眠りの森 (講談社文庫)

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  • / ISBN・EAN: 9784061851306

感想・レビュー・書評

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  • 加賀恭一郎シリーズ2作目の『眠りの森』の概要と感想になります。

    概要です。
    捜査一課の加賀はバレエ団の事務所に侵入した男性とバレエ団員の女性が倒れている現場に向かい、男性が侵入した動機が分からないことに引っ掛かるものがあった。そこから立て続けに起きるバレエ団が関連した事件を追う中で、加賀はバレエ団という森が隠し続ける『眠りの森の美女』を目覚めさせることになる。

    感想です。
    まず「いつの間に捜査一課になっとるん!!」ってツッコミが第一声。前作は学生であった加賀から今作の加賀に至るまで、ただならぬエピソードを経てきたのでは?と匂わす所を感じてしまうと次回作も早く読みたい所です。

  • 加賀恭一郎シリーズ第二作。
    バレエを題材にした内容は知識のない自分でも楽しめる内容だった。
    また、加賀の恋物語の側面を持ったストーリー仕立てであったことも更に楽しめた作品であった。

  • 加賀恭一郎シリーズ2作目。
    バレエ劇団より発生した殺人事件の真相を追う物語。
    どことなく気障な表現が目立つのは発表された時代にもよるのかな(1992年発行)。
    このシリーズは人間関係が複雑で気を付けないと見失う事もしばしば。
    真相がやはり意外なものでした。
    読み終わった後改めて最初の場面を読むといい感じのループで。

  • 【感想】
    少し言い方に語弊があるかもしれませんが・・・・
    メジャーな団体スポーツではない特殊なスポーツをしているプロフェッショナルは、どこか天才肌ながらも世間とズレている人が多いよなーと共感しながら拝読。
    本作品のスポーツは「バレエ」だが、「体操」然り、「フィギュアスケート」や「水泳」然り、プレイヤーというかそのジャンルそのものが浮世離れしているイメージが個人的にある。
    その原因は完成度への飽くなき執念であったり、貪欲さやこだわり、プロ意識などが高さなど、多岐に渡る。
    ちょっと古いが、「あしたのジョー」の登場人物のようなストイックさをこのジャンルのスポーツのプレーヤーには感じる。

    閑話休題のつもりが些か長文になりましたが、、、
    さて、大好きな加賀恭一郎シリーズを読み進めていくにあたって、特にさしたる理由なく「読まず嫌い」だった本作品に初めて着手。
    (読んでいる途中で、「あ、この本なにかで目にしたことがあるなぁ」と思っていたが、石原さとみ主演でTV放映していたなと読み終わってから思い出した。)
    優秀な頭脳を持ち、気遣いや人情味あふれながらも、どこか他人と一線引いている。そんな加賀恭一郎には珍しい、彼の切ないラブストーリーが主題の一作。
    結果、刑事と犯人という立場で悲恋に終わってしまうのだが、加賀恭一郎の人間性が素晴らしすぎて、2人の恋愛がどこか綺麗なもののように映った。

    あと、終わり方がまたニクイというかキザだね~
    加賀恭一郎シリーズでやはり目を引くのは、いちいち加賀恭一郎が吐く台詞がキザで素敵すぎるところかもしれない。
    男前すぎる。。。男なのに惚れそうだ。。。

    ただ、一つマイナスのことを言うとすれば、同シリーズである「悪意」「赤い指」「新参者」「麒麟の翼」「祈りの幕が降りるとき」と比べたら、少し作品のクオリティは下がるかな・・・
    (この5作品はいずれも後作だし、完成度が凄すぎるから仕方ないが。)

    次の加賀恭一郎シリーズは、本作品と同じく読まず嫌いで敬遠していた「どちらかが彼女を殺した」と、「私が彼を殺した」を読もうと思います。


    【あらすじ】
    美貌のバレリーナが男を殺したのは、ほんとうに正当防衛だったのか?
    完璧な踊りを求めて一途にけいこに励む高柳バレエ団のプリマたち。
    美女たちの世界に迷い込んだ男は死体になっていた。

    若き敏腕刑事・加賀恭一郎は浅岡未緒に魅かれ、事件の真相に肉迫する。
    華やかな舞台の裏の哀しいダンサーの悲恋物語。


    【引用】
    p149
    加賀は結局マンションの前まで送ってくれた。そして時間が遅くなったことを、さかんに詫びていた。気にしないでください、と未緒はいった。
    「どうせ帰っても一人だから。今夜は楽しかったです」
    「俺もです」
    「今度、剣道を見せていただけます?」
    未緒がいうと加賀は一瞬だけ目を伏せた。小さな動きだったが、まるで一番デリケートな部分に触れられたような反応に、未緒には見えた。
    「今度」と彼はいった。「必ず」
    未緒は頷き、マンションに向かって歩きだした。


