廃墟建築士 (集英社文庫)

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  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087468809

感想・レビュー・書評

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    「図書館」を読んでいて、今年2月に読んだ『バスジャック』の中の一編「動物園」の続編だったことに気付きました。以前読んだときは間が空き過ぎて気付かなかったのですが。
    最近は優しい物語を読むことが多くなりましたが、時々はこうした不思議な物語に浸りたくなります。ファンタジーともちょっと違う不条理な世界です。
    寓話に見えなくもないのですが、そこまで深読みしなくても良いのでしょう。連鎖廃墟の虚構は美しく強く印象に残り、それだけでも私には読む価値を感じます。


    =================
    13-014  2013/02/13  ☆☆☆☆☆

    建物を主人公?とした短編集。
    『七階闘争』では七階は六階と八階の間にある物では無く、固有の物(地面に直接置かれた七階などと言う概念が出てくる)として扱われ、犯罪発生率が高いとされた七階は行政によって撤去される。
    『廃墟建築士』は実用に供されることなく廃墟にする事だけを目的に作られる建築物の物語。西端は常に建築が進み、90フィートの全く同じ造りの区画が延々7?に渡って続き、東端は築200年を超え廃墟と化してい連鎖廃墟の姿が見事。
    『図書館』と『蔵守』はいずれも魑魅魍魎的な建物の話。『図書館』はかつて”本を総べるもの”であったが、今は地上に括り付けられ、夜中に建物内で本を飛翔させている。『蔵』は何かを守るために建てられたものでは無く、先に蔵が存在し、その為に守るべきものが生じるという発想。何を守るかでは無く、理由も無く守る事への執着が描かれる。

    相変わらず不思議な世界です。
    寓話として読むのも良いけれど、単に不思議ワールドを楽しめばそれで良いのでしょう。
    面白かったです。

  • 廃墟が好きで、たまに見に行く。
    廃墟に突如行きたくなる。
    廃墟は結構怖いところなので、なかなか行けない。だから、写真集を買って、眺めたりする。

    完全な自然の姿なんて、目に触れられるところには存在していないと思っていて、
    もし探検家が未開の地に行ってその風景を私が目にしたとしても、探検家の目というフィルターが入った時点でもう自然の風景ではないと思う。
    廃墟の魅力は、もとは生きた町として存在していたものが、死にゆく姿をみることができるという点だと思う。
    表題の小説を含め、廃墟に対する思い入れが、尺者と一致して気持ちよかった。

    蛇足になるが、生きた町が死にゆく姿を見せるという点に関して言えば、世界遺産に認定された町は、その時点で、それ以上成長が制限されるので、これ以上ない廃墟だと思った。

  • となり町戦争は昔読んだはず。「一ヶ所だけズラした設定を端正な文章で」という印象。嫌いじゃない、むしろ好きなんだけど、これを続けるのはしんどいんじゃないかなぁ、と思ったような。で、今回文庫交換会で当たって読んでみたけど、まぁ同じ感想。どれも変な設定なのにリリカルで切ないんだけど、ホンマにこれを飽きさせずに書き続けるのは大変よね。4作あるけどなかなかに甲乙つけ難い。「蔵守」がちょっとトリッキーな書き方してるけど、これはちょっと合わないような気がしてちょい落ちるかなぁ。

  • 三崎さんの本は2冊目です~。
    「失われた町」がとってもインパクトの強い本で楽しませてもらったので、ちょっと期待して読みました。

    三崎ワールドってとっても不思議。
    私はSFものやファンタジーは苦手なんだけど、そういう要素がてんこ盛りなのに面白く読めちゃう。
    この独特な雰囲気が好き。

    私が一番好きなのは「七階闘争」
    「失われた町」のような感じで入り込めた。
    最後はちょっとセンチメンタルな気持ちにさせられた。

    「廃墟建築士」は「七階闘争」の次だったので、どうしても比較しながら読んじゃって、こうイマイチ話に入っていけなかった。なんで「廃墟」なの?って考えすぎちゃったからか、理解できない部分もあったんだけど、最後はなんだかジーンときたな。

    「図書館」はとっても面白く読んでてわかりやすかった。映画「Night At The Museum」みたいな感じかな。
    でも、やっぱり本に敬意を払わないとね本が可哀想だよね。このストーリーの世界じゃなくてもね。

    一番理解できなかったのは最後の「蔵守」
    なんだかな~、芥川賞っぽい感じで読んでてさっぱり分からなかった。主人公をどうイメージしていいのか抽象的すぎて私には合わなかった。

    でも、全体を通して、この独特な感じを堪能できたので面白かったです。

  • 現実に存在することを非現実に描いており、その世界観に入り込める人には面白いのかもしれない。

  • 星新一さんのショートショートを思わせるような短編集。全て建築にまつわるお話。

    ショートショートなら良いが、現実に有りもしない物語としては、長すぎて飽きる。

  • それほど楽しめなかった。

  • 【七階闘争】
    自分の大切なものとは何なのか、世の中の悪とは何なのか、向けられる敵意は誰のものなのか。目には見えないけれど、確かに存在する「何か」。
    世間は本当に気持ち悪い。
    不思議な世界観の中で、現実を考えさせられる。これぞ三崎亜記節。大好きです。
    【廃墟建築士】
    言葉で「時間の流れ」を表す方法はいくらでもある。廃墟を使っての表現は始めてみた。廃墟の持つ怪しげで懐かしい雰囲気と、一人の男の人生が綺麗に絡み合い、ストーリーが進む。一種のノスタルジー。
    【図書館】
    日常生活の中では特に意識せず見落とし勝ちな脅威。生々しくなりそうな話も、三崎亜記の手にかかれば素晴らしいファンタジー。
    日野原さんと高畑の会話にある「自分の居場所が定まらないことも、定まってしまうことも」「無い物ねだり」は自分に投影してしまう。
    【蔵守】
    後半にかけて怒濤の展開。
    自分は何を守るのか、それは何の意味も無いかもしれないけれども守るしかない。男としては家庭かもしれないし、プライドかもしれないし。
    環境が変われば、感想は大きく変わるようなお話。

  • 廃墟を作る人たちの話。他。

    三崎さん全部買ってたと思いきや
    積んですらいなかった1冊。

    中編になるのかな。
    らしい世界だけれども
    それを把握して楽しめる頃に終わってしまう。

    人間じゃないものの人間らしさが
    素敵なところです。

  • 「建築で物語を描くとこうなった!」みたいな、作者の発想力と文章力には毎回度肝を抜かれます。なのに不思議とフィクションっていう感じがしないんですよね。それがすごさを余計物語っている気がします。

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著者プロフィール

1970年福岡県生まれ。熊本大学文学部史学科卒業。2004年『となり町戦争』で第17回小説すばる新人賞を受賞しビュー。同作は18万部のヒットとなり直木賞にもノミネートされた。著書に『廃墟建築士』『刻まれない明日』『コロヨシ!!』『決起! コロヨシ!!2』など。

「2021年 『博多さっぱそうらん記』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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