文庫版 書楼弔堂 破暁 (集英社文庫)

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  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (546ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087455229

感想・レビュー・書評

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  • 誰かなーと想像しながら読むのが面白かったです。しほるが気になります。

  • すごい思わせ振りな終わり方!!輔様はお祖父様なのかしら?高遠様の次の人生は?気になることだらけ伏線がばらまかれ過ぎて次が楽しみで仕方ありません。

  • 人生に迷った人が訪れる本屋の話。
    結構面白かった。迷った時に、もう一度読んでみよう。

  • ・京極夏彦「文庫版 書楼弔堂 破暁」(集英社文庫)も また古本屋の主が主人公である。いや、ご一新で旗本になりそこねた高遠某が主人公かもしれないのだが、たぶんこちらの役回りは狂言回し、古本屋の引き立て役であらう。高遠の家は旗本でありながら金持ちであつた。作中勝海舟が「まあお前さんとこは旗本のくせに物持ちで、金もあったから縁がなかったんだ。」 (225頁)と言ふほどである。従つて高遠は現在無職、いや無為徒食である。煙草会社に勤めてゐたが、病欠してゐる間にそれもつぶれたらしい。特にすべき こともなく、実家から離れての一人暮らしをしてゐる。そんな中で出会つたのがこの弔堂であつた。「慥かに奇妙な建物である。櫓と云うか何と云うか、為三も云っていたが、最近では見掛けなくなった街燈台に似ている。ただ、燈台よりももっと大きい。(中略)しかし到底、本屋には見えない。それ以前に、店舗とは思えない。」(24頁)その軒にすだれが掛かり、「弔」と書かれた半紙一枚、「これではまるで、新仏を出したばかりの家である。」(25頁)そんな風情の 古本屋、しかし中は本ばかり、「左右の壁面は凡て棚で、題簽の貼られた本が堆く積まれている。(中略)二階も、三階も、書架なのだろうか。」(30~31 頁)そこに主が登場して店名の由来を語り出す……とまあ、型通りの始まりである。そこに来る客は誰々でと物語になつてゐる。高遠はこの客ではない。書いてしまへば、客は月岡芳年、泉鏡花、井上圓了、中浜万次郎あるいは岡田以蔵、巖谷小波といつた人々で、この弔堂の同時代人、つまり明治の初めを生きた人々である。それぞれがそれぞれの事情を持つて弔堂に来る。さうして語る。語られるそれぞれの事情はフィクションであらう。それに対する主の蘊蓄話や説教の後、 「どのような本をご所望ですか」(173頁)とくる。その書が示された後、再び主の蘊蓄話があつて、各章は「誰も知らない。」(94頁)で終はる。このフィクションの部分はもちろんおもしろい。鏡花や圓了が売れる前にこんなことがあつたかもしれないと思はせる。妖怪譚でなくとも、京極は読者を楽しませてくれるのである。
    ・最後は「探書陸 未完」である。これは高遠と主が武蔵晴明神社の神主の家に書を引き取りに行く話である。その最後にかうある。「武蔵晴明社の宮司中善寺輔の一人息子はそれから二十年の後に父と袂を分かち、洗礼を受けて耶蘇教の神父になったのだと風の便りに聞いた。」(535頁)この一文は直ちに中善寺秋彦を思ひ出させる。やはり古本屋である。「姑獲鳥の夏」以降で大活躍である。しかも武蔵晴明神社の宮司である。この輔の孫、いや曾孫であらうか。時の隔た りからすれば曾孫かもしれない。秋彦は恐山の祖父母に育てられたといふ。ならば違ふのか。あるいは曾孫だとすれば、祖父が輔の息子の曾祖父と袂を分かつて恐山に来たのか。さうしてその息子たる曾孫が戻つてきたのか。これらのことは全く記されてゐない。私が勝手に想像するだけである。この章は「未完」である。主が高遠にあなたの人生は未完だと諭してゐる(530頁)。ここは珍しく、客として店に来てゐない漱石が「猫」を書く動機の如き話で終はる。もちろん 本当のことは「誰も知らない。」従つて、この「未完」は高遠の物語と、中善寺輔の物語もまた未完であることを示してゐるのではないか。最近、単行本で続編が出たらしい。かういふのが入つてゐるのであらうか。その確認は文庫版が出るまで気長に待たう。そんな徒然を慰めてくれさうな古本屋の弔堂が現実にあつた らと思ふ。三階までの棚が和本で占められてゐる壮観を思ふ。

  • ★4.0
    明治と昭和、元僧侶と神主、白装束と黒装束等、時代や背景の違いはあれど、新シリーズと京極堂シリーズの主人公はともに古書店の主。そして、進行役の関口にあたる人物として高遠がおり、構成は似通っていると思う。が、それでもやっぱり面白い!本に対する価値観、歴史に名を残した者たちの前日譚や後日譚が、興味深くて楽しくてしょうがない。また、「探書陸 未完」には京極堂シリーズ好きには堪らない仕掛けが用意されていて、その名を見た時、思わず声を上げてしまった。私もいつか、自分にとっての1冊に出会えるといいな、と思う。

  • 初めての京極夏彦さん。

    維新から少し歳月が流れ 世の中が
    維新の変化に順応し始めた頃のお話。

    弔堂と店主の気配も、そこを訪れる方々も
    なぜか急激な時代の変化とは異なる時空の流れの中で生きこまねいているような感があり、それが素敵である。

    死ぬことと生きることを別のかたちで目の前に突きつけられたように思う。

    2冊目の文庫化も待たれます。

  • 悩める人が運命の本と出会い、悩みに対する一定の回答を得る連作短編。
    明治の実在の人物が登場するが、彼らの抱える悩みは人間の普遍的な悩みで、読者は共感を得られる。
    最後に百鬼夜行シリーズとの共通点が。

  • 人には一冊の運命の本があれば良い、というのに感心してしまった。ダルジール警視もずっとポンペイ最後の日を読んでいたよ。

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著者プロフィール

1963年、北海道生まれ。小説家、意匠家。94年、『姑獲鳥の夏』でデビュー。96年『魍魎の匣』で日本推理作家協会賞、97年『嗤う伊右衛門』で泉鏡花文学賞、2003年『覘き小平次』で山本周五郎賞、04年『後巷説百物語』で直木賞、11年『西巷説百物語』で柴田錬三郎賞、22年『遠巷説百物語』で吉川英治文学賞を受賞。著書に『死ねばいいのに』『数えずの井戸』『オジいサン』『ヒトごろし』『書楼弔堂 破暁』『遠野物語Remix』『虚実妖怪百物語 序/破/急』 ほか多数。

「2023年 『遠巷説百物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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