女流 林芙美子と有吉佐和子 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087464733

作品紹介・あらすじ

『放浪記』で戦前の文壇に登場し、一躍時代の寵児となり、戦後に怒涛のように作品を生み出して彗星のように去った林芙美子。高度経済成長とともに早熟な才女としてデビューし、『恍惚の人』『複合汚染』などで流行作家となった有吉佐和子。二人の「女流」作家が駆け抜けるように生きたそれぞれの「昭和」とはどんな時代だったのか…。過剰なまでに個性的で生命力にあふれた人間像を鮮やかに描く。

感想・レビュー・書評

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  • 林芙美子についてしばらく読んでいたのでこれも。
    関川夏央氏のものを読むのははじめてだけど、読みやすく、おもしろかった。「放浪記」時代の話だけでなく、流行作家になってから晩年までの話も知ることができて、なんとなく林芙美子の全体像がつかめた気が。
    有吉佐和子についてもすごくおもしろく読んだ。有吉佐和子はわたしはかなり好きで以前よく読んだのだが、人となりはあまり知らなかったので興味深かった。帰国子女で、中国とも関係が深く、ニューギニアで暮らしたこともあるとか。同時代の友人として若いころの小澤征爾の話とかも興味深かった。
    これまで、評伝ってほとんど読んだことがなかったけれど、評伝っておもしろいんだな、と。

    あと、なんとなく、昭和が遠くなるなあ……とか思ったり。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「下駄巴里」と「放浪記」は、未だ積んでいます。。。
      「なんとなく、昭和が遠くなるなあ……とか思ったり」
      関川夏央で一番読み易いのは、「「坊っ...
      「下駄巴里」と「放浪記」は、未だ積んでいます。。。
      「なんとなく、昭和が遠くなるなあ……とか思ったり」
      関川夏央で一番読み易いのは、「「坊っちゃん」の時代」と言うマンガ(谷口ジロー画)です。
      明治の文豪・文人が主人公で面白いですよ。

      有吉佐和子は「恍惚の人」しか読んで無いなぁ~
      2012/09/03
    • niwatokoさん
      「「坊ちゃん」の時代」はずっと気になりつつも未読なんです。いつか読みたいです。
      有吉佐和子はだいぶ昔に読んだんですが、かなり好きでした。今...
      「「坊ちゃん」の時代」はずっと気になりつつも未読なんです。いつか読みたいです。
      有吉佐和子はだいぶ昔に読んだんですが、かなり好きでした。今読むとどう思うかわからないですが、「和宮様御留」とか「開幕ベルは華やかに」とかかなり夢中で読んだ記憶があります。
      2012/09/03
  • 根津に、新しいブックストアがオープンしたという記事を読んで、独自のカテゴリ棚でおもしろい紹介をしてるらしいというその本屋さんに、Kくんとでかけてきました。
    落語とか、森まゆみさんとか、町の紹介とか、割引の本のコーナーもおもしろいのが選んであって、狭いけどおもしろい本屋さん。
    私的にヒットだったのは、林芙美子の放浪記とか、色川武大の狂人日記とかと一緒にこの本があった小さなコーナー。この時代の本、好きなのです。こんなふうにこの本と出会えて、ラッキーでした。

    本、おもしろかった、一気に読んでしまいました。ふたりの生きた様子が細かく紹介されてる。読みたかった本。「本人たちはそんなことになってたのか」と、息を呑みながら読みました。林芙美子の「書かばや、進まばや!」というのが、かっこよくて、自分の今のテーマとして掲げることにした。

    女流って、そういう括りについて有吉佐和子もいやがったというけど、女流と言われてむっとくる感じもわかる、だけど女流という括りでこのふたりのことが1冊の本に入って読めたのがすごく得心のいくまとまりで、女流ということばの表す流れが、成す規模がぜんぜんちがうとはいっても、自分の中に流れてるのを感じてしまう。食べていく方法を見つけて、それが自分だけのものであってほしくて、道を切って拓いていくためにがんばっちゃう感じ。本人としてそれは当たり前のこととしてやってるんだけど、まわりからすると「女流」っていうなにか特別な覚悟みたいなものを感じてしまうという、腹立たしさ。だけど確実にある自意識。
    それが自分の中にも流れてると感じることは、うれしいことじゃないし、同時に誇らしいことでもあるような、振り払いたいけど振り払えないような、消せない、強いもの。どうしてこれを男子は持たないのか?それこそが謎、という感じ。

    ふたりの、死の姿までがちゃんと描かれていたのが、この本の秀逸なところだと思います。仕事をして、どうやって生きて、というのが、そこに表れざるを得ないのは、当たり前だと思った。めちゃめちゃで、あきれたり、目を背けたいような面も多いけど、放浪記も、複合汚染も、こんなふうに生きて、そんな書物をこの世に成したということが、かっこいい、やったね、という感じ。

    解説が、いまひとつ・・・この本を読む女子の興奮がわからんか、という感じでちょっとざんねん。それから、筆者がどうしてこのレポを書いたのか、書かなきゃいけなかった理由を、読者としては読みたかったな、そこにも呼応できるともっと嬉しかったかなと思ってしまいました。ので星4つにしたよ。

  • 林芙美子と有吉佐和子をとりあげた評論.後半の有吉佐和子の部分だけを読む.私はひとつの軸として紹介されている「中国レポート」も読んでいたので,それほど目新しいものがあるわけではないが,他人からの承認欲求の強い人だったのだなと改めて思った.なにか危うく痛々しい.

