- Amazon.co.jp ・本 (226ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062171397
感想・レビュー・書評
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すごいことを淡々と書いているのがこの人のすごいところです。
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東日本大震災と原発事故という巨大な黒い白鳥が飛来するさなか、想像を超えたカタストロフを目にしながら、震災体験を経て変わった人生論を展開……と期待して手に取った。だがここに描かれているのは緊急性からは最も遠い、長期的な人生プランニング=資産運用の話であった。橘玲さんの資産運用本を読んだことがある人にとっては目新しいことはないだろう。
その意味では拍子抜けの一冊であった。では何故「震災の後に」?
氏は震災の現実を目にして、やりかけの仕事を中断し呆然と過ごしていたという。「そしてあるとき、天啓のようにそれは」やってきたのが、いままでやってきたことを徹底的に突き詰めることでしかその先には進めないという想いだったそうだ。
なので、この本で説明される資産運用による人生設計は他の橘玲本よりさらに明快かつ簡潔で、まず最初の一冊としてもおススメだ。当然ファンドマネジャーの甘言もない。
また、この本が著された2011年当時、絶望的なまでに高まった政治不信を感じた。現政権はあの民主党政権にに比べれば、はるかに物事が前に進んでいるのは否定できないだろう。
最も興味深かったのは本の題名そのままの最終章。特にその中の「希望」の創出についての具体的な提案。それは、
1.定年制の廃止 2.同一労働同一賃金 3.解雇規制の緩和 この3つによる流動性のある労働市場を作れば、就職(新卒)に失敗した若者も、中高年の転職希望者も、仕事を見つけやすくなる。「たとえ年収が下がっても、仕事さえあれば人は未来に希望を持って生きることができる」、そして世界最悪の自殺率は下がっていく、という
加えて個人的に思うのは、これからロボット化、AI化によってさらに人的労働力の必要性は減少するだろう。そのとき週5日労働が果たして最適だろうか? 週4あるいは週3日労働で「年収が下がっても、仕事がある」という環境があれば、収入だけではない多くの人に行き渡る豊かさが創出できるのでは? と考えた。 -
震災から3年半経っているにも関わらずこの本を読んだのは、選挙結果にがっかりしたからかもしれない。あのとき、どうだったかを知りたくなったから。
しかし最終章を読むと、3年半経った今でも何ら状況が変わっていないことに気付かされて愕然とする。著者は「日本が変わるとしたら、これが最後の機会だ。大震災と原発事故の悲惨な現実を目の前にしても、為政者も国民も変わる勇気を持てないとしたら、あとは伽藍の重みで自壊していくだけ」と警鐘を鳴らすが、まさにその道を突き進んではいないだろうか。また著者は「私たちにできることは、個人のリスクを国家のリスクから切り離すこと」とも。これには深く納得した。 -
大震災により日本の抱えるリスクが顕在化した中で、人生の組み立て方を変えていこう、というのが主題。
中身自体はよくある話だとは思うが、海外と国内投資のポートフォリオの重要性と、スペシャリティを意識した働き方の重要性を説く。
読んで思ったのは、スペシャリティを発揮して収入を確保するように啓発するのも大切だが、すべての国民にそれを望むのは酷で、多数になるのは「収入はこれまでの様な豊かなものは享受できない」層になるはずだ。その層に対して、「収入が減る分仕事の責任分担や時間負担が軽くなり、仕事以外の人生を謳歌出来る」というメリットをいかに感じて、スムーズにシフトしてもらうか、というのが最も重要な変革なのではなかろうか。 -
個人の金融資産をマイホームに、人的資産を会社に投資する事は、保守的と言われる日本人が行っている最もリスキーな投資だ、という橘氏の主張は以前と変わらず。大震災とそれに続く原発事故によって、それがより顕著になった。個人のリスク許容性は会社に比べれば著しく低いので不動産のような変化の激しい金融資産は会社に任せるべきだというのも相変わらず。
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著者によると、この本は日本に降りたった二羽の「ブラック•スワン」の物語であるそうですが、ボク的には、ブラック•スワン化の進行により従来の成功スキームが崩壊していて、新しい成功スキームを手に入れなければならないっていう話と思いました。
