- Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087201291
作品紹介・あらすじ
視覚、聴覚、味覚などに比べて、嗅覚については、論じられたり、教育されたりする機会はきわめて少ない。とりわけ近年、無臭であることが是とされて、消臭グッズが売れている…。こうした現象の背景にある匂いの抑圧と、本能の抑圧・性の抑圧とのつながりを探ると、意外にも匂いと性のただならぬ関係が浮かび上がり、人間特有の性の謎が見えてくる。本書では、媚薬、フェロモンからブルセラ、ボンデージ、果ては人類の性進化までをも「匂い」を軸に縦横に論じていき、本能から解き放たれた「人間的」な性-エロスに訴える匂いとしての「エロモン」仮説を提議する。
感想・レビュー・書評
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プロのパフューマー(調香師)である著者が、匂いとエロティシズムの関係に斬り込んだ本。
文化的歴史的な見地、生物学や進化学の見地、そして心理的・マニア的な見地から、匂いと性的魅力についての考察が続く。単なる香水職人の思い込みではなく、大量の文献をもとに専門の研究者が著したかの如く仮説が検証されている。それ故に、普段は禁忌されるような、ストレートで生々しい話(つまりソコやアソコの匂いの話)が客観的に語られるのが衝撃的でもある。
生物一般では、個体間のメッセージング機能をもつ「匂い」だが、人間(現代人)の場合は、シャワーやデオドラント剤で自らの匂いを隠蔽しようと努力する。さらに、せっかく匂いを消したのに、香水で別の匂いを植えつける矛盾。「匂い」と「異性」といえば、フェロモンがすぐに連想されるが、フェロモンはタンパク質なので揮発しない。揮発しないからには臭覚に反応しないそうで、フェロモンを感知するには、鋤鼻器官なる仕組みが必要とのこと。日常生活ではあまり役立たない分、人間の性の生々しさにむせかえりそうな一冊。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
フェチにも段階があるなんて知らなかった。匂いを感じる力が鈍化した人間は幸せなのかな?
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いつも匂いが気になるので図書館で借りてみる。悪臭とされる腋臭もそれをこよなく愛する人がいたりして、この世界は複雑怪奇なり。
・数千種あるといわれる天然香料で動物の分泌腺がつくりだすのはわずか3種。麝香、霊猫香とカストリウム
・寝ている間(無覚醒状態)の匂いによるコミュニケーションが人になにか作用を及ぼしているのではないかという説(具体例として、赤ちゃんが母親に添い寝されることにより落ちつき、ダビデ王がシュナミのおとめアビジャグに添い寝させ回春をはかる)というのはなかなかあり得る話しかなと直感的におもう。
調香師として香水の調合などに携わった経験が話しに厚みをあたえている。
匂いとフェロモンについて次は川端康成の「眠れる美女」をよんでみたい。 -
専門的な記述が多くて、やや難しいが、すげー面白いです。
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匂いふぇちの私が思わず手にした本。
大好きなムスクの香りは肌の香りなんですとー -
匂いにエロティックなものを結びつけて真面目に様々な考察を加えていく本。興味深い部分もあったり、あまり興味がそそられない部分もあったり。でも基本的には真面目な本であり、タイトルから興味持ったら読んでみるといいだろう。
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匂いが思い出させる記憶というのは確かにある。
それは何故か。
世の中はそんな匂いを消臭し、香水をつける。
それは何故か。
そんな疑問に筆者なりの分析で答えてくれる。
匂いとエロとは。
横文字が多いけど、興味深いテーマだった。 -
目次
序章 異性のにおい
第1章 媚薬と香り
第2章 エロスの進化論
第3章 フェロモンからエロスへ
第4章 鼻とセックス
第5章 匂いに感じる人々
終章 匂いのエロティシズム
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第1章 媚薬と香り
人類は長い歴史の中で、様々な香料を求めてきた。
しかし、現在でも残る動物性香料はムスク、竜涎香、シベット、カストリウムの4種類のみである。
だが、この中でも麝香鹿の香嚢から取れるムスクは、全世界で絶大な人気を誇っていた。
古代インドにも記述が見られ、イスラム圏でも珍重されている。
だが、実はこのムスクは人間の脇の下から分泌されるアンドロステノールに似ている。
第2章 エロスの進化論
第3章 フェロモンからエロスへ
かつて、人間以前の哺乳類にとっては匂いは、縄張りや個人情報(雌か雄か?、健康かどうか?)を主張する重要な情報であった。
特にメスの排卵情報をオスに伝える重要な役割があったと考えられる。
しかし、人間はあるときからこの情報を秘匿するようになってしまった。
このメリットについては、
時期を隠すことにより、その時期以外でも交尾を促し、結果、沢山できるようになった。そして、不特定多数のオスとの交尾が可能になった
↓
・メスの気を引くために、オスはメスにプレゼントをする
↓
・オスを選別にかけ、結果、優秀なオスとつがいその個体とのペア・ボンドが強化された。
↓
・オスは自分の子と確信し、ますます子育てに励む
これが人間の核家族化を進めた。
また、人間は総じて他の動物に比べ匂いに鈍感である。
これもまたメリットがある、と作者は考える。
人間には昆虫のようなダイレクトにきくフェロモン、つまり媚薬はないとされる。
ここでいう媚薬とは気づいたら相手との性交になだれ込んでいた、というような直接的な行為を促すものを指す。
そのかわりに、性行動(セックス)と、社会学としてのセクシュアリティを分離した。
それを促したのは脳、特に視覚野の発達と嗅覚の相対的低下である。
複雑な過程を経て、視覚刺激を性的興奮に結びつけるようになったのだ。
さらに、さまざまな情報を統合して、自家発情できるようになったオスは他者の考えを読み、社会行動をタイミング良く行うことができるようになった。
媚薬のように直接的なフェロモンはないとされる人間だが、一方で、フェロモンを感知するための器官、ジョビ器官があるとする説もある。
また、前述したアンドロステノールは「プライマーフェロモン」と呼ばれている。これはその気のない相手をその気にさせるのではなく、親密さを感じる相手との関係をより加速させるものである。
第4章 鼻とセックス
第5章 匂いに感じる人々
古くより、鼻と性器は密接に結び付けられていた。
実際に、匂いが感じられなくなると、性欲も落ちるという例もある。
最近は、嗅覚レセプターを作り上げる遺伝子が、非常に良く似たレセプターを精子に発現させている。
<感想>
排卵日や脳の発達など、着想は面白かったけど、ちょっと著者の発想に対する裏付けが乏しいかなーと思う部分も多々あった。 -
アンバーやムスクについての記述、またその腋臭との類似、過去には珍重されたのに、現代では忌避されていることとの隔絶などは興味深く読んだが、それ以外の部分はあまり興味引かれず。
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九州新幹線の中で読み終わった!