短編宇宙 (集英社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087442076

作品紹介・あらすじ

見上げれば、そこには無限の物語が広がっている! 個性豊かな人気作家陣が「宇宙」をテーマに競演。想像力きらめく短編アンソロジー。

感想・レビュー・書評

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  • タイトルでSF小説をイメージにしていたのですが、宇宙をテーマにした小説でした(;^_^A

    加納朋子さんの父と娘の石垣島への旅を描いた「南の十字に会いにいく」が素敵な話で大好きです。やっぱり優しいお話はいいですねぇ。

    深緑野分さんの「空へ昇る」が重力に反して土塊が空へ登っていく現象を描いています。それが面白かったです。

    川端祐人の「小さな家と生き物の木」もコロナ禍の中で家の中で研究をしている父親と家で自己学習している娘の二人。この時世にふさわしい作品でした。

    楽しい作品集でした。

  • 加納朋子「南の十字に会いに行く」
    寺地はるな「惑星マスコ」
    深緑野分「空へ昇る」
    酉島伝法「惑い星」
    雪舟えま「アンテュルディエン?」
    宮澤伊織「キリング・ベクトル」
    川端裕人「小さな家と生きものの木」

    こーやって並べますと、わくわくするラインナップだなぁと、あらためて。

    いちばん好きなのは「惑星マスコ」かな。
    あー、自分って異星人なのかも、と自覚しながら、地球人に馴染んでいく、努力。

    理想的な幸せルートなんて、誰にも分からないはずなのに、こっちに行け、こっちに行けとフラグばっかり立てられるのは、正直しんどい。
    誰にも責任なんて取れないのにね。

    ヨガおじさんと、異星人を看破した女の子と、変わった目で見られる三人が一緒に過ごすシーンが、なんか好きだな。
    きっと誰にも分からない。
    でもそれでいい時間があるって、楽しい。

    「南の十字に会いに行く」は父と娘が、「小さな家と生きものの木」は父と息子が描かれる。
    母親は、ほんのちょっぴりしか顔を出さない。

    特に後者のお母さんは、重病患者につきっきりで、家に帰って来れない医療従事者という、まさにこのタイミングに合わせた設定だった。

    早く会えますように。

    宇宙を思いながら、自分にとってかけがえのない人との繋がりを思う。

  • 宮澤伊織さんの作品が掲載されているというので、SF短編集かと思ったら、宇宙に関する物語であればなんでもOKで、日常的なものや青春もの、ちょっと不思議なもの、SFまで幅広く収録されている。どの物語も、ちょっと脳味噌に引っかかり、良いものを読んだ感が残る。

  • 図書館で借りました。寺地さんの短編。〈惑星マスコ〉【空のてっぺんの、高い、高いところで、なにかの白い光が点滅している。わたしはそれをマスコ星人からのエールだと勝手に思うことにした。】みんなと同じ、を選べるように擬態した主人公。【人の心は、なんて矛盾に満ちているんだろう。】みんな、自分だけの〈惑星〉を持ちながら〈みんなと同じ〉になろうとして必死に生きている。【『あたたはそのままでいい』と『どうしてみんなみたいになれないのか』正反対の感覚がひとつの人間の中に共存していることは、きらら〈こども〉にとっては親が宇宙人とすりかわったように見えるほど、ふしぎなことなのだ。】

  • 宇宙をテーマに、これだけ個性的な発想が生まれるのだなぁと思った。ちょっと難しかった話もあったが、最後に北村浩子氏の解説を読んで、なるほど!と、ストンと心に収まった。

  • 小説すばる2017年6月号加納朋子:南の十字に会いに行く、宮澤伊織:キリング・ベクトル、書き下ろし:寺地はるな: 惑星マスコ、深緑野分:空へ昇る、酉島伝法:惑い星、雪舟えま: アンテュルディエン?、川端裕人:小さな家と生きものの木、の7つの短編を収録して、2021年1月集英社文庫刊。宮澤さんのスケールの大きさとアイデアに脱帽。川端さんの宇宙樹が素敵です。寺地はるなさんの宇宙人に笑ってしまいました。収録された作品の多彩さが、楽しいです。

  • ――

     あの日から、星空ばかり見上げている。
     今日だって。




     SF、とは少し違った、もっと広い意味で“宇宙”をテーマにした短編集。身近なところから外宇宙まで、それこそ星を見上げる、にもこれだけいろんなバリエーションがあるもので。
     今回はそれぞれ。


    「南の十字に会いに行く」 加納朋子
     あそこに居るんだなぁ、って星を見上げるなんて素敵。そして言葉の厳密な意味においてそこに居る可能性が出てきた現代は、うん、素敵。
     序盤から匂わせられている母親の不在が、なんとなく何かの仕掛けなのかなぁと思っていたら二段構えで大団円。しかもその二段構えもちょっと恥ずかしく母と息子を繋いでいて、それをあっさり見破る孫娘。これがまたいい。
     旅要素もあって、とても気に入りました。この短編集の心意気みたいなものを、いちばん表しているかも。


