アジア新聞屋台村 (集英社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087464153

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  • ひょんなことから多国籍新聞社の編集顧問に就任するという自伝的物語。

    アジアの雑多な屋台のような雰囲気で、面白い人のところに面白い人が集まってくる様子が可笑しく、ハチャメチャさが楽しい。
    夢を追う姿、仕事の取り組み方、お金の稼ぎ方、恋愛や結婚、どれをとっても国民性が顕著に表れていて、凝り固まった頭をポンと解放してくれるような気がした。
    人の持つエネルギーに満ち溢れた、大人の青春的一冊。

  • ベトナムつながりからエイジアンという不思議な新聞編集に携わることになった著者。良くも悪くも日本の常識が通用せず、始めは著者もそれを楽しんでいたが、後半になりいい加減さに辟易し、だが最後にはアジアの大らかさに気付く。そんな構成が好ましい。しかし、著者と朴さんの淡い恋模様が切ないね。もし恋愛が成就していたら、黒船は現れなかったか? いや、そんなことは無いだろうな〜(笑)

  • 誰も行かないようなところばかりを好んで訪れる、早稲田大学の探検部出身のノンフィクション作家、高野秀行氏。怪獣を追ったり、アヘンを育てたり、ゲリラ支配域を横断したりと、数知れずの逸話を持つ彼の、これは東京における話。

    ある日突然かかってきた原稿執筆依頼の電話。エイジアンという怪しげな新聞社からで、タイについてのコラムを書いてほしいとのこと。引き受けた高野氏は、話のついでに同社の編集顧問に就任。同社は日本在住の外国人向けに新聞を発行しているという。しかも一紙ではなく、タイ・ニューズ、台湾時報、マンスリー・ミャンマー、インドネシア・インフォメーション、マレーシア・ワンダーの五紙。社員に常駐者はおらず、皆ほかの仕事の片手間に。しかも日本人が誰もいないのに、英語を母国語としない彼らの共通語は日本語。この新聞社はまるで屋台村。いろんな料理があって、人気の料理はたくさんつくる。売り切れればそれでおしまい。台湾人の女性社長は、事前調査などせずに思いつきで新聞を発刊。購読者がいればその分を刷るし、いなかれば即廃刊。なんともバイタリティにあふれています。

    会社のために働くのではなく、働くのは自分のため。それが結局は会社のためになっていたりもする。大事なことを教えてもらったような気がします。

  • 『ワセダ三畳~』と同じように<自伝的>物語ですが、実話に近いのだろうなと推測できる、屋台のような新聞社エイジアンで編集顧問として就任した時の話。高野さんが面白い人を見つけるのが上手いのか、面白い人が高野さんに寄ってくるのか、その両方なのか、もののけ姫的パワーの持ち主の社長の劉さんを筆頭に出てくる人が個性的かつ国際的。新聞作りに関しては素人の彼らが月刊の新聞を作るのだから、当然いい加減な作り方で、そのいい加減さに笑えた。淡いロマンスもあったりして、高野さんのヘタレっぷりに、生温かい気持ちになりました。

  • ノンフィクション作家、高野秀行の小説。会社や人物は架空と但し書きがあるが、実際の体験と思われる。
    フリーライターとは名ばかりでフリーターのような生活をしていた高野氏が、東京でアジア系多国籍の新聞社に編集者として参加することになる。強烈なキャラクターの人がたくさん出てくる。何もかも日本の常識からすればハチャメチャなのだが、それが冒険家でもある高野氏に妙にしっくりきている。一言でいえば、したたかで大胆でおおざっぱということになろうか。
    東京にいるアジア系外国人たちの生活ぶりや仕事に対する姿勢がよくわかり、良いところも悪いところも、愛すべき人々だ。面白かった。

  • はじまりは、タイのコラムを書いて下さいという一本の依頼の電話から。アジア五カ国の新聞を作る会社、エイジアンにかかわった高野さんの、おくればせながらの青春と成長の物語。そして、いいかげんなようでいて、しなやかで力強い面々の物語。特に社長の劉さん。新しい事業と金策にしか興味がなく、一度、そうだ自分がやればいい!と思い窮めたらとことんやる、けど事業が軌道にのるととたんに興味が覚める、そのバイタリティがすごい。「会社のために頑張るという社員は嫌い。自分のために頑張るという社員が好き。だって、そういう人のほうがおもしろいから」と。宗教も文化も気質もさまざまな国のさまざまなメンバーとのかけあい、バックグラウンド、エピソードが興味深くていきいきとしていて。最後は、居場所なんて人に与えられるものじゃない、自分でつくるものだ、と。その後の中東、アフリカへの旅へ自ら踏み出すきっかけになったのだろうな、と思った。

  • いやーーーー、面白かった!
    在日外国人の母親コミュニティが日本の母親も救ってるとか研究につかえそうなこともポロリしたり
    副職が実際どう機能するのかもわかったり
    舞台は日本なのに、旅行してる気分。
    旅行が好きな人は、そうそう!それだよ!!!ってなること必須。
    旅行中に自分が感じるうまく言語化できないあれこれを物語の中にするりと混ぜ込み表現してくれる。
    これは、本当に、すごい、本だった。

  • 手にとったときタイトルの意味がわからなかったが、読んでみたら、そういうことか!と納得。

    私は型にはまった日本人でとうていエイジアンのようにはなれない。だけど、だからこそか、こういう生き方に憧れる。

    エイジアンたちも素晴らしいけど、彼らをこんなに生き生きと鮮やかに描いた高野さんがあっぱれだと思う。彼もやっぱり日本人というよりエイジアンなんだろうな。

  • 日本の常識・社会・日本人の習性にどっっぷりと浸かっているわたしとしては、非常にうらやましい空間でした。常々わたしが「ほんとうはこうありたい」と思っている人がたくさん出てきました。
    でも悲しきかな、わたしは一生サクラバ軍団派から抜けられないのでしょう。。。

    それにしても恐るべきは劉さん…。
    なんてチャレンジャーなんだ!
    劉さんの「それぞれの国民性に合った仕事があるんだ」っていう話には、なんだか救われました。

    あと、会社から給料が払われない中残ったエイジアン社員たちにはグッときました!さらに自分の下につくバイトに自力で給料を払ったなんて人もいて、もう本当に目からウロコ!わたしも、彼らの生き方に少しでも近づきたいな、と思いました。

  • 「エイジアン」で働くアジア諸国の人々のたくましさに、ただただ感嘆。高野さんの関わり方が面白い。

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著者プロフィール

1966年、東京都八王子市生まれ。ノンフィクション作家。早稲田大学探検部在籍時に書いた『幻獣ムベンベを追え』(集英社文庫)をきっかけに文筆活動を開始。「誰も行かないところへ行き、誰もやらないことをやり、それを面白おかしく書く」がモットー。アジア、アフリカなどの辺境地をテーマとしたノンフィクションのほか、東京を舞台にしたエッセイや小説も多数発表している。

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