最後の命 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062767026

感想・レビュー・書評

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  • 4.5

  • 幼馴染みの冴木と私は、小学生の頃に集団レイプ事件を目撃してしまう。そのため私は潔癖に、冴木は暴力による性に引き寄せられたてしまう。
    ある事件が元で疎遠になっていた冴木と七年ぶりに会った直後、私の部屋で1人の女が死んでいた。部屋の中から検出された冴木の指紋が、指名手配中の容疑者のものと告げられた私は、冴木を探そうとする。
    重く陰鬱な物語です。こういうのは苦手なのですが、何故かグイグイと読み続けました。私の語り口が淡々として変に攻撃的でなかったからかも知れません。
    生と性、暴力と性、生きることが性に絡めて問われます。生きにくさを抱えながら、社会に放り出された者たちの物語。そう言ってしまえば簡単なのですが、この生きにくさというのは、誰しも持っているもので、気付いているかそうでないかだけかも知れません。世間と布一枚ごしに接する私というのも、その象徴なのでしょう。たった布一枚、でもそれがなければ自ら扉を開けることができない。そんな私が恋人に言う「怖くないよ。大丈夫。」という言葉に救いを感じます。

  • これで、土の中の子供以外の既刊は読破。
    共通しているのは、普段タブー視されていて語りえなところまで言語化しているところ。また、その場面を追体験できるところだろうか。

    今回のテーマは性に関するものがほとんどだったような気がする。独特の仲村風の言い回しが良かった

    ⇒P161冴木  射精したとき、自分の全部が、精液になって出ていくような気がした。というか、俺が抜け殻になって、俺は精液になって女の中に入っていくみたいな、そういう気持ちになった。

    人間の悪という概念も問題になっている。自分自身が悪に染まってしまえば、悪を感じない人間になる
    人間的道徳から遠い存在になり、悪を楽しむことが出来るようになる。少しあこがれるようなところもあるが

  • 2015/11/26購入
    2016/11/25読了

  • 映画化。2014年チェルシー映画祭(アメリカ)・脚本賞
    幼少期に集団婦女暴行事件に遭遇、その事件をきっかけに性トラウマを抱えた少年2人の生末の物語。一人は潔癖で悩み、もう一人は狂った悪に・・・。

  • 他人から受け入れられない自分を、誰よりも受け入れることが出来ないのは自分。
    そんな中死に惹かれるのは現実から逃げたいだけではなくて、それ以上に自分含めた誰も見たことのない、それでいてみんなに平等に訪れる圧倒さに魅了されている気がする。
    その圧倒の前では誰もなにもできない。
    正義は時に偏ったものであり、それは実は悪にもなり得る、恐れていた悪は自分の中に入るとより制御できないものになっていく。
    何かを呪わずに悪さえも乗り越えて香里と冴木と向かい合うことで行きつく先は救いかもしれないし、狂気かもしれない。
    それでも絶望の中に希望を見出すことができるかもしれない。

  • 掏摸、遮光が良かっただけに何だか本作は今一だった。 内容も自分の中では上手く消化出来ずにいた。冒頭の2冊が良かっただけに残念。

  • 教団Xを読む前に読んでみた、初読みの作家さん。
    この作品に関してはとにかく、暗くて、ドロドロしている感じ。ただ、そういう描写は嫌いではない。共感はできないが、犯罪者はこういう心理なのかを感じさせられる。ただ、終わりがどうもスッキリしない。話の内容は覚えていても、どんな結末だったかは、きっと、忘れてしまうでしょう。教団Xに進むかどうか少し悩む。

  • 暗すぎる。
    病みそう。。。

  • 推理小説ではないので、起こった事件の真実は恐らく「私」の予想が正しいのだろうなという形で終わり、「私」と「冴木」を悩ませ続けた問題の解決策があるはずもなく。
    何一つ救いらしい要素を感じられないままそれでいて終わりはすっきりだった。

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著者プロフィール

一九七七年愛知県生まれ。福島大学卒。二〇〇二年『銃』で新潮新人賞を受賞しデビュー。〇四年『遮光』で野間文芸新人賞、〇五年『土の中の子供』で芥川賞、一〇年『掏ス摸リ』で大江健三郎賞受賞など。作品は各国で翻訳され、一四年に米文学賞デイビッド・グディス賞を受賞。他の著書に『去年の冬、きみと別れ』『教団X』などがある。

「2022年 『逃亡者』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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