ブラック・スワンとは、「ありえない or 起こりえないと勝手に人間が思っているだけで、実際に起こっちゃった想定外の衝撃的事象」で、その特徴は↓
a) 異常であること。過去に照らせば、そんなことがおこるかもしれなとはっきり示すものは何もなく、普通に考えられる範囲の外側にあること
b) とても大きな衝撃があること
c) 異常であるにもかかわらず、私たち人間は、生まれついての性質で、それが起こってから適当な説明をでっち上げて筋道をつけたり、予測が可能だったことにしてしまったりすること(後知恵バイアス)
です。
かつて、日本人は「不動産神話」、「会社神話」、「円神話」、「国家神話」の四つの神話を盲信し、一様にそれに則った成功スキームに乗って人生設計してきたと言います。巨額の住宅ローンを組んで持ち家を買う。大企業に就職して定年を迎える。円資産の集中保有。定年後は(公的)年金生活。
しかし、四神話の信者にとって現状は厳しい。不動産価格はバブル崩壊後大きく値を下げ、持ち家世帯の債務超過は必至だ。そもそも、ボクに言わせりゃ終身雇用なんて日本に存在したことなんてないし。円神話があったというのは初耳だけど、実質購買力を維持するには、為替リスクは重要だ。現在の政府債務残高と将来のい人口動態を鑑みれば、公的年金なんかこれっぽっちも期待できない。正に、神話の崩壊はブラック•スワン。要は、日本人の伝統的な人生設計プランは、もう死んでいるってことです。
じゃあ、新成功スキームはなんなの?ってことですが、ボク的にはこう解釈しました↓
a) スペシャリストを目指す(拡張不可能な仕事に従事する(月並みの国の)クリエイティブクラス=安定して給料がそこそこ高い)。弁護士、医者、会計士などの専門家。ゼネラリストや場マックジョブを志向して会社にしがみつく生き方はもはや残念な生き方だし、クリエーター(拡張可能な仕事に従事する( 果ての国の)クリエイティブクラス)として成功するのはギャンブルに近しい。
b) 資産を不動産(住宅ローン)と円預金のみに集中させない(橘氏は一貫して国際分散投資を薦めている)
c) 国家に依存しない生き方
ってところでしょうか。
あ、あと、借金しまくりの日本が財政破綻(円の信用が失墜して通貨の価値が大きく毀損)した場合確実に起こることは、
(1) 高金利
(2) 円安
(3) インフレ
だそうです( ボク的にはサクサク財政破綻してもらって一向に構わないです)。
ちなみに、著者の言う二羽の黒鳥は、1997年のアジア通貨危機を端緒とした金融機関の経営破綻(失業率の上昇と自殺者数の増加)と、「3.11」です。著者の橘氏は、「3.11」から大きな衝撃をうけて少しセンチになっているためか、本書はやや精彩を欠いているように思えて少し残念です。
最後にブラック•スワンについて一言:ボク的には、今後、ブラック・スワンの発生頻度は増大すると思います。ボクたちの関心はより開いた系へと向かっていると思うから。考慮すべき要素が指数関数的に増えていって、全てをキャッチ・アップできなくなる。その結果、想定外のビッグ・イベントにやられちゃっう。常識とか神話とか経験は、考慮すべきファクターの全てを勘案して練り上げられたものではないから玉湯等なのだと思います。 -
以前、ラジオ講座で「やさしいビジネス英語」のビニエットで取り上げられていたのですが、アメリカ人は911語に考え方が変わった人が多いというものでしたが、日本人は今年(2011年)の3月11日に起きた地震を境にして考え方が変わった人がいるかもしれません。
資産運用の指針を書いた本を今までに何冊か執筆されてきた橘氏が、前半で日本人の人生設計を変えた4つの神話について簡単なバランスシートを用いて解説をしています、さらに後半では、ポスト311の人生設計として、どのような資産を強化していくべきかについて、アドバイスとしています。
年齢によって、あとどの程度働けるかは違ってくるので、人的資本と金融資本のバランスを年齢とともに見直す重要性が説かれていました。
また、個人的には気が進まないのですが、最後に述べていた通り、1)定年制を法律で禁止、2)同一労働同一賃金を法律で制定、3)解雇自由を一定額の金額を支払うことを条件に整理解雇を認める(p215)という大改革はやらなければ日本の活力は衰える一方なのでしょう。
以下は気になったポイントです。
