最後の命 (講談社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062767026

感想・レビュー・書評

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  • 自分は世間の「普通」と違うんじゃないか、おかしいんじゃないか、そう考えているような人に読んでほしい本です。きっと救われます。一度でも周りに馴染めないと思った人はきっと救われる。そんな本です。

  • ある事件がキッカケで疎遠になった幼なじみの冴木。
    そんな冴木から突然連絡が入る。
    冴木に会った直後、自分の部屋でデリヘル嬢が死体となって転がっていた。
    警察の調べが進む中、部屋に残された指紋が指名手配中の冴木のものだということが判明する。


    集団レイプを止められなかった自分は卑怯者なのか。
    或いは不可抗力なのか。
    生きていれば性犯罪を繰り返す可能性のある人間を見殺しにするのは論理上許されることなのか。
    それが罪ならいかにして償えばいいのか。
    そもそも論理とは何か。
    ~解説より~

  • 善と悪と簡単に切り分けず、作者が時間をかけて格闘した痕跡。
    逸脱していく冴木。悪と同化する冴木。
    他方で過去の事故や恋人を保留し悩み続けた主人公。
    実存的に生きようとし→サルトル
    罪と罰を考え続けた→ドストエフスキー
    しかし罪の重さは死をもってしか償えず、罪と向き合うならば狂うしかない。。

    掏摸、のエンタメ性へ迎う前の力作。初期作品から何層も厚くなった文学性と、エンタメへの萌芽が見て取れた気がする。
    でもなんでタイトルはああなったのだっけ。。

  • P18の、

    彼がそう言って笑ったので、私も笑うことにした。

    って一文、やられたよね。

    これもおもしろかったよ。煮え切らないところもあったけど、まあ途中まではよかったよ。

  • うううよくわからなかった…!
    なんだか村上春樹っぽい?とも思った(村上春樹あまり読んでない&得意ではないけど)

    本の感想は人それぞれ!

  • "レイプの最高刑は懲役"強姦という事案に関与した事がないため、現実味が無いように感じた。
    思春期時に性犯罪に関わる事は、今後の人生にどう影響するのか?"重い"と思えばそれで終了だけれど、正義が生まれる狭間と思えば希望が持てる内容だと感じた。
    CHICHI KATSUKIさんのカバーデザインも素敵です。

  • 重かった。表現したいことはなんとなくわかったけども重かった。

  • 結局、犯人は冴木じゃないのか?
    真相がわからないまま終わってしまった。

    性犯罪と、性と生について考えさせられた。
    女のホームレスなんて実際に見たことはないけど、確かにこの世界には、この話と同じようなレイプの被害者がいるんだということ。それがとても痛い。

    殺されたエリコに関しては、犯人がどちらか決定に欠けるので、なんとも言えないが、冴木じゃないとしたら、冴木はなんの為に逃げ続けたのか。

    今後、主人公はどうやって生きるのか。
    その判断を読み手に任せる中村さんは凄いな。

  • 本作の中心は性描写。それも犯罪真理における性描写が確信的に物語の軸にある。
    その内容はとても重い。思春期にみられる、一種の青春期の性観念から明らかに脱稿し、深い翳りを宿している。
    純文学の枠組みからミステリ要素もあり、一種のエンターテイメントを打ち立てている。ドストエフスキーの『罪と罰』やサルトル、ラスコーリニコフなどの影響が多分に作中の中に反映されている。
    たまにレビューとかで、よく作者のことを、中村文学の作風を太宰治に似てるとか比喩されるけど、これを読んでると何となく納得してみたりする。
    缶コーヒーを片手に町を徘徊し、公園でぼんやり煙草を吸う描写は他作品にもみられ、きっとその行為自体が、作者の哲学なんだろうとさえ感じる

  • 男二人が幼い時共に性犯罪を目撃します。それがきっかけで罪悪感と得体の知れない性衝動を抱え続け孤独な世界を生きていくことを強いられます。青年へと成長した二人が後に再会した時二つの閉じていた世界が変わり始めるのですが、、、、。

    幼少期に抱えた罪悪感は逃れようとすればするほど何か別の凶暴なものへ姿を変えてしまう。その前に罪悪感を二人が共有していれば良かったのだと言うのは無責任で、結局どうもできなかったのだという結果を受け入れざるを得ない。幼少期のトラウマが人生を狂わす話は、常にやりきれない思いが漂います。

    ただ、一人の命が失われたもののそれをきっかけにもう一人はまるで生まれ変わったように閉じていた世界を開いていく、他者の死は残された者のトラウマを覆すことができる唯一のものだったのかもしれない、とすれば救われた思いがします。

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著者プロフィール

一九七七年愛知県生まれ。福島大学卒。二〇〇二年『銃』で新潮新人賞を受賞しデビュー。〇四年『遮光』で野間文芸新人賞、〇五年『土の中の子供』で芥川賞、一〇年『掏ス摸リ』で大江健三郎賞受賞など。作品は各国で翻訳され、一四年に米文学賞デイビッド・グディス賞を受賞。他の著書に『去年の冬、きみと別れ』『教団X』などがある。

「2022年 『逃亡者』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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