- Amazon.co.jp ・本 (226ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062176613
感想・レビュー・書評
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激しい雷雨に足止めされた探偵と助手と依頼人が、探偵事務所の中でとりとめのない会話をしている話。
一冊を通してひたすら3人の会話。
離婚した元妻子の居場所と現状を知りたいという本筋は途切れつつも消えず、合間に探偵・助手・依頼人それぞれの回想が挟まれる。
動かない場面で奏でられる会話は、物語より音楽に近く流れを愉しむもの。
静かな場所での一気読みがおすすめです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
事務所の外は雷雨で、探偵と助手と依頼人の起伏のない穏やかな会話や行動の描写が続いてゆく、お話。カタチとしては。
エンタメな推理物ではない。(そういう部分も極小あるような?)
読み進めるのに苦労しつつ、まるで自分も話しを聞いているように重なっていくものを感じた。小野正嗣の評のようにそれが「皮膜」だったのかもしれない。
終始穏やかなエピソードの重なりと思いきや、読後に微かに澱のようなものを残していく。
予想外のラストにその澱が儚く切ない色に変わってしまった。
言葉と記憶を味わうような小説でした。 -
堀江さんの著作は大好きですが、この作品は簡単なようで、ちょっと気を抜くと訳がわからなってしまい、読了まで苦労しました。
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特に大きな感動はないかもしれない。
抑えたグルーブをずっと感じて、
大きな盛り上がりも見せずに終わる
でも、そのなかで繰り広げられる基本テクニックは
秀逸です。
職人さんの仕事を見ているような出来栄えの作品です。 -
恐らく、読了までに今年一番かかった作品。
単調すぎて進まない進まない…
セリフに「」を付けない、と言う
この人独特なのか、この作品限定なのか分からないけれども、
その書き方に苦戦。まったく世界観に集中できなかったり、
進行を把握できないまま、ズルズルと読んでしまった。 -
探偵事務所を営む枕木へ,所在がつかめない別れた妻と息子の事で相談に来た熊埜御堂(くまのみどう)さん.珍しい苗字でたまたま枕木の記憶に残っていたこともあり,話が延々と続く.外は暴風雨と雷で設定も整い,話題はあちこちに飛び火する.事務員の郷子さんやタクシー運転手の枝盛の存在も面白い.表題の「燃焼のための習作」は全編216頁の163頁にやっと出てくる.
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いい意味で堀江さんらしく、いい意味で堀江さんらしくない。
いつもよりすこしエンタメ色がつよいかな。
すてきな装丁なんだけど、しみ作っちゃったかな、ってすこし焦る。笑 -
堀江敏幸「燃焼のための習作」読んだ。http://t.co/gQSLdEpk タイトルから書評集かと思ったら小説だったという、先日のとは逆のパターン。雷雨によって室内に閉じ込められた3人の語りを繋ぐ形で話は進行する。薄い本なのにたっぷりとした読み応えで満足した(つづく
地の文に話文を乗せ、句読点で話し手を切り替えている澱みの無い文面同様に、3人は拡散したり跳躍したり割り込んだりしながらも延々と語り続ける。無関係に思える話でも、それが相手の本意を引き出すこともあれば相手の話を補完することもある。独立した語りが絡み合い会話の体を成している(つづく
うちも、轢死した動物を、轢かれて轢かれて無くならないうちにとよく北大通りに回収しに行ったっけ(で、うちの庭か北大構内に埋める) あと、郷子さんタイプは永遠にわたしから遠ざけておきたい。。。がさつな性格と動作、どうでもいい内容の永遠のマシンガントーク、思慮より早く口出る人(おわり -
なずなの記者と看護士が、枕木と郷子に重なります。外は急に降り出した大雨で、場所は、何を生業としているのか結局判然としない柏木の事務所。ストーリーは依頼であろう熊埜御堂氏との会話。密室のはずなのに、会話の背景からいくつものシーンを思い浮かべてしまいます。語られる人物の声まで聴こえてくるようです。こういう話はテレビドラマのように途中で途切れてはダメで、中断されるものがなく一気読めることが醍醐味なのだろうと思います。
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久しぶりにちびちび味わった一冊。装丁から素敵。雷雨の日のインスタントコーヒーを飲みながらあちこちに脱線しつつすすむ物語を、自分も隣に座ってきいているみたいな。楽しかった。