「タレント」の時代 世界で勝ち続ける企業の人材戦略論 (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062883030

作品紹介・あらすじ

世界の企業の競争力を分けるのは、知識や才能を利益に変える人材戦略だ!
「タレント・マネジメント」の人事・組織コンサルタントとして活躍する著者によるかつてない人材戦略論、誕生!!

なぜソニーは消費者が欲しがる商品を生み出せなくなったのか? なぜトヨタはいまでも売れるクルマをつくれるのか? アップルやグーグルなどがマネをして成功した日本のやり方とは?
そこには「タレント」と呼ばれる優秀な人材を生かす仕組みがあった。

市場も成熟化し、生産方法も世界中で標準化したいま、企業の浮沈の鍵は、消費者が欲しくなるような新しい商品を生み出すことにつきる。
そのためには単なるプロフェッショナルともスペシャリストとも違う、価値創造の中心となる「タレント」といわれる新商品を生み出せる優秀な人材と、組織内でタレントを生かすための仕組み作りが決定的に重要。
タレント人材とは何か、その仕組みとはどんなものなのかを詳細に解説。

(目次)

第1部 タレントの時代
近年、負け続ける日本企業、いちばんの問題点は、「人の働き方」を理解していないことにある。
1 「ものつくり敗戦」の正体
2 市場の成熟化=製造技術の成熟化
3 情報化・知識化・グローバル化
4 売れる商品は設計情報の質で決まる
5 設計情報の質を決める人達

第2部 タレントとは何か
企業の成否を決めるのは設計情報の質、そしてそれをつくれる人こそがタレント人材である。ではタレントとはどんな人達か?
1 企業の活動を情報視点で見る
2 人間の労働を情報視点で見る
3 人のキャリアを情報視点で見る
4 タレントとはどんな人達か

第3部 タレントを生かす仕組み
じつは日本企業には多くのタレント人材がいる。しかしソニーの凋落が象徴しているように、タレント人材も使い方次第で宝の持ち腐れ。一方、シリコンバレーの発展は日本企業の仕組みに学びタレントを生かす仕組みを地域でつくりあげたことにある。

1 なぜタレントを生かすのは難しいのか?
2 ソニーの失敗
3 トヨタのタレントを生かす仕組み
4 米国が学んだトヨタ
5 シリコンバレーのシステム

感想・レビュー・書評

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  • 自分がタレントなのか、プロフェッショナルなのか、スペシャリストなのかはたまたただのワーカーなのか、自分の立ち位置を理解した。そういう意味で自分はタレントでは現状ない。ただ、救いとしては、知識のアナリシスとシンセンスがタレントへの道であること。複数の知識のシンセンスが創造的知識をつくることは凡人の自分でもできること。何かを創造するには、ある問題点・改善点に身をおいて初めて、新たな知識が創造される。この話は、スティーブジョブズのconnect dot の考えに通じると思う。
    また、定型労働となり下がった税理士業務に縛られない自分の生き方はやはり正しかったのだと自信をもてた。

    ●キーワード
    ・アナリシスとシンセンス
    ・トヨタの『主査』
    ・ベンチャーキャピタル=金融+リクルーティング(主査の発掘・投入)

