- Amazon.co.jp ・本 (222ページ)
- / ISBN・EAN: 9784061858299
作品紹介・あらすじ
メロンの温室、煙草の畑、広がるれんげ草の群れ。香り高い茶畑、墓場に向かう葬列、立ち並ぶ霜柱など。学校までの道のりに私が見た自然も人間もあまりにも印象的であった。心を痛めることも、喜びをわかち合あことも、予期しない時に体験してしまうのを、私はその頃知った。永遠の少女詠美の愛のグラフィティ。
感想・レビュー・書評
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すっごく好き。軽々しく感想を書きたくないくらい。自分の人生のどこかに、登場する主人公のような気持ちになった瞬間があったような気がする。子どもはまだそれを表す言葉を知らなかったとしても、子どもなりに色々感じ、考えている。そんな儚い瞬間をこんな風に表現し、物語にするなんて凄まじい才能。
子どもの頃は夢と現実の境が曖昧だったり、些細な出来事が大きな勘違いに発展したりもするんだけれど、それを「馬鹿らしい」とか一蹴するんじゃなくて、『堤防』に出てくる父や『桔梗』の美代さんのように、敬意を持って対等な目線で向き合える大人になりたいと思った。何度も読み返したい一冊。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「晩年の子供」山田詠美◆狂犬病で死ぬまでの半年間、小川を流れていった桔梗の花、家に帰れない夕暮れ…天真爛漫無邪気ばかりが子供じゃない。大人から見ればくだらなくても、子供は子供の世界で、視点で、全力で絶望し、悟り、残酷さを発揮する。この感覚を大人になってから書ける山田さんはすごい。
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普通夏と言われると明るく爽やかなイメージを抱きがちだけど、この本は夏の気だるい部分とかなぜか秋とか冬よりも少し寂しくなる雰囲気とか存分に感じた。死とか性っていう人間が抗うにはあまりにも漠然としてて当たり前で遠いことが少し斜めから切り取られててすき。夏休みもう一回読みたいー
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「ひよこの眼」が教科書に掲載される国語教育の豊かさ。誰もが子供の頃に経験する「私だけが分かっている、私には事の裏側が分かる」という優越の愚。夏のどうしようもなさ。
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完璧な短編集。どの話も忘れることのできない衝撃な内容になっている。子供の頃の夏休みは特別だったことを、ぼんやりと思い出させてくれる。
私自身はこんなに晩年の子供ではなかった。
でもなんとなくだけど、色々なことを、こうやって考えたことがあったんじゃないかな?
子供の頃の夏を想うと、懐かしくて胸が痛む。でも心地良い痛み。こうやって当時の夏を慈しめるのも大人の醍醐味なんだなあ。 -
内容は作り物にしても、その中で情緒をこれほど豊かに表現できる著者の表現力に対して、惹かれた。幼い頃の情緒は、それが何ものなのかをまだ知らず表現も出来ない内に時間の経過を経て簡単に流れてしまう。大人になってからは意識したって立ち止まることさえできない類のもの。しかしそれは大人にとっては小さいが、子どもにとっては重大なもの。
この本ではそれを文章で的確に表現しており、更に著者の高い感受性でより広げられていると感じた。子どもの目線ではあるが経験豊富な死に面したご老人の思考も感じさせる文章に、少し混乱させられる。 -
なんと評価したらよいか。
いろんな場面で衝撃的な小説。
少女から見た男と女の世界、死に対する思い、客観的に見る自分。
その時代の少女時代の山田詠美の感性は、通常の人の何十倍も研ぎ澄まされていた。
普通では見過し忘れていくものまでもが記憶されていた。
全ての短編が心に残るが、「花火」は、特に記憶に残る物語。
二十八で人を本当に愛し、終わりがこないように演技する、女としての能力(感性)。女性の謎。
男と女、恋、愛、性について山田詠美は書き手として表現している。
読んでいて飽きない。
山田詠美、もっと読んでみたい。-
素敵なレビューですね。女性と男性は全然違うんだなあと感じました。
女性が自然と身につけていくようなこと、しかし少女時代には身につけると思い...素敵なレビューですね。女性と男性は全然違うんだなあと感じました。
女性が自然と身につけていくようなこと、しかし少女時代には身につけると思いもしなかったようなことを手に入れる瞬間を描いている感じがします。なので女性からするとちょっと痛くて気まずい感じです。
読んでくださりありがとうございました(^^)2014/08/23
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山田詠美の言葉選びは、やはり唯一無二だと感じる。難しい表現や言葉は使っていなくとも、ある「うまく言えない」感情や情景の描写に、惜しげもなく文才を発揮させていると思う。この名詞を、この形容詞とともに、こんなリズムで言い表すのか、と息をのむ瞬間が多かった。