    p185
    柳生は加賀の考えを察したのか、にやりと口を曲げ、「だけど役を狙って誰かが俺を殺そうとしたなんてことは、絶対に考えられないぜ。賭けてもいい」
    「そうかな」
    「そうさ。ダンサーはそんなことはしない。出来ないんだ。よくドラマなんかでさ、プリマの座を狙って相手を陥れるなんていう臭いシーンがあるだろ。だけどあんなこと、絶対にないぜ。ダンサーというのは踊りに対しては潔癖だし、他人との実力差を客観的に捉えているものなんだ。自分より優れた者がいる時に、その者をおしのけて自分が踊るなんてことは本能的にないんだよ。役が欲しい時には実力で奪う、それしかないね。傍目には優雅だけど、なかなか生存競争は厳しいんだぜ」


    p297
    「話してください。あなたが沈黙を続ける限り、色々な人たちの苦しみは消えない。誰もが深い傷を負ったまま生きていくことになるし、俺はその人たちを最後まで追い続けることになるのです。どちらにとっても、不幸なマラソンでしかない」


    p303
    すべてはあの夜が始まりだった。
    あの日のレッスン後、未緒は亜希子から自主練習をしないかと誘われた。
    二人はとりあえず食事に出かけた。そしてそのあとで稽古場に戻ったのだ。
    問題はここだった。
    前後の状況を考えると、どうやら風間はずっと二人の行動を追跡していたのだ。
    未緒がいなくなるのを見た風間は、建物に近づいた。一方未緒は買い物を済ませて帰ってくると、玄関の鍵を開けて中に入った。だがこの時に、見知らぬ男に襲われている亜希子の姿があった。
    プリマを守らなければ、と未緒は思った。今、彼女の身にもしものことがあれば、最後の夢も叶わなくなる。
    彼女は身を低くして中に入って花瓶を取ると、男の頭目がけて両手で思いきり振った。


    p319
    「聞こえますか」と加賀はいった。彼女はさすがに少し驚いたようだが、彼がなぜこの秘密を知っているかということは聞かず、「近くなら」と答えた。
    「加賀さん、あたしを逮捕してください」
    「ええ、あなたを逮捕します」
    「これでようやく罪の償いができるんですね。とても長い日々でした」
    「償いは必要です。しかし、公正な審判もまた必要です。あなたにとっても今度の事件は不運だった」

    「俺があなたを守ってみせる」と彼は言った。
    「加賀さん。あたし、加賀さんの声を忘れません」
    声が詰まった。その彼女の体を引き寄せ、加賀は囁いた。
    「大丈夫。耳のこともきっとなんとかしてみせる」
    彼はフロリナ姫の顔のままの未緒に、静かに口づけした。
    「君が好きだから」
    加賀は未緒の身体を強く抱きしめた。

    • きのPさん
      >>kuma0504さん
      コメント有難うございます!
      確かに同シリーズの別作品で美緒の裁判で証人として出席したみたいなエピソードもありま...
      >>kuma0504さん
      コメント有難うございます!
      確かに同シリーズの別作品で美緒の裁判で証人として出席したみたいなエピソードもありましたね!
      加賀恭一郎シリーズの外伝として、是非この恋物語の続編を書いて欲しいですね。。。
      2019/07/04
    • kuma0504さん
      何故か誤作動で、フォローが外れていました。すみません。直しときました。
      「祈りのー」では「恭一郎最大の謎が明らかになる」という意味の煽り文句...
      何故か誤作動で、フォローが外れていました。すみません。直しときました。
      「祈りのー」では「恭一郎最大の謎が明らかになる」という意味の煽り文句があったと思うのですが、恭一郎にとっての「人生最大の謎」は美緒と経緯だと私は思っています。絶対これだけで一冊本を作るべきだ、と5年くらい前からいろんな所に書いています(^_^;)。
      2019/07/04
    • きのPさん
      >>kuma0504さん
      再度フォロー頂き、有難うございます(笑)
      確かに加賀恭一郎シリーズにおいて、美緒の存在(というか、美緒の現在の...
      >>kuma0504さん
      再度フォロー頂き、有難うございます(笑)
      確かに加賀恭一郎シリーズにおいて、美緒の存在(というか、美緒の現在の状況)は大きな謎の1つですよね!
      そこに触れる作品は欲しいものです。何より、加賀恭一郎の恋物語は個人的にもニーズ大です(笑)

      ただ、それ以上に加賀恭一郎の生い立ちというか母親のエピソードも凄く気になっていたので、「恭一郎最大の謎」という煽り文句も個人的には激しく同意できました。

      ちなみに・・・
      もう観られたかもしれませんが、「麒麟の翼」と「祈りの幕」は実写版もとても良い作品ですよ。
      両方とも、何度も見てその都度号泣です。
      2019/07/05
  • こんなハッピーエンドもあるものかと感じた。
    きちんと推理小説なのに文学的な悲哀が描かれていて、作品に没頭した。
    以前、ドラマを見て小説ではどうなるかとずっと思っていたが、今回達成できて嬉しいです。


