「助けて」と言える国へ ―人と社会をつなぐ (集英社新書)

  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087207033

感想・レビュー・書評

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  • 誰でも生きていていい社会
    もっと話を聞きたい

  • 某所読書会での課題図書.奥田さんのバイタリティーが凄い.「傷つくことを極端に避ける」傾向のある現代社会.しかし社会は「健全に傷つくための仕組み」だと考えられる.タイガーマスク現象は、「無縁社会」の顕在化では.「絆は傷を含んでいる」「絆は傷から始まる」... 素晴らしい言葉が満載の好著だ.茂木さんの反応も素晴らしい.

  • [ 内容 ]
    ホームレスが路上死し、老人が孤独死し、若者がブラック企業で働かされる日本社会。
    人々のつながりが失われて無縁社会が広がり、格差が拡大し、非正規雇用が常態化しようとする中で、私たちはどう生きればよいのか?
    本当の“絆”とは何か?
    いま最も必要とされている人々の連帯とその倫理について、社会的に発信を続ける茂木健一郎と、長きにわたり困窮者支援を実践している奥田知志が論じる。

    [ 目次 ]
    対談 真のつながる力とは何か(健全に傷つくことができる社会へ;キリスト教の思想とホームレス支援;生きる意味を問う)
    絆は傷を含む―弱さを誇るということ(なぜ支援するのか―人は一人では生きていけない;対抗文化―光は闇の中に、東から;「俺は人間か」;他者からの言葉―「きっと笑える時がくる」;相互多重型支援―笑える牡蛎プロジェクト;人はなぜ絆を必要とするのか―創造論から;人はなぜ絆を必要とするのか―進化論から/絆のモノ化 私とそれ;絆は傷を含む―タイガーマスク現象とは何であったのか;助けてと言うこと―誇り高き人間として生きるために)

    [ 問題提起 ]


    [ 結論 ]


    [ コメント ]


    [ 読了した日 ]

  • まだ5月ですが、この本は今年読んだ本の中でベスト3に入るはず。勉強になっていろんなことに気付かされて、人として深く、厚くなれた気にさせてくれます。
    脳科学者の茂木さんと対談しているのは、NPO法人「北九州ホームレス支援機構」の理事長・奥田知志さん。この対談は本当に読み応えがあります。ホームレスを支援することについて奥田さんは、それは強い者が弱い者を助けている、という構図ではなく、支援する側も弱い人間で、弱い者同士が支え合っていると捉えることが大事だと話します。
    元ホームレスのおじさんが小学校の講座で語った話がとてもよかった。「自分で頑張るしかないと思って生きてきたんだけれど、この世には助けてくれる人はいたんだよ。『助けて』と言えた日が助かった日だったよ」とおじさんが話し、司会の奥田さんが、本当に辛いときは「『助けて』と言いなさい」と語りかけたら泣いていた子もいた、というのを読んで、自分が保護者としてその場にいたら間違いなく泣いたな、と思いました。
    宗教に関する話もとても面白かった。宗教の本質は「主語の違い」にある、という奥田さんの言葉には目を開かされる思いがしました。「私」と「神」、どちらを主語にして語るのか、その差は大きい。「私ではなく、”神”が自分に対して何を言おうとしているのかを考えたらよい」、その主語の転換が大事だということです。V.E.フランクルの『夜と霧』の中にある、「人生から何をわれわれはまだ期待できるかが問題なのではなくて、むしろ人生が何をわれわれから期待しているかが問題なのである」というフランクルの気づき、これが宗教だと奥田さんは言います。なるほどそうか、と深く深く納得。
    「一旦誰かに出会ってしまうと、想定通りにはいかなくなる。それが出会うという意味であり、絆を結ぶということなのだ」という奥田さんが繰り返す、傷つくことを恐れず人と出会うことが大事だという主張が胸に残る一冊。とても心を動かされました。

  •  「Ministry」第10号の対談「3・11後の宗教界を斬る」で文化人類学者の上田紀行さんと対談したホームレス支援機構の奥田さん。今回の対談相手は、NHK「プロフェッショナル」以来の長いお付き合いとなっている脳科学者の茂木健一郎さん。

     「私自身はクリスチャンではないが、以前から、『自ら傷ついたものこそが叡智を得て、世界を救うことができる』というキリスト教の根本思想に、深い共感と関心を抱いてきた」という茂木さん。信仰に支えられた洞察に基づく奥田さんの支援活動に触れ、「何度も魂がふるえた。精神の美しい火花が散る思いがあった」と述懐している。読者も2人の対談を傍らで「聞き」ながら、牧師と脳科学者による真剣勝負で飛び交う「美しい火花」を体感できるに違いない。

     話題は震災支援やセーフティネットのあり方から、無縁社会における自己責任論、原発と代替エネルギー、バックボーンとしてのキリスト教、ネット活用の可能性、憲法と平和主義に至るまで多岐にわたる。そこに貫かれているのは、「『健全に傷つくことができる』ことを保障するのが社会」「絆とは『傷つくという恵み』である」「人は一人では生きてはいけない」という強い信念である。(松ちゃん)

  • とても救われました。

  • 「タイガーマスクが胸を張って正体をバラすことができる社会をつくりたいと思う。」
    匿名で児童養護施設にランドセルを送った「タイガーマスク現象」について述べられた言葉だ。匿名での行為を認めながらも、さらに一歩進んで他者と顔の見える関わりをもとうと言うのだ。「個人に責任を負わせることによって社会の責任を無化」する自己責任論社会ではなく、「人が健全に傷つくことのできる」ことを保障する社会にしようと。

    他者と関わることで傷つくことあるかもしれない。しかし、自分と異なる他者と出会うことで、自己を深め、他者を尊重することができるようになるのだと思う。「同じ場所で、同じ姿勢、視線でいくら反省しても、何一つ新しくはならない」のだから。

  • フォトリ24冊目。「傷み」、「傷つく」ことから世界を読み解く。傷つくことを極端に恐れふみこまない、スルーする感覚が今の日本のベース。「負け組」はその犠牲者。でも、人に手を差し伸べることができるのは「傷み」知るもの。期待すべきは高スペックな人材ではなく、「傷ついたひと」達かも。
    奥田牧師のキリストや処女降誕、宗教の意義についての考え方もとても面白い。不登校についての解釈も当事者の立場にたち、ハッとさせられました。

  • タイトルはいいものの、新書ということでそこまで期待してなかったのだけど、いい本に出会えました。やさしい対談でした。
    奥田知志さんをこの作品ではじめて知ったのですが、おもしろい考え方をしていて、めちゃくちゃ共感した。
    ここまでひととのかかわり方において共感したひとははじめてかもしれない。
    出会うことは、そのひとを自分の中に住まわせること。そのひとのもたらす責任とか面倒を引き受ける覚悟をすること。
    このひとの本を読んで、自分の考えを深めていきたいと思った。

著者プロフィール

1963年、滋賀県生まれ。1990年東八幡キリスト教会牧師赴任。学生時代から「ホームレス支援」支援に携わり、現在、北九州市において生活困窮者への伴走支援を行っているNPO法人 抱樸理事長。東日本大震災被災者支援「共生地域創造財団」理事長なども兼任。
著書:『「逃げおくれた」伴走者』(本の種出版)、『ユダよ「帰れ」』(新教出版社)など多数。受賞歴:糸賀一雄記念賞、賀川豊彦賞ほか。

「2022年 『すべては神様が創られた』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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