・「ブラックスワン」の本において、黒い鳥の特徴として、1)異常、2)大きな衝撃、3)異常であるにもかかわらず、起こってからは適当な説明により予測可能だったとしてしまう、としている(p19)
・1997年にも巨大な黒い鳥と出会っている、97年7月にタイバーツ大暴落、東南アジアの通貨危機、韓国、インドネシアでの危機、日本では金融機関(三洋、拓殖、山一証券)破たん、ロシア危機、2銀行(長銀、債銀)の破たん(p29)
・BS貯金箱の右側にはお金の入り口が2つついていて、下の投入口には自分のお金(資本金)、上の投入口には他人からの借りた金(負債)をいれる(p35)
・資産の運用利回りが10%なら、資本金500円では50円の利益だが、500円の負債を加えると利益は100円に増えて、資本金に対する利回りは20%になる、これをレバレッジと呼ぶ(p36)
・資本主義とは、複利とレバレッジによってバランスシートを拡張していく運動のこと(p37)
・帰属家賃とは、マイホームとは自分で自分に家賃を払うこととする、時価5000万円のマイホームを所有しているとして、賃貸に出せば月額20万円の家賃収入があるとすれば、これが帰属家賃と考える(p40)
・頭金1000万円で住宅ローン4000万円で年間家賃が250万円の場合と、レバレッジを5倍掛けた金融商品の保有(証拠金1000万円、負債4000万円)により5%の運用利益があるのとバランスシートは同じことになる(p44)
・経済学的には、持ち家と賃貸の違いは、不動産投資のリスクを引き受けるかどうかにある(p45)
・マイホーム取得ではなく、秘密は、値上がりし続ける中での「レバレッジ」にある、バブル崩壊後は、不動産リスクが顕在化したので、投資リスクの異なる持ち家と家賃を比較する「まやかし」が登場した(p49)
・賃貸する側から見れば、常識とは逆に、家賃と市場価格から考える利回りで考えると、家賃の安いワンルームマンションほど不利、賃料の高い大型物件を大家族で借りると得である(p52)
・現在日本の労働環境に起きている大きな変化とは、1)リストラによりサラリーマン実数の減少、賃上げ凍結、ボーナス削減、福利厚生廃止、サービス残業の状態化による実質賃金の低下、2)ベンチャーや外資系企業の台頭による転職チャンスの発生(p76)
・超低金利でも、デフレ経済ならば、実質金利はプラスであり、物価が下がる分だけお金の実質的な価値は増えていく(p100)
・私たちの人的資本は一定年齢を超えるとゼロになる、それ以降は金融資本だけで生きていくことになる(p111)
・個人の寿命は国家よりもずっと短いので、国家から受け取ったお金を(税金などで)返済する前に死んでしまい、結果的にお金をもらったのと同じことになる、これが国債発行が人気を集める理由(p114)
・日本国の歳出は、国債費と地方交付税を除けばその半分が社会保障費、したがって年金制度を廃止するか、健康保険・介護保険を民営化すれば、将来債務も大幅に減少する(p125)
・国家破産とは、1)高金利、2)円安、3)インフレ、が同時に、かつ異常なレベルで発生すること(p127)
・日本人の4つの神話とは、1)不動産は上昇しつづける、2)会社はつぶれない、3)円は安全な資産、4)国家は破産しない、であった(p132)
・バザールは開かれた空間で、店をたたむのも出すのも自由、伽藍は物理的・心理的に閉じ込められている空間、バザールと伽藍は「評判」めぐってまったく異なるゲームが行われている(p139)
・劇団役者よりも映画俳優が儲かるのは、映画は拡張可能だが、演劇は拡張不可能だからである(p146)
・アメリカの企業が成果主義なのは、スペシャリストを評価する方法がそれしかないから、自分の稼ぎが反映されるのは当たり前でそれ以外の方法では給料が決められない、日本企業は「成果主義」を導入する際に、バックオフィスの仕事も含めたために何を成果にして良いかわからなくなった(p154)
・知識社会で高く評価されるのは、言語的および論理数学的知能のみ、音楽的知能や身体運動的知能は飛びぬけて秀でていないと市場価値は無い(p158)
・今後の資産運用としては、商品を対象としたETF(上場MSCI世界株)など(p177)
2011/8/7作成 -
伽藍を出てバザールに生きる。
Linuxに関する書籍以来、たまに目にする言葉だか、
人生設計においても、選択の期限が迫ってきているようだ。
中盤までは、これまで書かれた事を再確認する内容。
理解したつもりで、性懲りも無く現状の価値観に引き戻しておいて、迷走し途方に暮れているだけだと思い知らされる。
自身の既得権益を手放してもなお、掴む価値のある自由とは何か?