    「惑星マスコ」 寺地はるな
     所謂こりん星的な、って云うと失礼かな…失礼だよね。これはまた反対方向で、内側の“宇宙”のおはなし。


    「空へ昇る」 深緑野分
     深緑野分さん、本屋大賞受賞おめでとうございます、って云っとく。後から修正とかしません! 淡々と語られるひとつの学問史が、その長い歴史に連綿と連なるひとの核心をやんわりと描いて。
     ところでどんな天才の傍にもなんでか親友と云えるひとはいるもんだね。孤独に学問は出来ないもので。


    「惑い星」 酉島伝法
     やっぱり、合わないなぁという感想。なんとか頑張って翻訳したほかの言語を読んでるみたい。あれ? それってもしかして結構本格的なSF体験か?


    「アンテュルディエン?」 雪舟えま
     急に青春小説。いやSF小説なんて全部青春か? これもまた宇宙というか…うーん? 言葉遣いは嫌いじゃないけど、活字遣いがちょっと合わなかった、かなぁ。幸あれー、って感じ。


    「キリング・ベクトル」 宮澤伊織
     もうなんか安定。特にコメント無いです…読んで、楽しむ。それ以外無い。


    「小さな家と生きものの木」 川端裕人
     宮澤伊織が外宇宙まで飛び出したと思ったら、締めはアットホームな短編。この振れ幅もSFのいいとこですよね…
     現代、というか現代をリアルに描いていること、そして対話の相手が主に子供であることから、とてもすんなりとこの手のひらの中に“宇宙”が収まる感じ。ここまで読んできて、じゃぁあなたなりの“宇宙”をどうぞ持っていってね、って云われてるような気がした。


     遠くを見る技術、遠くまで行く技術。これまで見えなかったものを見えるようにする技術、数えられなかったものを数える技術。すべて詳らかにして、けれどそうはならなくて、また見えなくなって、
     それが、でも、それでも。
     星を見上げるのも、自分の内側にじっと目を凝らすのも、同じか。
     じっと、どこを見たって、それも宇宙。



     解説で紹介されている木村繁氏によるエッセイが、とても良いクールダウンになっている。
     こんなエッセイが小学校の教科書に載っていたなんて。いいなぁ、って素直に、思ってしまった。
     さびしさ。それをもっと、きちんと、受け止められるようになってたかなぁ。そしたら。

     なぁんて、ね。まぜこぜになって、☆3

  • 見上げる星空、だけが宇宙じゃないんだなと、視点の面白さを感じられる7編のアンソロジー。

    『惑星マスコ』(寺地はるな)、『キリング・ベクトル』(宮澤伊織)がおもしろくて好き。
    "自分は魔法使いかも"、"とくべつかも"と思うことのある子供時代、「へんなの」「わかんない」と否定され続けたことがもとで、"自分は異星人かも"と思った万寿子。大人になって、「あんた、宇宙人でしょ」と言ってきた女の子や、変わり者?のおじさんと出会ってかつての自分を思い、"わかりあえない"ことをネガティブに考えないところへたどり着くのが良かった。
    「でももし今惑星マスコからの使者がわたしを迎えにきたとしても、わたしはUFOには乗らない。もうすこしだけここでがんばってみたいんです。」

    『惑い星』(酉島伝法)は作者独特の造語、当て字がイマジネーション豊か。くらい宇宙空間で、めいめいに輝きながら生まれ、育ち、恋をする星々が映像のように浮かぶ。
    『小さな家と生きものの木』(川端裕人)の中で、生まれて間もない原始星について書かれているところで、惑い星のイメージが展開して、ひとりでフフッとなった。
    装画(岩岡ヒサエ)もかわいらしい。"回る地球"!

  • 宇宙だったり宇宙人だったりのアンソロジー。寺地さんと雪舟さんが特に好き。宮澤さんのプリンタにはびっくりした。未来だ!

  • 宇宙がテーマのアンソロジー。
    どれもけっこう楽しめたけど、中でも特に「アンデュルディエン?」が良かった。主人公2人の物語が文庫になってるそうなので、ぜひ読みたい。
    「惑い星」もなかなかだったけど、良くできてる、という感想になってしまって、読書の楽しみ
    とは少し違う感じ。

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著者プロフィール

1966年福岡県生まれ。’92年『ななつのこ』で第3回鮎川哲也賞を受賞して作家デビュー。’95年に『ガラスの麒麟』で第48回日本推理作家協会賞(短編および連作短編集部門)、2008年『レインレイン・ボウ』で第1回京都水無月大賞を受賞。著書に『掌の中の小鳥』『ささら さや』『モノレールねこ』『ぐるぐる猿と歌う鳥』『少年少女飛行倶楽部』『七人の敵がいる』『トオリヌケ キンシ』『カーテンコール!』『いつかの岸辺に跳ねていく』『二百十番館にようこそ』などがある。

「2021年 『ガラスの麒麟 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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