冷たい密室と博士たち (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
3.40
  • (336)
  • (925)
  • (2083)
  • (149)
  • (18)
本棚登録 : 8004
レビュー : 753
  • Amazon.co.jp ・本 (422ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062645607

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • S&Mシリーズ二作目。前作の『すべてがFになる』もそうですが、本作も理系ミステリーの魅力爆発です。
    本作もある大学の研究室内で起きた密室殺人事件をテーマにしています。森博嗣先生のデビュー作『すべてがFになる』は、真賀田四季博士の存在が強烈すぎて密室殺人事件だったことをすっかり忘れていましたが(笑)。

    そもそも「理系ミステリー」って何なんでしょうか。
    ネットで調べると『理系ミステリーとは、題材やトリックに科学や生物学など、理科系の学問を使ったミステリー』となっています。理系ミステリーで有名なのはこの森博嗣先生の『すべてがFになる』に続くS&Mシリーズや東野圭吾先生のガリレオシリーズですね。
    実を言うとガリレオシリーズは『容疑者Xの献身』しか読んだことがないので、ガリレオシリーズが理系ミステリーだっていうのはあまりピンときてません←。
    本作を読んでみて、やっと、理系ミステリーとはなんぞやということが分かりましたw。

    通常のミステリーでは、殺人事件が起こって、刑事や探偵がやってきて、現場や被害者、被害者の家族や交友関係のことを調べていき、数々の参考人や目撃者から話を聞いて、犯人を見つけていくという流れになるかと思います。
    本書では、密室殺人事件が起こって、主人公の犀川先生や西之園萌絵が探偵役として事件を調べていきます。
    ここから通常のミステリーと理系ミステリーとの違いが分かれます。

    理系ミステリー(少なくとも本書の犀川先生の推理)は、警察でいうところの「鑑の捜査」をしないんですね。
    「鑑の捜査」とは、被害者の身辺調査や犯行動機の捜査や目撃者・参考人からの聴取やその場所の土地鑑を有する者なんかを捜査することです。

    犀川先生や西之園萌絵は、殺人事件の起こった状況から、
      この殺人を実行することが可能な人物は誰か?
    という命題だけで、捜査を進めていきます。
    この方法は、通常のミステリーしか読んだことがない人にとっては、とてつもなく限られた手がかりだけで捜査をしている様に感じます。
    例えるならば、算数の文章問題で

      ある大学の実験室の中でケンジロウ君が死んでいました。その奥の実験室ではタマコさんが死んでいました。二人とも背中にナイフが刺さっています。他の部屋には、大学の先生や他の学生がいました。この実験室は鍵がかかっていて、出入りするには特別な手続きをしなければなりません。この二人は誰に殺されたのでしょうか。なお、この二人とこの建物内にいた他の人々との間には特別な関係はないものとします。

    みたいな感じです。

    つまり、捜査の基本である被害者の身辺調査も詳細な鑑識活動も無しという状況で犯人を割り出していくのです。
    犀川先生の天才的な推理によって、現場の状況から犯人が誰であるかという問題を証明していく。
    そう、殺人事件の犯人は誰であるかを『証明していく』って言葉が一番この犀川先生の推理方法を語るときにしっくりくる言葉だと思います。

    結論的にいうと、本書、面白かったです。
    もちろん、犯人が割り出された後は、動機とかが解明されますが、それはあくまでおまけみたいなもの。犀川先生の『証明方法』を楽しむのがこのS&Mシリーズの醍醐味なんですね。

    そして、いちいち犀川先生の言葉が小気味良いんですよ。
    本書で僕が一番良かったと思った犀川先生のセリフは、「数学が何の役に立つのか」という答えに対して犀川先生の答え、

      『だいたい、役に立たないものの方が楽しいじゃないか。
      音楽だって、芸術だって、何の役にも立たない。
      最も役に立たないということが、数学が一番人間的で純粋な学問である証拠です。
      人間だけが役に立たないことを考えるんですからね。』

