江戸川乱歩賞全集(11)透明な季節 時をきざむ潮 (講談社文庫)

著者 :
制作 : 日本推理作家協会 
  • 講談社
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本棚登録 : 27
感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (800ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062732673

感想・レビュー・書評

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  • 透明な季節:戦時下だからこそ納得できる動機とトリックという趣向は非常に良かった。伏線もちゃんと張ってあって、いつもの梶龍雄作品を読む楽しみを味わえる。まあちょっとミステリ的には普通かなぁ、という印象だけど。
    ただ、それ以上に戦時下の少年の心の動きとか、次第に逼迫してくる状況といった描写は素晴らしく、その点ではかなり評価できると思う。
    時をきざむ潮:文章のリズムとか、山村の不思議で奇妙な信仰といったところは本当に面白いのだけど、やはり自分としてはミステリを期待して呼んでしまうので、その点から見ると弱い。個人的には微妙。

  • 透明な季節/梶龍雄:第23回大賞受賞。1977年。
    戦時中の中学生視点。ポケゴリ(あだな)少尉がやってきた。ドSな鍛錬。もちろんみんなの嫌われ者。アダナつけられるのは、何か響くものがある人々。そんなポケゴリが殺された。残された美人妻に好意をいだく中学生。成績落ちちゃう。けど、戦時中だし、ある意味幸い。
    戦局が激しくなっていく、東京爆撃される。焼夷弾落ちてくる。自分に落ちなければ、わざわざ見に行く。人の不幸は自分の幸福。栄養失調になっていく人々。でも、本を読みたいとか。流行歌も、勇ましいのから抒情的なのになるとか。そして、みんないなくなる。このへんが一番心に残るんだが。
    結局、ポケゴリは自殺。お世話になった上司(弟が同級生)への遺書が見つかる。美人妻は疎開。疎開するとはきいてたけど、場所は問いたださなかった中学生。
    上司一家も空襲で死んでしまう。
    確かに、推理小説という意味では違うような。


    時をきざむ潮/藤本泉:第23回大賞受賞。1977年。
    三陸の海岸で発見された双子二十代男性@車中の遺体。もう一人、遺体がいるらしい。不運な男、と作者に称される刑事がまわりの思惑を無視して、捜査を進める。そして、予定調和の最後。
    レイプ輪姦絡みが見えるので、イヤな気持ちのまま、読み進める。その果てに殺してしまったんだね。そして、姉に復讐された。簡単にいえば、そんな話に土着信仰を振りかけた。
    この作者は、既婚者だが書くために住む場所を変える、とか、ヨーロッパに渡って以来消息をたった、とか、篠田節子が小説にした、とか、前知識があり期待したのだが。
    黒を白と言い続ける、とかね、ステキな言葉もあったけど、結局のところ、ほかの作品を読もうとは思わなかったんだわ。

  • 第23回江戸川乱歩賞受賞作品
    梶龍雄「透明な季節」
    藤本泉「時をきざむ潮」

    の2作を収録。

    「透明な季節」は、
    戦時中の中学校を舞台にしており
    学園ミステリー・青春ミステリーとして
    読むことができるだろうと思う。

    人物造形はしっかりしていて
    特徴だっているので、学校内の
    教官・教師と生徒との間の関係性や
    同級生とのやりとり・関係は
    読んでいて飽きさせないし、
    戦時中の中の学校生活の有り様は
    興味深く読める。

    ただ、ミステリーとしては際立ったものはないし
    戦時中を舞台にした小説という舞台設定を
    面白く読める人でないと、厳しいかもしれない。

  • 「透明な季節」―戦時下の旧制中学校で起きた殺人事件。時代背景と少年の恋の絡まり具合の雰囲気が良い。
    「時をきざむ潮」―連綿たる民俗的な幻想と昭和の荒々しい品の無さが混在。著者は『聖域』のモデル。読み終わるまで気付かなかった…

  • 江戸川乱歩賞
    (収録作品)「透明な季節」梶龍雄(1977/23回)/「時をきざむ潮」藤本泉(1977/23回)

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著者プロフィール

1928年岐阜県生まれ。慶應義塾大学文学部英文科卒業。出版社勤務を経て文筆活動に。52年探偵小説専門誌『宝石』に短篇「白い路」が掲載され、ミステリ界へデビュー。77年『透明な季節』で第23回江戸川乱歩賞を受賞。『海を見ないで陸を見よう』、『リア王 密室に死す』など旧制高校を舞台とした清冽な作品で注目され、『龍神池の小さな死体』『清里高原殺人別荘』『葉山宝石館の惨劇』等、巧緻な作品で、本格ミステリファンの記憶に残る傑作を多数発表。90年逝去。

「2023年 『梶龍雄 青春迷路ミステリコレクション2 若きウェルテルの怪死 〈新装版〉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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