鼓笛隊の襲来 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
3.60
  • (42)
  • (102)
  • (106)
  • (21)
  • (1)
本棚登録 : 733
感想 : 106
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087466621

作品紹介・あらすじ

赤道上に発生した戦後最大規模の鼓笛隊が、勢力を拡大しながら列島に上陸する。直撃を恐れた住民は次々と避難を開始するが、「わたし」は義母とともに自宅で一夜を過ごすことにした。やがて響き始めたのは、心の奥底まで揺らす悪夢のような行進曲で…(『鼓笛隊の襲来』)。ふと紛れ込んだ不条理が、見慣れたはずの日常を鮮やかに塗り変えていく。著者の奇想が冴えわたる、驚異の傑作短編集。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • はたして自分の認知と、隣りにいる人の認知はどこまで重なることができるのか。認識や存在の不完全性や、前作「<a href="http://mediamarker.net/media/0/?asin=4087464989">失われた町</a>」にも通じる喪失感、不合理さがかえって怖いぐらい。

  • となり町戦争で知った三崎亜記氏。あの不思議な、でもしっかり現実な世界観が好きでした。
    その世界観に浸りたくて購入した本書。

    どっぷり三崎ワールドにつかれるー!

    【鼓笛隊の襲来】
    大型台風…かと思いきや鼓笛隊!?鼓笛隊が台風ならマーチングバンドは温帯低気圧ってところなのかな?笑
    巻き込まれてついていっちゃう設定が好き。
    最後の出会っちゃうところが好き。

    【彼女の痕跡展】
    こういうことって無いですか!?記憶じゃないけど、急に悲しい感情とか焦りの感情が出てきて、でも何に対してそうなってるのか分からなくて…ってことが偶にあるんです。
    あなたが私で私があなたみたいな話。

    【覆面社員】
    ちょーっと違うかもだけど、昨今のこのマスクをする風潮を見てたらこの覆面と被るものが多い気がする。
    確かに覆面をすればその人の美醜なんかも含めてフラットに見ることはできるかもよね。
    例えば見た目の話、生意気そうだから気に入らないとか。生意気かどうかではなく生意気そう。
    でももうそうなってくるとどっちが現実なのか、分かんないよね。どっちの世界を生きてるのか。

    【できる象さんすべり台のある街】
    あったよねぇ〜ぞうさんの滑り台。と、思いきや。本物ですか!?
    準公務員の守秘義務を破ってしまったぞうさん素敵。

    【突起型選択装置】
    結局何のボタンだったんだろう…明かされないしそれでいいと思うけど、何が起こるのかめっちゃ気になる…
    しかしボタンっていい読み替えできるもんですね。突起型って…

    【「欠陥」住宅】
    こちらはちょっとホラー風味。高橋さんはどこの狭間?パラレルワールド?にはまりこんでしまったのー!

    【遠距離・恋愛】
    すごく不思議な、でも恋愛全開の恋愛小説でした。
    三崎ワールドで恋愛小説書くとこうなるんだぜ!
    浮く都市と聞いて某アニメ映画を思い出したのは私だけじゃないはず…!?

    【校庭】
    こちらもホラー風味。
    よくあるやつです。 最後の人が入れ替わる。入れ替わられた人は次の生贄を探す。

    【同じ夜空を見上げて】
    最後は切ない物語。
    でも主人公がしっかり前を向いて歩いていく。

    すべてがファンタジーでない、でもちょっと不思議で現実もすごくうまく練り込まれてる、まさに三崎ワールドが展開されてる素晴らしい作品でした。
    ファンタジー・SF苦手(飲まれて訳わかんなくなる)にはもってこいだ!