    うん、格好いい。萌絵じゃなくても犀川先生に惚れちゃいますね(笑)。

    犀川先生と西之園萌絵の恋愛の行方も楽しみですし、このS&Mシリーズはゆっくりと楽しんでいこうと思います。

    • くるたんさん
      こんにちは♪
      素晴らしいレビュー、今回もじっくりひきこまれました(⁎˃ᴗ˂⁎)
      私は理系ミステリというだけで鳥肌が立つんですが、なるほど!「...
      こんにちは♪
      素晴らしいレビュー、今回もじっくりひきこまれました(⁎˃ᴗ˂⁎)
      私は理系ミステリというだけで鳥肌が立つんですが、なるほど!「証明していく」ということなんですね♪その言葉でなんだか一気に心がふわっと軽くなりました♪
      ハードルが高く思っていたこのシリーズ、「証明していく」過程を楽しみながら、いつか、いつか…(笑)読んでみたいです✧*。(ˊᗜˋ*)✧*。
      2019/07/19
    • kazzu008さん
      くるたんさん、こんにちは!
      コメントありがとうございます!
      今まであまり理系ミステリは読んだことがなく、しかも根っからの文系人間なのでコ...
      くるたんさん、こんにちは!
      コメントありがとうございます!
      今まであまり理系ミステリは読んだことがなく、しかも根っからの文系人間なのでコンピュータプログラムを使ったトリックとかよく分からないのですが、森先生のミステリはそんな僕でも分かりやすかったです。

      「証明していく」っていうのも読みながら、思いついた言葉なので、もしくるたんさんのお役に立てたのならすごくうれしいです。
      このシリーズはもう20年以上前のシリーズなので、多少古さも感じますが、十分楽しめますよ。タイミングが合った時に、ぜひ読んでみてくださいね!
      2019/07/19
  • 一作目が予想以上に面白かったので、続けて読んでしまいました。
    ドラマではこれが1話だったのですね。

    前作に引き続き、密室殺人です。
    これは密室殺人シリーズなのでしょうか‥?
    前作の舞台となった研究棟は頭の中で想像できたので、理解しながら読み進められましたが、今作は見取図がついているにも関わらず、想像の難しい建物でした。
    ほぼよくわからないまま読み進めたように思います。
    (見取図に記載されている「床レベル」ってなんだよ…)
    つくりがよくわからないことが純粋に楽しむことの妨げになっていたように思いますが、この部屋は中からしか開けられないとか、シャッターは人の目があるから出られない、とか位置関係を無視して考えると理解が進みました。

    前作でも思いましたが、犀川の頭が冴え出してから答えを教えてくれるまで、その説明の過程はちょっともったいぶりすぎというか引っ張るなあと思いました。
    説明も思わせぶりというか、いいから早く結論を!とじれったくなった部分がありました。
    これは犀川というよりは作者の性格?でしょうか。

    密室のトリックは面白かったです。殺人を行うための手順もなるほど、と思いました。
    それに比べ動機がちょっと軽いかもしれないですね。
    もっと木熊教授の自己犠牲による(歪んだ?)親子愛が強調されていると狂気があって私好みでした。
    この辺は登場人物が理系というところも関係しているのかもですね(理系=人及びその感情に興味がないというわたしの偏見です)

    実験室に閉じ込められた萌絵がPCを立ち上げ、暖をとりつつ、助けを求めるというシーンが好きです。
    助けを求めるのはともかく、暖をとるというのがわたしには全く思いつかなかったので、ははあ、頭がキレるというはこういうことか…と感心しました。
    わたしにとっては萌絵というキャラクターを表す重要なエピソードなので、ドラマでは確かこのシーンがなかったのが惜しいです。
    (犀川が神通力で助けにきた‥みたいになっていたような)

    他の小説や映画などでもありますが、犯人の一人称(とそれに近いもの)で観客を導くのはどうかと思います。
    "推理"小説と銘打っているのに、そのようにいくらでも隠したい部分を隠せる演出をしてしまうと、観客が"推理"できないですよね。
    そうする以外に技術がなかったのかしら‥?とも思えます。
    この小説だと、それまで犀川と萌絵の描写だったのが、突然市ノ瀬の描写になったところがヒントだったのかもしれませんが(確かにおや?と思いました。)

