スイッチ 悪意の実験

著者 :
  • 講談社
3.03
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本棚登録 : 1303
感想 : 109
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  • Amazon.co.jp ・本 (370ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065228531

作品紹介・あらすじ

夏休み、お金がなくて暇を持て余している大学生達に風変わりなアルバイトが持ちかけられた。スポンサーは売れっ子心理コンサルタント。彼は「純粋な悪」を研究課題にしており、アルバイトは実験の協力だという。集まった大学生達のスマホには、自分達とはなんの関わりもなく幸せに暮らしている家族を破滅させるスイッチのアプリがインストールされる。スイッチ押しても押さなくても1ヵ月後に100万円が手に入り、押すメリットはない。「誰も押すわけがない」皆がそう思っていた。しかし……。

感想・レビュー・書評

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  • スイッチを押せばある家族への支援を打ち切るという悪意の実験に参加した6人。展開が読めなくて面白かった。自分ならどうするのか常に試されている感じがした。

  • スイッチを押すと、とある平凡なパン屋さんを破滅に導く。
    押しても押さなくても高額が支給される。期間は1ヶ月間。
    そんな奇妙なバイトに参加することになった小雪ら6人。

    みんなで1ヶ月何もせずにいればいいと思っていたはずが、最終日になって、スイッチを押した人間がいた。
    予告通り、パン屋さんは休業を余儀なくされる状態となる。しかしそれだけにとどまらず、ある「事件」も起こってしまう…

    スイッチを押した犯人は誰なのか?


    スイッチが押されるのは割と序盤で、
    その後はてっきり犯人探しなのかと思いきや、
    ある過去をもつ主人公・小雪の深層心理についてが中心で、途中ちょっと冗長に感じた。
    そして思っていた以上にたくさん信仰や宗教が絡んでいて、ちょっと内容についていけないところもあった。

    犯人は、それぞれ怪しくてわからなかったけれど、判明したときも特に意外性はなかった。正直誰であっても驚きはなかったと思う。
    スイッチを押した動機や展開については、「そうきたか」と思った。
    だけど「そうきたか!!!」ではなくて「そうきたか」、というテンション。


    悪意とは、そして善意とは何なのか。
    今まで自分のしてきた行動は、本当に自分の本心からきたものだったのか。
    人生は選択の連続である。二択のうちどちらを選ぶのか、私もこれから吟味してみたくなった。

  • 主な登場人物は12人。

    心理コンサルタントの安楽は、変わった実験アルバイトを学生たちに持ちかける。

    日当一万円。

    初日に家族経営のパン屋「ホワイトドアーフ」に連れて行き、

    バイトに参加した6名のスマホに、ある”スイッチ”をインストール。

    30日の間、各人はそのスイッチを押すか押さないかを委ねられる。

    しかし、誰かが一回でもそのスイッチを押せば、安楽は「ホワイトドアーフ」に対する資金援助を打ち切り、資金難のこの店は廃業に追い込まれるという。

    パン屋の家族と実験に参加する6名は何の関係もない。

    安楽の狙いは、
    『理由のない悪は存在するのか』

    その実験に、全ての行動を頭の中のコイントスの裏表で選択する箱川小雪が参加してきた。もちろん参加したのもコインの「表」が出たから。

    どんな展開になるのかと思いきや、あれよあれよと意外な方向に転がっていき、

    最後はちょっと爽やかな清涼感。

    それなりの事件もあったのだが、なぜか読後感は心地いい。

  • あらすじからして面白い作品やけども、内容もよくできた話やな〜って思うくらい期待を裏切らずにドキドキしながらラストまで読んでいけるミステリー作品!

    ちょうど「魍魎の匣」読みたてホヤホヤの私に「まさに通り物はいつもどこにでも」的な話が出てきて通り物や!怖っ!!ってなった。

  • 文庫化されていたので、読んでみました。
    (本屋の売り場で結構推していた)

    うーーん。
    どうなんだろ、コレ。
    読み終わった後のスッキリ感がない。
    ミステリって、バラバラに散らばったパズルのピースが最後にぴったり当てはまって爽快感を感じるところが魅力だと思っているのですが。
    それが感じられない。

    ストーリーは合理的に考えれば、なくはない話なのです。しかし、人が動く時って感情が動きますよね。どっちかというと、感情が動いたから行動するっていう方がいいのかな。
    肝心な感情面が共感しずらいんですよね。
    登場人物をいかに自分事として考えられるか、それが難しかった、、、なぁ。
    あくまで、個人的な感じ方ですのであしからず。

  • 前半は面白くスイスイ読めたけど
    中盤から後半にかけて仏教や宗教の話が多く失速…

  • 善と悪、宗教の存在意義、哲学的なことなど、今自分が密かに気になっていたことに切り込んでいて面白かった。
    心の痛いところにズキズキ突き刺さる言葉やハッとされられる言葉がいくつもあって、読む手を止められなかった。
    物語の展開も二転三転し、最初とは予想もつかない展開になったのが、良かった。
    スイッチを誰が押すかではなく、主人公や友達やパン屋の主人と奥様の心情に趣きを置いていた。
    主人公が幼稚園児の頃園長に言われた「悪の子供」という呪いから解き放たれる所もいい。

