新装版 播磨灘物語(1) (講談社文庫)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (374ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062739320

作品紹介・あらすじ

黒田官兵衛。戦国時代末期の異才。牢人の子に生まれながらも、二十二歳にして播州・小寺藩の一番家老になる。だが、「この程度の小天地であくせくして自分は生涯をおわるのか」という倦怠があった。欲のうすい官兵衛だが、「広い世界へ出て、才略ひとつで天下いじりがしてみたい」という気持ちは強かった。

感想・レビュー・書評

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  • 播磨灘物語(1)「新装版」 
    2004.01発行。字の大きさは…小(字の大きさは、中であるが字が薄いので小)

    九州筑前国・福岡藩52万石の藩祖である黒田官兵衛の物語です。

    官兵衛の祖父・黒田重隆の代に備前国福岡村から播磨国に入り、竹森新右衛門(あとに黒田家の家老)の援助で目薬で財を成し、御着城(姫路市)を中心に播磨平野に勢力を持っていた戦国大名の小寺則職・政職父子に仕えます。
    小寺氏は黒田氏を高く評価し、天文14年(1545年)に重隆の子、黒田職隆(もとたか)を姫路城代に任じた。そして小寺政職の養女を嫁がせ、小寺姓を名乗らせる。小寺家の一番家老となる。職隆の息子が官兵衛です。
    この時代は、織田信長の目覚ましい活躍の時代です。
    播磨の小寺家を預かる官兵衛は、時代の趨勢を読み織田家に属するべく遣いに出る。

    【読後】
    司馬遼太郎さんは、よく調べて書いています。
    この本は、4冊の1冊目のため、官兵衛の祖父の時代から官兵衛の30才の時までが書かれています。読んでいるとよく知っている戦国時代の大名たちの名が次々に出て来て読みやすかったです。

  • 久しぶりの司馬遼太郎だった。

    最近戦国時代に今更ながら凝っており、手を出してみた訳だがかなり面白かった。

    個人的な感想だが、何となくでもある程度の知識があると、著者の考え方や歴史の見方が見えて一層面白いのだなと感じた。

  • これを読むと大概の人は官兵衛が好きになってしまうんじゃないだろうか。

    優しい人柄、物事を見通す才智。
    無欲で自分がのしあがろうという気がさらさらなく、
    ただ自らの智略を思う存分発揮してみたいということだけを考える男。

    僕は歴史小説を読むときは高揚感とか一種の痛快さを求めてしまうのだが、
    この小説にはそうした要素は少ない。

    しかし、官兵衛の生き方になにか美しいものを見せてもらったような静かな感動があった。

  • 数年前の大河ドラマが頭にあり、いずれ読み返そうと思っていた本作を、三十数年ぶりに再読(初読は単行本)。
    黒田官兵衛の祖先の成り立ちから、随想風に書き起こす司馬節を久しぶりに味わう。
    膨大な史料蒐集と想像力で、稀代の謀略家官兵衛の生涯を綴る著者及び彼の博識に改めて畏敬の念を抱く。
    この巻は、本来は歌詠みにでもなって世を過ごしたかったという官兵衛が、その才能を持て余している前半生が描かれている。

  • 小藩の家老職から乱世を生き抜き、ついには大名となった黒田官兵衛の生涯の物語。
    播州を舞台に官兵衛が生まれるまでの経緯。
    時代の波に流されるように、徐々に騒がしくなっていく世情。
    織田家と関わるきっかけ。
    荒木村重や高山右近との出会いを描いている。

    物語では聡明な少年らしいエピソードが語られる。
    同時に、繊細で傷つきやすい面を抱えているエピソードもある。
    若者らしい傲慢さもあり、藩主を軽んじているような所業も見られる。
    周囲の人間が自分より劣っている馬鹿にしか見えなかったのだろう。
    だが、それを隠し通すほどの思慮はまだこの頃の官兵衛にはない。
    今のように遠く離れた場所でも情報が手に入る時代ではない。
    武将の名を耳にしても、田舎にいては実際はどんな人物なのか正確には掴めない。
    官兵衛は小藩の家老職であり、国許にいればそれなりの扱いを期待できるのかもしれない。
    けれど一歩藩を離れてしまえば、官兵衛など取るに足らない存在だ。
    一方、官兵衛自身は自分の力を信じている。
    試してみたいと思っている。
    自分の思うように生きてみたいと思っている。
    もっと世の中を知りたいと思っている。
    武将としての官兵衛の人生はまだこれからだ。
    第二巻ではどんな活躍が待っているのだろう。
    本領を発揮する官兵衛を早く見てみたい。