考えていられる時間は残り少ない。
正解の見えない選択を続けながら、絶望に負けないだけの希望を自分で見つけなければ。
この本は、そのためのきっかけにしたい。 -
2011.3.11東日本大震災以降
日本の神話は崩れた
①不動産は上がり続ける
②会社は潰れない
③円は最も安全
④国家は破綻しない
未来は不確実で世界は限りなく残酷だ
震災から12年が過ぎた現在
まだ神話を信じている人はいないか
ブラックスワンは必ずまた来る -
著者は、「何かに依存する」生き方がリスクが高いことを強調する。
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2011年に書かれたもの。PART1は「日本人の人生設計を変えた四つの神話」について。不動産神話、会社(終身雇用)神話、円神話、国家神話、の四点。震災は関係ない話題。PART2は「ポスト3・11の人生設計」について。人的資本と金融資本を分散することが薦められている。
2022年現在、述べられたリスクは円の暴落を除いてはそれほど具現化していない。しかし、リフレ派が間違っていたことが明らかになりつつあるので、遅ればせながら構造改革側に傾かざるを得ないのだろうと思う。 -
改題、日本人というリスクを読了
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ブラックスワン
スワン(白鳥)は白しかいないと思われていたが黒い白鳥(ブラックスワン)が発見される。衝撃的でとても異常なことだが、予想もできたと思い込める様な出来事を指す。
年金・社会保険制度の崩壊、人口減、少子高齢化社会
2050年には65歳以上がおよそ40%となる
株式投資はプラスサムゲーム
人は生活水準を下げられない。このことから、自然と成長を目指した社会となっていく。人間の欲望を原動力として増殖していくメカニズム。
アメリカという国
ただ合理的で実力主義というわけではない。
履歴書には生年月日記入欄もなく写真すら貼らない。人種差別や年齢による差別などを徹底的に排除し、公正と正義を求めた結果、企業はスキルや経験や能力を評価するシステムとなった。一見すると実力主義と思われる背景。また、解雇についても企業は株主のためにあるという考えが強く、株式の利益を守るためにリストラを敢行する。もちろん差別や保証なき首切りはすぐに訴訟されるが。拡張性のある働きができるクリエイターやスペシャリストは、利益をもたらす事が会社への貢献と考える個人事業主の様な体をなす。失敗すれば会社を追われるが身につけたスキルや経験で他会社へ転々と移っていく。8割はマックジョブやバックオフィスが占めているが、やはり定年など無い(年齢差別になるから)。50代あたりでFIREを目指している。
一方、採算が取れなくとも一生クビにしない日本の戦略は袋小路へ。スペシャリストにもバックオフィスをさせる。不景気に陥り、能力がない人材もクビに出来ずないため人件費削減が新規採用控となり就職難となる。また中高年の転職も難しい。企業は人材へ仕事を与えるためと、リスク分散型を兼ねて複数の事業を起ち上げる。
才能のないことはやってもできない。
自由とは選択肢の数。
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震災後のタイミングで出版されたこと以外は、著者がいつも書いている人生設計本と同じ内容。
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著者の本はいろんな考え方について気づかせてくれる。
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タイトルはこんなだけど、この著者のいつもの資産形成・人生設計論をまとめたものに、短い震災についての解説をつけたもの。別に目新しくはない。
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題名がとても大層なんだけど、これ以前の橘玲の本を読んだことがあるなら買わない方がいい。2週間で書き上げたと言っている通り、最後の10ページしか読むべきところがない。逆に初めてだったら、これ1冊読めば充分。