  • タレントの本ではなく、企業の人材戦略論の本。

    トヨタの看板方式を海外がマネしてるということで、日本もマネするべきというのは勉強にになった。

  • ・組織の中で、才能ある人材(タレント)を活かすことが企業の繁栄と存続にどんなに重要かを痛感する本だった。マネジメント層は読むべき本。
    ・世の中には抜群に優れた人がいる。いわゆる「タレント」と呼ばれる人。
    ・二%くらいのタレント人材が、組織の富を生み出す中心的な役割を果たしている
    ・創造的知識労働・非定型労働を引き出すことが、タレント・マネジメントだ、ということもできる。あるいは、現在先進国の企業では、マネジメントそのもの
    ・日本人であれば、誰もが、何らかの割合で、創造的労働、非定型労働に取り組まねばならない時代
    ・トヨタ自動車のある三河地方では、昔から、「売れないモノをつくるのは犯罪である」という言い方をする。三河地方の人達の考え方では、売れないモノをつくるのに投入したすべての資源を浪費したことが、犯罪だと言っている
    ・「設計情報の質」をつくりだす中核的な役割を果たすのは、単なるプロフェッショナルやスペシャリストというわけではなくて、それ以上の何かを持った人達
    ・「タレント(才能ある人材)」と、タレントを見出し、組織的に彼らを生かす仕組みをどうつくるのかが、現在の企業における最重要課題
    ・定型労働の品質と生産性を高めて、原価を徹底的に引き下げた分を、こうした創造的労働に投資して、質の高い設計情報や優れたノウハウをつくりだすことが、日本と日本企業の生きる道である
    ・トヨタの主査制度は、単なる組織の形態を論じている組織論ではなく、人材のタレント性にまで踏み込んだ上で運用されている制度
    ・主査は、「市場の情報」「顧客・非顧客の情報」「競合の情報」「技術の情報」「原価の情報」などを踏まえて、商品の魅力と性能、価格(原価)、重量などを企画し、製品の構想を練る。その際には、販売部門の商品計画部・商品企画部とともに、商品のコンセプトをつくる。次に企画した商品性を実現するために、製品を企画し、開発する。
    ・じつは、シリコンバレーの今日の繁栄は、トヨタの主査制度をコピーした製品開発体制と、米国が得意としてきた直接金融を結合させた結果
    ・グーグルでは製品の種類が多いので、トヨタと同じマトリックス組織のようになる。そして、各製品ごとに、主査に相当するPMと主査付に相当するAPMがいる。PMは、マーケティングや法務や財務や各技術分野のエンジニアなど、開発スタッフの中心であり、製品に関するすべての責任を負っている。
    ・英語圏では「リーン」=「トヨタ」のことである。「リーン生産方式=トヨタ生産方式」である。また、「リーン製品開発=トヨタ的製品開発」の意味
    ・トヨタはトヨタ生産方式で儲けているわけではない。優れたタレントを中心にタレントの卵や各分野のタレントやプロフェッショナル・スペシャリストを組み合わせて質の高い設計情報をつくることで儲けて
    ・定型労働、非定型労働、転写型知識労働、創造的知識労働の四つの象限のどこかに労働は、分類されているのである。もちろんすでに述べた通り、定型・非定型労働の割合、転写型・創造的知識労働の割合は人それぞれである。それぞれの種類の労働を重ね合わせたもの

  • 2015.03.01 現代ビジネスより

  • タレント・マネジメントの話。モノ不足が解消しもはや供給過剰の現代では、大量生産のための「情報の転写」よりも売れる商品を開発する「設計情報」にこそ企業価値の源泉があり、トヨタの主査制度を引き合いにして、価値を生み出すメカニズムとそれを支えるタレントの重要性を説明しています。トヨタの強みの理由は、真似たら同じ効果が得られやすい「転写」での品質管理システムではなく、グーグルもアップルも参考にしている主査制度によるタレントの活用なのだという点は納得です。また、VCが主査制度に直接金融を直結させたという見方は慧眼です。
    全般的に説得力あるのですが、NTTの研究所が巨額の研究費を使って何も新しいものを生み出してないだの、郵便局員とコンビニ店員との比較で公務員の給与は高すぎるだの、ソニーはプロの経営者によってダメになっただの、知識獲得能力の低い人は他人を理解する能力に欠けて自分を特別だと思い込む傾向が強く自分より劣った人材で周りを固めがちだの、人によって好き嫌いはあるかもしれません。私は好きですが。
    間接部門の責任者としては、企業価値の創出については間接的な関与しかないので、本書の対象ではないのですが、ビジネス・プロセスの担い手としてタレント/プロフェッショナル/スペシャリストの関係性、業務の専門性と定型/非定型での分類とそれぞれのキャリア開発などを考える良い機会となりました。