  • 仕事で有吉佐和子について調べる必要があって読んだ。
    なので、本書の後半部分「有吉佐和子的人生」だけを読む気でいたのだが、けっきょく前半の「林芙美子の旅」も読んでしまった。

    関川夏央さんは、当代の名文家の一人に数えられる。
    本書もよくできた評伝ではあるが、氏の作品全体から見ると、上位に位置するようなものではない。どちらかといえば、あまり出来がよくない部類。それでも十分面白い。

    独自取材をせず、既成の文献を渉猟する形で書かれている。その意味で「他人のフンドシで相撲をとる」たぐいの本ではあるのだが、「既成文献の引用をつなぎ、アレンジして、自分の作品に昇華する見事なテクニック」を学べる。

    有吉佐和子はあれほどの人気作家であったにもかかわらず、没後三十数年にしてすでに「忘れられた作家」になってしまった感がある。栄枯盛衰。
    (……とか思っていたのだが、調べてみると意外にそうでもないかも。まだ文庫で生きている作品も多いし)

    悪い意味で伝説化した「笑っていいとも!」出演時の様子(本書でもくわしく紹介される)を、私も鮮明に覚えている。
    当時はずいぶん年上のオバチャンに思えたものだが、それからほどなくして亡くなったとき、いまの私よりも若かったのだなァ(享年53)。

  • 林芙美子と有吉佐和子は庶民に愛された女性作家だ。二人とも作品を量産して生き急いだ。才能が溢れて書かずにおけなかったのだろう。有吉は晩年躁病で過剰に演出した。周りはハラハラしながらも見守っていた。

  • この本を読んだおかげで、林芙美子記念館に行ってみた。

  • 林芙美子と有吉佐和子について書かれた本。読み応えあり。
    林芙美子が亡くなったときの円地文子のコメントが優しい。
    『林さんは幸福な人ですね。失礼だけれども、実物よりは写真顔の方がずい分よく、実際の人より小説の方がずっとよろしい。死と一緒にわるいものは皆なくなって、よい所だけ残ることになった。』
    関川さんの有吉佐和子に対する一文(文末部分)
    『有吉佐和子は「女流」という言葉を生み出すシステムとよく戦った。みずからの早熟さという宿命と善戦した。しかし53歳の晩夏の一夜、ついに燃え尽きた。彼女は、夏休みの間に級友に別れも告げずにどこか遠くへ去った「転校生」のようであった。』にそうとう泣けました。

    有吉佐和子の「女二人のニューギニア」は好きです。
    それから今「放浪記」を読み中です。

  • 小説のような、ドキュメンタリーのような、不思議な文章で、知らない間に引き込まれました。
    つくづく作家というのはアブナイ人なんだなあと痛感。
    林芙美子は好きな作家ですが、有吉佐和子は『女二人のニューギニア (1969年)』以外読んだことがなくてあまり知りませんでした。人民公社のエピソードはちょっとトホホですね。

  • ところでこの本を登録しようとしたら登録入力のコンピュータ・ミスか値段が「3・50円」になっていたのだけれど、林芙美子の時代にもどっちゃったのかな(笑)。林芙美子と有吉佐和子の人生の一部分を切り取っている。ちょっとしたミステリよりもおもしろい。

  • 林芙美子と有吉佐和子の評伝。関川夏央の書くものは何でも好きなのだけれども、林芙美子と有吉佐和子についての基本的な知識が欠けている(特に有吉佐和子については、ほとんど何も知らない)ので、内容自体は楽しめなかった。

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著者プロフィール

1949年、新潟県生まれ。上智大学外国語学部中退。
1985年『海峡を越えたホームラン』で講談社ノンフィクション賞、1998年『「坊ちゃん」の時代』(共著)で手塚治虫文化賞、2001年『二葉亭四迷の明治四十一年』など明治以来の日本人の思想と行動原理を掘り下げた業績により司馬遼太郎賞、2003年『昭和が明るかった頃』で講談社エッセイ賞受賞。『ソウルの練習問題』『「ただの人」の人生』『中年シングル生活』『白樺たちの大正』『おじさんはなぜ時代小説が好きか』『汽車旅放浪記』『家族の昭和』『「解説」する文学』など著書多数。

「2015年 『子規、最後の八年』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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