をなごやかにし、言葉を少なくして静をたもつことは、徳を養うとともに身体を養うことにもなる。

    ◎唾液は大切に
     唾液は身体のうるおいである。血液となるものである。
     草木もうるおいがないと枯れる。そのように唾液は大切なものである。唾液は内臓から口中に出てくる。大切にして、吐いてはいけない。なお遠くへ吐いてはさらにわるい。体に力がいるので気がへるからである。

    ◎五思
     ものを食べるときに考えなければならないことが五つある。それを五思という。一つは、この食は誰から与えられたのかを思わなければならない。(略)
     二つは、この食は農民の苦労によって作り出されたことを思わなければならない。忘却してはならない。(略)
     三つは、自分には才能も備わった徳もなく、さらには正しい行いもなく、君主を助け、人民を治める苦労もないのに、こうしたおいしいものを食べることができるのはひどく幸せであると…(略)
     四つは、世間には自分より貧しいひとが多い。(略)自分は上等なおいしい食事を十分に食べて飢餓の心配はない。これは大きな幸福というべきであろう。
     五つは、(略)いまは白い飯をやわらかく煮て、十分に食べ、しかも吸物があり、惣菜があって朝夕の二回にわたって十分に食べている。そのうえ酒があって心を楽しませ、気血をたすけている。
     朝食や夕食をするたびに、この五思の中の一つでも二つでもよいから、かわるがわる思い起こして忘れてはならない。そうすれば、日々の楽しみもまたその中にあることに気づくであろう。

    ◎食後の口内を清潔に
     食後には湯茶で口中を数回すすぐのがよい。口の中を清潔にし、歯にはさまったものを取り去ることができる。牙杖(げじょう:つま楊枝)を使うのはよくない。

    ◎酒は天の美禄
     ほどよく飲めば陽気を助け、血気をやわらげて食物の消化をよくし、心配ごとをとり去り、興を生じてたいそう利益になる。ところが、多く飲むとひとを害する。(略)たとえば水や火は人間をよく助けるが、同時に災いをもたらすようなものである。

    ◎膝から下の健康法

  • 季節の変わり目です。「体にいいこと」がまとめられた本書、現代にも通じる部分が多々あります(夜更かしやめようとか、腹八分目とか)

    所蔵情報:
    品川図書館(文庫/新書コーナー) 498.3/Ka21
    ※岩波文庫版、徳間書店版も所蔵しています

  • 養生の戒めがこれでもかいう位連なるが、1つ1つの指南が具体的なので、当時の食生活や暮らしの風景が垣間見られるのが特徴。前半が訳文、後半が原文の構成だが、原文よりも、今日の医学的、栄養学的見地からみた検証を掲載してくれた方が面白かった。著者が参照した出典元はいずれも中国伝来で、約100年後には蘭学がそれに取って代わることを鑑みると、日本には身体に関する学術書が乏しかったのだろうか。

  • 訳:伊藤友信

  • 昔から健康に関する関心が高った日本人。欲が深くては早死にしますよ。飲食の欲、好色の欲、眠りの欲などなど。今も昔も変わらぬ思い。

  • 江戸時代の処世訓
    欲をなくすことが長生きの秘訣だと細かに
    書かれている。

  • 江戸時代の健康法のベストセラー。

    最初の三分の一ぐらいが総論で、
    その後は飲食などの具体的な方法が書いてある。

    総論は哲学的な内容となっており、
    心は主人、身体は下僕としていて、
    心を安静に保ち、身体は使役すること、
    欲を減らして天命に従い生きること等を説き、
    ライフスタイルを考える上で大いに参考になる。

    しかし、後半の具体的な健康法に関しては、
    やはり江戸時代に書かれた本なので、
    迷信・俗説のオンパレードになっていて、
    史学的な意味以外では読む必要は無さそう。

  • 77

  • 資料ID: C0003037
    配架場所: 本館2F文庫書架

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著者プロフィール

貝原益軒

一六三〇年生まれ。江戸前期から中期にかけての儒学者、博物学者、教育家。筑前福岡藩主黒田家に仕えた。藩費で十年間京都に遊学する間に、朱子学者、博物学者と交際し、上方に興りつつあった経験・実証主義思潮に触れたのが、その後の学風に生かされた。膨大な編著は各方面にわたり、儒学では『大疑録』、博物学では『大和本草』『花譜』『菜譜』などが知られる。晩年には『養生訓』『大和俗訓』など多くの教訓書を書いた。一七一四年没。



松田道雄

明治四十一年(一九〇八)、茨城県生まれ。昭和七年、京都帝国大学医学部を卒業、小児科教室に入る。昭和十二年より府立西ノ京健康相談所に勤め、結核患者の診療をおこなう。昭和二十二年に京都で小児科を開業。診療のかたわら、ロシア思想を学び、思想史家としても知られる。著書に『私は赤ちゃん』『育児百科』『洛中洛外』など多数。平成十年(一九九八)没。

「2020年 『養生訓』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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