コモンの「自治」論 (集英社シリーズ・コモン)

  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087370010

作品紹介・あらすじ

【『人新世の「資本論」』、次なる実践へ! 斎藤幸平、渾身のプロジェクト】戦争、インフレ、気候危機。資本主義がもたらした環境危機や貧困格差で、「人新世」の複合危機が始まった。国々も人々も生存をかけて過剰に競争をし、そのせいでさらに分断が拡がっている。崖っぷちの資本主義と民主主義。この危機を乗り越えるには、破壊された「コモン」(共有財・公共財)を再生し、その管理に市民が参画していくなかで、「自治」の力を育てていくしかない。 『人新世の「資本論」』の斎藤幸平をはじめ、時代を背負う気鋭の論客や実務家が集結。危機のさなかに、未来を拓く実践の書。【目次】●はじめに:今、なぜ〈コモン〉の「自治」なのか? 斎藤幸平第1章:大学における「自治」の危機 白井 聡第2章:資本主義で「自治」は可能か?──店がともに生きる拠点になる 松村圭一郎第3章:〈コモン〉と〈ケア〉のミュニシパリズムへ 岸本聡子第4章:武器としての市民科学を 木村あや第5章:精神医療とその周辺から「自治」を考える 松本卓也第6章:食と農から始まる「自治」──権藤成卿自治論の批判の先に 藤原辰史第7章:「自治」の力を耕す、〈コモン〉の現場 斎藤幸平●おわりに:どろくさく、面倒で、ややこしい「自治」のために 松本卓也【著者略歴】●斎藤幸平(さいとう・こうへい)経済思想家。『人新世の「資本論」』で新書大賞受賞。●松本卓也(まつもと・たくや)精神科医。主な著作に『創造と狂気の歴史』など。●白井聡(しらい・さとし)政治学者。『永続敗戦論』で石橋湛山賞受賞。●松村圭一郎(まつむら・けいいちろう)文化人類学者。『うしろめたさの人類学』で毎日出版文化賞特別賞受賞。●岸本聡子(きしもと・さとこ)杉並区長。主な著作に『水道、再び公営化!』など。●木村あや(きむら・あや)社会学者。Radiation Brain Moms and Citizen Scientistsでレイチェル・カーソン賞受賞。●藤原辰史(ふじはら・たつし)歴史学者。『分解の哲学』でサントリー学芸賞受賞。

感想・レビュー・書評

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  • ベストセラー『人新世の「資本論」』の実践編とも呼べる『コモンの「自治」論』、集英社より8月25日に刊行!|株式会社集英社のプレスリリース
    https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000473.000011454.html

    コモンの「自治」論/斎藤 幸平/松本 卓也/白井 聡/松村 圭一郎/岸本 聡子/木村 あや/藤原 辰史 | 集英社 ― SHUEISHA ―
    https://www.shueisha.co.jp/books/items/contents.html?isbn=978-4-08-737001-0

  • 過剰な資本主義がもたらす複合危機を乗り越えるためには「コモン」の再生と「自治」の力を取り戻すしかない。
    その実践例を、大学、商店、地方自治、市民科学、精神医療、食と農などさまざまな切り口から提示している。最終章で斎藤幸平氏が各章をさらいつつまさに実践のための書としてまとめており、興味深く読んだ。
    個人的にかかわりのある福祉やケアにおいては、本来特に資本主義による「魂の包摂」と相容れないはずだが、近年では支援の質の向上と同時に効率化、生産性の向上も顕著に求められている。行き着く先があらゆる人間の営みがすべて「コスパ」や「タイパ」で測られる殺伐とした社会にならないかと危惧している。
    上からの改革や政治主義では変わらないということは納得感がある。手間がかかっても、面倒でも「コモン」を再生、維持していくための不断の対話をし、「自治」を実践していくことが1%の人間に支配されない唯一の道だと知ることができた。

