廃墟建築士 (集英社文庫)

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  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087468809

感想・レビュー・書評

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  • 建物にまつわる4つの不思議なお話


    『七階闘争』
    7階が7階における犯罪率を引き上げている!7階を撤去しよう!
    という、建物の7階を撤去しようとする決定と、
    それへの反対運動の話。
    新興宗教みたいでこういう闘争モノは怖い
    いやなリアリティもあるし

    『廃墟建築士』
    本書のタイトルにもなっていて、これに惹かれ購入。
    廃墟が建築として認められていて、
    建築物としてあえて廃墟を作るというのが奨励される世界。
    確かに廃墟というものの魅力はとても素晴らしいけど、
    日本のこの狭い国土に、わざわざ住居スペースを奪ってまで
    廃墟を作るのはなぁ…
    芸術として見ているから、公園やオブジェと同じなんだろうけど
    それにしても廃墟に興味のない人にとっては無益すぎるだろう
    主人公を感動させた連鎖廃墟もなぁ。

    意図せざるものだからこその、ハッとする美しさや
    無情さがあるんだと思っている
    ささやかでも存在した歴史の痕跡とか


    『図書館』
    図書館には野性がある
    それは、人々が寝静まる夜に目覚める

    図書館員として、微笑ましさと羨まさしと


    『蔵守』
    なぜ蔵を守るのか
    そこに蔵があるから

    守るべき蔵をめぐる二つの意識が
    交互に描かれていく話
    これはもうちょっと展開を広げて欲しかったかも
    最後の方で明かされる秘密が、そういった余地を残して想像力を駆り立てて良い

  • リアルじゃない世界のリアルな気持ち。
    それが心地よく心に沁みます。
    http://feelingbooks.blog56.fc2.com/blog-entry-955.html

  • 長めの短編が4つ。七階が行政によって抹消される話、廃墟の建築士の話、図書館を飼育訓練する話、中に何もない蔵とそれを守る人の話。
    うーん、残念。『コロヨシ』で突き抜けたと思ったけど、本書を読むとそれを訂正したくなる。私の感想は、今回も基本的に他の作品の場合と同じ。
    着想もいい。キャラクター(ワンパターンな気もするけど)もいい。
    それなのに、いつもあとひとつ何かが足りないと感じる。
    本書の高橋源一郎の解説を読んだら欠落感の出処がわかった気がする。
    三崎作品は、あるAを描くためにAではなくBを描くという遠回りをする。建物の七階がなくなるという現象を描きながら、それがホテルや病院の四階九階がないこととも違う重みがあること、家族や友人を喪失して気づくかけがえのなさ、それでもやって来る今日という日常、など、生きるってそういうことだよな〜と思わせてくれる。
    ところが、短中編では、この起承転結が1サイクルしか回らないため、奥行きがでてこない。
    「人生の重み」という言葉を、5文字ではなく本一冊の重みにするために必要な遠回り、とでも言おうか。
    アイデア勝負のショートショートにするか、起承転結が何回転かする長編にするか、どっちかの方がいいと思う。
    長編にすることでシャープやきらめきがなくなってしまう作家もいるけど、三崎亜紀は味にコクがでてくる感じ。
    応援してるので頑張って下さ~い。

  • 2012 10/18

  • 独自の世界観でストーリーを進めていく、
    三崎作品らしい作品。
    表題にもなっている廃墟建築士はもちろんの事、
    図書館の話が個人的にはとても好き。

  • 三崎亜記の廃墟建築士を読みました。
    三崎亜記らしい不思議な世界設定とその世界の中で生きていく人間たちが描かれた四つの短編が収録されています。

    七階闘争では、ある街で7階での犯罪が多発したため、その街の7階を全て撤去することになる、という物語が語られます。
    7階というのがO型だったらどうだろう、○○県出身者だったらどうだろう、何かがターゲットになる怖さが描かれます。

    図書館と蔵守は、人間がコントロール出来ない超自然の存在に立ち向かう人たちが描かれています。
    なぜか、この短編を読んで、故障した原発で苦闘する人たちを連想しました。

    四編ともそれぞれ考えさせられる物語でした。

  • 三崎亜記の本に自分の概念をひっくり返されるのが大好きで仕方がない。
    そんな非現実的な世界観を綻びなく作り上げる三崎亜記が好きだ。
    7階撤去運動、廃墟を建築、意思を持つ図書館、呼吸する蔵。
    面白すぎるだろ!!
    そんな作品ごとのことを考えていたら、久しぶりに「鼓笛隊の襲来」を読みたくなってきた…。三崎亜記のこの中毒性が半端ない。

  • 「建物」にまつわる不思議な短編4編。「七階」で事件が相次いだために、すべての七階が撤去されることになり、七階の住人達が抵抗を繰り広げる『七階闘争』、「新築の廃墟」という矛盾した存在が成り立つ世界での廃墟の在り方を描いた『廃墟建築士』、かつて「本を統べる者」であった図書館を調教し、夜間に野性を取り戻した本が回遊する『図書館』、ただひたすら蔵を守る職業「蔵守」と、自身の内部にあるものを守ろうとする「蔵」自身を交互に描く『蔵守』。いずれも、現実と照らし合わせればどう考えても不条理な設定が、当たり前のこととして成立している世界で、ファンタジーと呼ぶにはかなりシニカル。ちょっと視点を変えるだけで「ありそう」なところが、面白い半面、ちょっと怖いかも。

  • 三崎亜記さんの小説は2冊目。
    正直、む〜と思うのだが、そこに描かれる世界は
    ありそうで、なさそうで、でも本当はあるのではないか、
    と思ってしまう。
    解説で髙橋源一郎氏が「なにか」について書いている、
    とおっしゃっているが、まさにそんな感じです。

  • 三崎亜記作品は初めて読みましたが、なんだか意味が分からないです。
    この手の淡々と進んでいく不思議系は合わないのと同時に、この作者の持ち味である理不尽や不条理が嫌いだと判明。
    とてもじゃないですが受け入れられませんでした。
    読んでいてイライラしてしまった。
    いや、決して短気ってわけじゃないんだけど、なんだか受け入れられない。
    残念です。

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著者プロフィール

1970年福岡県生まれ。熊本大学文学部史学科卒業。2004年『となり町戦争』で第17回小説すばる新人賞を受賞しビュー。同作は18万部のヒットとなり直木賞にもノミネートされた。著書に『廃墟建築士』『刻まれない明日』『コロヨシ!!』『決起! コロヨシ!!2』など。

「2021年 『博多さっぱそうらん記』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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