蜘蛛女のキス (集英社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087601510

作品紹介・あらすじ

「触ってもいい?こんな風に触ってもいい?こうしても?あたしに撫でられて、気持悪くない?よかったら、あたしに好きなことしていいわよ…」ブエノスアイレスの刑務所の中で生まれた、テロリストとホモセクシュアルの、妖しいまでに美しい愛。アルゼンチンの作家、マヌエル・ブイグの野心作。映画化では、ウィリアム・ハートが、その名演技でを受賞して、世界の話題をさらったものである。

感想・レビュー・書評

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  • ★★★
    同性愛者とテロリスト。まったく違った二人の男が牢獄で同部屋になる。同性愛者はテロリストに夜な夜な映画のストーリーを言って聞かせる。主な筋はそれだけなのになんと惹きつけられる小説。
    二人の会話と、刑務所の報告書だけで語られていきます。限られた時間と空間だからこその濃厚さ、分かり合えた事と合えなかった事、夢と現実。
    ★★★

    映画とミュージカルも観ました。映画では同性愛者役のウィリアム・ハートが賞を取っています。
    ミュージカル版はちょっと賑やか過ぎたかな。二人の男が出会って、反発して、仲良くなって、一人の男が殺され、ラストは死んだ男がむっくり起き上がって歌って踊ってお終い、って感じ。こう書くとホラーかコメディのようだけど本当にそんな感じなんですよ。小説では閉じられた空間の濃密さが舞台では開かれて、小説では決して語られなかった「愛している」の言葉が軽く感じてしまいました。

  • 刑務所で同室になったテロリストとオネエのお話。
    バレンティンがモリーナの話をちゃんと聞いてあげるのは、最初はなんとか手懐けてテロ活動に利用しようとしていたからなんだろうけど、甲斐甲斐しく世話してくれるモリーナに、徐々に心を開いていってるのがわかる。モリーナの方も最初は情報収集のつもりだったんだけど、次第にバレンティンに魅かれていく。しかしだからこそ別離を意識してしまうんだろうな。
    千夜一夜物語のような入れ子式の構造になっている。枠物語の内部にある映画の話がかなり濃くて、生々しいシーンがあまり気にならなかったので読みやすかった。モリーナの語りは上手くて切ない。
    バレンティンがモリーナを蜘蛛「女」と呼んだシーンなんかは、互いの愛情がきちんと読み取れて良かった。ラストは辛くてちょっとやりきれないが、これ以外の終わり方もない気がする。

  • 囚人二人による会話劇。
    核心を語るに至るまでの、回り道をゆくがごときふたりの言葉の無駄撃ちと、ここが核心という場面での冷水一滴のような沁み渡る言葉と、その対比の妙を楽しめた。
    あらゆることについて距離がある二人、わかり合うことについて当初から諦めを抱いておりながら未練を断てない、その姿が悲しみを誘う。会話体による言葉の過剰な洪水は、互いの心の伝わらなさを強調するための巧みな演出でもあるのだろうか。

  • デパートでもらった香水の試香紙をしおり代わりにしていたから、すごくいい匂いが本に移っていたのをすごくよく覚えている。どこの何ていう香水かは覚えてないんだけど、私の中ではその香水はモリーナの匂いになっている。

  • 「触ってもいい?こんな風に触ってもいい?こうしても?あたしに撫でられて、気持悪くない?よかったら、あたしに好きなことしていいわよ…」ブエノスアイレスの刑務所の中で生まれた、テロリストとホモセクシュアルの、妖しいまでに美しい愛。アルゼンチンの作家、マヌエル・ブイグの野心作。
    ブエノスアイレスの刑務所の監房で同室になった二人、同性愛者のモリーナと革命家バレンティンは映画のストーリーについて語りあうことで夜を過ごしていた。主義主張あらゆる面で正反対の二人だったが、やがてお互いを理解しあい、それぞれが内に秘めていた孤独を分かちあうようになる。両者の心は急速に近づくが-。モリーナの言葉が読む者を濃密な空気に満ちた世界へ誘う。
    原題:El beso de la mujer araña
    (1976年)

  • サクサク読めた。
    基本、囚人2人の会話によって話がすすむ。

    モリーナが話す映画の内容が気になりどんどん読み進む。また、牢内だから余計な場面がなく読みやすかった。

    タイトルからホラーっぽいかと思ったら、全然そんなことない。
    気持ち悪くない。ひと言でいうと切ない。

  • 濃密な会話劇

    異なるもの同士が出会い、触れ合い、すれ違い、通じ合い。
    ただそれだけと言えばそれだけの事。

    やっぱりモリーナみたいな母性的な愛情っていいなー
    「少し怖いと思う、それが刺激になる」っておおっとしたわね。

  • 映画にも舞台にもなった名作。
    でも今までストーリーを知らなかったー。

    モリーナの映画の話がとっても印象的で読んでて面白かった。きっと、一緒の牢獄に入ってたバレンティンはずーっと彼女の話に癒されてたんだろうなぁ。

    最後は可哀想だったけど、モリーナもその人生が映画化された話に残ってしまい、こうやって今でも語り継がれてるのは素敵なことなのだと思いたい。

  • 同性愛者についての原注が長くて読みにくいけどこれが一番大事で、マチスモとホモフォビアのラテンアメリカでこの物語が読まれるためには絶対に必要なのだ。ということを踏まえてモリーナとバレンティンの物語を読む。悲しみと美しさが3倍増である。

  • 刑務所の同じ監房にいるヴァレンティンとモリーナの会話が本になったような小説。

    登場人物のうちの1人であるモリーナは今でいう性同一性障害だとわたしは思う。

    はじめてこの本を読んだときに、彼女がする映画の話の一部が後味が悪くゾッとしたりもして
    思わず「こわい!読まない!」と思ったこともあったけど読んだよ(○癶o癶○)

    映画の話はさておき、モリーナのかわいらしい性格や優しさお茶目さ健気さがとっても好き。
    ヴァレンティンの意思が強くて性格がかっこいいところも。

    結末のモリーナについては読んだ人によってハッピーエンドだったり、
    かわいそうだと思ったりする人も居るみたいだけどわたしはどちらか分からなかったなあ。
    どっちなんだろうね?

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著者プロフィール

1932-1990年。アルゼンチンの作家。ブエノスアイレスの大学を卒業後、イタリアへ留学し、映画監督・脚本家を目指すが挫折。ニューヨークで書きあげた長篇『リタ・ヘイワースの背信』を1968年に出版、帰国後発表した『赤い唇』(69)はベストセラーとなるが、『ブエノスアイレス事件』(73)は発禁処分、極右勢力の脅迫もあってメキシコへ亡命。世界各地を転々としながら、『蜘蛛女のキス』(76)、『天使の恥部』(79)などの話題作を発表。巧妙なプロットと流麗な語り、現代的な主題で幅広い人気を博した。

「2017年 『天使の恥部』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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