日中戦争 前線と銃後 (講談社学術文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065121610

作品紹介・あらすじ

1930年代、社会システムの不調は盧溝橋事件発生へと至った。目的なきまま拡大する戦いの中、兵士たちは国家改造を期し、労働者や農民、女性は、自立と地位向上の可能性を戦争に見い出す。大政翼賛会の誕生はその帰結であった。前線の現実と苦悩、社会底辺の希望を、政治はいかにうけとめ、戦争が展開したか。統計資料から雑誌まで多彩な史料で当時日本の実像を浮かび上がらせ、日中戦争とは何だったのかを問う、著者渾身の一冊!(2007年刊『日中戦争下の日本』[講談社選書メチエ]を改題文庫化)

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    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/741977

  • 日中戦争そのものについて検証するというよりは、副題にあるように、前線と銃後のギャップと関係性についての論考であり、「事件は現場で起きている」をあらためて認識させられる内容になっている。
    多作の著者曰く、これが自身の最高傑作らしい。確かにこれまでの外交史的なアプローチとは異なり、ある種の社会史・民衆史的なテイストが強く、他作とは違ったテイストではある。が、この種の歴史学は特定個人の体験談に基づく検証になってしまい、読み物としては面白いのだが、全体像を描けているのか?という疑問は残る。

  • 1章 兵士たちの見た銃後(銃後の退廃;慰問袋のゆくえ;祖国の再興を求めて)
    2章 戦場のデモクラシー(他者理解の視点;立ち上がる「文化戦士」たち;新しい文化の創造)
    3章 戦場から国家を改造する(文化工作による国家の改造;政党政治への期待;社会的な底辺の拡大)
    4章 失われた可能性(デモクラシーとしての大政翼賛会;大政翼賛会の現実;日中戦争の末路)
    5章 「神の国」の滅亡(日本主義の盛衰;「神の国」のモラル;戦争のなかの最後)

    著者:井上寿一(1956-、東京都、政治学)

  • 1930年代を戦争による好景気の時代、庶民が生活の向上を希望できた時代、多くの国民が積極的に戦争を支持した時代として描写する。そのうえで、前線と銃後の社会的ギャップがあったことを指摘する。
    本書の斬新な点は、帰還して銃後の社会に幻滅した兵士の視点に感情移入できるように構成されていることである。確かに帰還兵の心境が代表的な戦争支持の基盤であったことだろう。しかし反対に、銃後社会に感情移入したとき前線や帰還兵に対する印象はどうだったんだろうと思ったり。

    都市と農村で銃後の緊張感が違うと感じる理由は何だろうと思うとき、顕然化された貧富の差のというよりも消費社会の発展度合いが大きいのだろうなと思う。結局見た目の印象。農村も情報がない分、案外のんびりしたものだったのではと想像する。

  • 東2法経図・6F開架 210.74A/I57n//K

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著者プロフィール

井上寿一
1956年(昭和31)東京都生まれ。86年一橋大学大学院法学研究科博士課程単位取得。法学博士。同助手を経て、89年より学習院大学法学部助教授。93年より学習院大学法学部政治学科教授。2014~20年学習院大学学長。専攻・日本政治外交史、歴史政策論。
著書に『危機のなかの協調外交』(山川出版社、1994年。第25回吉田茂賞受賞)、『戦前日本の「グローバリズム」』(新潮選書、2011年)、『戦前昭和の国家構想』(講談社選書メチエ、2012年)、『政友会と民政党』(中公新書、2012年)、『戦争調査会』(講談社現代新書、2017年)、『機密費外交』(講談社現代新書、2018年)、『日中戦争』(『日中戦争下の日本』改訂版、講談社学術文庫、2018年)、『広田弘毅』(ミネルヴァ書房、2021年)他多数

「2022年 『矢部貞治 知識人と政治』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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