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タイトルからは想像しにくい金融リテラシーに関する書籍。
思い込みを捨て、事実を見ようというスタンスは、
最近の著書である『言ってはいけない』に通じるところがある。
持ち家に関する所は身につまされた。
世代的に持ち家を買う人がかなり既婚者では多いが、
b/s的な考えを持って考える方は少ないのだろう。
それが将来どのようなリスクを産むのか、
書籍で丁寧に説明してくれている。 -
橘玲の本をもう少し読んでみたいという動機で、タイトルからの所謂ジャケ買い。通販だから、中身がこのような資産設計について書かれたものとは想像しなかった。「大震災の後で人生について語るということ」ーなるほど、その危機意識かと合点した。
この本が警鐘を鳴らすように、退職した老人は、年金や貯金、不動産などの資産を頼りに生きるが、給与が無ければ拡大性がない。だからこそ慎重に生きているのだが、ある日その資産が綺麗さっぱり無くなってしまえば。常にそうしたリスクを抱えながら、我々はどのように資産運用していくべきか。
気になる事は他にもある。働き方の日米の違い。開かれた労働市場としてのバザールと閉鎖的な伽藍の対比。この会社に縛られなくても、いつでも転職できるのだというアメリカ式の如何に健全な事か。日本式が全て劣るとは言わないが、改めて考えると、就労システムはアメリカ式の方が優れた仕組みになっている、少なくとも労働者側には。そんな事を見つめ直した一冊。 -
3.11によって今までの人生では当たり前であったことが当たり前ではなくなった。それと同じように今まで当たり前に多くの人が目指してきたエリートサラリーマンコースもまた当たり前のものではなくなっている。一流大学を出て、一流企業に入り給料は上がっていく。結婚して子供が生まれたら郊外にマイホームを建てる。それらは投資の観点から見るとリスクを極大化しており、震災や金融危機のような不幸に弱い。卵を一つのカゴに盛るな、とは投資の世界で言われることだが、企業に依存しているサラリーマンは人的資本を一つのカゴに盛っているのと同じだ。だからこそ、汎用性の高い知識や技術を身につける、だとかマイホームのようなリスクの高い不動産の購入がどれだけリスクが高いか、など人生のポートフォリオをリスク耐性の高いものに変えていく必要があるだろう。
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社会学
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橘氏の集大成的な本著。これまでの著書は冗談めいた絵空事も多かったが、本著はポスト3.11の生き方という切り口で戦後的な価値観の清算がより現実的なアプローチから力説されている。気付かされた点多し。
「東北の被災地域では、家ばかりか会社ごと無くなってしまったひともたくさんいます。震災の年に就活をすることになったのも、被災して仕事を失ったのも、彼らにはなんの責任もありません。しかし再チャレンジを許さない日本の社会は、彼らの“自己責任”を問うのです。被災しなかった人間の既得権を守るために、被災者がより不幸になるのは、はたして正義にかなっているでしょうか。この理不尽な現実を正すために政府にできることは、まずは定年制の禁止、次に同一労働同一賃金の原則を方で定めること。そのうえで『解雇自由』の民法の原則に立ち返り、整理解雇を認めること。」
「この国にはいま、政治を批判する怒りの声が渦巻いています。しかしそのひとたちは、伽藍の世界(住宅ローンなどでリスクを極大化した戦後の高度成長期に最適化されたポートフォリオ)に立てこもったまま、そんな国家に自分の人生の全てを預けようとしているのです。私たちにできることは、個人のリスクを国家のリスクから切り離すことです。」 -
知識として知っておいて損はないかな。
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これまでの著書の内容とほぼ同じだが珍しく政府への提言が含まれている。震災にはあまり関係なかったな。橘氏読んだことない人にはオススメ。
