日本の国難 2020年からの賃金・雇用・企業 (講談社現代新書)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062884631

作品紹介・あらすじ

アメリカ人の借金の総額がすでにリーマン・ショック時を超え、過去最高水準を更新するなど、
いま、世界では「借金バブル」が暴発寸前となっていることをご存じだろうか。

翻って日本では、大企業の淘汰・再編、増税による可処分所得の減少、生産性向上に伴う失業者の増加など、
日常生活を脅かす様々なリスクが訪れようとしている。

まさに「国難」ともいえるこの状況に、私たちはどう立ち向かえばいいのか。

いち早く「サブプライム崩壊とその後の株価暴落」を予見していた経済アナリストが、
金融危機「再来」の可能性について警鐘を鳴らすとともに、大きく様変わりする日本の近未来を描く――。

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私がいつも疑問に思っているのは、「経済政策や金融政策は
いったい誰のために存在するのか」ということです。

アメリカの大型減税策や日本のアベノミクス、主要な中央銀行のインフレ目標政策などは、
富裕層や大企業などごく一部に恩恵が集中させる政策のため、
普通に暮らす大多数の人々の立場から見ると、あまりにも希望が持てないものばかりです。

本書は、これからの日本経済や国民生活がどうなっていくのかについて、
日本の企業や雇用、賃金にスポットをあてながら、冷静に述べたものです。

2020年前後から世界経済の大きな流れが変わるなか、少子高齢化が世界で
いち早く進む日本は、ITやAIといった技術革新によって本当に国民生活を豊かにできるのか――。

経済の常識がはらんだ根本的な誤りも含めて説明したいと思います。

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【本書のおもな内容】
第1章 世界金融危機「再来」の可能性―いつはじけてもおかしくない「借金バブル」
第2章 日本経済を蝕む最大の病―30年間放置されていた「深刻で静かなる危機」
第3章 2020年以後の日本の雇用―イノベーションと生産性向上が失業者を増やす
第4章 2020年以後の日本の企業―トヨタが「東芝化」する可能性
第5章 2020年以後の日本の賃金―増税・ドル円相場・原油価格から考える
第6章 生き残る自治体と転げ落ちる自治体―少子化対策と地方創生をどうするか

感想・レビュー・書評

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  • 日本企業、ひいては日本全体がここまで凋落したメカニズムを、特に雇用•賃金の面から論じており、今後の地方財政への話とスムーズに繋がっている内容でした。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/707671

  • 2018年刊行の、経済評論家による近未来予想図。

    人口減、少子化、見せかけの経済成長、その裏での債務財政悪化、技術革新と社会の変容(脱炭素と車、AI) 等々、正直日本に明るい未来はあんまり見えない…

    けど日本に限った話でもなく、欧米もアジアも発展途上国もどれも明るい未来があるとも思えない。グローバル化のおかげで金融破綻も環境破壊も世界は一蓮托生。

    技術が進めばみんな豊かに幸せになるはずだった未来物語は一体どこに?ディストピアが口を開けて待っている?

    良い物、良い考え、良い未来像があったとしても、今のままでいいとする惰性慣性がどうしても働くのでなかなかサクッと変化は起こらない。

    中原氏は現政権には歯に衣着せぬ態度で断罪するし金融分析の専門家として、数値やバランスを冷徹に判断する。

    唯一中原氏が前向きな希望として例に挙げるのは、創業地石川県に本拠を広げ、社員の生活と地域社会の幸福な発展を目指すコマツである。

    個人的にも、日本はかつての藩くらいのサイズでの行政、経済を構築した方が国民は幸せになれるのではないか?と感じている。

     

  • AI同士が会話して、工場を運営するようになる。
    航空機エンジンや医療機器にAIを搭載する。
    インダストリー4.0=AIによる工場自動化で、製造業の労働者が不要になる。
    銀行生保損保もAIで人員削減可能。
    流通、小売の無人化。
    弁護士公認会計士などの専門職、医師も代替できる。
    手術ロボット「ダヴィンチ」
    人手不足より、AIによる失業が早い可能性がある。
    第2次産業革命は、産業集積を必要としていたため、大量の雇用を生み出した。設備の更新も必要だった。
    第4次産業革命は、既存の産業だけでなく雇用も破壊している。

    購買力平価には、代替できない非貿易財が入る消費者物価指数より、企業物価指数のほうが適当。
    ギグエコノミー=請負エコノミー=ギグとは、バンド一夜限りの演奏のこと=単発の仕事。

    コマツのほうな地方重視の会社。広がらないのは、海外移転に目が向いているから。
    秋田県の国際教養大学は卒業が難しい。
    ITの技術革新では、ひと握りの人々だけが高額な収入を得る仕組み。=経済成長に比べて、実質賃金の伸びが少ない。