    青年刑事が追う踊り子の美しくも哀しい秘事華麗な舞を舞うバレエ団のプリマが
    正当防衛とはいえ、レッスン場に忍び込んだ男を殺害してしまった。
    捜査に当った青年刑事は次第にあるバレリーナに魅かれていく。
    加賀恭一郎シリーズ

  • 加賀恭一郎シリーズ② バレエ界が舞台。

    華やかに見える芸術の道を極めていくということは、一般人の娯楽や恋愛もご法度。狭い社会の独自のルールからはみ出すことは許されないのだろうか。
    そこから生み出された芸術だから人を魅了するのか?と知らない世界を垣間見たミステリー。

    バレエ団施設に侵入した男を殺したバレリーナは正当防衛か⁈ そして次なる事件が…。

    演目『眠りの森の美女』の成功を祈りながら、真相に急いだ。加賀の恋の行方も読みどころ♡ 今後の彼の人生、気になるなる。

    シリーズ①「卒業」で大学生の加賀は、迷った挙句、教師になると決める。教師になったものの挫折し、父親と同じ警察官になったことが明かされている。

  • バレエ団が舞台になったミステリ。
    解説を読むと、著者長編小説の9作目らしい。

    真相を知ると、なんと複雑な・・・!と驚き、そして未緒の今後を思って少し悲しくなる。
    それに、バレエダンサーの私生活も、減量など大変そうだなぁと初めて想像した。
    「眠れる森の美女」のバレエは見たことがなかったけど、描写がとても華やかで、頭の中で色々想像することが出来て楽しかった。是非生で観てみたい。

    刑事の加賀恭一郎は、著者2作目の「卒業」で初めて登場し、その後も本作や色々な本に登場していて「加賀恭一郎シリーズ」と言われているらしい。

  • 幕が開き、やがてそれが降りるまで、ずっと釘付けになってしまう、
    まるで、バレエの舞台を観賞しているかの様な読み心地であった。

    華やかな世界のなかで起こった殺人事件も、
    加賀恭一郎が、関係者である美しいプリマに心奪われるシチュエーションなども加わって、
    視覚的に楽しめたような、
    そして
    甘い余韻がいつまでも残る、

    東野作品のなかでは(稀な類だなぁ)と、思った。

  • 僕が生まれた年に書かれた本。ファミコンとか出てきて時代を感じた。あまり推理小説を読まないからこれが普通なのかもしれないけど、最後の謎解きが無駄なくあっさりと完結にまとめ上げられてるのは個人的には良かった。

    簡潔に、的確に、伝えるのは難しいと思うけどそれが見事にできている。推理小説初心者だけど読みやすい、とても良い本に出会えました。

  • 加賀恭一郎シリーズ第2作目。1作目で大学4年生だった加賀恭一郎が警視庁捜査1課の刑事となって登場。確か教師になるはずだったのに、いきなり30歳くらいの刑事として登場し、殺人事件を解決する。
    あとで少し触れられているが、教師となったが辞めて刑事になったらしい。1作目で恋愛感情を打ち明けていた同級生の女性も少し登場するがやはり結ばれなかったみたいだ。刑事の父親も引退していて、相変わらずの距離のある関係だが、刑事として相談出来る存在になっている。
    クラシックバレーの世界で起きた殺人事件、正当防衛と見られた事件が、そして引き続き起きた2件目の殺人事件が、加賀の推理で意外な真相が暴かれる。鍵となるのは2年前そして4年前のニューヨークでの出来事。2箇所の所轄の警察の応援として捜査に参加している加賀恭一郎が徐々に真相に迫っていく。
    そして加賀恭一郎の新しい恋愛の行方が気になる終わり方は、第1作目と同じだ。3作目がこの続きになるかどうかわからないが、3作目も読もうと思う。

著者プロフィール

1958年、大阪府生まれ。大阪府立大学電気工学科卒業後、生産技術エンジニアとして会社勤めの傍ら、ミステリーを執筆。1985年『放課後』(講談社文庫)で第31回江戸川乱歩賞を受賞、専業作家に。1999年『秘密』(文春文庫)で第52回日本推理作家協会賞、2006年『容疑者χの献身』(文春文庫)で第134回直木賞、第6回本格ミステリ大賞、2012年『ナミヤ雑貨店の奇蹟』(角川書店)で第7回中央公論文芸賞、2013年『夢幻花』(PHP研究所)で第26回柴田錬三郎賞、2014年『祈りの幕が下りる時』で第48回吉川英治文学賞を受賞。

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