- Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087466621
作品紹介・あらすじ
赤道上に発生した戦後最大規模の鼓笛隊が、勢力を拡大しながら列島に上陸する。直撃を恐れた住民は次々と避難を開始するが、「わたし」は義母とともに自宅で一夜を過ごすことにした。やがて響き始めたのは、心の奥底まで揺らす悪夢のような行進曲で…(『鼓笛隊の襲来』)。ふと紛れ込んだ不条理が、見慣れたはずの日常を鮮やかに塗り変えていく。著者の奇想が冴えわたる、驚異の傑作短編集。
感想・レビュー・書評
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はたして自分の認知と、隣りにいる人の認知はどこまで重なることができるのか。認識や存在の不完全性や、前作「<a href="http://mediamarker.net/media/0/?asin=4087464989">失われた町</a>」にも通じる喪失感、不合理さがかえって怖いぐらい。
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「赤道上に、戦後最大規模の鼓笛隊が発生した。」の、一文から引き込まれる。台風の如く日本に上陸する「鼓笛隊の襲来」
いなくなったが思い出せない彼の喪失感を抱えたまま、立ち寄ったギャラリーで見かけたのは、自分の記憶にある"モノ"たちだった。「彼女の痕跡展」
覆面をつけて生活をして良い制度のある世界「覆面社員」
本物の象が、リタイア後に公園の遊具として生きる世界
「象さんすべり台のある街」
その他「突起型選択装置(ボタン)」
「「欠陥」住宅」「遠距離・恋愛」
「校庭」「同じ夜空を見上げて」
不思議な世界で話が進むため、温かい話のまま終わるのか、怖い話として終わるのかどちらに転ぶかわからない感覚がソワソワして楽しめました。
表題作と、「失われた町」に通ずる書き下ろしが、良かったです。
「消失」「痕跡、記憶」「視点」「怪異・幻覚」「ルール」「別の街が栄えて置き去りにされた街」などキーワードが並ぶ。
自然災害よりも違和感が残る形で消えてしまう人が知人や家族にいた時どう感じるのだろうか?しばらく会っていない人生きているのか死んでいるのかわからない人と何が違うのか?考える種みたいなものが
ポツポツと挟まれてる。 -
日常の中に非日常が溶け込んでいる短編集
最後の書き下ろし作品がとても良かった! -
2011-3-5
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日常と非日常の間隙を縫うように、ごく自然にあり得ない出来事が描かれていて、不思議な読後感。当然のように象がしゃべったり、街が浮いていたり。常識的感覚を気づくかどうかの匙加減で揺り動かされる感じが、ちょっと気持ちよかったりもする。
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三崎ワールドは長編も良いし短編も良いです。
台風の日に読み始めたこの短編集も面白かったです。
台風のように鼓笛隊が襲来する世界の表題作、本物の象のすべり台「象さんすべり台のある街」、浮遊都市にいる恋人と地上にいる主人公の「遠距離・恋愛」、消えてしまった下り列車に乗っていた人の喪失を受け入れる「同じ夜空を見上げて」が好きです。「校庭」はとても怖くて。
「覆面社員」にあった「バスジャック規制法」に、繋がっている世界なのだなと思いました。「同じ~」も、まだ読んでいない作品に繋がるらしいです。
これからも三崎ワールド、読んでいきます。 -
世にも奇妙な物語系、とでも言ったらいいのでしょうか。どこか狂った、しかし至って普通に営まれる日常を描いた短編集。本書、と言うより多分三崎氏の面白い所は、その「狂い」を感覚ではなくシステマティックに組み上げてしまう点です。表題作や象さんの練り上げ方はまさにお見事で、どこからこんな設定が湧いてくるのか、ただただ感心するばかりです。
オチにぞっとする話もあれば、ほんわかできる話もある。でもどの場面においても、世界観の微妙にずれた日常の中で、登場人物たちは当たり前に懸命に生きていく。一貫した作風はまさに「三崎ワールド」とでも称すべきもので、好みは分かれるでしょうが自分はしっかりハマりました。もう何作か、手を伸ばしてみたい作家さんです。 -
不思議な世界の短編集。
三崎亜記の真骨頂のホラーでいろんな角度から紡いでいて、どれも味わいがある話がならんでいる。
高橋克彦の「記憶」シリーズを彷彿とさせた。直木賞候補作にもなった傑作集。