  • 黒田官兵衛の生涯を描いた歴史小説。
    来年の大河ドラマの主人公でもある。
    織田信長が中世の時代を否定し、如何に新しい世の中を築こうとしてきたかも記載があり興味深い。

    以下引用~
    ・城下町は最初にたれが形成したのかは微妙だが、織田信長が尾張清州時代か、美濃岐阜時代にそれをやったとみるのが、妥当かもしれない。
    ・後年、官兵衛の子の長政が筑前に封ぜられてここに城を築いたとき、城下の名前を福岡とした。この家系の者がいかに備前福岡を懐かしんでいたかということのあらわれといえるかもしれない。
    ・官兵衛のような田舎の微小な勢力の中にいる者にとってキリシタンの組織ほどありがたいものはない。この南蛮寺(堺)にさえゆけば、日本中の情勢がわかるのである。
    ・これまで、自分の領国の首邑の地名を改称した例というのはきわめてすくない。まして、天下統一の志を露骨に示す地名(岐阜)をつけた例は信長以前になかった。
    ・信長は、近畿で領地さえとらなかった。・・・信長が新たな自領としておさえたのは、商業都市だけである。海外の物資のあつまる堺、北陸米のあつまる近江大津、それに近江草津だけである。そこにかれは代官を置き、流通経済を支配しようとした。

  • 来年の大河ドラマに向け予習して読書中。
    相変わらず司馬さんの本は読みやすい。

  • ●上巻ラスト 竹中半兵衛のエピ

    武道の講義中に厠へ行こうとした息子を咎めて「そこでせよ、武道の話をしているときに中座するということがあるか」


    ●中巻
    “官兵衛の思想は、大将たる者は金銀銅を一枚でも多く貯めるべく日用を節しなければならない。それを敵に勝つための用につかうという心くばりがなければ、とてもこういう時代に、一城一郡を保ってはゆけないのである。43

  • 黒田官兵衛の祖父も父も貧困生活を耐え忍びながら、黒田家を支えてきた経緯が描かれている。二十二歳にして播州・小寺藩の一番家老となった官兵衛の出世の影には、土着の民百姓をねぎらいながら藩主を盛り立ててきた苦労が窺える。官兵衛の若き日々の情熱は、信長が上洛する前の京都でキリシタンの布教の触れ、洗礼を受けるまでになった(洗礼名シメオン)青春時代にあったようだが、軍師としての才略が芽生えたのも、揺れ動く天下の動静を眺めていたこの時期にあったようだ。【司馬遼太郎】による歴史大河小説の第一巻。

  • 2014大河ドラマに向けての予習。
    先に読んだ吉川英治著『黒田如水』とは、大筋が共通している他は異なる場面が目立ちます。

    『播磨灘物語』で特に目立つのは「黒田官兵衛」がキリシタンとして描かれている部分。黒田官兵衛自身が様々な人間関係の中で歴史を作り上げていくのですが、その節々にキリシタンである事が重要なポイントとなります。
    黒田官兵衛が生涯一夫一妻を貫いたのも、荒木村重が最後まで自刃せず生き逃れようとしたのも、キリスト教の教えに従ったからだという解釈に基づきます。

    この辺りは大河ドラマでは描きにくいのではないかな?八重の桜でも極力宗教色を排除しようとしたようですし。黒田官兵衛のキャストを見ても、官兵衛との色恋沙汰を匂わせる女性キャストが数人用意されているようですし。とはいえ、八重の桜しかり、黒田官兵衛しかり、キリスト教である事をぼかしてしまっては根幹が描けないと思うのですが。

    それにしても『播磨灘物語』を読めば読む程、黒田官兵衛は豊臣秀吉抜きでは語れないという事がわかります。黒田官兵衛を知るには、豊臣秀吉を知らねばならないのでしょう。豊臣秀吉を知るという事は、織田信長や徳川家康を知る事にも繋がります。

    色々と読書欲を誘発される作品です。

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著者プロフィール

司馬遼太郎(1923-1996)小説家。作家。評論家。大阪市生れ。大阪外語学校蒙古語科卒。産経新聞文化部に勤めていた1960(昭和35)年、『梟の城』で直木賞受賞。以後、歴史小説を次々に発表。1966年に『竜馬がゆく』『国盗り物語』で菊池寛賞受賞。ほかの受賞作も多数。1993(平成5)年に文化勲章受章。“司馬史観”とよばれ独自の歴史の見方が大きな影響を及ぼした。『街道をゆく』の連載半ばで急逝。享年72。『司馬遼太郎全集』(全68巻)がある。

「2020年 『シベリア記 遙かなる旅の原点』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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