戦国時代 (講談社学術文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (504ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065165522

作品紹介・あらすじ

大名はいかに戦ったか。
民衆はいかに生き抜いたか。
日本はいかに変容したか。

戦後日本史学の巨人が、戦国時代というものの全体像を描き出した決定的論考。
戦国大名たちはいかに統治し戦ったか。人々はいかにして戦乱の時代を生きたか。新技術によって木綿や鉄砲が普及し何が変わったか。
後北条氏の台頭から豊臣政権まで、時代の全体像と動因を、明晰かつ生き生きと描き出す!

―四つの「時代を見る目」で読み解く―
第一に、群雄だけでなく全社会層の動き構造的にとらえる。
第二に、動乱のもたらす社会変動を、もっとも深奥から考える。
第三に、革新と創造の時代として描く。
第四に、世界史的な視野の中で見通す。

解説(本郷和人・東京大学史料編纂所教授)より―
永原の研究成果は、対峙する人間を選ばない。どんな立場から歴史を研究するにせよ、それが実証的であれば必ず、彼の到達に直面する必要に迫られる性質のものである。研究者は永原の提示した推論に学ぶ。それを学んで、乗り越えるべく努力を重ねていく。ある研究者は、努力の末に、永原論のある部分を乗り越えることに成功するだろう。ある研究者は懸命に挑戦しても、永原論の確かさを追認するだけにとどまるだろう。ともあれ、彼の研究業績は、後からやってくる研究者のチャレンジを静かに待っている。乗り越えられることを待っている。この意味で永原は実にフェアーで、尊敬すべき先達なのだ。中世史の良心というべき偉大な研究者、それが永原である。

※2000年刊『戦国時代 16世紀、日本はどう変わったのか』(小学館ライブラリー)上下巻の合本復刊

【主な内容】
戦国時代の開幕
惣・一揆と下克上の社会状況
「世界史」の成立と新技術
関東・東北の争覇戦
中国・四国の戦い
軍事力の構成
領国経済体制
都市と商人
九州の情勢とキリシタン大名
畿内政権と京・堺
大名国家と日本国
織田信長の進出
一向一揆と本願寺
「天下布武」

感想・レビュー・書評

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  • 日本中世史の「良心」こと永原慶二による、戦国史の決定版。『戦国時代』という無骨なタイトルに500ページ近いボリューム、そして淡々とした記述と、読み進めやすい本では決してなかったが、読了コストの大きさに見合うだけのものは得られたと思う。

    巻末にある本郷和人の解説が秀逸。これから読む方は、先にこちらから読むとよいだろう。曰く、控えめで良心的な記述が本書の特徴。70年代、網野善彦はじめ「四人組」が華々しく活躍した中世史ブームにあって、先輩にあたる永原は彼らのやらない地道な研究を一手に担った研究者という位置付けがなされている。
    これを踏まえて本文を読むと、なんと「良識ある」記述がなされていることかと驚きを禁じえない。(あえてこういう書き方をするが)本の売り上げばかりを気にする学者にありがちな、根拠のない憶測や不必要に誇張された表現などは一切なく、どこまでも堅実に「書くべきこと」だけを書き、稀に色を出すにしてもほんのわずか控えめに自らの見解を述べるに留まる。それでいて物足りなさがあるかといえばむしろ逆であり、教科書のような詳細な章立てに従って整然となされた記述は質・量ともにあまりに分厚い。そういう意味で「完璧な本」であり、いち読者としてはただただ頭の下がる思いである。

    また、本郷によると「科学的で穏やかな唯物史観」ももう一つの本書の特徴。戦国時代の通史というと、専ら戦国武将による各地域の覇権争いを描き、補足的に経済や社会の動向に触れるような形がまず思い浮かぶが、本書では両者に同程度のページ数が割かれており他に類を見ない網羅性を備えている。
    その中でも経済構造の変化や百姓と地侍の関係、一向一揆の変容などのいわゆる下部構造についての記述は特に手厚く、下部構造こそが時代を動かす究極的な要因であることが(これもまた、控えめにではあるが)繰り返し述べられる。

    総じて、戦国時代に対する充分過ぎるほどの知見と、戦国時代にとどまらない良質な歴史観をもたらしてくれる本。読み通すのはなかなか大変だが、ここまで読んで下さった方にはぜひ一読を勧めたい。

  • 荘園公領制から大名領国制の移行は、自律性の強い郷村共同体を土台にして形成された。
    荘園では農民の自律性が養われなかったが、戦国時代を機に本当の地域社会が作られた。

  • 大変革期の時代を各種要点からバランス解説した、戦国時代に興味を持ち始めた人の必読書。他者の侵略を許さない最適解として「国」造りがあり、その必要条件とは何か、を各地の代表的(=勝ち残った)戦国大名の来歴を通しながら見ていくので、腑に落ちやすいし、興味が途切れることが無い。肝心なのは小領主階層からして、生き残りへの模索と権利拡大を求め、大名の領国支配体制はその妥結点を探った結果でもある点。また国造り(人々の組織化)は都市化を促進し、経済政策、建築技術、物流の発展と繋がりれは地域社会の再編を促し、日本いう括り自体を中世から引き上げもした。進化しなければやられる、という状況がそうさせるのだとしたら、この時代は過酷でもあり活気でもあるように感じる。それにしても列島各地での、築城、城下町、鉱山、造船、武器(鉄砲)等々の開発ラッシュにあって、よく職人が足りたなと驚きで、近代のモノづくり国家の礎はここが起点ではないかとさえ思った。原著は70年代に上梓され、最新研究を踏まえ25年後に再編されたものだが、それでも20年前の本、にも関わらず史観の適確さには古さが全くない。名著とはそういうものだと感銘を受けた。

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著者プロフィール

1922年、大連市(中国)に生まれ、東京で育つ。1944年、東京大学文学部史学科卒業。以後、一橋大学教授、和光大学教授、日本福祉大学客員教授を歴任。2004年7月9日 没。
【主要著書】日本封建社会論 日本封建制成立過程の研究 室町戦国の社会 荘園 20世紀日本の歴史学

「2023年 『中世動乱期に生きる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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