ベーシックインカム

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087716795

作品紹介・あらすじ

遺伝子操作、AI、人間強化、VR、ベーシックインカム。
未来の技術・制度が実現したとき、人々の胸に宿るのは希望か絶望か。
美しい謎を織り込みながら、来たるべき未来を描いたSF本格ミステリ短編集。


日本語を学ぶため、幼稚園で働くエレナ。暴力をふるう男の子の、ある“言葉"が気になって――(「言の葉の子ら」 第70回推理作家協会賞短編部門ノミネート作)

豪雪地帯に取り残された家族。春が来て救出されるが、父親だけが奇妙な遺体となっていた。(「存在しないゼロ」)

妻が突然失踪した。夫は理由を探るため、妻がハマっていたVRの怪談の世界に飛び込む。(「もう一度、君と」)

視覚障害を持つ娘が、人工視覚手術の被験者に選ばれた。紫外線まで見えるようになった彼女が知る「真実」とは……(「目に見えない愛情」)

全国民に最低限の生活ができるお金を支給する政策・ベーシックインカム。お金目的の犯罪は減ると主張する教授の預金通帳が盗まれて――(「ベーシックインカム」)


【著者略歴】
井上真偽(いのうえ・まぎ)
神奈川県出身。東京大学卒業。
『恋と禁忌の述語論理』で第51回メフィスト賞を受賞してデビュー。
第2作『その可能性はすでに考えた』が、2016年度第16回本格ミステリ大賞の候補に選ばれる。
その続編『聖女の毒杯 その可能性はすでに考えた』は、「2017本格ミステリ・ベスト10」の第1位となる。さらに「ミステリが読みたい!2017年版」『このミステリーがすごい! 2017年版』「週刊文春ミステリーベスト10 2016年」にもランクイン。2017年度第17回本格ミステリ大賞候補、「読者に勧める黄金の本格ミステリー」にも選ばれる。
同年、本作に収録されている「言の葉の子ら」が第70回日本推理作家協会賞短編部門の候補に。
2018年には『探偵が早すぎる』が滝藤賢一、広瀬アリス、水野美紀出演でドラマ化され話題となる。

感想・レビュー・書評

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  • かなり前に読んだ「探偵が早すぎる」と同じ作者さんだと知って読んだ。

    変わった装丁でびっくり!
    5つの近未来を舞台にした作品だった。
    最後の一つで伏線が回収されてる(?)らしい。
    私にはよくわからなかったけど(꒦ິ⌑꒦ີ)

  • 日々進歩する技術革新により人間は便利なものを多く生み出しているが、逆に失くなったことで生体環境が変化し、人間にとって悪作用になる可能性もある。本書では生成AI、遺伝子工学、VR(仮想世界)、強化技術(視覚)の近未来に起こるべき事件事故を未来予測小説として取り上げている。特に注目したいのは生成AIによる自立性ロボットが最終的に「人間排除」する可能性は多くなると予測する。生成AIロボットが求める完全完璧社会は人間的な感情や思想は要らない社会を築くことになる。今後人間社会がロボットの判断に委ねる社会に変わりつつあり気付いた時には人間はペットにような存在で恐怖感を持つだろう。


  • AI、遺伝子組み換え、VR、人工視覚など、
    今現在の感覚で想像するといつか訪れるかも
    しれない夢の未来、それが当たり前にな状況で
    暮らしている人たちの生活風景。

    驚くほど便利に見える世の中でも、
    人の心の揺れや頑なさが、人間の普遍と変容の
    両方の側面を見せてくれてる。

    未来の一場面を垣間見せてくれる物語でした。

  • 良質な短編集。従来の作者の小説よりも感情の機微などの表現が素敵で小説がうまいなぁと感じる。惜しむらくは装丁。でかでかとSFミステリを標榜し、書店員のお勧めと粗筋が書いており下品に感じる。読んだときの驚きが少し半減するから文庫化の際には変えてほしい。恐らく理系分野出身ではないかという作者からの未来への期待の優しいメッセージを感じる。

    言の葉の子ら、、、幼稚園の園児のちょっとした発言から隠された真実が分かるという、正統派の日常の謎。せっかくの大仕掛けがSFミステリとバレていることで台無しに。

    存在しないゼロ、、、豪雪地帯に取り残された家族、父親だけが片腕のない死体。哲学的で法月さんみたいでよい。ただこれもSFのくくりを知らないほうが楽しめる。

    もう一度、君と、、、VR怪談に没入する妻が突然失踪する話。これはすごい好きでした。真相までの期待感もあり、最終的にホロリとする良い話。

    目に見えない愛情、、、盲目の娘が人工視覚手術を受けることになり、そこで見える真実とは。これ多重解決型バカミスでよいです。温かみのあるいい話なんだけど、仮説でちょっと笑ってしまった。

