醜聞の作法 (100周年書き下ろし)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (218ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062166829

作品紹介・あらすじ

さる侯爵が、美しい養女ジュリーを、放蕩三昧の金持ちV***氏に輿入れさせようと企んだ。ところが、ジュリーには結婚を誓い合った若者がいる。彼女を我が子同然に可愛がり育ててきた侯爵夫人は、この縁談に胸を痛め、パリのみならずフランス全土で流行していた訴訟の手管を使う奸計を巡らせた。すなわち、誹謗文を流布させ、悪評を流して醜聞を炎上させるのだ。この醜聞の代筆屋として白羽の矢が立ったのは、腕は良いがうだつの上がらない弁護士、ルフォンだった。哀れルフォンの命運やいかに-。猛火に包まれたゴシップが、パリを駆けめぐる。『ミノタウロス』の著者が奏でる、エッジの効いた諷刺小説。

感想・レビュー・書評

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  • いやー、面白かった。
    映画か舞台を見ているようで。
    フランス革命前後であろうパリが目に浮かんでくる。
    貴族のきらびやかな衣装から、平民たちの生活、はたまた修道院の尼僧の清らかさまで。

    この時代、市井の人達の噂話の情報源はパンフレットだった。
    これを利用し、公爵夫人は養女と好色爺の縁談を壊すことを計画する。
    公爵夫人と謎の仲介者の間のやりとりが書簡形式で展開されると同時に、パンフレットが覚え書きとして織り込まれる構成が見事。

    養女の運命は一体どうなるのか。
    執筆者ルフォンに降りかかる災難はどうなるのか。
    あっちでハラハラ、こっちでドキドキ。

    ただ全部読み終えてみると狐につままれたような気分。
    一体どこまでが現実でどこまでが嘘なのか。
    誰と誰が実在していたのか・・・。
    これもまあ面白いところではあるけれど。

    他のレビューでも指摘されるように、翻訳文を読んでるような錯覚に陥った。
    なんとなく小田島さんのシェイクスピアのような。
    ある意味、オリジナルでここまで書けるってすごい。
    佐藤亜紀さん、他にも読んでみよう。

  • オスカーワイルドの短編風。佐藤亜紀の達者ぶりが際立つ。最後のおちは…蛇足な気がしないでもないが華やかさは増したので、これはこれで。

  • 手紙文とパンフレットの文書で全て構成されているのが面白い。
    意外な展開も興味を引き、一気に読めた。
    ただ、ちょっと最後が失速した感じが…。
    書き過ぎては面白くないからとあっさりまとめたのだと思うけれど、個人的にはもう少し丁寧に書いて欲しかった。
    フランス、書簡小説というとどうしても「危険な関係」を思い浮かべてしまうので、比べてしまってね…。

  • 富と権力を振りかざすある好色爺との縁談の計画を知った養女ジュリー。強引に話を進めようとする侯爵を横目に、彼女の育ての親である侯爵夫人は、ジュリーの真の婚約者とともに縁談を壊すため、ある計画を立てる。それは『醜聞』を流すこと。小さく始まった醜聞(ゴシップ)は人と人の間で囁かれ、次第に巨大化し、街全体を覆っていく。

    18世紀末フランス版Twitter。現代でもある小さなトピックがインターネットを通して世界中に発信されることを考えると、当時の話という一言では片付けられない怖さと面白さがある。
    醜聞を計画する者、執筆する者、広める者、面白おかしく囃し立てる者、踊らされる者、そして当事者たち。喜劇のようなストーリーは主に書簡のやりとりで進み最初は少し読みにくさを感じたが、各々の思惑が絡み合い始めた中盤くらいから先が気になり止まらなくなった。最後はすっきりする落としどころ。

  • 醜聞を世間にまきちらし、状態を己の都合のいいように展開させる…技?

    何と言うか、最初から最後まで
    何かの劇を見ているようでした。
    確かに、相手は見えない生活をしている身分の高い人達。
    なので憶測でものを言っても、想像しても分からない人達。
    とはいえ…中々すごい動かし方をするな、と。

    それぐらいです。
    面白かったか、と聞かれると、読めました、としか答えられません。

  • まあ、面白かったんですけど、この時代に設定した必然性がよくわからない。

  • ●・・・・・・・さとうせんせいはなにか改心でもされたんでしょうか。
    噂で人々をコントロールする物語と書くとすごーく底意地悪そうなのに、なんだかたわいもないお話だぞ? いやいや佐藤亜紀がこんな素直な小説を書くわけがない、ちゃんと読めばきっとどこかにえげつない毒が!
    でもなんと言うことでしょう、これなら古典を好む上品な50代にも勧められるわってあら??

    ●大衆の好みを読んで煽ってお望みどおりの世論をつくった上できっちりきれいに火消しする弁護士先生を、とかく炎上させるだけさせといて放置する昨今の方々は御見習い下さい。
    なんか見落としてる気のするあまりうっかり再読しそうだがしない。

  • かなり年上の好色な金持ちの男と意に染まない結婚をさせられそうになったうら若い女性。その結婚から逃れるためにパリ中に噂を流す…という粗筋を見て、面白そうだと手に取りました。
    書簡形式でさくさく読めるし、実際面白かったです。
    ただ、なんか物足りないというか。両手のひらに乗る大きさのガラス細工の完璧な球体みたいな、綺麗でキラキラしてて繊細で完璧なんだけど、あくまで両手の中におさまるサイズでひねりがない。
    次はこうなるんだろうな、と思うとおりに進んでいって、とても綺麗にまとまった話だなぁと。
    意外な黒幕を作るとか、動機に一捻り加えるとか、そういうカタルシスを期待して、期待が消化されないまま終わったのが残念でした。

  • エロ爺いとの縁談を壊すためかかれたフィクションにパリ中が熱狂し……。大満足。侯爵の養女の恋に夢中になり、"醜聞"に一喜一憂するパリ市民の姿にニヤニヤするうち、それが現代の自分たちと相似形であることに気付かされる。軽快な物語に隠された辛辣な皮肉で人間の本質をえぐり出す傑作。

  • 流石のおもしろさ!
    SNSの時代になっても、人間は人間のままだ。

    これまでに読んだ佐藤亜紀作品の中では一番テンポ良く読めた。思いがけず一気読みしちゃいました。いや、「させられちゃいました」と感じるおもしろさでした(^^)

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著者プロフィール

1962年、新潟に生まれる。1991年『バルタザールの遍歴』で日本ファンタジーノベル大賞を受賞。2002年『天使』で芸術選奨新人賞を、2007年刊行『ミノタウロス』は吉川英治文学新人賞を受賞した。著書に『鏡の影』『モンティニーの狼男爵』『雲雀』『激しく、速やかな死』『醜聞の作法』『金の仔牛』『吸血鬼』などがある。

「2022年 『吸血鬼』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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