    前作ではフロッピーが登場して、おお、懐かしいと思ったのですが、今作ではカセットテープも出てきたではありませんか!
    shikaのメールを読むところ、95年とあって時代を感じました。

  • シリーズ2巻目。犀川先生と、もえちゃんのコンビにますますはまっちゃった。

  • "学問の虚しさを知ることが、学問の第一歩"
    これは学生時代に読みたかった…

  • 森博嗣のデビュー作『すべてがFになる』に続く
    犀川助教&西之園萌絵のシリーズ第2弾。
     
    デビュー作が『0xF』という『数字』を
    ただ単に使いたかっただけなんだな、
    という感じの強引な展開が目立ったのに比べて、
    本作は現役工学助教の本領発揮といった感じで
    論理的に進められており前作よりもおもしろいと
    感じました。
     
    本格ミステリー好きからすると、
    なんだよそれ、という感じかもしれませんが
    他の作品にはない理系人間の集まりを観察したい
    方におすすめできる作品です。

  • 2つの密室に2人の死体。本来はS&Mシリーズの1作目なこともあってか、割とオーソドックス。真相に肉薄できそうで、させてくれない森ミステリィ。動機については、珍しく真面目な考察が書かれている。西澤保彦の解説まで読んで欲しい。

  • 【ゆるいミステリー】
    小説です。
    Fほどのスピード感はありませんが、これが本当の第一作目と思うと感慨深いです。

  • 10年ぶりに読みました。
    10年経つと忘れてるものだなぁ。ミステリィというジャンルは一回読めば十分、と思ってたけど。
    たとえば、国枝先生はこの時結婚したのか!とか。あれ、萌絵って漫研も入ってたっけ?とか。

    あと、犀川先生が若いと感じた(笑)

    Gシリーズあたりから森さんの文体とストーリィの趣向が変わって違和感を感じたものだけど、今はS&Mシリーズの説明多い文に違和感感じるなぁ。でも軸はブレてないんだよ。そして、冒頭が会議嫌いな話から入っているところは、Wシリーズのハギリ博士と一緒だ(笑)

  • ちゃんと初めの見取り図と見比べながら読み進めないと、部屋の構造が非常に想像しにくい作品。
    トリックはわかりやすく、納得。
    正直、トリックうんぬんより、文体やセリフ回し、散りばめられた専門知識などがとても楽しい。
    展開も引き込まれます。探偵役が狙われるのは普通なのに、このお嬢様には先生がついてるし何もないと思い込んでました。

    部屋の構造をわりとぼんやりにしたまま読み進めたので、密室を暴けませんでしたが、見取り図を見つつ犯人になったつもりで考えれば、暴けたのかもしれません。
    解けてスッキリをあじわうもよし、犀川先生に講義してもらってスッキリするもよし。

  • 10数年ぶりの森博嗣読み直し2冊目。

    ストーリーも犯人も全く覚えてなかった。
    推理小説として楽しめると感じた。

    この本をきっかけとして
    メールでは自分の苗字で第一人称を名乗る、
    ということを実行してた時期がある。
    それを思い出し、とても懐かしい気持ちになった。

    また、犀川=煙草+コーヒー
    という印象(記憶)が強かったが、
    コーラを多く飲んでいることも意外だった。
    また、犀川と萌絵の関係も、
    私の記憶よりずっと早い段階で近づいていると感じた。

    そう、S&Mシリーズは、
    こういう楽しみ方もできるのです(笑)

著者プロフィール

森 博嗣(もり ひろし)
1957年、愛知県生まれ。作家、元研究者。名古屋大学工学部建築学科、同大学大学院修士課程修了を経て、三重大学工学部助手、名古屋大学助教授。名古屋大学で工学博士を取得し、2005年退職。学会で数々の受賞歴がある。
作家として、1996年に『すべてがFになる』で第1回メフィスト賞を受賞し、同作で作家デビュー。S&Mシリーズとして代表作の一つに。『スカイ・クロラ』シリーズは本人も認める代表作で、2008年アニメ映画化された。その他にも非常に多くの著作がある。

冷たい密室と博士たち (講談社文庫)のその他の作品

森博嗣の作品

ツイートする