- Amazon.co.jp ・本 (164ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062081955
感想・レビュー・書評
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魚住さんのデビュー作とのことでしたが、初めからここまで「心の内」をみずみずしく書かれていたのはさすがだと思いました。
読むと誰しも胸の奥がチクリとする物語の作り方、登場人物たちの描き方、だからこそ読後には少し救われた気持ちにさせられる構成は、見事の一言です。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
シンプルな表現と文章が、すごく読みやすかったです。
過去に色々あったから、クールに過ごしていこうと決めていく主人公の気持ちも分かるし
根っこの部分が解決していないから、バランスが取れないと言う気持ちもよく分かりました。
グラグラと揺れながらも少しずつ強くなっていく姿は、いくつになっても感動するし、チカラを分けてもらえます。
静かに進んでいくストーリーのなかで、まさかと思う展開も待っていて、すごく面白かったです。 -
3月読んだ
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前身緑色をまとったミドリノオバサンに触れて願い事を言ったら、その願いが叶う。「助けて」……わたし、なにをいってるの?小学生のときに受けたいじめの記憶におびやかされるわたしは、中学ではクールに生きていく作戦で切り抜けてきたが……。
危うく揺れる心情が上手い。
装丁 / 菊地 信義
装画 / 野村 俊夫 -
大人も子供も同じくらい悩みを抱えてるんやで、っていう展開に対し、簡単には悩みを解決できない大人と、あっけらかんと未来に進む子ども。児童文学の何かの賞を受賞したあたり、君たちはいつでもやり直せるんやで?っていう大人の押しつけを感じなくもないけども。いうほど子どもの世界も単純じゃないのよ!っていうキッズの反対意見もあるかもしれん。
けどやっぱりそんな事言われたら、ガキは偉そうなこと言うんじゃねー!って言いたくなる大人になっちまったな。だって君ら単純じゃん、ぶっちゃけ。ってな。
しかし一番のリアルは、家に押しかけてきて大声で叫ぶ子どもの同級生に、母親がパニクってバケツで水をぶっかけるってところか。バケツて。
今どきツタヤで音楽の話をしようよって中学生をナンパするおっさんにはリアルを感じないけど。え、実は通用するの?マジか。 -
YA小説のはしりと思われる魚住さんの初作品。
96年出版のこの作品は昔のYAガイドブックによく登場していたため一度読んでおくべきだと思ってました。
いじめ、家庭環境、心の闇、友達、大人…
それぞれを深く掘り下げてはいないのですぐ読めたと同時に、少しあっさりすぎやしないかとも思う。現実に、打開する術はそんなに簡単ではなくもっと葛藤や悔しさ苦しさがある。
それでも当時確立されていなかったジャンルの書き手が現れて、この世代の人たちには救いになっていたと思う。こういう時代を書いてくれる人がいてよかったと思う。
思春期を行くものは年代変わっても同じような悩みを抱えて暗黒の時代を生きている。
YA小説には共感できてさらになんらかの形で光の道が描かれていることを望みます。 -
11歳のとき、ふとしたきっかけで仲間はずれになった「わたし」は、そのあとにつづくクラスメイトたちの執拗ないじめに必死でたえてきた。傷ついて砕けそうな心を「クールに生きる」作戦でなんとか支えながら、数年間をおくっていたのだが、不思議な雰囲気の若い女性、サラさんと知りあって、「わたし」の日日は微妙に変化していく。―もうここからぬけだせないのではないか。バランスのとれない危うく辛い日々をシャープな感覚で描ききった新鋭の問題作。第36回講談社児童文学新人賞受賞作。
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何か面白かった。
主人公がいじめられてた人の家にいってわーーーってさけんで言いたかったこと全部言うとことかスッとするね。
サラさんもあの橋の上で助けて欲しかったんだ、って繋がるとことかも好き。
あと、親にどこ行くのかって聞かれて、今更なに言ってるんだっていうとこね。
主人公たくましい。山の奥から帰ってくるとことか、そもそもこの自分で作ったルールを守れてたとことか…
俺には絶対無理だもの…
うーむ…… -
小学生の頃、ふとしたことからいじめに遭った「わたし」は、中学入学と同時に
「クールに生きる」「友だちはつくらない」というモットーのもと生きるようになった。
しかし、いじめた相手に無言電話をかけるなど、傷は全く癒えていなかった。
そんな中で偶然に知り合った年上の女性サラさんと交流を重ねていくうちに
過去の傷を見つめ、それを乗り越えようと「わたし」の心は動き出す。
弱いけれど必死に自分を支えて生きていこうとする語り手の心理描写がよくできている。
サラさんもただの優しい大人ではなく、後半で弱さを抱えたひとりの人間に戻っていくところが
みんなバランスを時には崩しながら、それでも必死に生きているという
この作品のテーマに沿っていて良かった。
もし今の時代にこの作品が書かれていたら、無言電話じゃなくて自傷行為が出てきそうだなー。 -
魚住作品の主流はこっちだったかと、思えるデビュー作。思春期の心の葛藤と社会人リサさんの悩み。大人になってもこんなじゃ「世の中っていつか楽しくなる事あるのかな~」と少々うんざりする話。でかい字とザクザクのレイアウトであっという間に読めるけどそれはぐいぐい読むからじゃなくてさっさと読んでしまいたいから
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読んでいる間、ヒリヒリする感じ。1996年発行となっているので、10年以上前の女子中学生(まだ携帯も持っていない)の話だけれど、その感覚はいまやもっと鋭敏になっているのかもしれない。(ニュースなどを見た感じだから、一部のことかもしれないが)私自身は中学・高校と呑気な学校生活を送っていて、本を読んでいれば幸せだったし、学校生活も楽しかったけれど、いつの時代もその場所に違和感を感じる人はいると思う。自分に好きなことがあって、一人でもそれを認めてくれる人がいればなんとかしのいでいけるのではないだろうか。この話でも主人公が一人の若い女性と知り合うことで変化が生まれ、それは一方的なものではなく双方にとっての変化となる。そして小さな変化が少しずつ周囲を変えていく。そうなんだ。自分の問題は自分で解決するしかない。でもそのためにはエネルギーをためる場所や時間が必要なんだ。主人公の両親も遅くまで仕事して、マンション買って、自分達なりに頑張っているんだと思う。子供もそれがわかっているからこそ「何にもわかっていない」と思いながらも一人で必死に踏ん張って、戦っているんだろう。なんだかみんな忙しく、心身ともに疲れている。頑張る人も呑気な人もいろいろいていいのになぁ、と思ってはいけないのかな。短くすぐに読める話だったけど、いろいろ考えてしまった。