朱鳥の陵

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (376ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087714395

感想・レビュー・書評

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  • 百人一首にある持統天皇のかの有名な歌をそう読み解くとは…
    夢解きと人の想いの強さを思い知らされる、恐ろしくも哀しい話。

  • 天平時代の歴史が生き生きと描かれている。歴史をこのようにみる事も出来るのかと驚嘆した。

  • 持統天皇こええ…。「春過ぎて夏来るらし~」がホラー満ち満ちた呪いの歌にしか思えなくなった。

    断片的に語られるピースが揃うと…て話。知ってはいけない事を知らなきゃいけなくなって、知りたくもないのに知ってしまったので命までとられた白妙が哀れ。

  • 白妙という主人公を設定した理由が全然わからない。
    地方から上京した主人公に知らないことがあって、それが明らかになっていく。しかし、歴史を知っている読者にとって、それは謎でもなんでもない。
    ふつうに持統天皇の視点から生涯を追って書かれていても、おもしろさは変わらないだろう。ページの水増しでもしたかったのだろうか。
    持統天皇の行動原理も、わかりにくい。もやもやする。
    初対面の柿本人麻呂(もう若くない、それほど魅力的な男でもない)とセックスしちゃう主人公にもドン引き。

    私にとっては、石上麻呂が少ないながらも登場したという以外に意味のない小説だった。

  • 時代的には、大化の改新以降の話。
    読み切っての感想としては、意外に面白かった。
    ただし、最初は読むのが苦痛に感じる小説であった。
    小説の内容も何の前知識もなく読み始めたが、何度も挫折しそうになった。
    その理由としては、まず登場人物がマイナーすぎること。
    同じような名前が多く、序盤は全く誰が誰なのか、実在する人物なのかさえもわからなかった。
    次に、文章が読みにくい。
    たとえば、天皇は”すめらのみこと”と読むなど、フリガナをふってくれているが、これを意識して読んでいると、そっちが難しくて、話が頭の中に入ってこない。
    折角、内容が面白いのに、序盤は登場人物が誰が誰だかわからない読み進めるのが非常に難解な小説という印象であった。
    自分自身、登場人物も含めて、内容が理解でき始めたのは、半分ぐらい読み進めてからだった。
    本に、人物関係図など用意してくれれば、最初のほうも全然違ったと思う。
    その意味で、自己満足的かつ、読み手への配慮が足りない本だと思った。
    だが、あまりこの時代の小説って少ないので、歴史好きなら読んでみる価値は十分ある。
    もったいない小説。

  • 図書館でパッと本を開けて借りようかどうしようか躊躇。
    だって、漢字が多すぎる!
    しかも今は使われてないような難しい読み方をする漢字が・・・。
    地震を「ない」と読むなんて、今は俳句で使うくらいじゃないか。
    ・・・という訳でかなり不安な気持ちで読んだ本ですが、意外にも話の中に入り読む事ができました。
    その難しい漢字も大体はルビがふってあるし、昔の漢字、読みだからこそ独特な雰囲気が物語に漂い、古代の日本を舞台にしたストーリーに合っていると思いました。
    やはり日本語は繊細で美しい。

    物語の時代は大化の改新の頃。
    歴史に疎い私でもその頃の歴史の人物の名前が出てくるので、「ああ、あの頃か・・・」と分かりました。
    常陸国の巫女、白妙はその夢を解く能力をかわれて倭国の京に召された。
    高市皇子の大妃だった、御名部皇女の見た気がかりな夢を解くために。
    御名部皇女の見た夢の中で、亡き夫、高市の皇子は左手を持ち上げた。
    何かの合図のように、左手の指を一本だけ立てて。
    その指は小指の横の「名無しの指」だった。
    その夢を読み解く中で、白妙の意識は何故か過去に飛び、今は亡き讃良皇女に同化し、彼女の思い、驚愕の秘密を知ることとなる。

    女の性、恐さを感じるストーリーでした。
    次々と愛人を作り、子孫を増やしていく夫に情念の炎を燃やす女。
    それと朱鳥のイメージが見事に重なりました。
    意外にも読み出すと物語の中に入り込んで読む事ができましたが、いったん別の用事をして読み始めると中々入っていけず苦労しました。
    これはその世界観に入っている内に一気に読んだ方がいい本かも知れません。
    あと、登場人物がかなり多く、その名前も相関関係も複雑なので、相関図みたいなのがあった方がいいのに・・・と思いました。
    反対に、歴史に詳しい人は別の楽しみ方もできそうな本です。

  • 高市皇子の妃・御名部皇女の夢解きのため常陸の国から呼び寄せられた白妙。
    夢解きを試みるうちに、持統天皇の心の中に入り込んでしまい、その秘密を知ってしまう。
    久しぶりに古代の物語を読み、うーむ、古代はミステリアスで面白いなぁと再確認。
    持統天皇の有名な歌、春過ぎて夏来たるらし…の意味が恐い。
    最後は白妙がんばって!と思ったが恐ろしい結末。
    でも、この終わり方でないとね、とも。
    稗田阿礼はこの人かぁ、とこれまた最後に心に残って…、いやぁ、面白かったです♪

  • 大作でした。
    最後の歌の段。
    出来たら、もう少し暗くない方がよかったのですが、でも、この終結が坂東真砂子さ
    んというべきなのかも。

  • 読んでいる最中より読み終わった後の方が怖かった。よく知った歌の今までのイメージと書き換えられたイメージが一緒に脳裏に浮かんで…こわかった。

  • ティーンエイジャーの頃の遠い記憶を呼び起こしながら、あるいは改めて歴史の教科書に載っていたような事柄を調べたりして読み進めていったわけだが、大化の改新前後からいわゆる律令制度に至るまでの数十年間を、ここまで書いていいのか? というぐらいドラスティックな解釈を施して再構築している。

    坂東眞砂子氏はこの著作においても、女性の特異性というものに徹底的に着目して、物語を綴っている。
    本当に、女の中に潜む情念を描くことにおいては、随一の技術を持つといっていいだろう。

    おお、あの中大兄皇子が、中臣鎌足が、大海人皇子が藤原不比等が、という具合に歴史ミステリーとして充分読み応えがありながら、最後はやっぱり一級のホラー作品としても成立するように仕上げている。
    終盤の持統天皇の怖さといったら、「黒い家」の菰田幸子ばりだ。

    登場人物たちに関しては、近親婚姻が多く、呼び名も長じるにつれて変わることもあるので、常に相互の関係性を頭に置きながら読まなければならないのがやや疲れる。
    また、読後感は決していいものではない。

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著者プロフィール

高知県生まれ。奈良女子大学卒業後、イタリアで建築と美術を学ぶ。ライター、童話作家を経て、1996年『桜雨』で島清恋愛文学賞、同年『山妣』で直木賞、2002年『曼荼羅道』で柴田連三郎賞を受賞。著書に『死国』『狗神』『蟲』『桃色浄土』『傀儡』『ブギウギ』など多数。

「2013年 『ブギウギ 敗戦後』 で使われていた紹介文から引用しています。」

坂東眞砂子の作品

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