  • みんなの共有財、コモンについての話の前に、今の現状は新自由主義によって生まれた資本主義はどう出来上がってきたか、白井聡さんの説明から始まります。
    60s-70s学生運動から始まったとされ、その中の日大紛争がまさか最近の日大理事長田中氏につながるとはびっくりですね。それに、反共産主義の統一教会、東大駒場寮や早稲田学生会館を取り壊した経緯、段々と学生運動は衰退しやっぱり綺麗な大学が魅力的になり、そして今では学食プリペで家族にも安心など、学生を孤立化させ、安心安全の無菌室へと誘導することで国の指示通りが一番安心だと信じ込ませた現在。なるほど、本当の自由がなくなっているのに、これだと気づかれにくいですね。こうして自治は衰退してしまったという。

    松村圭一郎さんはわたしたちが思い込んでいる自治と自由とは「税という対価を払って後は専門家にお任せする」という意味になってしまっているようです。
    その新自由主義マーケットをどう変えていくかが課題で、そこに古着屋とライブハウスの例え話しは素敵なエピソードでした。わたしも個人経営のショップや居酒屋、カフェなどに行って無駄話したりして楽しみながら貢献したいです。

    コモンと同時にケアも含めて考える杉並区長の岸本聡子さんはアムステルダム、チリ、バルセロナなど海外の事例をもとにフェミナイゼーションで自治を変えたいと熱弁。

    コラムでは斎藤幸平さんの神宮外苑再開発問題で、元々住んでいた方々のお話しの中で考えることが大前提だと納得できるお話しでした。

    藤原辰史さんは、権藤成卿という思想家の失敗から自治を考え、人間にとって最も重要な「食」こそ、未来の自治ではないかと考えます。

    社会を良くするために、反対運動の座り込みやデモで反抗しても失敗の歴史を見ればよくわかるという。
    そこで最後に斎藤幸平さんが今までの国家から考えるトップダウン型ではなく、そこで暮らす身近な地域から課題を上げていく、ボトムアップ型で解決できないかをまとめていました。
    リーダーは一人ではなく何人ものリーダーを交えて、アントレプレナーの能力を養っていくそんなイメージでした。
    国家は大企業がたくさん税金を納めている以上資本主義的な政策ばかりで富裕層のための政策はこれからも続くと思います。そんな世の中ではいつまでも一般庶民は変わらないままですね。本当に良くするための具体的な対策が描かれた大事な内容でした。人任せにせず自分で考え判断して協力していきたいと思います。

  • 資本主義による大量生産、大量消費の時代は終わりつつある。この危機を乗り越えるためのキーワードは「コモン」である。私たちも生き方を見直さなくてはならない。

  • 「はじめに」から続く7章と「おわりに」まで、著者それぞれの立場や専門ならではの視点から、「コモンとは?」「自治とは?」を終始問われ考えさせられるのだが、事例が分かり易いし文章も読みやすく、押し付けがましくもないのでずんずん読める。これまでモヤモヤしていたことにやっぱりおかしいものはおかしいと言おうと思えたり、具体的なヒントも満載の一冊。