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人生設計のポートフォリオを見直してみよう。
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自分自身の人的資本を高める(知識、技能、経験、資格を高める)
高度経済成長期まで有効であった日本社会の4つの慣習(家を買うこと、会社に定年まで勤めること、円資産を持つこと(預金または日本企業の株として)、定年後は年金で暮らしていくこと)が、現在では有効ではなく、むしろこれらの慣習にしがみつくことはリスクでというものである。そして、このリスクを回避するめに著者は大きく二つのことを勧めています。一つは、自社の倒産やリストラに備えて、転職をするために、社内でのみ通用する能力ではなく、社外の人からの評判や資格の獲得などによって自分の市場価値を高めておく。ということです。もう一つは、インフレや日本経済の悪化に備えて、世界株に連動するETFを資産の一部に組み込んでおくというものです。 -
橘氏の考えは、残酷なようでいて、非常に現実的だと思います。
言っていることは、非常にシンプルです。
「何かに依存する」生き方はリスクが高いということです。
確かに、多くの人は橘氏が提案するような生き方は、かなり難しいと思います。
その生き方とは、氏曰く、自分自身の人的資本を高めること(知識、技能、経験、資格を高める)なおかつ、
金融資本のリスクを分散することです。会社に従属し、不動産(住宅)を持つという生き方(今までの多くの日本人)です。
しかし、こうした生き方では、ある「変化」(倒産、失業、病気など)が起こった時、
最大のリスクになってしまうからです。
94年時日本の世帯所得は640万円でした。それは15年では480万円になりました。
不動産価格も大きく値下がりしています。明らかに日本人は以前よりも貧しくなっています。
これから2030年にかけて、おそらく近代以降経験したことがない自体に日本は見舞われます(今も見舞われています)。
人口は2500万ほど減り、そして労働者は1300万減ります。
そして名目GDPを維持もしくは成長するために一人当たりの生産性を今よりも3割ほど上げなくてはいけません。
ただ、全体的に所得が減ります。これが意味するのは、かなりの格差社会が誕生していくということです。
※今の日本の社会システムは今の大きな変化に対応するのが難しいのは、
人口・労働人口が劇的に減少する自体を想定して作られていないからです。
多くの人(中間層)が短期間で、貧しくなるという経験はしたことがありません(その逆はありました)。
しかし今は、その中間層の多くが、貧しくなっていっています。
これを社会学者は、日本が分断していると指摘していますが、
個人的には、ここ10年で、日本は所得と能力で人を分ける階級社会になっていっているような気がします。
今はその過渡期だと思っています。企業ならびに学校等で多くの場所で「選別」が行われているいるのではないかと思います。
今、少なくない企業、職場内、学校内で起こっている事態は(精神疾患の増加、過激なリストラいじめ、自殺等)、
目を疑うばかりです。
より残酷な未来が訪れる中で、氏が提唱する、経済的に独立するためにはどうすればいいか?という一連のノウハウは、
知っていて損ではないと思います。 -
伽藍とバザールの比喩がわかりやすい。筆者の不安と注意喚起には共鳴するが、さて…
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人生設計とは、人生のポートフォリオを適切に管理すること。
人的資本(働いてお金を稼ぐちから)を、金融資本に変えていくこと。
働いて得たお金は、預金、株などの金融資産、不動産といった、金融資本に変えていく必要がある。
日本にはマックジョブ(低賃金だが、責任や残業がない仕事)を長期安定的にやる仕組みがないので、稼ぐためには知的労働に従事するしかない。
知的労働の世界で生き残るには、自分の能力を上げていく必要がある。
こうしたことは大体実践出来ているような気がする。続けていけるよう、努力あるのみ。これから40代を迎えるから、正念場かも知れない。