  • 第1章しか読んでいないが、根本的な思想が全然合わなかったため、途中で読むのを辞めてしまった。

  • 財務諸表に表されない情報資産に焦点をあてたユニークな経営論だなと感じました。
    「設計情報転写論」(東大 藤本教授 発)をベースに、有形の製品は図面、無形のサービスはその仕組み・プロセスを創造物である「設計情報」と捉え、それらを媒体に転写する能力で利益を上げるという論です。
    中でも重要なのは、源流に位置し創造性が求められる「設計情報」であり、その実現のためには、目的のために、自分の知識や関係者からの情報を統合し創造することのできる「タレント」型の人材が必要であるという。創造的知識労働が、企業に利益をもたらすという主張です。
    この書においても、シンセシス(統合)力が重要であるとの一定の結論が得られます。もっとも統合するためには、様々な情報を獲得もしくは自らの知識蓄積が前提であることが必要ですが。

  • ・現代では、設計情報にだけ価値がある、モノづくりには価値なし、設計情報を作る人がタレント
    ・設計情報→転写(モノづくりノウハウ)
    ・設計情報、ノウハウ、ナレッジ&経験、このうち設計情報以外は無価値化が進んでいる
    ・転写(ノウハウ)は定型労働で、どこでも通用する。昔はこれが重視
     ※D社のアセスメントが重視しているのも普遍的に使えるスキルであり、知的定型労働にすぎない
    ・今は創造型労働が重要、これは非定型であって、未知の世界、何が必要かも分からないでしょ
    ・トヨタ生産方式の本質は「売れるものを売れるときに売れるだけ作る」だから、売れないモノは作っていない←屁理屈っぽいけど本質かも

  •  以前、コールセンタシステムの構築プロジェクトでご一緒させていただいたアクセンチュアの方が紹介されていたので読んでみました。確かにとても示唆に富む内容でした。冒頭、紹介されている著者が勤務していたという研究所の様子をはじめとして、本書で触れられている多くのシーンに“既視感”を感じたせいもありますが・・・。

  • かつては栄光を極めた日本の電気機器業界の失敗と、その間に日本の成功企業を研究し世界のトップ企業へと成長したアップル、サムソンと言った外資系企業を例にとって、人材戦略とハタラキ方について提言している。アップルのスティーブ・ジョブズがソニーをまね、フォードの社員はトヨタを研究し、日本人が成果の出ない莫大な研究費を浪費している間にどのようにグローバル企業に追いつかれていったかということがわかる。売れるサービスありきで、そこからタレントをもった人材によって設計され、有形のものに落とし込まれて初めて稼げる商品が生まれるのであり、設計情報を生み出せる人材を育てる風土を育てるべきだと述べられている。
    ここにある日本企業の課題は①売れないものが平然と作られている。②ものをつくる(アイデアの創造からそれを実際の有形物へと完成させる)人材が育っていないことである。自動車業界において世界トップシェアを維持しているトヨタはこの2つの課題を持っていない。日本が世界に誇るグローバル企業がもうすでに課題解決策を見出しているのであれば、なぜ本書に出てくるソニーやパナソニックなどといった企業でも積極的にその経営方式が検討されないのだろうかという疑問がわいた。業界は違えど、前者と後者の明暗はっきりと分かれており、海外企業が必死でトヨタに学ぼうとしているのにも関わらず、あくまで自国より他国の経営から学ぼうとするその傲慢さが未だに経営を立て直すことができない理由なのではないだろうか。

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著者プロフィール

酒井 崇男(さかい たかお)

1973年、愛知県岡崎市生まれ。グローバル・ピープル・ソリューションズ代表取締役。東京大学工学部卒業、東京大学大学院工学系研究科修了。大手通信会社研究所勤務を経て独立、人事・組織・製品開発戦略のコンサルティングを行う。リーン開発・製品開発組織のタレント・マネジメントについて国内外で講演・指導を行っている。前著『「タレント」の時代 世界で勝ち続ける企業の人材戦略論』(講談社現代新書)では、グローバル企業の人材戦略について詳細に解き明かし、大きな反響を呼んだ.。

「2016年 『トヨタの強さの秘密 日本人の知らない日本最大のグローバル企業』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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