- Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784065243862
作品紹介・あらすじ
『愛されなくても別に』で話題の著者が贈る、痛いほどに切実な感情を抱えた高校生5人を描いた短編集。
感想・レビュー・書評
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白線と一歩
赤点と二万
側転と三夏
作戦と四角
漠然と五体
一から五までの女子高生の葛藤を描いた連作短編集
根底には『伝えようとしなければ何も始まらない』
と分かっているが、伝えれない苦しみや将来の不安を短編集に凝縮されています。
青春時代のほろ苦い思い出や無駄を無駄と思わない、大人から見れば意味不明な行動も成る程と感じました。
青い春を色々と数えてもオチがない遠い昔(笑)の私を思い出しました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
苦しくて、でもそれが現実で大人になればいい思いでにだって言う人は多いだろうけど、今日明日を生きることは私や彼女達にとってはとても大変な事で。こなければいいと思った。連絡も知らせもないなら時間ごと止まればいいと思った。だから、彼女が「死ぬ?」と言った姿が凄く綺麗に脳内に描かれて、凄く儚いんだけど、そこには彼女が生きていて、高校生のヒリヒリした感じが凄く伝わってきた。
誰かにとっては「たったそれだけ」の事だったかもしれないけど、その人にとっては「たった」とは思えない事だったんだと思う。
心中を考える姿も、綺麗な描写も、全てが青春で、綺麗で素敵で、キラキラしてて、とてつもなく痛いものだった。受け止めれる内容じゃなかった。それでも彼女達は生きていて行くんだろうなぁ。大人になりたいと思いながら。 -
いい本だ。
一瞬安っぽそうな表現が多いと思ったが、感情を正確に捉えられているし、その感情に至るまでの出来事も自然に進められている。とてもしっかりした小説だった。
様々な感情が湧き上がってくる青春というジャンルを扱っていながら、物語ごとに1つのテーマが明確に定められているので読みやすかった。
大人の視点から冷静に読むとしょうもないただの高校生活の出来事が描かれているのに、感情移入が出来てしまった。
例えば、
「ブルーライトはもはや我々の親友であり、戦友だ。」
みたいな表現は、大人の視点ではしょうもないけれど、これに納得できるように描かれている。
作者の年齢は若いけれど、物語づくりの基礎は出来上がっているので、若者言葉の安直な表現でも感情移入できて、心を動かされた。 -
文学YouTuberベルさんの激推し作品とのことで、気になり購入、読了。
うーーーん…そうかぁーーー…
率直に言うと、まぁそこまで言うほど面白いかなぁ…?という感じでしたかねm(_ _)m
きっと自分がシンプルにおじさん過ぎたのかと…(笑)
「自分らしさに悩む、青春真っ盛りの女子高生」にはさすがにちょっと感情移入できなかったか…(´∀`)
一見軽やかに生きているような見える人でも、実は悩みを抱えて生きていたりする…そんなところは、本作を読んでいて改めて感じたところかもしれません。
何となく、武田綾乃さんの作風は掴めたかなぁと。
自分なんかが読むよりも、自分の子供に読ませたい本だなとか…そんなことを思ったりもしました( ̄∇ ̄)
<印象に残った言葉>
・言っとくけど、お姉ちゃんの料理に関してはハードルの高さが足首辺りにきちゃってるから(P96、真綾)
・私はただ、この世界に存在する全人類は須らく眼鏡を掛けるべし教に入信してるだけ(P130、泉)
・一人称の旅、清水はやらなかった?(P158、泉)
・ただ、なんとなく消えたくて、なんとなく死にたいだけ。スマホの電源を切るみたいに、明日が無くなってしまえばいいのに。(P184、細谷)
・正論じゃ、君を救えない。(P214)
<内容(「BOOK」データベースより)>
“青春”の表も裏もすべて抱えて、少女は大人になっていく。
放送部の知咲は、本番の舞台にトラウマがある。だが、エースの有紗の様子が変で――(白線と一歩)。
怒られることが怖い優等生の細谷と、滅多に学校に来ない噂の不良少女・清水。正反対の二人の逃避行の結末は(漠然と五体)。
少女と大人の狭間で揺れ動く5人の高校生。瑞々しくも切実な感情を切り取った連作短編集。
解説・井手上漠 -
青春の切実な痛さとその先にあるきらめきを感じた短編集です。描かれる人物はみんな女子高生なのだけど、彼女たちの抱える悩みや葛藤というものはどこか身に覚えのあるもので、性別の違う自分も学生時代を思い出し、少し胸が痛くなるような気持ちになりました。