    今の技術革新の問題は、雇用情勢が悪化するジレンマを解決できない点。
    生産性が上がって賃金が上がらず、株価だけが上がる。
    AI、ロボットへの課税。

  • 古典的な経済理論では失業率が下がると賃金が上がるが、アマゾンショックでそうはいかない社会になっている。IT企業の隆盛で雇用自体が圧倒的に減っている。eg. アップル、アルファベット、マイクロソフトを合計した時価総額は251兆円で、24兆円のトヨタの10倍にもなるが、従業員総数は33万人でトヨタの36万人より少ない。各国でインフレ政策を取って物価が上がったといっても、経済が発展してそうなったのではなく、生活必需品の価格が上がったわけなので一般の人の生活は苦しくなるばかり。こういう経済状態で余剰資金は株などに回るので、株価がいたずらに上がる。アベノミクスの愚かさがわかりやすく書かれている。
    経済統計のデータには零細企業のものは入っていない。つまり数字よりも実態は厳しい。コロナ禍の今、ここに気付いていることは重要と思うが、他に指摘しているのを筆者は見たことがないという。
    政府は30年前からわかっていた少子化への対策を先送りしてきた。希望はコマツのすばらしい少子化対策・社会貢献。石川県への回帰の好循環。他の企業・地方自治体も見習うべき。

  • 日本における賃金や雇用について、これからどうなっていくかを予測した本。
    だいたいの問題は、少子高齢化問題が原因なんだろうなと思った。
    AIなどによる生産性向上による雇用減少については、アメリカについては確かに問題だろうけど、生産者年齢の数が減っている日本については問題といえるか微妙なところだとは思う。そういう社会に対応できない人がでてくるだろうとは思うので、そういう意味では問題だと思うけど。
    はじめにで書かれてあった「経済学者になるには冷徹な頭脳と温かい心の両方が必要である」という言葉は初めて知った。アルフレッド・マーシャルという方の言葉だそう。いい言葉だなと思ったので、覚えておきたい。
    それにしても、1990年には少子化問題をうけて、どうすればいいかの提言(これからの家庭と子育てに関する懇談会)をだしていたという。安倍政権でようやく、「幼児教育の無償化」や「待機児童の解消」を打ち出したとのことだけど、どうしてこんなになるまで何もできなかったんだ。
    自動車については、今後、電気自動車にシフトしていく方向なんだろうなと思った。海外では、将来的にガソリン車を廃止していく動きになっているらしい。電気自動車っていまだに公道を走ってるのみたことないのだけど、日本でも普及していくのだろうか。サービスエリアやショッピングモールに充電スタンドがあったりするけど、そこに車が止まってるところすら見た覚えがない。

  • ●株価は既に割高な水準
    ●アメリカのローンはリーマン時を上回る
    ●中国がWTOに加盟した2001年以降をグローバル経済の始まりと、考える。
    ●工場の完全自動化の目的が、人件費を必要としない点にある。
    ●欧州だけでなく、中国もガソリン車の販売を、禁止する方針となった。ハイブリッド車にこだわるトヨタは大丈夫か?電池とソフトにシフトしている。
    ●コマツの少子化対策への取り組み。本社機能の地方分散。

  • 2020-6 金融緩和で経済成長するにはいろんな条件があり、今は投資する先が見当たらず不動産やリスクマネーがバブルになっている、というのはよくわかる話。AI、IT の活用が非労働集約のデジタル企業に利する一方、雇用を産み出さず、格差を拡大させている。かといって労働集約型産業に戻る選択肢はないわけで特に人口が減っていく一方の先進国のソフトランディングな行末がなかなか見えない、とそんなに特別な話はしていないけど危機感は正しく煽られます。

  • 経済の素人として読み始めたが、この人は本物かもしれないと感じた。
    総株式の評価額と総GDPの比率は、指標として有効!は、参考になった。

  • 金融緩和、債務問題、労働数と上場企業株価は比例しない、といった現在の世界経済を整理するのには良かった。
    結局、技術革命により労働集約型ビジネスに株式市場は興味がなく、少数の人数で利益をつくる企業に魅力を感じる。Nが利くビジネス。
    結果、特定の人が儲かるシステムなのだと改めて感じる。
    一方で、人口増加=経済発展という常識はまだ健在していると感じるが、これも結局は、特定のステークホルダーにお金が集まる。自分で稼ぐ以外の方法も、結局はそういった企業に投資して利益を分けてもらったほうが、資本主義の時代には理にかなっている。。。

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著者プロフィール

1970年生まれ。慶應義塾大学卒業後、金融機関や官公庁を経て、現在は経営・金融のコンサルティング会社「アセットベストパートナーズ株式会社」の経営アドバイザー・経済アナリストとして活動。大手企業・金融機関、地方公共団体等への助言・提案を行う傍ら、執筆・セミナーなどで経営教育・経済教育の普及に務めている。「総合科学研究機構」の特任研究員も兼ねる。実質賃金、実質成長率など、名目数値よりも実体経済に近い数値推移で市場を把握する。著書に『AI×人口減少』(東洋経済新報社)、『日本の国難』(講談社現代新書)など。

「2021年 『マンガでわかる その後の日本の国難 稼ぐ力の高め方』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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