    @手持ち本

  • 「赤道上に、戦後最大規模の鼓笛隊が発生した。」の、一文から引き込まれる。台風の如く日本に上陸する「鼓笛隊の襲来」

    いなくなったが思い出せない彼の喪失感を抱えたまま、立ち寄ったギャラリーで見かけたのは、自分の記憶にある"モノ"たちだった。「彼女の痕跡展」
     
     覆面をつけて生活をして良い制度のある世界「覆面社員」

    本物の象が、リタイア後に公園の遊具として生きる世界
    「象さんすべり台のある街」

    その他「突起型選択装置(ボタン)」
    「「欠陥」住宅」「遠距離・恋愛」
    「校庭」「同じ夜空を見上げて」
    不思議な世界で話が進むため、温かい話のまま終わるのか、怖い話として終わるのかどちらに転ぶかわからない感覚がソワソワして楽しめました。
    表題作と、「失われた町」に通ずる書き下ろしが、良かったです。

    「消失」「痕跡、記憶」「視点」「怪異・幻覚」「ルール」「別の街が栄えて置き去りにされた街」などキーワードが並ぶ。
    自然災害よりも違和感が残る形で消えてしまう人が知人や家族にいた時どう感じるのだろうか?しばらく会っていない人生きているのか死んでいるのかわからない人と何が違うのか?考える種みたいなものが
    ポツポツと挟まれてる。

  • 日常の中に非日常が溶け込んでいる短編集
    最後の書き下ろし作品がとても良かった!

  • 2011-3-5

  • 日常と非日常の間隙を縫うように、ごく自然にあり得ない出来事が描かれていて、不思議な読後感。当然のように象がしゃべったり、街が浮いていたり。常識的感覚を気づくかどうかの匙加減で揺り動かされる感じが、ちょっと気持ちよかったりもする。

  • 三崎ワールドは長編も良いし短編も良いです。
    台風の日に読み始めたこの短編集も面白かったです。
    台風のように鼓笛隊が襲来する世界の表題作、本物の象のすべり台「象さんすべり台のある街」、浮遊都市にいる恋人と地上にいる主人公の「遠距離・恋愛」、消えてしまった下り列車に乗っていた人の喪失を受け入れる「同じ夜空を見上げて」が好きです。「校庭」はとても怖くて。
    「覆面社員」にあった「バスジャック規制法」に、繋がっている世界なのだなと思いました。「同じ~」も、まだ読んでいない作品に繋がるらしいです。
    これからも三崎ワールド、読んでいきます。

  • 世にも奇妙な物語系、とでも言ったらいいのでしょうか。どこか狂った、しかし至って普通に営まれる日常を描いた短編集。本書、と言うより多分三崎氏の面白い所は、その「狂い」を感覚ではなくシステマティックに組み上げてしまう点です。表題作や象さんの練り上げ方はまさにお見事で、どこからこんな設定が湧いてくるのか、ただただ感心するばかりです。

    オチにぞっとする話もあれば、ほんわかできる話もある。でもどの場面においても、世界観の微妙にずれた日常の中で、登場人物たちは当たり前に懸命に生きていく。一貫した作風はまさに「三崎ワールド」とでも称すべきもので、好みは分かれるでしょうが自分はしっかりハマりました。もう何作か、手を伸ばしてみたい作家さんです。

  • 不思議な世界の短編集。
    三崎亜記の真骨頂のホラーでいろんな角度から紡いでいて、どれも味わいがある話がならんでいる。
    高橋克彦の「記憶」シリーズを彷彿とさせた。直木賞候補作にもなった傑作集。

  • 再読。短編集。よくこういう設定を思いつくなあといつも感心するのだが、短編にも惜しげもなくフシギナ世界設定が使われている。「同じ夜空を見上げて」は「ターミナルタウン」に続くのか。他にも細かいワードが別の作品に少しだけつながっていたりして、にんまりしてしまう。そんな技巧の底には大切なことがそっと語られていて、ぼんやりと物思いにふける幸せを与えてくれる。

全106件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1970年福岡県生まれ。熊本大学文学部史学科卒業。2004年『となり町戦争』で第17回小説すばる新人賞を受賞しビュー。同作は18万部のヒットとなり直木賞にもノミネートされた。著書に『廃墟建築士』『刻まれない明日』『コロヨシ!!』『決起! コロヨシ!!2』など。

「2021年 『博多さっぱそうらん記』 で使われていた紹介文から引用しています。」

三崎亜記の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×