  • 東2法経図・6F開架:309A/Sa25k//K

  • 1章ずつ感想をメモしていた。そのまま、あげておこう。
    白井 僕は自治寮に住んでいた。80年代。邪魔くさいなと思うこともあったが、毎月のダベリ会や寮生大会で多くのことを学んだのも確かだ。そういう時間や空間がいまの学生にはなくなっているのだなあ。駒場寮や吉田寮ほどではなくても、民青や中核の学生と議論したこともある。それもまたよい思い出だ。
    松村 僕の夢は「こだわり本屋のオヤジ」だった。それを思い出させてくれた。町家に入ってすぐの土間に本や雑貨を置き、部屋に上がると中では寺子屋的に勉強会などがあり、ときに小さな舞台にもなる。坪庭の向こうに水回りがあって、二階に生活空間がある。うーん、人の集まる空間ができたらいいなあ。
    岸本 フィアレス・シティとかミュニシパリズムとか、知らない言葉が出てくる。斎藤さんの本でバルセロナのことは、少しは知っていたけど。チリも大変やったんやなあ。杉並もそんなに盛り上がっていたのか。うちの自治会とか、議論するわけでもなく、ただただ早く終わることを願っているのではダメやな。自分事でないものなあ。まあでもまずは、その自治体で公教育というか、教員不足をどう乗り越えていくか、早急に動いていくべきやなあ。(教員不足が話題になっている。)
    木村 たまたま今日映画「ミナマタ」を見た。そこでは被害者たちが科学的知識を持つどころか、専門家がデータを隠蔽したりしている。市民が科学的リテラシーを身に付けるのと同時に、科学者の倫理感覚(良心)を獲得できるような教育が必要なんだろうと思う。その最初が、小中学校での理科教育や道徳教育なのではないだろうか。
    松本 中井先生の件がいい。批判するのではなく、そのなかでどういう工夫をすればもう少しましなことができるかを考える。「病棟を耕す」か。それから、べてるの家という名前は知っていたけれど、「幻覚&妄想大会」なんてしていることは知らなかった(読んだことあったかな?)。なんか感動的。自分のことは自分“だけ”で決めない、か。なるほど。ちょっとした工夫で既存の仕組みを組み換え、世界の見え方を変え、このクソみたいな世の中をちょっとでもましにしていく、それが〈自治〉なのだな。
    藤原 当たり前だが知らないことがいっぱいある。最近、新聞の書評欄にあった無目的という目的を見て、無印という印もあるな、と思っていたが、無農薬という農薬もあるのかもしれない。それが資本主義にからめとられているのだな。克服するとか否定するとかではなく「考える」ことに留まり続ける、なるほどな。時間がかかっても落としどころを見つけ出す、熟議デモクラシー、民主主義の基本だな。
    斎藤 斎藤さんが全体を仕切っているせいか、最終章は理論的な話が多かった。まあ、具体的な動きはコラムで取り上げていたからか。コモンの再生を目指す民主的なプロジェクトが、自治の領域を広げていくという話はわかる。ただこのプロジェクトに参加する市民はおそらく、他で生活に必要な収入を確保した上で、ボランティアで活動しているのではないか。活動に必要な経費は寄付に頼っているのではないか。それでは持続可能と言えないのではないか。まずは制度的に一定レベルまでの生活の保障が必要なんだろうと思う。夜間中学の活動をしている人たちに話を聞いても、やはりみな寄付でまかなっているようだ。それで生活できるのは、恵まれているのだなと思ってしまう。年金だけで生活できるのであれば、僕はいくらでもボランティアで活動しようと思う。そんな考えはなにか間違っているか?
    と考えてくると2章のお店の話が一番しっくり来るかな。しかし、そんな商売は持続可能なのだろうか(発展はいらない)。結構大変なのではないか。家賃やローンがないというのが大前提だろうな。宝くじで3000万当たったくらいではすぐ底をつきそうだな(日よる)。
    シリーズ・コモンというのはこれが続くということか。ラインナップの紹介がなさそうだけれど。企画倒れにならないよう、期待しております。本当は、新書サイズの方がありがたい。物理的に置く場所がないという意味で持続不可能なのだ。

  • 2024.04.20 読み応えがあった。コモンの自治が難しいという現実と、その一方で高い可能性があることを学ぶことができた。自分も実践しなければならない。

  • N041

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著者プロフィール

1987年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科准教授。ベルリン・フンボルト大学哲学科博士課程修了。博士(哲学)。専門は経済思想、社会思想。Karl Marxʼs Ecosocialism:Capital, Nature, and the Unfinished Critique of Political Economy (邦訳『大洪水の前に』)によって権威ある「ドイッチャー記念賞」を日本人初歴代最年少で受賞。著書に『人新世の「資本論」 』(集英社新書)などがある。

「2022年 『撤退論 歴史のパラダイム転換にむけて』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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