きょうの日はさようなら (集英社オレンジ文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784086800587

感想・レビュー・書評

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  • 2020/10/21-10/24

  • 30年の冷凍睡眠から目が覚めたら、全く世界は変わっていた。というやつ。未来で治療法が確立されていることを願って自分の生きていたきょうを置いていくか、そのまま死か。
    自分だけで判断できたらいいけど、その周りも助けようとする。生きていて欲しいから。もちろん本人も死にたくない。
    でも、目覚めた世界は自分の知るきょうじゃない。

    辛いです!でも、面白いです!

  • 夏休み前の女子高校生。
    付き合いそうで付き合わなかった2人。
    そんな今日子の背景も、夏の疾走感も、読んでいて気持ち良かったです。
    今日子の時代に行ってみたいな…
    アナログな感じを味わってみたい。

    ギラギラの夏に含んだ絶望感や寂しさがたまらなかったです。
    今日子は力強く、儚く、強がりで、人に寄り添える子だなと思いました。

  • 長い眠りから目覚めた女子高生、今日子と、そのいとこである明日子と日々人のひと夏の話。

    コールドスリープ、とはいえ強くSF感はないのだな…と読み進めるうちに、捻じ曲げられている情報や、少しだけ未来の世界の管理・統制社会の仕組みが三人の前を立ち塞ぐ。

    三十年という時間の経過について、自分自身が今日子の少し下の歳で、彼女が飛び越えた三十年をまさに生きてきたので、カルチャーギャップがわかるなぁと感じながら読んでいた。いくつもの機械を使っていたのに、スマホ一つで何役、何十役もこなせてしまう現在をすごく便利なものだと思うけれど、確かにこの三十年くらいってフルモデルチェンジよりもマイナーチェンジの世界だったのかも。何年かおきにカバーされる名曲がいくつも頭に浮かんで、復刻版を有難がって。いつまでも愛されてる気がしていたけど、半端に残ってるというのがすとんと腑に落ちる。

    今日子という新しい刺激に対して、明日子が内心で抱える感情や日々人の変化。一穂作品に出てくる人は皆、正直で率直で、それでいてとてもやさしいのがこの作品でもそうであることが嬉しかった。
    家族というもの、病、十七歳の繊細さ、夏休みという特別な時間といった感情的なものと、時代装置が上手く噛み合った不思議で特別なSFストーリーになっていた。

  • 長い眠りから覚めた時に…!

  •  今から何年か先の未来の話なのだが、今と世界があまり変わっていなくて、確かにスマホの登場以降それほど劇的な変化はもうないと見込んでのこの設定だったのかもしれない。ネットと携帯が改めて我々の世界を一変させていることを痛感した。30歳年上の同級生みたいな変な感覚で、その時間軸のずれが切なくて感動して涙出た。

     冷凍睡眠の女の子の家が一家心中するのだが、その理由が非常に無難で、どこにも悪意がないのが肩透かしだった。収まりがよすぎて出来すぎだ。

     主人公が双子の兄妹の女の子で、一応三人称で描かれているのだが、半一人称とでも言うほど彼女に寄り添った三人称だった。こんなのありなんだ、と思った。

     女の子がかつて好きだった同級生の男の子が主人公のエピローグ的な章がとても切なかった。過去を過去として心に抱きながらおじさんとして生きている未来みたいな、それに対して女の子は過去からダイレクトに未来にやってきてしまったみたいな、うまく言葉にできないけどそのギャップというか、無常みたいなこと。

     ジャンプの漫画やゲームなどタイトルは明記しないけど、なんとなく想像できるような表現となっていたのだが、それは権利的な配慮なのだろうか。タイトルを書いてもらった方がちゃんと思い描けていいと思うのだが、なじみのない世代はこのようにぼやかした表現の方がいいのだろうか。

     ちょうど夏休みの終わりに読んでよかった。

  • おそらくBL小説での方が著名な方だとは思うのですが、一般向け小説もなかなか読み応えのあるものを書かれるのですね。
    「おお~…」と唸らされました、SFあり青春あり。
    文体としてはあえてかもしれんが、ちょっとドライで突き放す語り口でしたね。

  • 高2の夏、明日子と日々人はそれまで知らなかった従姉・今日子の存在と、彼女を引き取ることを父から告げられ、戸惑う。しかも、今日子は30年前にコールドスリープに入って目覚めてしばらくたったところだと言う。
    ノストラダムスの大予言が騒がれていた時代に生きていた少女が、現代よりもさらに進んだ近未来に目覚めて、自分が生きる意味を必死で考える様が痛々しくなく、描かれている。 
    語り口は軽いのに、テーマは重い。読み進むうち、テーマはさらに深まっていく。

  • コールドスリープされていた、従姉妹を家で引き取ることになったところから始まるお話です。
    いろいろミニつまされるところもあり。

  • 2025年の夏休み。双子の明日子と日々人は
    年の近い従姉がいる事を父から知らされる。
    夏休みに面倒事が増えてうんざりした二人だったが
    従姉の今日子は長い眠りから眼覚めた
    30年前の女子高生だった…

    三浦しをんさんがお勧めしていたので
    読んでみたのですが面白かったです。
    やはりその世界にぽんと放り込まれたら
    割とあっさり順応するものなのかもしれないな、と
    思いました。

    物語は軽く、淡々と進みますが
    想像すると、ものすごく寂しくて悲しくて怖いんです。
    「明日がこなくて目が覚めたら30年後だったら」
    でもすごくサラッとしている。
    今日子がそういう風にしていたのもありますが
    今度こそ本当に誰一人として知っている人も
    いなくなっているかもしれない。
    だからこそ今日子の夢の声を聞いた時に涙が…
    こういう淡々としているけど余韻が残る話、好きです。

    ただ、気になるのは2025年なのに
    今の流行り言葉などが全面に
    出てしまっている事ですかね…

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著者プロフィール

2007年作家デビュー。以後主にBL作品を執筆。「イエスかノーか半分か」シリーズは20年にアニメ映画化もされている。21年、一般文芸初の単行本『スモールワールズ』が直木賞候補、山田風太郎賞候補に。同書収録の短編「ピクニック」は日本推理作家協会賞短編部門候補になる。著書に『パラソルでパラシュート』『砂嵐に星屑』『光のとこにいてね』など。

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