たけくらべ (集英社文庫 ひ 11-1)

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (260ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087520446

感想・レビュー・書評

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  • なんといってもたけくらべの登場人物たちの活き活きしていることに驚いた。
    子供たちの走り回る下駄の音や笑い声が聴こえてくるみたい。
    初恋特有の降って湧いた気持ちに対する戸惑いと恥かしさ、切なさが慕わしく懐かしく、ラストでは胸がいっぱいになった。
    よくぞ初恋のときめきをこれほど見事に真空パックしたと思う。
    一方、にごりえと十三夜は厭世観に満ち満ちていて少し滅入る。
    明治も生きづらい世の中だったんだな‥と。
    しかし集英社版は註釈がうるさいうるさい。
    表紙が可愛らしいので迷わず買ったけど、美登利の不機嫌の理由を限定してあったり(初潮程度でここまで激しく落ち込む女がいるとは私には思えない)にごりえの冒頭の註でいきなり結末のネタバレをされたのには心底辟易した。
    装丁は地味でも自分なりの読書を邪魔しない版を選ぶべきだったわ。

  • 2015.12.14

  • 古文体で読み慣れず、何度も寝落ちを経験しながら読了。物語の流れは一度読んで大体分かるくらい(十三夜は分かりやすかった)。話の筋に注目していたら分からなくなったりして疲れるので、古典の独特のリズムの良さや言葉の響きを楽しむことにした。

  • たけくらべ、にごりえ、十三夜の三編が収録されています。
    それぞれの主人公、美登利、力、関はきっと美しい人達なのでしょう。

    美登利は吉原の界隈に住む美少女、彼女はいずれ吉原で遊女になると決まっています。
    たけくらべは彼女と、その取り巻きとが大人になっていく物語です。

    にごりえのお力は売春斡旋酒場で働いています。彼女の魅力で源七という妻子持ちの零細企業の社長を路頭に迷わせてしまいました。お力と源七はどうなるのでしょう?

    十三夜のお関は、高級官僚の旦那さんに毎日毎日、嫌味ばかり言われ、それに耐え切れなくなり実家に泣き言を言いに帰って来ました。その時父と母がとった行動は!?

    取り敢えず、にごりえの源七は最低人間だと思います。心を入れ替えて妻子の為に一生懸命働くか、誰にも迷惑かけず一人で死ねばいいのにと思いました。

  • 如何な明治の人が早熟と言えど、23歳でこの作品群、書く側、読む側、意は揃うて居るのか気になる程。21歳で「月一五円で妾になれ」と申しこまれる一葉、逢ってみたいもの。24歳で死す

  • 「だって僕は弱いもの」
    「いえいえ、姉さんの繁昌するようにと、私が願をかけたのなれば、参らねば気が済まぬ。お賽銭下され、行ってきます」
    「己の為に倹約してくれるのだから気の毒でならない。集金に行くうちでも、通新町や何かに随分可愛想なのがあるから、さぞお祖母さんを悪くいうだろう、それを考えると己は涙がこぼれる、やっぱり気が弱いのだね。」
    「温順しそうな顔ばかりして、根性がくすくすしているのだもの、憎らしかろうではないか。家の母さんが言うていたっけ、瓦落瓦落しているものは心が好いのだと。それだからくすくすしている信さん何かは、心が悪いに相違ない。」

    雪駄ちゃらちゃら忙しげに。たけくらべのみメモ。語り手の方が気になるわ…と思いながら読んだ。慣れたら気にならず読めた。漢字の読ませ方がいいなーと思う。イラスト効果か私の中では10~12歳のイメージで読み進んでしまったが………うん。そのくらいでもいけると思う。

  • 仮初の夢物語の世界で日常を生きる少年少女たちの、今風に言ってしまえばほろ苦い青春ストーリーである。

    勝気で売れっ子の遊女を姉に持つ美登利、美登利が大好きな近所の幼馴染・正太郎、美登利や正太郎と敵対するガキ大将の長吉、美登利がほのかに思いを寄せる寺の跡取り息子、信如。
    遊廓街で育ったためおませではあるが、登場する子どもたちはみな普通の子どもたちと変わらず、純粋で無垢。その清らかさはあまりにも眩しい。

    しかし、いつしかみな大人になっていく。
    主人公、美登利は島田に髪を結いあげる。
    その昔、髪を島田に結い上げることは大人の女性になることを意味していた。遊女になる美登利にとってそれはもうじき、自分も遊女となってお客をとるということを意味する。
    子ども時代の終焉。これからは、大人たちの欲望渦巻く世界で生きていくことを実感してしまう。

    ラストシーンで美登利の家の格子戸に挿さっていた一輪の水仙の造花を愛でる美登利。信如が挿していったのかなあ?という描写で物語は終わる。

    決っして枯れることのない、白い花。これは、美登利たちがすごした子ども時代の象徴なのではないか。

  • やはり口語体の文章なので、中身を理解することにある程度の困難を伴う。
    しかし、口語体ゆえのリズムのよさをいかんなく発揮した作品ではあると思う。音読しながら読むことでそのよさを感じられると思う。

  • はじめは堅苦しい印象だったが、この集英社文庫版では注釈が分かりやすく、表記も見やすかったため、なんとか8割方理解して読み終えることができた。古文風なので、主語が省略されていたり、習ったばかりの格助詞「の・が」の用法などが現代と違い、読むのに時間はかかったが、まるで小説ではなく口上を言っているようなリズミカルな文章といい、和語の持つやわらかさといい、綺麗な日本語を読んでいる感じがした。気のせいだろうか。
    場面としてはやはり信如の鼻緒が切れるところからのクライマックスが最も印象的だ。お互いを意識しつつも思惑が食い違い、恋とも言えないほどの感情をもっていながら、ついに最後まで通じ合わないのが、読者からみても大変歯がゆい。しかも次には場面は一転、美登利は大人への第一歩を踏み出してしまったことに困惑する。このショックは女性である一葉ならではの描写であり、彼女が周りを男性作家に囲まれていながら、あの時代にこんなに訴えかける文章を書いたということに驚きを感じる。美登利はきっかけこそあったものの、ショックの理由はそれだけではないだろう。大人になることを意識させられれば、女郎という自らの将来を案ぜずにはいられない。現実が一気に襲いかかってきたような気分だろうか。「ええ厭々、大人になるは厭なこと」という彼女の身は切ない。また信如も、水仙の作り花をさした翌日が出家の日という。これから先、信如の性格からも、遊女になった美登利と信如はもう二度と会うことはないだろう。そのことを暗示しておいて物語はここですっぱりと終わってしまうのが、切なさを増幅させる。
    ふれたらこわれてしまいそうな繊細な水仙は、信如の真心であると同時に、美登利に許された最後の純粋な少女時代と初恋の象徴であったのではないだろうか。

  • 全部は読めなかったんですけどとても素敵。
    そんでもってじれったい。

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著者プロフィール

1872年、東京に生まれる。本名なつ。92年、20歳で小説『闇桜』を発表。以降、96年に24歳で
亡くなるまで、『大つごもり』『たけくらべ』『にごりえ』『十三夜』などの名作を書いた。

「2016年 『漫画版【文語】たけくらべ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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