    安西さんが言ってた自分が高価な壺を持ってて他人に壊されたら怒るけど、ガラクタの壺だったら怒らない。つまり、自分を軽んじていると傷つけられても怒らないという言葉が私は自己肯定感が低いので
    印象的だった。

    共感した言葉
    面倒だよ。心って、なんて面倒なソフトウェアなんだろう。中身を窺い知れない。探らない。
    ああ、心も切り開いて、中身を取り除いたり、具合の悪い所をいじったりできたらいいのに。

    中途半端な善意(かわいそうと思い手を差し伸べること)の対極は、純粋な悪意(理由もなく罪を犯すこと)

    理由もなく人を傷つけるのが一番恐ろしい悪。
    根拠もないのに自分を傷つけるのだって、同じくらい罪深いこと

    人生は、選択の連続。物心ついて選択の自由を与えられた瞬間から、選択しなければ許されない不自由も強いられる

  • 心理コンサルタント安楽是清が行う「純粋な悪」の存在に関する実験のアルバイトに参加した、箱川小雪、三島大我、桐山玲奈、徐博文の四人の学生と、卒業生の香川霞、そして大学職員の茂木水観。彼らのスマホには、ベーカリー「ホワイト・ドワーフ」を営む鹿原一家を破滅させるスイッチがインストールされる。押しても押さなくても1カ月後には高額な報酬が手に入り、押すメリットはない。それでも押す者は現れるのか。
    個人の実験だからということなのだろうが、被験者が六名では本当に実験になるのか。前提としての実験の方法には疑問があるが、設定は興味深い。

  • 大学時代の先輩から誘われたバイト。それは、有名な心理コンサルタントが発案したもの。何かはわからないまま、とある家族が経営するパン屋に訪問する。決して美味しいというわけではなく、普通の味で、経営としてはいかがなものかという感想だった。そんな時、実験として、スマホにあるスイッチがインストールされた。それは押しても押さなくても1ヶ月後に100万円が入るというもの。でも、もし押した場合、訪問したパン屋の出資を中止し、その家族を破滅にさせるのであった。


    第63回メフィスト賞を受賞した作品で、巧みな心理や衝撃的な展開に圧倒されました。

    てっきりスイッチを押すか押さないまでの緊迫の1ヶ月間を描くのかなと思ったら、それは前半で終わり、その先には殺人や疑惑、隠された真相など、「スイッチ」による心理も面白かったですが、その後の展開が予想もつかないことだらけで、ついつい惹きこまれました。

    ストーリーも面白かったですが、登場人物のキャラクター性も面白かったです。登場人物の半数は、「狂気」性のある人物ばかりで、人間が一番怖いのではと思ってしまいました。

    特に心理コンサルタント。この人物の狂気が異常でした。
    「普通」という概念がないのではと思うくらい、側から見たら異常性を放っていました。目に見えるものは何でも実証実験という感覚で、冷静に分析しているところが恐怖を増していました。

    そして実験にされた被験者の6人。みんな違った考え方や解釈をもっていて、それがどうストーリーに影響を与えるのか。それぞれの持ち前を発揮しているので、みんな、ある意味光っていました。

    この作品では、ある架空の宗教が登場します。その概念はフィクションですが、実際にあるのでは?と思うくらい、しっくりくるものがありました。こうして、のめりこむのではとも思ってしまいました。

    巧みに使う言葉。一つ一つに言霊があるかのように人間って言葉だけで、惑わせるんだということを証明されたようで、ちょっと恐怖も感じました。

    個人的には、心理コンサルタントの態度や態度には、イラッとしましたし、主人公よりもあまり活躍してほしくなかったという不満はありましたが、言葉を巧みに使って、ここまで話が発展するとは予想がつきませんでした。

    何が「悪」で、何が「善」なのか。紙一重なのかと思いました。善意だったことが、人によっては悪意だと感じる人もいます。色んな「悪」の概念が描かれていましたが、結局のところ、人それぞれの解釈があり、答えを導き出すのは困難かと感じました。

    要は、胡散臭いことには関与しない。これが正直な思いでした。

    次回作は、2021年夏に出版されるということで、ぜひ読んでみたいなと思いました。

  • これは面白い。
    久し振りにのめり込んで読みました。
    一体どうやって
    このモチーフを思いついたのでしょうか
    その時点で傑作になる手応えは
    十分だったでしょう。
    ラストはやや甘口で
    もっと突き放して良い気もしましたが、
    そこはあくまでも好みの問題。
    これはこれで後味も良く
    うまい終わり方でした。

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著者プロフィール

1978年京都府生まれ。第63回メフィスト賞受賞。デビュー作『スイッチ 悪意の実験』が発売後即重版に。「王様のブランチ」(TBS)で特集されるなどで話題となる。2作目の『時空犯』は「リアルサウンド認定2021年度国内ミステリーベスト10」で第1位に選ばれ、今作が3作目となる。

「2023年 『エンドロール』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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