〈気をつけて下さい。どんなに素晴らしいものを持っていても、その価値に気づかなければ隙を作ることになる。そしてそれを狙っている連中がいたら、簡単にかすめとられてしまう。この国でたくさんの者が、大切なものを。当たり前の暮らしを、合法的に奪われてしまったように〉(p.33)
国とマスコミに「日本の医療費は高すぎる」と繰り返し言われ続ける私たち。その最大の支出である医薬製品と医薬機器の輸入超過、そしてその政治的背景を知ることは、今後日本の医療を守るために、不可欠となるだろう。(p.48)
イラク戦争の時に米軍リクルーターが使ったのと同じ手法だ。学費が出る、医療保険に入れる、などと、甘い言葉を並べて高校生を勧誘する軍のリクルーターたち。だがふたを開けてみると、彼ら自身も数年前に同じように騙されて入隊し、前線に行かされることを回避するため、毎月17人の新兵勧誘というノルマ達成に必死になっている。
餌をぶら下げた競争原理を導入し、社会的弱者に、本来同じ立場にいるはずの別な弱者を襲わせる、あのシステムだ。(pp.107-8)
私たちから集めたお金を国が何に使うかに無関心な国民ほど、政府によっては都合がいい。特に、10億円以上政府広告費が費やされる一方で、社会保障費は削減され、医療や介護の自己負担が次々にあげられている今、私たちが黙っていれば、今後ますます政府にやりたい放題をさせてしまう。(p.126)
ニューフェル医師「少数の患者を直接支払いで診るようになってから、患者との距離は前よりずっと近づきました。保険会社に許可をとらなくてもいいので、彼らは何かわからないことがあればいつでも私にメールで質問できる。病気が治っても、子どもを連れて診療所に遊びに来たり、時間があるときはお茶を飲んで雑談する余裕もできます。前だったらそんな非効率なことは論外でした」(p.142)
「小手先のお金と捏造された情報でつぶしても、そのたびに私たちの怒りは大きくなって、広がってゆく。住民運動とは、オセロゲームのように、国民の意識を白から黒へとひっくり返してゆくものなのです。私たちの最大の弱点は無知だったこと。でも一度知識を得たら、目に映る世界はそこから大きく変わるんです。だからこれからも信じて、運動を続けます。いのちを商品にする社会を、子どもたちに残したくないですから。国民の意識を変えてゆくことが、地道で回り道に思えても、結局最後には結果を出すと思うからです」(p.157)
「高齢化を医療技術でなんとかできる、という時代はすでに終わっています。認知症をはじめ、今後も治せない病気がどんどん出てきていますから。医療技術の専門家である医師には、残念ながら、超高齢社会の実像は見えていない。佐久市をみてください。高齢化が急速に進む地方では、特殊な高度医療よりも『すきな人とすてきな所でくらしつづけること、この願いを支える医療としくみ』が大切なのです」(p.181)
「それになぜ私たち医師がこんなに過剰に忙しいか、その理由をほんの少しでも患者さんが知ってくれたら、三分診療の原因が医師ではなく別のところにあることを理解してくれたら、お互いに敵同士にならず、ともに良い医療を考えられると思うのです」(p.193)