    ベーシックインカム、、、研究所の盗難事件。これ、ベーシックインカムが事件に直接は関係していないのです。なぜこれを全体のタイトルにしたのだろう。正統派密室盗難物。登場人物が前の4作を書いたメタ設定かと思いきや、、、全体の伏線回収がなかなかよい。

  • AIが活躍する近未来、人間は果たして幸福なのか?著者なりの仮説をミステリー仕立てで楽しめました。
    技術がいくら発達しても、暮らす主役が、完璧ではない人間だからこそ、いろんなドラマが生まれるのでしょう。
    「もう一度、君と」「ベーシックインカム」が好みでした。

  • SFミステリ短篇集。
    遺伝子操作、AI、VRなどが今より進歩して普及した近未来の設定で、技術の進歩とそれに向き合う人間の心情が描かれている。この著者にしてはケレンがないが、面白かった。でも未来はちょっと怖い。

  • 5つのSFミステリー短編集。どの作品も、現在すでに生み出されている最新技術が発達し、普及した10年くらい先の未来が舞台。そして、どんでん返しがラストに待ちかまえる本格的ミステリーの王道。さらに、最初の4つの短編を効果的に使った書き下ろしの第5話で締める。これぞエンターテイメント小説集だ。

    本書で取り上げられる人工知能や仮想現実など最新のテクノロジーは間違いなく社会を豊かにする。その一方で、感情や不器用さを持つ人間はそれに対応できるのかと、心配になる。技術と一緒に進化する人間がこれからは求められるのだ。

    進化できない人はベーシックインカムをもらって満足しているしかない。

  • ジャンルはSFミステリーとあるが、ミステリーが9割ほどで、SF要素は味付けにとどまっている。普段、ハードなSFを好んでいる読者にはSF要素が足りないと感じるかもしれない。トリックの種明かしのフェーズで、これから来たる新技術がもたらす社会の変動とそれに伴った人間の心情の変化が絡められている。短編集と見せかけた連作短編集でよくある、最後の短編でこれまでの短編を総まとめするという構造に見せかけて実はそうでは無いというのは、ひねりが効いていると感じた。ベーシックインカムの話はベーシックインカムに対する著者の主張が連なっていたが、トリックや、人物の動機にはあまり関係ないのでは?と思った。

  • もう一度、君とと、目に見えない愛情が良かった。じんわり暖かくなり気付くと涙が滲んでいる。
    もう一度、君とでは、妻の失踪から語られる妻との思い出が、実は死に際に主人公がみているVRの世界だったという話。死に際に過去に戻れる、私はそんな未来を夢見る。


    どの短編も、テクノロジーが発達した近未来での問題や希望が謎を通して描かれていて良作です。

  • 「言の葉の子ら」でガツンと洗礼を受ける。日本推理作家協会賞の候補作なのも頷けるすばらしい出来栄え。「存在しないゼロ」で出てきた「今の大人には解決方法が分からない、こんがらかった難しい問題は、もう子どもの世代に託すしかない」という意見は、劇場版『G-レコ I』のインタビューで富野由悠季監督も言ってた。それはそうと、もうちょっとミステリっぽいタイトルのほうが良かったんじゃないかなぁ。

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著者プロフィール

神奈川県出身。東京大学卒業。『恋と禁忌の述語論理』で第51回メフィスト賞を受賞。
第2作『その可能性はすでに考えた』は、恩田陸氏、麻耶雄嵩氏、辻真先氏、評論家諸氏などから大絶賛を受ける。同作は、2016年度第16回本格ミステリ大賞候補に選ばれた他、各ミステリ・ランキングを席捲。
続編『聖女の毒杯 その可能性はすでに考えた』でも「2017本格ミステリ・ベスト10」第1位を獲得した他、「ミステリが読みたい!2017年版」『このミステリーがすごい!  2017年版』「週刊文春ミステリーベスト10 2016年」にランクイン。さらに2017年度第17回本格ミステリ大賞候補と「読者に勧める黄金の本格ミステリー」に選ばれる。
また同年「言の葉の子ら」が第70回日本推理作家協会賞短編部門の候補作に。
他の著書に『探偵が早すぎる』(講談社タイガ)がある。

「2018年 『恋と禁忌の述語論理』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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