収録作品は短編5編と掌編2編。描かれるテーマは部活での友人関係や後輩との関係性、受験をめぐるもやもやとした感情、あるいは姉妹関係であったりクラスや社会に対する違和感であったりします。
テーマ自体はそこまで目新しいという感じでもないけれど、語り口や登場人物たちの心理描写がみずみずしくとにかく共感しました。
失敗に対する恐怖。自分だけを頼ってほしいという感情。なんでも器用にこなしてしまうがゆえの不満。部活できらめいている友人に対する負い目。クラスメートに対する違和。自分に対する嫌悪。
彼女たちの痛さは自分の中のイタさを思い起こさせる。学生時代はもちろんたぶん今でもそのイタさというのは心に残っている。だから共感してしまう。
ただこの作品は痛さを描くだけではありません。各短編の彼女たちの痛さはきちんと昇華され、次の一歩へきっとつながるのだろうと感じさせてくれます。痛さとイタさの先にある成長を描いているからこそ、自分はこの短編集が好きだと思いました。
学生時代の日常の切り取り方と心理描写の鋭さが本当に素晴らしい作品でした。 -
「姉みたいに、困ったときに助けてと言える人間になりたかった。努力していると思われたら恥ずかしいから、何でもできるような顔をして。自尊心の鎧で自分を覆っているうちに、気付けば頑張っている状態が当たり前だと思われるようになっていた。背伸びした分の私の努力は、私だけしか見ていない。幼い頃の側転と同じだ。成功することが当たり前だと思われているから、誰の記憶にも残っていない。」 ー側転と三夏ー
何でも要領よくこなせてしまうというのは羨ましい。いいなあって思う。...でも、本当にそうだろうか?人は誰しも無意識のうちに人に期待する。その期待に答え続けていくうちに、やがて当たり前のことになる。もしかしたら、努力して努力してやっと出来上がった作品かもしれないものを、「あなたのことだもん、できて当たり前よね」という態度を出されたら息が詰まる。このことから、「人に期待する」ということは残酷だなと。誰しもが「こうあるべき」と自分の中にある狭い価値観で相手を固定して、そこから道が逸れた途端に「裏切られた」と声を上げる。相手の見えない部分が見えただけなのに、それの何がいけないんだろう。勝手に期待して、勝手に失望したのはそちらじゃないか。「期待する」という言葉は呪いのようだと多々感じる。
そもそも、面接に向いた眼鏡とは何なのか。面接に向いた服装、面接に向いた髪型、面接に向いた言動。そんなものを求めた先に、一体何があるのだろう。生地からクッキーを作るみたいに人間を型で抜いて、はみ出た部分を切り捨てる。余った端切れをまとめて作り直すこともせず、商品にならない個性はごみ箱へと消えていく。 ー作戦と四角ー
自身の個性が矯正されてゆくような感覚を持ったことがある。少しでも道を踏み外すと、「変わっている人だ」「ちょっとおかしいよね」ってそんな言葉を投げかけられる。段々それが重荷になって、積もりに積もって背負いきれなくて「当たり前」に個性が潰されてゆくのだと思う。「漠然と五体」の主人公のように、世間一般の当たり前と調和できるのであれば、そのような生き方で全く問題は無いのだろうと思う。調和できても出来なくても、合わないなと感じるものからはそっと距離をとって、自分らしくいれる心地よい生き方が出来ればいいなぁとのんびり考える。
今回の作品は全体的に自身が感じたり考えたりしたことのある内容で共感できる部分が多かったなと感じた。「赤点と二万」の大学受験で使わない教科を一生懸命勉強して学校内テストで良い点をとる必要性はあるのかという疑問。「作戦と四角」の生き方について模索中の人間に対して悪気なく吐かれた「可哀想」という言葉。それをどういう意味で使ったのかと、言うタイミングによってはうんざりさせられることもある。同情というものに対して嫌悪を覚えることがある。恐ろしい武器だと感じる。
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輝かしい高校生活をどのように思うかは、当事者でないとわからないですよね。ここに出てくる子たちは、みんな感性がみずみずしくて羨ましい。自分はどちらかというと、流れに流され、色々と諦め達観し、みたいな感じ(今考えてもイヤな奴だったな)だったので、純粋にいいなと思いました。とても面白かったです。
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正確に書くと星3.3。
5作の連作短編集。一つ一つの話が短いところもあり、この展開早くない?と思うこともあった。
一人一人にどこか共感できるところもあるのがよかった。
一人一人で個性が出ていたのもすごいなと思った。